機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、皆様。仮面ライダーの映画に行きたいと思っている、藤和木 士です(´・ω・`)

ジャンヌ「これガンダムの作品ですよ。何言ってるんですか。どうも、皆様。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよ。藤和木も仮面ライダーに憧れるんだねぇ」

いや、そら私も仮面ライダー好きな時あったし、最近もカムバックしてるし。というか等身大ガンダムって実際の所ライダーとかを参考にするところも……

ジャンヌ「はいはいメタいです」

(´・ω・`)ではEPISODE9公開です。今思ったけどこの話数表記、ユニコーンみたいだな?

レイ「自分で決めたんじゃん……」

いや、前が話だったから変えたって単純な理由なんだけどね。さて、先週はハジメ君がファーフニル家当主ガンドからありがたいお話聞いたところだね。

ジャンヌ「初々しい感じで何だか目をそらしてしまいそうになりますね、ハジメさんは」

レイ「でも最後の方が……嫌な感じを思わせるっていうか……前のネイの言葉みたいにフラグ?」

さてさて、それは今回の話で分かるかなーワカルカナー……ではどうぞ。


EPISODE9 ハジメテノ3

 

 

 ハジメがファーフニル家当主・ガンドに相談してから3日後。休日を挟み、ハジメはすっかり体力を回復していた。ファーフニル家での朝は、7時から朝食を頂くことになっている。ただし、ファーフニル家で雇われる身の者は、この時間より30分前に朝食を終え、一家の朝食を用意することが1日の流れであるのが基本だ。

 唯一、ハジメだけは慣れるまではファーフニル家の家族らと共に朝食を取ることが許されていた。これはファーフニル家の婦人、クリエ・ファーフニルからの提案であり、最初の内はみんなで楽しく食べようという意向から許可されていた。

 ただし、これは昨日の朝食で最後になっており、今日からは他の従者達と同じ時間帯での起床だ。だから、油断していたのだろう。今日もまた同じだと。その結果……。

 

「…………あ」

 

 目を覚ました時には、既に時計の針は7時をとうに過ぎ、今や30分を超える事態となっていたのだ。そう、完全な遅刻状態であったのだ。

 

 

「すみません。完全に遅れました……」

 

「……何でそうなった」

 

 朝食を仕切った使用人の先輩に問われる。状況を整理すると、今ハジメは1人ダイニングにて、食べるはずだった朝食のパンを手早く口に放り込んでいる。その横で先輩使用人が状況を聞いているという光景だ。ちなみに、食べながらでもいいから、と言われたためお言葉に甘えさせてもらっている。

 口に入れたパンを噛まずに、そのままコップに入れた牛乳で無理矢理流し込む。口の中が空っぽになったところで、ハジメは先の質問に答える。

 

「簡単に言うと、時計が壊れていました」

 

「はぁ!?そんな都合よく!?」

 

 先輩も声を荒げる。疑いたくなるのも納得できる。傍から見れば、言い訳をして逃れようとしているように見えるだろう。だが、事実そうなのである。

 

「なら、見てみますか。修理をお願いする為に持ってきたんですが」

 

 軽く足元に置いていた目覚まし時計を先輩に差し出す。電波で時間を設定するタイプの目覚まし時計だが、時間を示す液晶はすっかり黒く塗りつぶされ映らなくなっていた。

 

「……あぁ、本当だ。けど、これって確かご当主が少し前に初期不良ってことでメーカーに交換してもらった奴を、お前用にって渡したやつだろう?」

 

「だから自分も不思議に思っているんです。また初期不良の物を渡した、とは思えませんがとにかく新しいのをお願いします。流石にそろそろ出ないと、学校の方まで寝坊になるので……」

 

「分かった。とりあえず事情は把握したが、お嬢様にはしっかり謝っておけよ。今日はフォーン様も都合でお嬢様達と一緒には行っていないようだし、早めに追いつけー」

 

