一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。 作:翠晶 秋
「さって昼飯だ!仙、屋上行こうぜ」
「おう、少し待ってくれ」
チャイムの音を聴いて蓮が立ち上がる。
早奈は後で合流するとして……。
「ん?お前購買行かねえの?焼きそばパンが塵と化すぞ?」
「塵と化すかっ。今日は購買は行かない。なぜなら……これだ」
ドンと机の上に置いた黄色い包みを見て、蓮が目を丸くする。
「え、弁当?」
「弁当の方がお得だからな」
「ふぅん、彼女か。へぇ、仙に彼女ねぇ」
「ばっ、おまっ、なんで」
「いや、『弁当の方がお得』なんて仙なら小学校の頃から知ってる上で購買買ってたろ。その仙が購買を止めてお弁当……。なら彼女ができた、それ以外にないっ」
長い付き合いというものを甘く見ていた。
そう、この包みは───
◇───◇
「んじゃ、行ってくるから」
「あっ、待って仙くん。これ」
「ん?これは?」
唐突に玄関先で渡された黄色い包み。
それなりの重量を持っているが……。
「お弁当っ!」
「弁当?」
「うん!その……私たちって、その、恋人……に、なったわけだし」
途端に赤面してもじもじする空良。
かわいい。
「私の中の恋人像って、お弁当作ってあげたりしてるイメージがあって、その」
「……そうか。ありがとう、空良。うれしい」
「ほんと?」
「これ以上にないくらい」
「えへへ。じゃあ仙くんっ」
「ん?」
身を乗り出してくる空良が手を伸ばしてくる。
「ん~~~~……ちゅっ」
◇───◇
「ふっ、はは」
「えっ、何?何があったの?え、ちょ、
「要らねえよ!ほら、早く行くぞ」
さっさと包みを掴んで教室を出る俺に、蓮は困惑したようだった。
「おい、ちょっ、ほんとに何があったんだよ。おい、聴けよ、おいって!」
◇
「……で、それからあんな幸せオーラを漂わせている、と」
「そうなんだよ。どうしたもんかな」
「なーんか既視感が……。あれです。私と付き合い始めた先輩に似てます」
「うわぁ、マジかよ。あんな顔だったのか……」
屋上、隣でガヤガヤとうるさい二人を無視して弁当箱を開ける。
玉子やそぼろで色が付いた……─────ッ!?
「あ、なんか固まりましたよ」
「本当だ。何かあったのかもしれんな。どれ、少し拝見……──────ッ!?」
「え、なんですかなんですか。私も見せてくださ……──────ッ!?」
俺の手元を見て、二人が固まる。
まあ、驚くのも無理はなかろう。
なんせ、弁当箱の中身は……。
「ハートの……お弁当……ッ!!」
「まさか……仙が、まさか、そんな……。俺、信じられねえよ……!」
ハートの弁当なぞ、アニメや漫画の中だけだと思っていた。
空良の愛情が流れ込む。嗚呼、良きかな。
「あぁ、美味しい。まだ食べてないけどこの時点で美味しい」
「仙先輩がおかしくなったーっ!」
「普段そういうの言わない子だからショックがすげえ!」
空良に感謝し、いただきます。
はむ、むぐむぐ……。
「ここまで旨い飯が……あったのか……」
「ダメです!今の仙先輩はいつもの仙先輩じゃない!ボケ担当、いや、ただのポンコツです!」
「今なら俺、空も飛べそう」
「飛ぶな!死ぬぞ!」
空良だけに、空も飛べそうってな。
わぁ~い、全然面白くない!うふふふふ。
と、どこからか戦隊ヒーローのようなBGMが聴こえた。
「どこかで誰かがデレている!」
「糖分感じりゃ駆けつける!」
「「「「「我ら!『リア充
屋上のコンテナから色とりどりのマフラーを巻いた集団が隊を組んで現れた。
……ほう?
「うわ、めんどくさいの来た」
「私たちの時にも来ましたね……」
どうやら顔見知りのようだ。
「
「おうなんだ!」
「貴様から溢れるその糖度!貴様、リア充になったな!?」
「ま、まあ、そりゃ……。ふっ。ふふふっ」
「「「「「リア充爆発せよ!」」」」」
胸元から爆竹を取り出して投げつけてくる5人組。
こんなもの簡単に避けられ……あっ。
「………………」
「くっ。しぶといな」
「………………じゃねえか」
「ん?なんだって?」
「おめえらのせいで弁当ちょっとこぼれたじゃねえか!」
俺の足元にそぼろが少し、こぼれている。
「許さぬ。決して許さぬ。死すら生ぬるい地獄を見せてやろう……」
「えっちょっま」
「空良の弁当を弁償できるのかお前らは!そこに直れ!」
「「「「「ぎゃあああああ!」」」」」
「……仙先輩ってあんなに身体能力ありましたっけ」
「いや……無いと思う……」
もちろん勝った。
空良の弁当のお陰だな。