一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。 作:翠晶 秋
「ぐえ……」
「強……」
「ぼーりょく反対なのです……」
「私たちが負けるなど……」
「あっては、なら、ない……」
山積みになったリア充撲滅隊のの隣で手を払っていると、ふいに屋上のドアが開かれた。
全体的に黒く改造された制服、切り揃えられたふんわりボブカットの黒髪、よく分かんない花の髪飾り……。
「やあ、ここにいたか。探したよ」
「え、なに、新しい人出てきた」
「先輩先輩、これ、私たちジャマですかね?」
「どうだろうな。7:3=ジャマ:ジャマじゃない、くらいじゃないか?」
「む?そうか、昼ごはん中か。必要なら日を改めるが?」
「いや、大丈夫っす。おい、俺はこの先輩と話があるから二人でイチャイチャしとけ」
「「無理くないですかっ!?」」
二人から離れるように先輩を連れていく。
屋上の柵に寄りかかり用件を尋ねた。
「で、探したってなんですか?」
「いや、昨日の話さ」
「結婚式っすか」
「あぁ。まさか、人前で告白をするとは思わなんだ。気まずくなってしまったではないか」
「え、いたんですか!?」
「いたに決まってるだろう。結局霊は現れないし、気まずくて出るタイミングを失ったら軽めの風邪をひくし、まったくどうしてくれる」
「しったこっちゃないですよ」
「ほう?彼女が出来ればそれで良いのか。彼女が出来たら例え世界がほろんでも構わないか。よろしい、それが蛮勇である事を証明するために、手始めにこの街から破壊してみせようか」
「どこの魔神ですか!」
どうやら先輩も『のろけ』という状態異状には思う所があるようだ。
「まぁ、一応礼を言っておくよ。途中で起こったアクシデントも払いのけてくれたようだしな」
「アクシデント?」
「なんかぷよぷよした物が乱入したろう。それが君のポケットから飛び出した何かに弾かれたのをこの目で見たぞ」
「……ナンノコトデセウ」
「下手に取り繕わなくても良いさ。あの場の全員、君の行動は知っていたぞ?むしろ、その反応速度を褒めていたな」
「何者なんだあの家は……!」
もしかして俺、とんでもないのに片足を突っ込んでいたりするのだろうか。
……あ、空良は異世界の勇者だった。
とんでもないのに片足どころか全身浸かってたわ。
「ま、言いたいことはそれだけだ。後はいちゃつくなり結婚するなり好きにするといい。今後とも、我が部活をごひいきに」
そう言って先輩は帰っていってしまった。
てか結婚て……。
気を紛らわすためにカップルに絡もうと振り向くと、案の定というか何というか、既にいちゃつき始めていた。
「はい先輩。あ~ん」
「むぐ。……うむ、美味しい。いつも思うけどさなは料理がうまいよな」
「ふふふ。そうですか?……そっかあ」
「いつも」を強調してさりげなく相手を褒める蓮の手際に関心する。
なるほど、そうやって長続きさせているのか。
勉強になります。
「………………」
「はい、せんぱ~いっ!」
「あ~む……」
ここまでいちゃつかれると逆に困るな。
きっと俺のことは忘れてるだろうから、早く帰ることにしよう。
弁当をかっこみ、しかし味わって食べ終わり立ち上がる。
……?
今、誰かの視線を感じたような……?
また変なことが起きる予感がする。
ノートも朝帰りで帰ってきたし、備えておく必要がありそうだ。
◇
穂織を見渡せる程高い、電波塔を兼ねた時計塔………の、上。
わずかな足場の上で、ポニーテールの髪型の少女は双眼鏡を覗き込んでいた。
「【
少女は首を動かし、今度は
その視線の先、とある住宅街の一つの家には。
せっせと窓ガラスを拭く、髪をおろした黒髪の勇者がいるのだった。
「そして、【
驚き、双眼鏡を落としてしまった少女はがっくりと肩を落とす。
「あの双眼鏡、そこそこ良い値がしたのに……。ま、しょうがないか」
双眼鏡が無いせいで今は見えない勇者の姿を思い、少女は口角を上げた。
「助けてみせるから、待っててよね───お母さん」
そして少女は、ポニーテールの髪をなびかせ、時計塔から飛び降りるのであった。