一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。   作:翠晶 秋

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幼馴染みと水の精霊

 

「とは言っても、無理矢理に住まおうという気はない。わらわにとっては、範囲探索魔法を使える拠点があれば、それでいいからの。たまにしか来んし、えと、ぷら、ぷら……」

「プライベート?」

「そうじゃそれじゃ!……を、邪魔する気はない。どうじゃ?」

「仙くん、ノンちゃんは精霊の中でも腕がいい人で、私の旅も助けてくれたときもあったんだ。私からもお願い」

 

青髪幼女は、岸に上がったリヴァイアサンに跨がってふよふよと浮いている。

リヴァイアサンは地底海にいるときよりもデフォルメされ、ぬいぐるみのような見た目になっていた。

 

ふぅむ…こっちとしては何も損はない。

たまにしか来ないのだから、拠点として許すくらいなら良いだろう。

 

「わかった。我が家をその…範囲探索魔法?の拠点にするのを許します」

「おお、許してくれるか!ありがとうのー、雨風がしのげねば拠点として判定されぬようでの」

「ねぇねぇノンちゃん、範囲探索魔法なんて何に使うの?」

「ああ、それはじゃの、人の世に魔力が溢れても問題がないかの問題で、なるべく人の多いところを────」

 

あっちサイド(異世界組)しかわからない話をし始めたので、解放されたリヴァイアサンの頬をつっつく。

デフォルメされたリヴァイアサンはこちらをチラリと見ると、握手を、否、握ヒレを求めてきた。

 

「え?あ、うん。よろしく」

「おい、リヴァイアサン。はようこっちへ来んか。お前を媒介にするのじゃ、お前が話を聞いておらんと始まらんぞ」

「……お前も大変だな」

 

きゅ、と可愛らしい声で小さく鳴いたリヴァイアサンは涙目でこちらを見つつもノンピュールの方へいってしまった。

……あいつも、苦労してんだな、本当に。

数十分後、話がまとまったらしく、そのまま俺の家に帰ることになった。

リヴァイアサンの悲痛な叫び声なぞ聞いてない。

聞いてないったら聞いてない。

 

 

 

 

「あい。ここが俺んちね」

「ほうほう。お主、良いところに家を建てたの」

「え?」

「世界にはな、何もなくとも魔力を生み出す場所があるのじゃ。わらわたちとはまた違う大陸では、龍脈だのなんだのと呼ばれているらしいがな。この家は、その魔力を生み出す場所にピンポイトで建てられている」

「ウチは先祖代々、神の護衛をしてたらしいし、おかしくはないのかもな」

 

祈里(いのり)家という名前もそこから来たらしい。

神様と縁がある家だから、祈里。

ウチは実はすごいところなのかもしれないなー……。

あるあるだよね。家系すごくても本人はなんら興味ないやつ。

 

「さて、と。魔力の反応を調べるには魔方陣を組む必要があるのでな、庭を定期的に貸してもらうぞ」

「ああ。それくらいなら」

「とは言え、すぐに終わるわけでもないがの」

 

鍵を開けてやれば、とてとてーとノンピュールが家に転がり込む。

空良はさっそくゲームの用意をしている。

そんな気に入ったか、大混戦ぶっとばし兄弟。

 

「ほら、あっちが庭な。あんま騒ぐなよ」

「心得ておるわ。それより、ソラが構って欲しそうじゃぞ」

「仙くん、ゲームしない……?」

「ああはいはい、やるからやるから」

 

テレビの前のソファに座れば、空良がいつものように膝の上に座ってくる。

ノンピュールはリヴァイアサンをひっつかみ、なにやら庭で魔方陣的な物を描いていた。

ゆる〜い空気が流れる。日向ぼっこでもできそうな感じだ。

なんだろうな、この締まりのない感じ。

 

なにか刺激が……。

水の精霊とリヴァイアサン。

せっかくだから今度、みんなで水族館でも行ってみようか。


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