一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。   作:翠晶 秋

13 / 75
幼馴染みと服装

しばしの沈黙。

 

「……なぜだか理由をお聞きしても?」

「それはもちろん、帰還を親に知られたくないから!」

 

はぁ、と俺はため息をつく。

小さい頃は、よく泊まったりしたものだが……今回は多分、一日限りではない。

いや、別に俺は構わないのだ。

幼馴染とはいえ、美少女が同じ屋根の下にいて嬉しくない訳がない。

しかし、戸籍や名前をどうするかが気になって仕方がない。

 

「名前とかはどうするよ?一年じゃさすがに忘れてない人もいるだろ」

「それは……まぁ、なんとかごまかす!」

「適当だな!はぁ……まぁ、良いよ。居候っことにしよう。幸いと言って良いのかわからんけど、ウチは海外主張カップルだからな。元々使ってない部屋もあったから、そこを空良の部屋にすればいい」

「やたっ!ありがとう、家主様っ!」

「誰が家主様だ……」

 

なんだかんだで、俺は空良には甘いんだな。

そう実感していると、空良はルンルンしながら俺の顔を覗き込んで来た。

 

「ね、今日なにする?」

「俺は特に予定は無いかな。帰ったらゲームとかする予定だったし。勧められたゲーム、まだレベル上げてなかったんだよなぁ」

「じゃあさじゃあさ、この世界を案内してよ!一年経って、変わってるところもあるでしょ?」

「あるにはあるな。じゃあ、そうするか。俺は着替えてくるけど……」

 

そう言って俺は空良の服装を見る。

白と紺を基調に作られたピチッとした服は、空良のボディラインをこれでもかと強調している。

それで上からマントを羽織っているものだから、変な背徳感が…いやいや、何を考えている、俺。

 

「えーと、これじゃ……ダメかな?」

「十中八九、変人かコスプレイヤーとして見られるな」

「あわっ、どうしよう……」

 

変なところで抜けている空良が、手をわたわたさせて慌てる。

俺は少し考えると、こんな提案をした。

 

「俺の服はどうだ?」

「え?」

「ほら、ジャケットやパーカーなら不自然じゃないだろ?ズボンはそのままでも問題は無いし」

 

ズボンはズボンでタイツみたいなので色々と危ないのだが、腰にマントを巻けばファッションにも見えなくはないだろう。女子のファッションには疎いが、まぁなんとかなると信じたい。

 

「あ、じゃあそれする!」

「今日の内容に空良の服の買い物が追加…ってか、こっちをメインにしないとな…」

 

空良はこっちの世界のお金を持っていないだろうから、しばらくは俺持ちか。

途中でコンビニ寄ってお金降ろさないと。

 

「じゃあパーカー持ってくるから、そこで待ってろ。あ、マントは短く折り畳んで腰に巻いとけ」

「わかった!」

 

俺はそう言ってリビングから出て、階段を登った。

……考えてみれば、俺のじゃなくても服なら母さんのがあるじゃないか。問題はサイズだが。

 

ドアノブを捻り、殆ど出入りしていない空き部屋に入る。

戸棚の上に、俺と空良が笑顔でピースしている写真立てがあった。

 

「……まったく、どこに行ってたのかと思えば、異世界とは」

 

そりゃ、どこを探してもいないはずだよ。

お目当てのパーカーを取り出し、独りごちる。

 

しょうがない。

しばらくの間、面倒見てやりますか!

 

 

 

数分後。

 

「じゃっじゃーん!どお?似合ってる?」

「おっ、おう。中々似合ってるぞ」

 

長い髪をポニーテールに結い、少し大きめのパーカーを着て萌え袖になった天使が爆誕した。




おまけ

すかい「すはぁ。フードから仙くんの匂ひがする」

1000「嗅ぐな嗅ぐな恥ずかしい」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。