一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。   作:翠晶 秋

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幼馴染みと新装備

 

巨体が、魔素となって散る。

カラフルな球体が俺の周りを回転した後、そして俺の体内へ吸収された。

……と思ったら、またどこからか球体が現れ、そして体内へ。

 

これが、何回も続いた。

 

今やレベルは57、計算して19回のレベルアップだ。

え、ドラゴン強ない?

空良がいるから短時間で済んだのだろうが、きっと俺一人でやっていたら何時間もかかっていたのだろう。

 

「今のレベルは?なんですか」

「多分57だけど……。間違えてるかもしれないから後で鍛冶屋の人に見てもらうかな」

「っカァー……。弱いなぁ、弱いなぁ!」

 

ホーリが呆れたように言う。

確かに、俺のレベルは未だオレンズ王子にすら届いてない。

鍛冶屋からレベルを聴いたときは驚いた。

 

サーベルも度重なる戦闘で疲労が溜まっているのか、だんだんと切れ味が悪くなっている。

 

「なあ空良、ダンジョンボスを倒したわけだけど、これからどうするんだ?」

「普通のダンジョンは最下層、塔のタイプなら最上層にクリア報酬があるんだけど……ここは初心者のダンジョンだから、そーいうのは無いみたい。帰って装備を整えて、次の難易度のダンジョンに向かうのが最適かな」

「次の難易度?」

「そう。ダンジョンには難易度があって、ここのダンジョンがレベル1。基本的にダンジョンのレベルは4なんだけど、次はレベル2のダンジョンに行こう」

「じゃ、帰るようのポータル起動させますねー」

 

ホーリが奥のパズルを動かすと、部屋の中央に緑色の魔法陣が現れた。

ゲームでよく見るポータルのように回転してらっしゃる。

 

「じゃ、そこに入ってください」

「お、おう……?」

 

空良が先行して飛ぶこむと空良は光に包まれ天井を抜け一直線に地上に戻っていった。

緊張しつつ魔法陣に乗り込むと、視界が光で染まって行き、何かに引っ張られるような感覚とともに俺はダンジョンを脱出していた。

 

 

 

 

「おうおう、これはこれは……。また随分と使い込んだなぁ」

 

鍛冶屋。

レンタルしていたサーベルは(空良の財産で)購入し、それをダンジョンに持っていったのだが、それも大分くたびれ、鍛冶屋のおっさんに苦い顔をされていた。

 

「ここまで使い込んでくれたのはありがたいが、ここまでくると打ち直すことは無理だぞ。刃を付け替えるしか……」

「どうする?仙くん」

「んー……。このままでいいかな。武器に頼りすぎるのも良くないし、それに、空良に負担かけたくないからな」

「そんなこと気にしないで良いのに……。じゃあおじさん、エンチャントだけ変えてくれる?」

「あいよ、じゃあ【鋭利な刃】を抜いて……何にする」

 

おっさんとカタログを覗いている空良を横目にホーリに耳打ちする。

 

「なぁ、エンチャントってなんだ?」

「腕の良い鍛冶屋は武器や鎧に魔法をかける事が出来るんです。基本攻撃力を上げる【鋭利な刃】、魔法の攻撃を連続3回まで反射する【鏡の鱗】など……」

「で、今は……」

「サーベルにもともとエンチャントしてあった【鋭利な刃】を他のエンチャントに変えようとしてるみたいです。ここの鍛冶屋は本当に腕がいい、棚にかけてある武器全部にエンチャントがかかってる……」

 

空良から受け継いだ特徴なのか、ポニーテールを揺らしながら武器や防具を品定めしていくホーリ。

手持ちの無沙汰になった俺も適当に剣がたくさん入った樽を眺めていると……。

 

ドクン。

 

何かに引っ張られる気がした。

体が勝手に反応し、手が吸い寄せられていく。

 

「んで、こいつが切れ味が落ちにくくなる……おい、どうしたセン」

「……仙くん?」

 

数ある剣の中から、一本、すごく気になるというかなんというか……惹かれる剣がある。

剣というか……刀だ。漆黒の鞘に納刀されている。

しかし、それが刀かどうかなど関係がない。

細い布で交差に巻かれた持ち手を掴み、樽から引っこ抜いた時……

 

 

『あなたは呪われてしまった!』

 

 

……は?

 

「「「あちゃ〜、呪われちゃったかぁ……」」」

「いやあちゃ〜じゃないでしょ!?なにこれ!?」

「いや、作ったら呪われてたんだが、なかなかに良い出来だったし取っておいてるんだ」

 

て、手から離れねぇ!

 

「呪いの浄化には大量の魔力がいるしよ……俺じゃたりねぇんだ」

「この中じゃ私が一番魔力が多いかな?仙くんちょっとこっちに」

 

手招きする空良に近づくと、空良は黒刀を挟むように俺に抱きついた。

耳元で空良がこしょりと口を開く。

 

「魔力は心臓に溜められるんだ……だから」

「そ、そうか……」

 

付き合っているのに、未だにこの至近距離はドキドキする。

なにせ、空良はとびきりの美少女だ。

 

「なんか急にイチャつき始めたぞ」

「いつもの事です。休憩中にすきあらばイチャつくんで」

「やっぱあの二人、そういう関係になったか」

「最近なったらしいですよ」

 

外野は無視だ。

しかし一向に手から離れる気配がない。

空良の息も荒くなっている。

 

不意に、空良の抱きしめる力が強まった。

いや、全体重を俺に預け、肩で息をしている。

 

「はぁ、はぁ……ごめんね、仙くん」

「いや、俺の問題だ。謝るのは俺のほうだ」

 

どうやら、勝ったのは呪いの装備らしい。

空良はそのままぐったりと俺に体を預けると、やがてすやすやと眠り出した。

 

「まさか、眠くなるまで魔力を引き出したのか?」

「なんたる根性!娘ながらあっぱれ」

 

眠る空良はそのままに、刀を手放せないかとなんとか頑張る。

手は離せるし、位置も変えられる。

しかし、一定の距離を離れるとどうしても手元に帰ってくる。

空良をホーリに預けて刀を抜くと、出てきたのは黒い刀身。

なまじ切れ味鋭そうなのが腹がたつ。

 

「さすがは自信作、しばらく触れてないのに風化してないな」

「自信作が呪いの装備でいいのか……?」

「いや、ホントは良くねぇが切れ味が良いのは吉だろ。すまねえが、大量の魔力を持った人がボランティアで魔力くれるまで、そいつを使ってくれよ。金はいらねぇから」

「いや、しかしなぁ……」

 

俺が得意だったのはサーベルなわけで。

刀はちゃんと扱えるかどうか……ってかなんでこの世界に刀があるんだよ。

 

というよりも、空良よりも魔力が多い人なんているのか?

だんだん不安になってくるんだが……。

 

「一応、装備は新調できたわけだし、いいんじゃないですか?」

「全然良くねぇよ!?」

 

離れない刀を手にしながら、俺は叫ぶのだった。




ちょくちょく出てくる謎の部活『万術部』のお話、【一年前に結成した万術部が廃部ギリギリな件。】を投稿し始めました。
仙や空良も出る……かも?
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