ネイ「アシスタントのネイです」
グリーフィア「同じく、アシスタントのグリーフィアよぉ。……で、やけに時間空いたじゃない?作者さん」
正月気分が続いていたと思ってください(^o^)EPISODE8になります。はい
ネイ「えっと、前はハジメさんにそっくりな人が出てきたんですよね。前のSSRでは光でしたが……というか、ハジメさんは停止した状態で、ジャンヌお嬢様に変なことしませんよね?」
しないだろうって。ていうかその言い方私だとしそうなこと確定みたいじゃないですか(´・ω・`)
グリーフィア「え、確定演出じゃないの?」
確定演出はスマホゲーのガチャで十分!(;゚Д゚)では本編どうぞ(´・ω・`)
『やぁやぁ。驚いているようだね』
目の前にいる自分は、飄々として自分に問いかけてくる。物が掴めない、時間が自分以外静止している。わけの分からない現象のシメに、これが来ている。普通の人間が混乱するのは当たり前だ。
それを目にしているハジメは、声を上げることなく、静観していた。しかし、決して冷静に見ているわけではない。ただただ、何を言えばいいのか分からなくなっていたのだ。
記憶があれば、もしくは他に誰かいたのなら何やら色々言えたかもしれないこの状況。静まり返る昇降口でその沈黙を破ったのは、話しかけてきた方のハジメだった。
『あぁ、言っておくけど、オレは別にお前自身ってわけじゃあない。話しやすいように君の姿を少し借りているだけだ。髪色も少し違うだろう?けど、逆にそのせいでお前は話しづらいみたいだな……これは失敗』
しかし自分の姿を借りたというその人物の言葉でも、ハジメは理解できなかった。次々と情報が流れ込み過ぎて、今のハジメの頭では理解しきれていない。それを悟ってか、ハジメそっくりの白髪の青年はため息をつくととあることを口にする。
『まぁ、仕方がない。ならこれだけ伝えて、オレはここから去ろう。……君は彼女を……ジャンヌ・ファーフニルを……
「え……」
一瞬何を言われたのか、分からなかった。同じ言葉であることは理解できたが、ニュアンスの違いが理解できなかったのだ。
お嬢様を……まもりたい?それはもちろん、まもりたい。だけど、その2つのまもりたいって、一体どういう意味が……?
そっくり人間からの問いかけに考えようとするハジメ。しかし、再び視界が揺らぐ。まるで、深い眠りから目を覚ますときのまどろみのように。最後にその人物は言った。
『時間は少ない。だが、それでもお前は見つけなくちゃいけない。オレが……いや、オレ達が歩き出す、為には……』
そこで、言葉が途切れた。
その夜、ハジメはベッドに横になって考え込んでいた。今ハジメがいるのは、ファーフニル家の屋敷の一室で、住み込みの使用人が使用する「サポーターズ・エリア」と呼ばれている建物だ。ハジメがジャンヌの従者と決まった際、建物にあるこの一室「黒龍の間」があてがわれることとなったのだ。
長年使われていなかったそうだが、意外にも部屋は綺麗だった。更に屋敷の部屋の中でも、ジャンヌの部屋からも近いということで当時放心状態のジャンヌに許可をもらい、ここが自室となった次第だ。
ファーフニル家の財力を知るのに申し分ないほどの、良質な部屋とインテリアが周りを囲んでいたが、記憶がないハジメにとっては、自分が暮らす部屋という以上にそれ以上の感情を持っていなかった。いや、持てなかった。そして、今のハジメはそれすらも曖昧な状況で、天井を見上げていた。
(まもりたい…………マモリタイ…………)
今日の放課後の一幕が蘇る。結局、それを問いただす前に、ハジメはあの不思議な空間から元のこの現実に戻って、というより引き戻されていた。気付いた時にはジャンヌの声が、自分のすぐ横に顔を近づけていたレイアの向こう側から飛んできており、また叱られてしまっていた。
その時は考え事をしていたということで切り抜けたが、ネアから念には念を、ということで夕食後は自由時間をもらった。またジャンヌはレイアとの距離が近いということで、レイアと別れてからは終始不機嫌状態でもあった。夕食中もやたらと視線が痛かったのを覚えている。
「…………よし」
このままにしておけば、また問題を起こすのは間違いない。ベッドから勢いよく体を起こしたハジメは、部屋を出る。そしてすぐ、屋敷のとある場所を目指す。何人かの同じ使用人達とすれ違い、途中用件を聞かれ、目的を伝えつつ着いた場所……。その部屋の前にいた自分の上司たる人物に、声を掛ける。