 先輩からの声を背に、ハジメは立ち上がってカバンを持つ。忘れ物が無いかを確認したのち、了解の返事をする。

 

「分かっています。それでは、失礼します」

 

 直後すぐに部屋を出て、玄関にまで着く。その最中、クリエにも声を掛けられ、事情を説明すると「それは災難だったわねぇ」と言われ同情を受けつつ、見送られる。家の門を抜けると、ハジメはすぐに走り出す。歩いていたら間に合わないかもしれない。となれば走るのは必然だった。すぐにハジメは学校に向け、全力疾走でいつもの道を走り抜けていった。

 

 

 

 

「……っ……っ……間に合った……」

 

 教室に着き、自分の席へと座り込むハジメ。何とか朝礼の時間前には教室の席に座ることが出来た。すると、その姿を見つけた同級生が声を掛けてくる。

 

「おう、どうした、そんなに息切らせて。寝坊でもしたか?」

 

 何とも鋭い感だろうか。調子に乗った様子で話しかけてきた男装のクラスメイトは、的確にその原因を言い当ててきた。無理に隠す必要もないので、まさにその通りであることを聞かせる。

 

「…………ひょっとして預言者?」

 

「……マジでか。ファーフニル家の従者が遅刻っていいのか?」

 

「いいと思う?」

 

 息を整える間もなく、飛んできた質問にそう切り返す。しばしの間、思案したクラスメイトは、こちらに顔を向け直すと、笑顔で答えを言う。

 

「あぁ、だからか。何でそうなったのさ」

 

「なんか、目覚まし時計が壊れていた。ついこの間交換してもらった物らしいのに、また同じ理由だと思うけど……」

 

「あーあ……こりゃ不吉な予感だねぇ。今日は運勢悪いかもな」

 

 憐れむように会話をするクラスメイト。そして、そのタイミングでチャイムが鳴る。朝礼の時間だ。クラスメイトもすぐに別れを告げると、自分の席に戻る。担任が教室に入ってきて、出欠を取り始める。

 そこでふと、ジャンヌ達の事が頭に浮かぶ。

 

(そういえば、お嬢様達見かけなかったな)

 

 今朝来る途中、一度もジャンヌ達の姿を見ていなかったのだ。学校までのルートで会うと思っていたのだが、時間が時間なのでもしかすると先に学校に着いていたのだろうか。こちらに来る前に確かめておけば良かったと思いながらも、次の休み時間でいいだろうと判断する。

 そういえば、今日はやたらと警察が街を巡回していたような気がする。とはいえ警察があれだけいれば、街での犯罪も起きづらいだろう。おそらく、お嬢様達もそれは知っているはずだ。彼女は不吉と言っていたが、どうやら心配しなくてもよさそうだ。

 まさか、と思ったハジメだったが朝の街の様子を振り返り、あるわけがないと意識を目の前の現状に戻す。朝礼が終了した頃には、帰りに念のため、以前休日に立ち寄った、やたらと特徴的で聞き続けるのもおっくうになっていく音楽を流す時計店で、目覚まし時計でも買って帰ろうと考えるようになっていた。

 

だからだろうか。「それ」を聞いた時、自分の考えの前提が違っていたことを後悔したのは。そして、選んだのだろうか。あの時立ち上がり、全てを失ってでも彼女を助けようとしたのは。記憶を失う前の自分が、かつて選ばなかった決断を選んだのは。

 

 

 

 

 異変は、1時間目の授業が始まって半分を過ぎた頃だった。授業中の教室内は担任の声とチョークで黒板に書く時の音以外、ほぼ聞こえないと言っていいほどの静けさが支配したいた。それを、教室の黒板側にある扉が、乱雑に開かれた。

 

「すみません、ちょっといいですかっ」

 

