レイ「アシスタントのレイだよ~」
ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。こちらでは七夕ですが、本作品ではもう一つ重要な意味合いを持ちますね」
その通り!LEVEL1第3章でヴァイスインフィニットと戦ったあの日、聖トゥインクル学園で行われるはずだった詩巫女の祭り「詩竜双極祭」!今回はその一年後を描いた番外編4の公開です。
レイ「あれから一年か~まぁ最新話は大分経ってるから、ずいぶん昔の話になっちゃうんだけどね」
ジャンヌ「でもその模様はまだ詳細は語られていませんでしたよね、卒業式にちょっとだけ語られているだけで」
というわけで、その日どういう話があったのか、重要な場面だけを抜粋してお届けします(゚∀゚)ジャンヌと元のこのイベントに対する思い、そして、かつて参加したあの人の想いを乗せて、番外編始まります。
7月7日。マキナ・ドランディアの建国日。この日はこの星の、この世界にとって最初の新たな始まりが生まれた日。機人族の国マキナス、そして竜人族の国ドラグディアの建国の日。
戦争を終えて初の両国家建国の日、これを記念して両国家は盛大な二か国挙げての祭典「ニューワールドデイズ」を開催した。建国の日となる7月7日を始まりとして、7月10日の終戦記念日までの間、両国家でイベントを開催するのだ。
元々7月7日は両国家で停戦状態であってもお祭り騒ぎとなっており、都合が良かった。そこに10日の停戦記念日とも相まって両国家で何かしようとなったのだ。丁度その期間は国民の休日となる。軍も動員してイベントの警備管理を行う。
その要員にもちろん両雄こと黒和元とジャンヌ・ファーフニルも駆り出される。の、だが、実は7日だけは片割れの元のみが招集されることとなった。
なぜそのようになったのか。それはこの日のイベントがジャンヌ・ファーフニルに関わる重要なイベントだったからだ。これはその前日、7月6日の出来事である。
◆
「なんで、今日の見回りハジメだけなんです?私だって」
「……いや、明日ジャンヌは予定あるだろ」
「詩竜双極祭でしたらちゃんと今まで準備してきました!優遇なんてしなくていい。今日も問題なく行けます!」
言い合いをするジャンヌとハジメ。ジャンヌが怒っているのは今日の見回りの担当についてだった。ジャンヌはハジメと一緒に行くと言っているのだが、ハジメはそれを認めない。
理由として挙げているのは明日の詩竜双極祭の参加だ。前年度は様々な事情から参加しなかったジャンヌ。だが今年は参加を申請し、練習を続けてきた。今年が詩竜双極祭に出られる最後のチャンス。今まで断り続けてきた分まで全力で臨むつもりだった。
なのだが、ジャンヌとしては今までの任務をこなしたままでこの大一番を迎えたかった。英雄だから特別に、なんてしてもらいたくない。
そんな言い合いをファーフニル家のリビングで行っていた。その様子を困った顔で聞くクリエと腕を組んで聴き入るフォーン。ハジメはため息を吐く。
「はぁ……まったく、随分余裕だな」
「な、なにが」
「さっき優遇するなって言っていたけど、それこそ優遇じゃないか?」
「えっ」
「何でも出来て、明日も行ける。なんて、相当入れ込んでいないと任せられないと思うけど」
思わぬ言葉だった。それは必然的にジャンヌがそれだけの力はないと言っているに等しかった。
優遇してほしくないとは言った。けれどそれはそれで傷つく。自分なら出来ると、言ってほしかった。そう言われたら、明日がすごく心配になって……。
目を伏せるジャンヌ。するとハジメが顔に手を当てて自身に向けさせた。
「でも、俺はジャンヌならいい結果を出せると思っている。他の皆と同じ条件で、それでも一番になれると。その方がきっとみんなも納得する。それに兵士なんて、普通の学生がなれるわけじゃないんだからな」
「う……うん」
「じゃあ、後はお願いしますクリエ様、フォーン様。自分は夜の偵察へ」
「えぇ、お仕事頑張って」
「あぁ」
ハジメが見回りへと出発する。同じ条件……簡単だけど、すごく難しいことのように思える。悩んだ私にお母さんが声を掛けた。
「難しいことを言われたわね、ジャンヌ」
「お母さん……お母さんは昔の詩竜双極祭、どういうことをして参加していたの?」
以前から気になっていたこと、母の詩竜双極祭は果たしてどういう気持ちで参加していたのだろうか。