「フォーン様」
「……ハジメか。どうした」
仕事を休みにしてもらい、部屋で過ごしているはずの人物が現れたことを不信に思ったフォーンは、緊張気味の従者に用件を問う。
「いえ……少し相談したいことが……」
「……それは、今必要なことか」
凄まじい圧を体に感じる。それも当然、フォーンはハジメを家に入れることを反対していた人物の1人であった。お嬢様の傍にいるからこそ、更に疑惑の目を光らせているのは当然の事であった。
しかし、ハジメもそれは重々承知だった。それにハジメは、上司である彼からも聞きたかった。自分の中で芽生えた「疑問」について、その答えを。だから、ハジメはそれを言葉にした。
「はい。出来れば、ご当主にも聞きたいことです」
「……………。……………分かった」
しばし顎に手を当て、要望者の目をじっくりと見て考えていたファーフニル家当主の従者。だが、その答えとして首を縦に振ると、ファーフニル家当主のいる執務室の扉を開き、彼を当主の待つ部屋へと案内する。
「いやはや、まさか君が私に相談に来るとはね……。あぁ、座ってくれて構わないよ」
「はい。失礼します」
部屋に入り、主であるガンド・ファーフニルからの勧めを受けてソファーに下座の位置に座るハジメ。ガンドは机に広げていた何かの資料をしまい、フォーンは2人に飲み物を出す準備をする。
ここが、自分が働かせてもらっている少女の親の部屋……、と思っていると、ガンドが反対側の上座の位置に腰かける。今は軍人らしさを感じさせるドラグディア軍の制服ではなく、部屋着でありながら当主としての威厳を損なわないデザインのシャツとスラックスを着用していた。服だけでこうも印象が変わって見えるのはとても不思議だ。これから話すことは最初に当主と話した時と同じくらい、緊張することであるがそれでも話しづらさは軽減されているように感じた。
フォーンの淹れた紅茶と、お茶菓子として出されたアップルパイが机に並べられる。彼が座ったのを見計らって、カップの紅茶を一口含んでからガンドが口を開く。
「それで、相談というのは……」
根本的な問題の提示を要求され、ハジメは相談の内容を説明し出す。
「はい。ご当主と、その従者であるフォーン様に
ハジメの質問はシンプルかつ、答えの難しい内容だった。それを聞いたガンド達も、思わず目を丸くし、互いに顔を見合わせる。ハジメは紅茶の入ったカップを手に取り、その水面に顔を向けつつ話を続ける。
「
そこまで言って、ハジメは恐る恐る顔を上げる。ハジメが見た、2人の顔は様々だ。どちらも何か言いたげなのは共通している。しかし、ガンドが目を閉じながらも口元を緩めているのに対し、フォーンは口を固く閉ざすも、ハジメの胸元近くをジッと見ている。
2人の反応を、怯えた様子でそわそわしながら待っているとファーフニル家の当主が口を開く。
「ふぅ……まさか、そう来るとは、ねぇ。けれども……ジャンヌのあの心変わりも含めてなら、それは当然か。フッ」
その口からは、ハジメのその言葉で、どこか納得したようなものを感じさせた。てっきり怒られるものかと思っていたハジメは、自らを家に入れてくれた当主の反応に呆然とする。一方、上司であるフォーンはというと、先程と同じく表情をこわばらせた状態のままだ。強いて言うなら、一度当主の方に目を向けて、またこちらに視線を戻したくらいだろう。だが、その目つきは何か言いたそうなものであった。
しばし考えた様子をしたガンドが、再びその口を開く。
「そうだな…………まず、その二つのまもる、の違いだが……大体、意味は一緒だね。ただ、あえて違いを言うなら、度合い、と言うのかな」
「度合い……」
何とか知恵を振り絞るようにして、右手に持ったペンを反対の手で取ったメモ帳に書き込む。書き終わって、こちらに見せたメモ帳に書かれていたのは「守る」の字だ。
「こっちの守る、はよく使われている一般的なものだ。こちらは普段から大事にしている物に対して使われている……ような気がするね」
当主も確証はないけど、と両手を少し上げる。メモ帳を再び自らの方に戻すと、今度は「護る」の字を書いて、それを見せて語る。
「で、こっちの護る、だけど……こっちは特別大事にするものに対して使っている印象があるね」