 突如破られた静けさに、クラスメイトはおろか先生も驚きのあまり顔を向ける。扉を開けたのは、黒髪を同色のゴムでツーサイドにまとめた少女、ジャンヌの友人であるノーヴェ・リントヴルンであった。だがその顔色はいつものような余裕はなく、代わりに急を要するような、焦りのある顔だ。

 彼女は入ってそう言うなり、教師の了解を待たず真っ直ぐにこちらに向かってくる。そしてハジメの席の所まで来て、それを聞かれた。

 

「ハジメ、ジャンヌ達はどうしたの?」

 

「……どういう、ことです」

 

 その会話で、2人とも表情を変化させる。聞かれたハジメは表情を変えず、しかし目をわずかに見開かせ、口がわずかに開いていく。反対にノーヴェの方は目を閉じ、唇を震わせていた。だが、それも一瞬だ。

 再び目を開けたノーヴェが、ハジメの手首を強引に掴む。教室の各所から驚きの声が飛ぶ中、ノーヴェは一言。

 

「来て。ここじゃ無理」

 

 反論を聞かず、強引に教室の外へと連れ出す。だが、ハジメもあまりに急すぎたために力が入らなかったことと、状況を理解したことから抵抗はせず、彼女の力に任せて、同じく教室を引っ張られる形で出る。クラスメイト達が困惑する中、ハジメはノーヴェと教師数名らと共に教室を後にする。

 

 

 ノーヴェに連れられてやって来たのは、教員室近くの空き教室だった。だが、空き教室と呼ばれていたそこには、今では多数の竜人族の人々が出入りを繰り返している。教員らに交じり、会話をするスーツ姿の大人達。教室の前では青い帽子をかぶった人物が、見張りのように人物の出入りを確認する。

 雰囲気で分かる。教師たちと話しているのが、警察であることを。この時点で嫌な予感がし出す。そして、それを決定づけるファクターが、空き教室のドアを潜ってやって来た。

 

「失礼します……ハジメ!!」

 

「ご当主……」

 

 自身が世話になっているファーフニル家の当主、ガンドだ。だが彼だけではない。彼に続いて、クリエが入室する。そして更に1組の夫婦とみられる藍色の髪の男女が続き、最後にフォーンが入ってくる。

 だが、最後に入って来たフォーンはすぐさまガンドより先に行くと、ハジメを制服の胸倉辺りを掴んで怒声を浴びせてくる。

 

「ハジメ!!貴様……何をやっていた!?」

 

「うぐ……っ」

 

「フォーン、落ち着け。まだそれの段階じゃない」

 

 掴んだことで締まる制服の襟。それによって呼吸困難になりかけるハジメだったが、それを危険と判断しガンドは秘書の行き過ぎた行いを一旦制止させる。何か言いたそうに当主の方を振り向いたフォーンだったが、すぐにその手を放した。床に転びかけるも何とか姿勢を保ち、酸素を肺に取り込もうと呼吸を過度に行う。

 呼吸を整えている間にハジメは当主達の顔色を窺う。誰もがその表情に不安を感じさせるものだった。少し、胸のあたりが痛む。

 呼吸が整ったところで、ガンドがハジメに確認を取る。

 

「ハジメ……学校に着くまでの間に、ジャンヌ達を見なかったのか」

 

「はい……。そういうって……ことは……」

 

 ハジメからの返答で、かすかに怪訝そうな表情をするガンド。そこでノーヴェが重要なことを気づき、それを伝えた。

 

「あ……そういえば私、ちゃんと説明してなかった……。実はね、ジャンヌ達学校にまだ来てないの。それで警察に伝えたら、街の方で聖トゥインクル学園の女子生徒3人が、黒服のやつらに誘拐された事件があったらしいの」

 

「……そういう、ことだったのか……」

 

 その言葉で合点がいった。あれは事件やテロの警戒ではなく、事件が起きたために敷かれた捜査網だったのだ。

 

「その反応……警察が街で警戒網を敷いていたのは知っていたみたいだな」

 

