一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。 作:翠晶 秋
仙くん───
それは、あまりにも衝撃的なセリフだった。
まさか、こんなことになるとは思っていなかった。
だから、この言葉を聞くまで、のんびりとお茶を啜っていた。
───私───
人は大きな衝撃を受けると時間が止まったように感じるという。
あぁ、たぶん……それは本当のことなんだろうな。
───デキちゃったの───
◇
「え?」
まぁ聞き返すよな。そりゃそうだ。
「今なんて?」
「で、デキ、ちゃった。仙くんとの、子供」
心臓の鼓動が速くなる。
「いや……え?」
「仙くんは……おろしたい?」
「っ……考えさせてくれ」
「うん……」
席を立ち、自室へ向かう。
空良が、子供を身篭った。
告げられた言葉が、無数の響きとなって反響する。
眩暈でしゃがみこむ。
いや……マジかよ。
「どうするべきなんだよ……」
痛む頭を抑えて部屋に入り、携帯を棚に立てかける。
あんまりかけたことのない電話番号を入力し、コール。
『おお……?もしもし?』
「悪い、父さん。そっちは夜?」
『夜とも昼とも区別つかない感じだな。それでどうした?お前が電話するなんて珍しいじゃないか。しかも画面通話で』
「……こんな形で、しかも普段から連絡取ってないのに言うのもどうかと思ってる。でも、これだけは言いたくて」
『…………言ってみろ』
「子供が、出来たんだ。……いや、孕ませてしまったって方が正しい」
『……なるほど。それで?』
は?
それで、とは?
『それで、お前はどうしたい?大方その子に、おろすかどうか問われてるんだろ?』
「……うん。俺は……そりゃ……そうしたい」
『でもおろさない』
「うん。一度こうなってしまったら、責任を取るのが男だもんな」
『この状況を招いておいて胸を張れる事じゃないぞ』
「わかってる……」
父さんは偉大だ。
怒る時も、叱りつけるのではなく、諭すように怒る。
「父さん、お願いがあるんだ」
『ほう?』
「こうなった以上、学校もやめる。日がな一日仕事して、めいっぱい稼ぐ。父さんたちの支援はいらない。けど……」
『…………』
「もしも俺がボロボロになって倒れたら……稼ぎがなくなったら……せめて、その子だけは助けてあげてくれないか」
『……わかった。でも、お前はそれでいいのか?』
「うん」
『本当に?』
「あぁ」
『本心か?』
「良いわけねーだろッ!!」
電話の向こうが、張り詰めた空気になるにのを感じた。
「そりゃ……そりゃ!学校は辞めたくないよ!楽もしたい!どうせならおろしてぇよでも!!」
『…………』
「俺は……いつまでもそいつのヒーローで……ありたいんだよ……」
『勝手に身ごもらせておいてヒーローか?』
「子供の妄想だよ。好きだからこそ、幸せになってほしいんだ」
『仙。よく考えろ。お前のそれは自己満になっていないか?相手の子がもし、ほかに結婚したい人がいたとしたら?お前は、その子の人生の半分を奪ったことになるんだぞ』
重罪だ。
一生労働しても罪は償われない。
『いいか仙。お前が言ったことだ、もしものときは面倒をみる。だが……お前の
「……わかった。ありがとう、父さん」
『おう。……子育ての悩みならいつでも相談しろよ、息子よ』
通話が切れた。
天井を仰いで目頭を押さえる。
空良に、言わないと。
「責任取る」って。
そう思って、自室から出ようと振り向いたとき……。
「あ……」
『ドッキリ大成功!』の看板を持った空良と目が合った。
「ど……どっきり、だぁいせえいこお…………」
「ど う い う 意 味 か 教 え て も ら お う か」
「ひぇぇぇぇ!!ごめんなさぁぁぁぁいい!!」
結構マジで安堵したよ。
後日、父さんは『そんなこったろうと思ったわwwww』と言っていた。
解せぬ。あの覚悟を返せ。