「特別、大事に……」
ハジメはガンドの言葉を復唱し、手元を見る。何も握ってはいないが、あるないの話ではない。それの行動が自分に出来るのだろうか、という不安。そして記憶のない自分が、そこまで深くあのお嬢様を
ハジメの考え込む様子を見て、ガンドは咳ばらいをして注意を向ける。ハジメもそれに気づき、慌てて視線を戻したところで、ガンドがファーフニル家の当主として発言する。
「それで、ハジメ君。君がどうすればいいか、だが……それは君が決めることだ」
「は……?あ、いや……」
思わず、困惑の声が漏れる。フォーンが不満の目線を向け、失礼だと密にメッセージを送る。慌ててハジメも謝罪しようとするが、それをガンドは制止する。
「構わないよ。君に対しては少し難しい質問だっただろう。正確に言うなら、君がどちらのまもるでも、私達がそれを見てどう思っているか判断しているかに掛かっている、と言うことだよ」
紅茶を一口含み、喉を潤わせる当主。それに倣い、フォーンとハジメも同じく口に含む。一連の流れを見てから、ガンドは口を動かす。
「君が娘を守る、または護る、の判断をするかどうかを、私は求めていない。もちろん、そういった仕事を任せているのだから、そのどちらかはしなければならない。だけど、そのまもる度合いに関して、それはあまり私としては気にしていないんだ。大抵他のこのような家だと、あまり娘に変な男を近づけたくない、って声はよく聞くが、私は娘の意見を尊重したい。特に今回は、珍しく男嫌いの娘が男を入れたから、それにこっちは驚かされているくらいだからね」
「………………」
意外だ。お嬢様は、男を嫌っているだなんて。……なら、何で自分を……。けど、それ以上に守るか護るの判断は、自分が決める物、だなんて……。
どちらを選ぶべきか、という質問に対しそれを決めるのは自分だ、と返されたことで更に自分自身が、2つの判断の間でぐるぐると彷徨うのを感じる。ハジメを段々と息が辛くなっていく感覚が襲う。
と、そこで当主は気難しそうにするハジメに提案した。
「ま、その答えを出す前に、そのアップルパイでも食べなさい」
「あ……えと……」
「いいから」
命令口調ではあったが、声音にはそれに付属する怖さはなかった。どこか安心する感覚を感じながら、ハジメはその言葉に従ってアップルパイを一口。
「…………おいしい」
「……!」
自然と口から称賛の言葉が出る。その言葉を聞いて、フォーンも少し驚いた様子を見せる。彼らの様子を見て、ニヤリと笑みを浮かべるガンドは、更にハジメにアップルパイの感想を詳細に要求する。
「どんなおいしさだ?」
「……見た目は普通に、記憶にあるアップルパイです。それより少し形がしっかりしてないかなっていう所はあるけど……でも、素材の良さもあるんでしょうが、ちょうどいい甘さっていうか、自分はこの味、好きです」
本当に、そのような感想だった。前からこの味を知っていた、などではない。けれど、まるで自分の好みに合わせたかのような味に、ハジメは記憶を失ってから、初めて自らの舌鼓を自然に打つ料理に会ったと思った。
一方ハジメの感想を聞いていた2人の反応だが、ガンドは顔を下に向け口を手で塞いで笑いを堪え、フォーンは天を見上げる形で眉間に手を当てている。何とも不思議な光景で、これもまたドラグディア固有の様式なのかと疑う。
「どうされましたか?」
気になったので声を掛けてみる。すると、笑いを堪えていたガンドが顔を上げ、苦笑交じりでハジメの口にしたアップルパイについて話す。
「いや…………それを作ったのな、ジャンヌだ」
「……え、そうなんですか……」
わずかに目を見開いて、当主の顔から再びアップルパイに視線を落とす。自然と頭の中で、邪険に扱う様子のジャンヌの顔が思い浮かぶ。その表情と、このアップルパイの味は、あまりにも想像にかけ離れすぎていて、本当かどうか疑いたくなる。
しかし、同時に否定することも出来なかった。このアップルパイがおいしいことと、それがとても自分好みであることを。まじまじとアップルパイを見るハジメ。それを面白がりつつも、話を戻すガンド。
「……で、アップルパイの件も考慮に含めても構わないのだが、結局のところハジメ君。君は私の娘のジャンヌを守りたいかな、それとも、護りたいかな」
「…………俺は……護りたい、です」