 呆然として視線を落とすハジメ。それに気づいたガンドは、ハジメに声を掛けた。だが、その声が余計にハジメの心を押しつぶす。しかし、黙っている方が余計に心配させると思い、ハジメは自分の知っていることを話す。

 

「はい。けど、まさかあれが、お嬢様達に関わっていたなんて……」

 

「貴様……っ!」

 

 部下の反応に怒りをぶつけるフォーン。再び掴みかかる勢いで前に出ようとしたが、それを制止する形で警察官の1人がこちらに現状を伝えてくる。

 

「すみません。たった今、犯人からの連絡が入ったようです。どうか、皆様静かに」

 

「あぁ、すみません。……フォーン」

 

「…………」

 

 不満を見せつつも、仕える主からの命でフォーンの行動は未然に終わる。やがて、教室内も静かになると、警察に招かれガンドが電話のある方に向かう。フォーンやクリエらもそれに付いて行く。ハジメもその後ろを、少し間隔を空けて列に加わった。

 ガンドが鳴り響く電話の前で立ち止まる。クリエや男女1組、そしてフォーンがそれを囲むように並ぶ。警察の人に目線で確認を取ると、ガンドは電話の受話器を取る。

 

「…………ガンド・ファーフニルだ」

 

『……へっ……その声……待ってましたよ。ファーフニル家の旦那様』

 

「その声……ポルンか!!」

 

 フォーンがその声の主と思われる人物の名を叫ぶ。ガンドは手で感情が昂るフォーンを制止するが、電話の主はそれを敢えて肯定した。

 

『ふふふ……流石ですねぇ、フォーン様。やはり、育ちや生まれが良い方は、私のような劣等種よりも優れていらっしゃるようで』

 

「クッ……お嬢様への怨念返しか」

 

 怨念返し。その言葉に、どこか引っかかるハジメ。「お嬢様」と「怨念返し」と言う言葉が、最近経験した出来事と合致するような気がしたからだ。

 やがてハジメのその疑念は、ガンドの発言によって確信へと変わった。

 

「……ポルン・ドンド。かつては私の娘、ジャンヌの従者でもあった君が、なぜこんなことを?」

 

 ジャンヌのかつての従者。それはつまり、自分の前任者ということを指していた。かつて、自身がファーフニル家で雇われる際、ジャンヌの怒りを買ってクビにされた挙句、それを不服として詰め寄った結果、家を追い出されたというような話を聞いたことがある。

 今、電話に出ている人物が、一体どうしてこんな事件を起こすことになったのか。ガンドの言葉に同意するものがハジメにもあった。すると、電話主であるポルンがそれを含め、ガンドの質問に恨み言のように語った。

 

『なぜ?決まっているではありませんか!!私の竜人としての誇りを穢された!生まれた種族が、自分より竜人種的に劣る。それだけの理由でそこらにいるネズミを見るような扱いをされて、平気でいられると思うのか!!私が、古竜人族に好きで生まれたわけでもないのに!!』

 

 古竜人族、と言う単語でハジメは思い出す。ドラグディアの歴史などを補習で学んでいた時、その事についても学んだのだ。

 古竜人族。かつての姿に似た姿に戻りつつも、竜人としての魔術を使用できる種族である現竜人族と違い、竜の姿や特徴が数多く残る『進化を果たせなかったとされる竜人族』。渡された資料には、現竜人族から軽蔑される立場にあると書かれていたけど、まさかその人がお嬢様の従者だったなんて。なんというか、大変だったのは分かる。でも……だからって。

 差別は良くないのは、記憶を失ったハジメも分かっていた。しかし、それに至る感情、怒りを推し量ることはハジメにはまだ理解しきれていなかった。それはむしろ、竜人族でも機人族でもないハジメにも危惧されることだというのに。

 

「それだけで、それだけでお嬢様とそのご友人、お前と仕事をしたネアまで……!」

 

