一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。   作:翠晶 秋

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ifというか別次元の世界線というか……とにかくこれは本編一切関係ありません。


幼馴染みと良い夫婦

 

仙くん───

 

それは、あまりにも衝撃的なセリフだった。

まさか、こんなことになるとは思っていなかった。

だから、この言葉を聞くまで、のんびりとお茶を啜っていた。

 

───私───

 

人は大きな衝撃を受けると時間が止まったように感じるという。

あぁ、たぶん……それは本当のことなんだろうな。

 

───デキちゃったの───

 

 

 

 

「え?」

 

まぁ聞き返すよな。そりゃそうだ。

 

「今なんて?」

「で、デキ、ちゃった。仙くんとの、子供」

 

心臓の鼓動が速くなる。

 

「いや……え?」

「仙くんは……おろしたい?」

「っ……考えさせてくれ」

「うん……」

 

席を立ち、自室へ向かう。

 

空良が、子供を身篭った。

告げられた言葉が、無数の響きとなって反響する。

眩暈でしゃがみこむ。

いや……マジかよ。

 

「どうするべきなんだよ……」

 

痛む頭を抑えて部屋に入り、携帯を棚に立てかける。

あんまりかけたことのない電話番号を入力し、コール。

 

『おお……?もしもし?』

「悪い、父さん。そっちは夜?」

『夜とも昼とも区別つかない感じだな。それでどうした?お前が電話するなんて珍しいじゃないか。しかも画面通話で』

「……こんな形で、しかも普段から連絡取ってないのに言うのもどうかと思ってる。でも、これだけは言いたくて」

『…………言ってみろ』

「子供が、出来たんだ。……いや、孕ませてしまったって方が正しい」

『……なるほど。それで?』

 

は?

それで、とは?

 

『それで、お前はどうしたい?大方その子に、おろすかどうか問われてるんだろ?』

「……うん。俺は……そりゃ……そうしたい」

『でもおろさない』

「うん。一度こうなってしまったら、責任を取るのが男だもんな」

『この状況を招いておいて胸を張れる事じゃないぞ』

「わかってる……」

 

父さんは偉大だ。

怒る時も、叱りつけるのではなく、諭すように怒る。

 

「父さん、お願いがあるんだ」

『ほう?』

「こうなった以上、学校もやめる。日がな一日仕事して、めいっぱい稼ぐ。父さんたちの支援はいらない。けど……」

『…………』

「もしも俺がボロボロになって倒れたら……稼ぎがなくなったら……せめて、その子だけは助けてあげてくれないか」

『……わかった。でも、お前はそれでいいのか?』

「うん」

『本当に?』

「あぁ」

『本心か?』

「良いわけねーだろッ!!」

 

電話の向こうが、張り詰めた空気になるにのを感じた。

 

「そりゃ……そりゃ!学校は辞めたくないよ!楽もしたい!どうせならおろしてぇよでも!!」

『…………』

「俺は……いつまでもそいつのヒーローで……ありたいんだよ……」

『勝手に身ごもらせておいてヒーローか?』

「子供の妄想だよ。好きだからこそ、幸せになってほしいんだ」

『仙。よく考えろ。お前のそれは自己満になっていないか?相手の子がもし、ほかに結婚したい人がいたとしたら?お前は、その子の人生の半分を奪ったことになるんだぞ』

 

重罪だ。

一生労働しても罪は償われない。

 

『いいか仙。お前が言ったことだ、もしものときは面倒をみる。だが……お前の()()()()()()()()()じゃなく、お前は()()()()()()()を考えろ。人生の半分を奪った相手に、どう接するべきか。どう反応するべきか。今のお前に、その子になにかを言う権利はないんだぞ』

「……わかった。ありがとう、父さん」

『おう。……子育ての悩みならいつでも相談しろよ、息子よ』

 

通話が切れた。

天井を仰いで目頭を押さえる。

 

空良に、言わないと。

「責任取る」って。

そう思って、自室から出ようと振り向いたとき……。

 

「あ……」

 

『ドッキリ大成功!』の看板を持った空良と目が合った。

 

「ど……どっきり、だぁいせえいこお…………」

「ど う い う 意 味 か 教 え て も ら お う か」

「ひぇぇぇぇ!!ごめんなさぁぁぁぁいい!!」

 

結構マジで安堵したよ。

後日、父さんは『そんなこったろうと思ったわwwww』と言っていた。

解せぬ。あの覚悟を返せ。

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