一人称が変わっているのにも気付かず、そして迷わず当主が机に置いていたメモの紙に書かれていた「守る」と「護る」の内、「護る」を選ぶ。そして、その理由を口にする。
「お嬢様は命の恩人です。そのお嬢様が俺をどう思おうとも、俺は構わない。むしろ、俺はお嬢様に従うまでです。けど、俺はお嬢様の事を全く知らなかった。お嬢様が男を嫌っていることや、アップルパイを作ることも。他にも知らないことが沢山あるのなら、俺はもっとお嬢様の事を知ろうと思いました。俺が、お嬢様を護れるようになるために……」
そこで、自分の失言に気づき、立ち上がって謝罪する。
「す、すみません…………当主の前で、俺だなんて……」
しかし、当主に向かって向けられた謝罪は、その当主の隣に座っていた上司のフォーンが変わって返した。
「まぁ、本来なら私が止めるべきだっただろうな。……ただ、そこから来る意見がどのようなものか、それを見たかったというのが私の考えだ。―――流石に、アップルパイの感想は予想外すぎたがな」
「それは言えているな。ジャンヌが聞いたらどんな反応するか……」
2人の会話に若干付いて行けずにいたハジメ。それどころか、自分の意見に対する言葉も聞けていない。だが、それも忘れずにハジメの言葉に2人の答えが返ってくる。
「それで、貴様の言葉に関してだが……なら、ぼーっとしたりするな。もっとしっかりとしなければ、ジャンヌお嬢様には付いて行けない」
「実際、私も親なのに分からず屋と言われる始末だからな。だから、私から言えるのは1つだ。……頑張れ。あの子が認めたんだ、君なら出来ると、私は思う」
「……ありがとうございます」
ハジメは深々と頭を下げる。ハジメなりの今出来る精一杯の、感謝の気持ちの表現だった。しかしそれは当主の言葉で終了された。
「はは、もう大丈夫だよ。しかし、まさか
「……あまり昔の話は掘り返さないでもらいたいです、当主。私はあなたと、クリエ様を賭けて死闘したことなど……」
「俺は死闘とか、そこまでは言ってないぞ?」
「…………ガンド…………」
変わって、2人の個人的な話が展開され始める。「昔の自分」、「クリエ様を賭けて死闘」など、かなり物騒な言葉が飛び交う。挙句の果てに、自分の上司であるフォーンが仕えるべき対象であるガンドを睨み付けながら呼び捨てにする姿に、ハジメも背筋がゾッとする。
流石にこれ以上は、と思ったハジメは自らが招いた事態に責任を感じ、話を終わらせるように流れを運ぶ。
「す、すみません。そろそろ時間も時間ですので…………」
「ん?……あぁ、すまない。少しやり過ぎるところだったな」
「そうだな。これ以上はお前の前でやるのは色々と問題だ。止めてくれて、礼を言う」
「いえ、大丈夫です」
何とか当主と上司の対立を止められたことに安堵する。残っていた紅茶とアップルパイを平らげると、ハジメは席を立ち、礼を言う。
「今日は突然の訪問ながら、ありがとうございました」
「いやいや、とんでもない。こちらとしても、楽しい時間を過ごさせてもらった。またいずれ話そう」
「はい、では失礼します」
一礼したのち、ハジメは部屋から退室する。体は未だ緊張感が残り、疲れが再度蓄積しているように思えたが、気持ちは軽くなったように感じる。
(頑張れ、か。……はい、頑張ります)
心の中でガンドの言葉にそう返すと、ハジメは自室への道を戻っていった。
◆
「……しかし、本当に驚いたな、あれは」
ハジメが当主であるガンドの部屋の前から去った直後、ガンドはそのように発言する。当主である自分に、彼から質問が来る可能性はあるとは考えてはいた。しかし、それはジャンヌの態度に呆れて仕事を辞めたい、もしくは変わりたいという趣旨の質問くらいしか考えておらず、それ以外には竜人族独自の文化くらいのものだろうと考えていた。
それ以外でも、ドラグディア軍関連の話が飛んで来ようものなら、間違いなく自分は彼を拘束していた。だがそれらとは予想外の方向から飛んできた質問に、ガンドも聴いた直後は動揺を隠すのと、考えを巡らせるために、目を閉じて彼を視界から外したほどだ。
(しかし、この轟竜騎士と称される俺が、彼に質問1つで悩まされるとは……。見どころがあるな)
しかし、それは屈辱などではなく、むしろ反対の気持ちを湧き上がらせていた。もし、彼のような戦士と戦ったら、彼が戦士であるのなら、一体どのような戦いをするのか。叶わぬことと思いながら、ガンドは彼に期待を感じさせられていた。