 理由を聞いたフォーンが侮辱の言葉と共に激高する。だが、怒りに任せたそれは、かえってポルンの怒りを買う形となる。

 

『えぇ、それだけですよ!!フリード家のお坊ちゃんとして貴方にはそれだけでも!私にとっては重いのです!!だからこそ、お嬢様にはご友人とネア様と共に、辱めを受けてもらわなければ……ねぇ!』

 

『っ!いやぁ!!?』

 

(…………何だ?今……)

 

 ポルンが最後の一音を強く口にすると同時に、電話口から布が裂かれるような音とわずかな雑音と共に、甲高い少女の声が響く。その声にいち早く反応したのは、電話に出ていたガンドであった。

 

「ジャンヌ!?お前……娘に何を!!」

 

『言ったでしょう?辱めを受けてもらうと……お嬢様には私からの最後の慈悲として、成長して頂くとしましょう。では、失礼』

 

 そう言ってポルンと名乗った元従者からの電話は途切れる。直前、フォーンがガンドの手から電話の受話器を奪い取り、それに向かってありったけの怒りを込め叫ぶ。

 

「待て!貴様ッ!!…………くそっ!!」

 

 電話が切れたのを知り、乱雑に元あった場所に戻す。しかし、広がる現状への不安が、入ってきていた夫婦の子どもへの心配に影響していた。

 

「あの……娘は、レイアは本当にファーフニル家のお嬢様と一緒に……」

 

「現状、声が聞けていないので分かりません。……ただ、普段から登下校を共にしているのなら、可能性は高いかと……」

 

「あぁ……そんな……」

 

 女性の方が泣き崩れ、それを男性の方が支える。どうやら、2人はレイアの両親のようだ。娘が誘拐されたという事実があれば、それだけ不安になるのも当然だろう。

 不安と絶望が広がっていく中、ハジメは考え込む。先程の電話の中で、ハジメは聞き覚えのあるものを耳にし、それが何だったのかを考えていたのだ。今この状況を打開する為に、必要なことを掴みかけているような気がしていた。

 しかし、考え込むその仕草が気に食わなかったのだろう。いつの間にか近づいていたフォーンが彼の胸倉を掴み上げる。

 

「ッ……」

 

「フォーン!?」

 

「奥様、止めないでください。……お前が、お前が付いていれば、こんな!!」

 

 クリエの声を遮って、自分の怒り、ハジメへの恨みを呪詛のように掛け続けるフォーン。しかし、ハジメは苦痛を覚えつつも、自分の中で感じる違和感の正体を掴もうと思考し続けていた。

 いまさっき、確かに聞いたことがある音が電話口から流れて来てた…………。なんだ、あれは。絶対に、どこかで聞いたことがある。思い出せ、思い出せ、思い出せよ。ジャンヌお嬢様が、レイアさんが、ネアさんがいるのに……くぅ、苦しい……。……苦しい?そうか。あの音は―――。

 ハジメの目が一瞬鋭くなる。かすかに見せた眼光が、再びフォーンを激高させて掴んでいる服ごとハジメの体を揺らす。

 

「ッ!!何だ、その態度はっ!!」

 

 しかし、今回ばかりはハジメも抵抗する。自身の服を掴むフォーンの手を、もがくように外そうとする。その甲斐あって、暴れた両足がフォーンの膝を直撃する。それによりフォーンの手が緩み、隙をついて拘束から逃れる。痛烈な痛みでフォーンは顔をしかめる。

 

「ぐぅ!?」

 

「な……大丈夫か、フォーン!?ハジメ、一体、何を……」

 

 上司のフォーンには申し訳ないことをしたのはハジメにも分かる。だが、今はそれを言っている場合ではない。制止したガンドの言葉に従うことなく、ハジメは電話の近くにいた警察官の下へ向かい、先程の電話の録画があるかどうかを聞いた。

 

