もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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王女、また誘拐される

「サラがまた誘拐されたってのが気にかかるな。」

「あ、そう言えば……」

 優先順位をとって、サラの救出は後回しにしてたっけ。

「とりあえず、サバサ城に行ってみるか……」

「ふん、またあの女か……まぁいい、貴様らの好きにしろ。」

 何だか、不機嫌な様子のアリス。

「ったく……今度は何したんだよ……」

 頭を掻きながら、面倒そうに漏らすヴィクトリー。

 不審に思いながらも、一行はサバサ城へ足を向けたのだった……

 

 サバサ城、謁見の間……

「よくぞ来てくれた、勇者ルカと武闘家ヴィクトリーよ。話は聞いただろうが、王女サラが魔物に捕らえられてしまったのだ……」

 サバサ王は表面上こそ平静を保っているが、やはり落ち着きの無い様子だ。こんな短い期間に二度も誘拐騒ぎが起きるなんて、王の苦労が忍ばれる。

「いったい、どういう事なんです?詳しく話してもらえませんか……?」

「あれは、三日前の事だ……剣の訓練をすると言って城の外に出たきり、帰ってこなかった。警護の兵によれば、煙のように消えてしまったらしい。それから間もなく、このようなものが届いたのだ……」

 王が差し出したのは、一通の手紙だった。

「これは……」

「『サバサの地を納める人間よ、貴殿の大切な娘を預かった。人間全員がサバサの地から立ち去れば、王女を貴殿の元に帰す。』……」

 ヴィクトリーが音読し、ルカもそれを聞く。

「やっぱり、誘拐されたんだ……!」

「今度はマジのマジみてぇだな……」

 アリスは、ヴィクトリーが読んだ手紙を横からひったくった。そして、くんくんと匂いを嗅ぐ。

「アリス、こんな時にふざけちゃいけない。その手紙は大切なんだから、食べちゃいけないよ……」

「おめぇがふざけんな。」

 ヴィクトリーは、ルカにスリーパーホールドをきめた。

「うぐぐぐぐ!!ギブギブギブギブギブ!!」

「アリス、何か分かるのか?」

 首を絞めながらも、彼女に聞く。

「……エルフの匂いだな。それに、妖精の匂いも混じっている。手紙を書いた主は、相当に高位の者に違いない。これは……おそらく、女王クラスだな。」

 ヴィクトリーがルカを解放し、目を鋭くする。

「女王クラスだと……?」

 どうやら、以前の騒動のような勘違いでは無いらしい。王女サラは、本当に妖魔によって誘拐されてしまったのだ。

「どうするんですか?サバサ王……この手紙には、王女を無事に戻すための条件がありますけど……」

 人間全員が、サバサの地から立ち去る……相当に、無茶苦茶な交換条件だ。

 サバサ王は少し考えてから、口を開く。

「……そんなもの、王として呑めるはずがあるまい。サバサの地は、我が国民たちの故郷なのだ。」

「でも、王女の命が……」

 サバサ王は、また考える。

「……私は、一国の王なのだ。自身の家族を惜しみ、多くの家族を苦しませるわけにはいかん。」

「で、でも……!」

「少し落ち着け、ドアホめ。なぜ貴様らがここに呼ばれたかを考えろ。」

「……そういう事なのだ。勇者ルカと武闘家ヴィクトリーよ、君達に王女サラの救出を頼みたい。」

 そうだ。わざわざ僕達を呼んだという事は、そういう事なのだ……

「よ〜するに、妖精もエルフもぶっ飛ばしてサラを奪い返せばいいんだろ?」

「そういう話なら、もちろん協力させてもらいます。でも、サラ王女はいったいどこへ……?」

 場所が分からなければ、救出もクソも無い。

「極秘裏に調査した結果、サラは西の方へと連れ去られたようだ。ここから西には、『妖精の島』と呼ばれる小島がある。エルフや妖精が多く住む孤島なのだが……どうやら、サラはそこに捕らえられているらしいのだ。」

「妖精の島……」

 アリスが言ったとおり、この事件にはエルフや妖精が絡んでいるようだ。正直な所、あまり剣を向けたくない相手である。

「上陸用の船も、私が手配しよう。兵士も、可能な限り同伴させるつもりだ──」

「兵などいらん、今のこいつらには足手まといだ。王女以外に助ける対象が増えるだけだな。」

 アリスが、サバサ王の言葉を遮った。

「おお、何と頼もしい。それでは、さっそく行ってもらうとしよう。」

「へへへ……ワクワクするなぁ!」

「……何でお前は何時だって楽しそうなんだ……」

 ヴィクトリーは、ルカの肩をポンポンと叩く。

 ルカは、それに苦笑いした。

「……すまないな、君達には厄介事を背負わせてばかりだ。私が王という立場でないならば、真っ先に向かいたい所なのだが……」

「構わん。こいつらは勇者、そういう仕事よ。貴様は、王たる者であればいい。」

「何様なんだ、おめぇは……」

「何様なんだ、お前は……」

 アリスに対するツッコミが、重なった。

「……とにかく、任せてください!」

「うむ、頼んだぞ。未来の妻を、どうかその手で救い出してくれ!」

「えぇっ……!?」

「ま、まぁだ諦めてねぇんか……!」

 何だか、勝手に変な話になっているが……

 ともかく一行は、王の用意した船で妖精の島へと向かうのだった……

 

