一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。   作:翠晶 秋

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幼馴染みと別れ

 

仙がその場で眠り出す。

オーバーホールの反動だろう。

空良が駆け寄り脈を測り、元気に脈打つ血管に安堵する。

気がつくと腰が抜け、空良はその場にへたり込んでいた。

残る左腕を右腕の切断部にかざし、魔法を行使していく。

魔力が傷を癒し、右腕が生成される。

心臓が再起し、これで死のタイムリミットはなくなった。

回復魔法は他人から受ける場合本人の任意が無いと失敗する可能性が増えるので仙の傷はわざと癒さなかった。

 

辺りを見渡して、空良はそこに鍛冶屋や仲間の存在を認識した。

死んだオールフィストやその他の魔族の鎧を剥ぎ取り、ホクホク顔だ。

なんという胆力と根性。後にそれが潰されて武器の素材として再利用される日もそう遠くはないだろう。

ノンピュールや聖獣は魔力を欠損部位に補填して傷を再生し、しかし旧劇に減った魔力に顔をしかめた。

 

苦笑しながら、今回の騒動で魔族以外に死者が出なかったことを空良は神に感謝する。

……といっても神すらも知り合いなので複雑な感情であったが。

 

「終わりましたか?お母さん」

「あ、ホーリちゃん!ねえ、ホーリちゃんの言っていた新たな魔王って……」

「ええ、彼の場合がほとんどです。ですので最初に来た時には驚きました。あまりにも平凡。もっと荒れてるかと思ったのに」

 

そう笑うホーリの姿が、一瞬ブレる。

まるで、投影機にバグでも起こったかのように。

自分の手のひらをしげしげと観察し始めたホーリは空を見上げた。

 

「今まで私は、『未来を変える』ことを芯に活動してきました。しかし、どれだけ頑張っても勇者ソラは死んでしまう。でも今回のルートでは生きています。未来が変わり、私はこの時代にいるべき存在ではなくなったのです」

「ちょっと待って!それじゃあ」

「ええ、お別れです」

 

ホーリの身体が粒子状にばらつきだし、やがてその輪郭がぼやけていく。

何がしたいのかもわからない。が、空良は本能で反射的に手を伸ばす。

 

「ホーリちゃん!」

「──────」

 

空良が手を伸ばした時には、既に散り行き、ホーリは存在しないものになっていた。

誰かも知れない人の最期。

しかし、その場にいた獣が、精霊が、名工が、王子が、王が。

その最期に目を離さないでいた。

 

「何か、言っていましたね……」

 

聖なる獣が、口を開く。

 

「そうじゃな。心なしか、センの方を見ていた気がする」

 

精霊が、寝ているセンを見やった。

 

「なんと、言っていたのだろうか……?」

 

王子が、心底疲れた顔で唇を噛む。

 

もし、この場で仙が意識を繋いでいたのなら、職場体験で介護のために読唇術を取得していた仙にはこう見えていたただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さよなら、お父さん』

 

 

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