「警察官さん、さっきの電話を録音したのって、ありますか?」

 

「え……あ、あぁ。あるにはあるが……」

 

 若干首を傾げる仕草をするが、警察官の1人は電話の近くに置かれていた機材を指し示す。どうやら、あそこで先程の電話を録音していたようだ。ハジメは機材の前でパソコンに向かっていた警察官に、録音した電話内容の再生を乞う。

 

「今すぐそれを再生できますか?出来れば最後の方を」

 

 先程の電話内容で、自身の気づいた違和感。それの検討は付いていたが、それが間違いではないかが知りたかった。だからこそ、警察官に頼み込んだのだ。

 当然、警察も事情を察する。だが、少なからずハジメへの猜疑心が彼らにもあった。だが、それは後方から響くファーフニル家の当主の言葉で一蹴される。

 

「すみません。お願いできますか。彼を雇っている私からの要請ということで」

 

「はい、分かりました……。こちらへ」

 

 呆然とした様子を見せてしまう警察官らだったが、最初に声を掛けられた警察官が承諾し、ハジメを機材のある所まで案内する。

 案内されたハジメは、パソコンの前に座る警察官から機材に繋がるヘッドホンを受け取る。そのまま両耳に装着したのを確認すると、警察官が先程の内容の最後の方を再生させる。

 

「では……」

 

『…………』

 

 誘拐された被害者達の両親らが見守る。ハジメはヘッドホンから聞こえてくる内容を注意して聞き取る。問題の所が流れてきて、それを確信する。

 

『辱めを受けてもらわなければ…「フィーバ」…ねぇ!』

 

「ッ!!やっぱり」

 

 すぐさまハジメは立ち上がる。警察官の手元に借りたヘッドホンを放り出すと、すぐさま教室の外へと向かう。

 いきなりの事で警察官らもハジメを止めようとするが、それを潜り抜けていく。教室のドアをガラッと開け、教室を出たところで慌てて追いかけてきたガンドとフォーンが追いつき、彼の肩を掴み状況を訊く。

 

「待て、何があった!!」

 

「まさか分かったのか?犯人の居場所が」

 

「はい、フォーン様。でも、今は……!」

 

 それだけ言うと、ハジメはガンドの手を振り払い、そのまま校舎の外へと駆けだしていく。後方でガンドがハジメの追いかけ、フォーンも遅れて来た警官らに事情を説明し、同じくこちらを追いかける。

 胸騒ぎがする。お嬢様達の身が危ない。それだけで自分は、いてもたってもいられずに駆けだしていた。こんなことが昔、あったようななかったような。けれど、1つ分かることがある。

 

(絶対に、お嬢様を傷つけさせはしない……!)

 

 心の中で強く念じたまま、ハジメは靴箱から靴を取り出し、履き替えて校舎を勢いよく走り抜ける。その勢いのまま、学園の敷地内に出たハジメは進路を東へと向け、駆けだしていくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。先週のネイの言葉がフラグだったね(^ω^)

ジャンヌ「縁起でもない、バカ」

バカ!?(;゚Д゚)

レイ「うーん……急展開と言えば急展開。だけどハジメ君としては、本当に災難というか……」

ジャンヌ「確かに。使用人としての心構えがなっていないと言いますか……目覚ましくらい確認しなさいって話です」

(´・ω・`)

レイ「あ、作者が落ち込んでる」

(´・ω・`)いや、まぁね。目覚ましで起きれなかったというのは、本当にハジメ君の失態よ。けど理由はあるから。

ジャンヌ「?……まさか目覚ましが壊れたことに理由があるとでも?」

(´・ω・`)あるよ。火のないところに煙は立たないからね。

レイ「あー……もしかしてポルンさんが?」

それは追々……。では今回はここまで。次回、教室を飛び出したハジメ君はどこに行ったのか?彼が聴いたあの単語は何を示すのか?

レイ「次回も見てね!」

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