 妖精の島……

「それでは、戻ってくるまでここで待っています。」

「危なくなったら、すぐにここから離れて下さいね……」

「いざとなったら俺には瞬間移動があるから、遠慮なく逃げろよ。」

 船長にそう告げ、一行は妖精の島に立った。確かに、多くのエルフが居そうな雰囲気だ。

「……おいルカ、奥の方からすげぇ気を感じるぜ。」

「あぁ……」

 おそらく、隠す気も無いほど大きな力。アリスが、女王クラスだと言ってたのも頷ける。

 この力の主が首謀者だとしたら、サラも近くにいるはずだ……

「よし、森の奥に行ってみるか……」

「へへへ……わくわくするなぁ……」

 こうして一行は、妖精の島の奥深くへと踏み込むのだった……

 

「小さな島なのに、大きな森だなぁ……」

 ざわめく木々を抜けながら、ルカがそう呟いた時だった。

 不意に、前方から何かが接近してきた……

「えへへへっ……女王様の言った通りだぁ。人間の王女を助けに、勇者が来ちゃった……」

 トリックフェアリー。まぁ読んで字のごとく、トリッキーな妖精だ。

「僕達が何のために来たのか、分かってるみたいだな。」

「ぶっ飛ばされねぇ内に、王女様を返して欲しいんだけどさ……」

「だ〜めだよ!あの王女は、あたし達の仲間になるんだから……」

「お前の仲間に……?」

「どういう事だ?」

 意味の分からない言葉に、二人は首を傾げる。

「それで、お兄ちゃん達はねぇ……あたしのオモチャにされちゃうの!あたし、とっても強いフェアリーなんだよ。人間の男の子、いっぱいオモチャにしてきたんだから……」

 確かに、こいつからは強い気を感じる。女王の側近クラスの、強力な妖精なのだろう。これは、油断は禁物のようだ。

「僕が出よう。」

「あぁ。」

 ヴィクトリーは下がり、ルカは剣を抜いて構えた。

「あれれぇ?一人で相手するつもりなのぉ?やめといた方がい──」

 ここで、ルカの胴廻し回転蹴りが、トリックフェアリーの顔面に炸裂した。

「うぐぁっ!?」

 トリックフェアリーはぶっ飛び、木に叩きつけられる。

「る、ルカが胴廻し回転蹴り……かぁ〜……」

「既に始まってるんだ……遠慮なく行かせて貰ったよ。」

「う、うぐ〜……!」

 トリックフェアリーの姿が、消える。すると、ルカの全身に斬撃が走った。

「っ!?」

「あはは〜!ほらほらほら〜!」

 彼女はルカの周りを飛び回り、カマイタチのように全身を切り裂いているのだ。

「くそっ!」

 ルカはその攻撃から一旦脱出し、正面を見て剣を構えた。

「逃がさないよ〜だ!」

「ウンディーネっ!!」

 ウンディーネの力を解放し、トリックフェアリーを見据える。

「そんな顔になっても怖くないも〜ん!」

 トリックフェアリーはまた、ルカの周りを猛スピードで飛び回った。

 だが、今度はルカに斬撃が入らない……

「……っ!!?」

 いや、むしろ彼女に斬撃が叩き込まれている。

「うわー!?」

 トリックフェアリーは、一旦ルカから離れる。

「……」

 ルカは目を閉じて、剣を腰に納めた。

「あはっ!居合切りってやつ?私さえ動かなければ……」

「……」

 ルカはすり足でその体制のまま移動し、一気にトリックフェアリーとの間合いを詰めた。

「えっ……!?」

 そして、渾身の居合切りを放った。

「魔刀・明鏡止水……」

 そう言いながら、剣を納める。

 次の瞬間、トリックフェアリーの上半身と下半身が真っ二つになった。

「やだ〜……」

 そのままトリックフェアリーの肉体は消散し、蝶の姿に封印された。

「……ふぅ、なかなか手ごわかったな……」

「どうやら、そんなに油断できそうにもねぇな……」

 こうして二人は、さらに足を進めたのだった。

 さっきから感じていた強い力は、すぐ近くだ……

 