一方、それは傍で同じく聞いていたフォーンも感じ方は違うが概ね同じであった。
「キザなところが目立ち過ぎるとは思いますね。ただ、不意を突かれたのは間違いないかと思います。……おまけに、「あの話」を止めたのも結果的にアイツだ」
「そうだな。まさかお前が「あの話」を、ついこの間出会って部下になった記憶喪失の人の前で話すとは……。関係者一同集まってもあんまり話したがらないってのにな」
「……見事にかき乱された。あれで狙っていないのが、非常に腹が立つ」
悔しそうに拳を握った右手を見るフォーン。その口調は完全にかつての物となっており、粗暴さが出ている。久々にフォーンとあのような掛け合いをしたが、それだけ彼の存在が新鮮だったのかもしれない。
いずれにせよ、彼も色々と抱えているみたいだ。フォーンには、監視も兼ねてちゃんと接してもらわないとな。彼のその質問をした理由も、出来れば訊きたいところだが……果たして訊けるかどうか……。
ハジメへの期待と心配、そして疑念を感じつつも彼の上司という立場であるフォーンに、フォローを要請する。
「それを今後防ぐためにも彼の指導、頼むよ」
「…………かしこまりました」
荒んでいた精神をリセットし、普段の冷徹にも近い涼しい顔に戻したフォーンは、机の上を片付けていく。食器とメモのゴミをどかし、台拭きで机を清潔にする。
その間にガンドは、茶菓子として出したアップルパイの事について思い出す。ジャンヌが今日、学校から帰ってきてから作ったアップルパイだ。
娘は趣味としてよく作っているのだが、早いうちに食べた方が良い、ということから自分の分以外は食べたい人が食べてくれて構わないといつも伝えられている。先程食べたのは夜食の為にと、この自室に持ってきていたものだった。
普段ガンドは自室での仕事終了後、甘いものを食べるのが日課となっている。今日はたまたま娘がアップルパイを作っていたので、こちらを自室の方に持ってきていた。そして仕事が終了した直後、本当にたまたまハジメが部屋を訪問したので、ちょうど良いと思いフォーンにそれを持ってこさせた。
ジャンヌの作るアップルパイには少し癖があった。ハジメも言っていたが、まず焼き方にムラが出来る。サクサクさもパイの美味しさの1つであり、屋敷の者も焼き方について娘にレクチャーしている姿も時々見る。
そしてもう1つは甘さだ。ジャンヌは甘党の部類に入るためか、砂糖を通常より多く入れているらしく、ガンドはブラックのコーヒーと合わせて頂いていた。だが、ハジメはそれも知らずに、コーヒーは飲む前に砂糖とミルクを入れていた。その上で、アップルパイを食した姿を見た時、あまりの甘さに声が出るだろうと思った。しかし、ハジメの実際の声は違っていた。
ハジメが甘党ならあり得なくもない話だ。だが、これまでの事を思い返すと、ひょっとして……という気が起きなくもない。自分と娘がガンダムを見て、その直後に記憶喪失かつ種族の分からない青年が現れる。事実は小説よりも奇なりとは言うが、もし本当なら彼はガンダムがもたらした、何かの予兆なのだろうか。
ガンドは机の方を見やる。仕事机として利用しているそれの上には、極秘と書かれた資料が置かれていた。その文字の少し上には、資料の名前が記されている。その名は―――
『マキナス領内の遺跡における爆発事故と、漆黒のガンダムとの関係性』
NEXT EPISODE
今回もお読みいただきありがとうございます。
ネイ「ガンドさんの言葉もそうですけど、ハジメさんの決意が何だかこう……ロマンチックといいますか……」
グリーフィア「初々しいって感じはしたわねぇ。けど、それだけじゃあ、こういう役回りは難しいと思うわね。次でヘマしなきゃいいけれど」
あ、もう最初の方は触れないんですね(´・ω・`)
ネイ「いや、確かになんか不安はあるんですが……今思うとこれフラグになりつつある気がしないでもないですね」
グリーフィア「これは次の話は事件かしらねぇ……」
ソンナコトナイヨー、キノセイダヨー...("= =) トオイメ
さて、それでは今回はここまで。ちなみに黒の館こと設定資料集はこの節が終わったあたりに出しますので。
グリーフィア「それじゃあ、次回もよろしくねぇ。ばいばーい!」