一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。   作:翠晶 秋

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幼馴染とハロウィーン

 

俺の目の前に、くり抜かれたカボチャが三つ。

そのどれもがでかい。

 

「「「勇者はど〜れだ?」」」

 

……俺は何を試されているのだろうか。

帰ってすぐの玄関先でいきなりカボチャが踊り出したんだが。

右のカボチャは蒼い髪が漏れてるからノンピュールだな、除外。

真ん中のカボチャと左のカボチャは全くもってそっくりだが……。

 

「真ん中のカボチャは毛玉がついてる」

「ええっ!?本当ですか!?……ってあれ?どこにも……」

「引っかかったな、真ん中は聖獣か」

「うえあ!?」

 

てことは。

 

「左のカボチャが空良だ」

「ズルイ!ズルイよ仙くん!」

「これが戦略というものだ。……それよりどうしたんだカボチャなんて被って」

「ふっふっふ……今日はなんの日かな、仙くん?」

「ハロウィーン」

「あ、わかってるんだ……。ごほん。ハロウィーンの事を2人に話したらすごく興味を持たれちゃって。だから」

 

なるほど。

だからカボチャを被ったのか。

……全身包めるほどのカボチャとか知らないけどきっと異世界産だろうから気にしないでおこう。

 

「ソラ、あともう一つ儀式は無かったかの?」

「あぁ、アレですね!」

 

2人ともノリノリなんだなぁ……。

 

「行くよ2人とも!せーのっ!」

「「「とりっくおあとりーと!」」」

 

……予想は出来ていた。

ならば答えはたったの一つ。

 

「……くく……クックック……」

「……あれ?仙くん?」

「ハーッハッハッハッ!!」

 

こうなることは目に見えていた!

準備は万端!

 

「さあ勇者ども!菓子はない、俺にイタズラをしてみるがよい!」

「「「なっ!?」」」

 

前もってお菓子は処分しておいた。

いまこの家に、お菓子は無い!

 

「な、なんて卑劣な手を……」

「諦めるな聖獣!センをここで倒せばお菓子じゃ!」

「いいだろう、俺にイタズラで参らせることができたら買ってやる!」

「悪どい顔をしてるよ仙くん……!」

 

さあさあガキども、少しは楽しませてくれよ!

 

 

 

 

「……喰らえ!」

「甘い!」

 

生卵を投げると言う案は悪くない……だが!

 

「それは偽物だ」

「……ッ!?鏡水晶、ですか!?」

 

生卵をぶつけられた偽物の俺が結晶体になって砕け散る。

 

「ははは、聖獣も大したことないな!」

 

聖獣に背中を向ける。

 

「……すきあり!」

 

べちゃ。

 

「偽物だ」

「!?」

 

 

 

 

「ばあ!」

 

暗い廊下で浮かび上がるノンピュール。

 

「蝋燭はどこで手に入れたんだ?白熱電球だが」

 

蝋燭つかんで顎に押し当てる。

 

「熱っ。あれ、消えた?」

「ふはは、水の精霊が熱源にふれたらそりゃそうなるわな!」

「くっ、熱さはなんともないが暗い!どこに行ったのじゃ!」

 

シュババババ。

 

「お?お?お?何が頭に触れておる?」

「それは俺が去ったら電気をつけてみるといい」

「電気を……?」

 

ふっと耳に息を吹きかけてから去る。

パチリと音がした。

 

「のぉぉおおお!?髪が現代アートになってるのじゃあ!?」

 

俺の手元には下敷きがあった。

ふふふ、雑魚め。

 

 

 

 

……空良はまあ、簡単だよな。

 

「ふにゃあ……」

「チョロすぎて笑いも出ねえ」

 

本人は俺の顔に落書きをしようとしたみたいたが……。

空良は昔から、詰めが甘いんだよなあ。

 

『ふふ……仙くんは……よし、ネムリ草で作った睡眠薬は効いてるみたいだねぇ……』

 

尚、空良は昼食に混ぜようとしたみたいだがハンバーグを切った瞬間に錠剤のようなモノが見え、事前に撤去済み。

 

『……あれ?これなんだろ?カップケーキ?』

『……zzzzz』

『ようやく負けを認めたのかな。まあイタズラは後でいいよね。いただきます……』

 

その瞬間空良は寝た。

警戒心無さすぎワロタ……とも言いたいが、空良は案外、頭が悪いのかもしれない。

 

……勇者を昏睡状態にする薬ってなんだ……。

 

普通の人間に使ったら死ぬんじゃなかろうか。

とりあえず空良の額に『肉』と書き、イタズラ心で『果肉入り』にして一息つく。

 

 

 

 

完全勝利。

 

「ソラ!?ソラ、起きるのです!」

「せ、セン!お主、何をした!」

「睡眠薬ケーキ食わせた」

「睡眠薬ケーキぃ!?」

 

ノンピュールが水を顔に垂らすと、ようやく空良は起きた。

 

「誰にも言うなよ……くく……」

「む、むごいことを……く……くは……」

「なんの果肉が入ってるんでしょう……げ、限界です……」

「え?なになに!?みんなどうしたの?」

 

『果肉入り』

 

ほんともうハロウィーンどころじゃなかった。


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