 森の再奥、いかにも神秘的な広場……そこには、強力な妖気を放つエルフとフェアリーの姿があった。

 明らかに普通の魔物とは異なる、別格の存在のようだ。

 そして、近くの大木にツタで縛られていたのは……

「ルカ!それにヴィクトリーも!助けに来てくれたの!?」

 軽い鎧の戦闘服……いかにも王女らしくない格好で、サラが捕らえられていた。そう言えば、剣の修行に出た所を誘拐されたのだったか。

「ちょっと待っててくれ、サラ。まずはこの二人を何とかしないと……」

 僕達は、位の高そうなエルフとフェアリーに向き直った。

「あんたらがエルフとフェアリーの代表か……」

 さっきから感じているすげぇ気はこいつらのものに違いないだろう。女王クラスの敵が、二人も揃っているとは……

「お初にお目に掛かります……私が、この世界全てのエルフを統括するクィーンエルフ。」

「そして私が、全てのフェアリーの頂点に立つクィーンフェアリーよ。ふふふっ……よろしく。」

「俺はヴィクトリー。こいつはルカだ。」

「クィーンエルフにクィーンフェアリーか……」

 妖魔の女王が二体……確かに、これは手強そうだ……

「エルフや妖精が、何で王女を誘拐したんだ?いったい、何を企んでいる……?」

「……かつて、サバサは我等の生息域でした。」

 クィーンエルフは目を鋭くして二人に語り始めた。

「しかし人間どもが住処を広げるにつれ、我等の住処は奪われていったのです。」

「私達は争いを好まないわ。ゆえに人間と敵対することはせず、激突を避け続けたの。」

 横にいたクィーンフェアリーも、続いた。

「その結果……我等はとうとう、この島に追いやられたのよ。」

「……へぇ……」

「……」

 同じような話を、ウンディーネの泉でも聞いた。エルフやフェアリーの多くも、同じような目に遭っていたのか。

「我々は間違っておりました。このような状態になり、とうとう過ちに思い至ったのです。争いを嫌い、人間と戦おうとしなかったことを!」

「サバサは、元々は我等の地。今こそそれを取り戻す時が来たのよ。」

「へっ、王女様を人質に無理矢理取り戻そうって腹か……」

「ふふっ……」

 クィーンエルフは、ヴィクトリーを嘲笑する。

「そのような事は考えておりませんわ。あの手紙も、あくまで余興に過ぎません。我々の真の目的は、この王女サラを妖魔に変えてしまう事なのです。」

「な、何だって……!?」

「何だと……!?」

「ちょっと、どういう事よ……!」

「我々ほどの魔力があれば、人間一人を魔物化させる事など容易き事。王族の一人娘が、我々の同胞となるのですから……すなわち、王女が受け継ぐべきあの土地も我々のもの。そして王女サラを皮切りに、あの城の者を次々と魔物に変えてしまえば……ふふっ、全ては我々の手の中にあるも同然なのです。」

「そ、そんな……!」

「そんなバカな……!」

 そうなれば、サバサは内部から崩壊させられる事になる。そんな事、させる訳にはいかない。

「確かに、私達人間の側も悪いけど……でも、あなた達のやろうとしてる事もムチャクチャよ!なんで、もっと平和的に解決しようとしないの!?人質とか戦いとかじゃなくて、話し合いで……」

 クィーンエルフは、冷たい眼光をサラに向けた。

「人間と話し合い……?イリアスの教えを盲信し、魔物を排除しようとする人間などと……?冗談を言わないでください。人間に思いやりなどがあれば、我等はこんな目などに合っていません!」

「それは違うわ!私の父さんなら、魔物の言う事にも耳を貸すはず……」

「少し、黙ってくれないかしら。」

 クィーンフェアリーがパチンと指を鳴らすと、ツタがしゅるしゅると伸びてサラの口を塞いでしまった。

「ん、んんんーっ!!」

「話はここまでね……王女は、今から私が妖魔化させるわ。クィーンフェアリー、そちらの二人は任せましょう。」

「ええ……サラ王女は、なかなか素質があるみたいね。たっぷりと魔素を与えて、立派な妖魔にしてあげないと……」

 そう言ってクィーンフェアリーは、二人の前に立ちはだかった。

「ぶっ飛ばされねぇ内にそこをどけ。」

「ふふっ、邪魔はさせないわ……サラ王女は、私達の同胞となるのよ。」

 ふわりと羽を広げ、臨戦態勢をとるクィーンフェアリー。周囲の木々や植物から、ツタや花がしゅるしゅると伸びる。

「これは……植物を操れるのか……?」

「植物と会話するくらい、どのフェアリーにも出来る事。女王の私ならば、森の草花を自在に操る事さえ出来るわ……思い知りなさい、この森の怒りを……!行き場を無くした私達の悲しみを……!」

 二人も、臨戦態勢をとる。

「いいかルカ、本当だったら俺とルカでエルフとフェアリーを相手すりゃいいんだけど、そういう訳にもいかねぇ。おまけに人質がいる以上、いざとなればあいつらはどうとでも出来る……」

「……どうするんだ?」

「二人で一体を確実に仕留めるんだ。能力は確かに厄介だけど、あいつらの発言から察するに場数ならこっちの方が上のはずだ。負けるはずがねぇ!」

「……あぁ!」

「準備は済んだかしら……?じゃあ、行くわよ!」

 戦士達と妖精とエルフの戦いが、始まった……

流血表現

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