前に話を聞いた時には、父との出会いや、それに影響して詩を諦めなかったことだけは聞いていた。けれど母自身が詩竜双極祭に参加した時の事についてはこれまでも聞くことがなかった。
かつての参加者として、母に聞きたい。そんな気持ちで尋ねたジャンヌ。娘の言葉に一度目を丸くすると首を傾げてから母は笑って見せる。
「んー、そうね。まずはグランツおじさんとお父さん、それにフォーンに聞かせたわ」
「フォーンも……?」
「えぇ。あの時はまだガンドといがみ合っていた時期だからな」
フォーンも頷く。その時期の話を、母は話した。
「私の詩竜双極祭初参加は14歳の時ね。あなたのお父さんから言われたの。詩巫女なのに歌っているところを見ていないなって。正直驚いたわ。あの人にはちゃんと、詩巫女になるのが嫌だって言っていたのに、そんなこと言うんだって」
「それには流石に、俺、いや、私も苦言を申したな。けど父さんが、グランツ司令が言ったんだ。面白そうだとね。それで一度、試しにさっきの三人でクリエの詩を聴いた」
フォーンもかつての事を語り出す。表情はどこか暗い。やはりかつての事を思い出したくないのだろうか。
それでどうなったのかを母に尋ねる。
「それで、感想は?」
「みんなよかったって……」
「酷かった」
が、母の声を遮って答えたのはフォーン。母は「あ、あらら~?」と少し冷や汗を浮かべている。口をパクパクとさせている間に、フォーンは疲れ切った声でその時の事を聞かせてくる。
「真面目に詩の練習をしていなかったうえに、内側に暗く暗く閉じ込めていたせいで耳にも心にも耳障りだった」
「ちょ、ちょっとぉ!あの時はあなたいい曲だって言っていたじゃない!ちょっと表情はおかしかったけど」
「あれはやせ我慢してたんだ……!」
な、なるほど……。やっぱりお母さんも練習していないと力は出せないんだ……。でもフォーンがそこまで言う位酷いのって、どれくらい?あぁ、変に気になります・
当時の母の歌声も気になったが、それがどう詩竜双極祭に繋がってくるのか。そこに至る道筋までを尋ねた。
「え、えっと、それがどう詩竜双極祭に……?」
娘の質問にクリエのほおが緩む。
「その歌声を聞いたお父さんが言ったの。よく分からないって」
「えっ?分からない……」
言葉の意味に戸惑う。意味を理解しかねた自身に、母はそのままの意味であると言ってくる。
「そう。詩の上手い下手が聞いても分からなかったんだって。それで当時は私もムキになったものだわ」
「そ、そうなんだ……」
「でもね。こうも言ってくれたわ。私の歌声は出せているって」
「歌声……」
「私だけの歌を聴くことが出来たってね。酷い歌声でも、私の声がちゃんと乗っているってことだったんだと思うわ。それで思ったの。せめて歌声だけは磨こうってそれが私の歌うわけ」
詩巫女は詩の力でDNの力を引き出す。重要なのは上手い下手よりもDNに働きかけられるかどうか。詩は働きかけるための一つの方法なのだ。
そして自分の歌声を自分だけの物、歌う理由と認識することは、ある意味詩巫女にとって大事な要素の一つ。固有の領域を持って、他者へと働きかけやすくなる指針となり得る。母はその心を父の言葉から学んだのだった。
フォーンもそれからのクリエについて言及した。
「それからはクリエも学校の授業で詩の勉強についてした。詩竜双極祭も参加する様になったな」
「えぇ。でも最初の内は最下位とかばっかりね。だけど私は諦めなかった。あの人に褒められた私の詩を信じ続けた。それで迎えた最後の詩竜双極祭で、私は優勝したの」
「そう、だったんだ」
「あ、もちろん象徴には認められなかったからね?だけどお父さんはその時すごく褒めてくれたわ。フォーンも驚いていたようだし」
「正直、まさかと思った。ますます嫉妬したよ、クリエをそこまで本気にさせたのかって」
母も躓いた。それでも自分を信じて必死に目指した。何度もトライし、優勝を手に入れた。私はどうだろう?クリムゾン・ドラゴニアスに認められたとはいえ、それは象徴の考えが変わったから。もしあんな悲劇が無く、それまで通りの契約だったとしたら……私は。
あり得たかもしれない、もしかして。自分は果たして両雄の片割れにあるべき存在、詩巫女として十分な才能を持っているのだろうか。ジャンヌの不安を見透かして、クリエは話す。
「ともあれ、私はようやっと手に入れた。ジャンヌ、あなただってそう。あなたはそんなお母さんでも成し得なかった可能性を開いてくれた。戦争終結という未来を導いてくれた。初参加で不安になってもいい。だけど、気負わないで。自分は何でもできるって思わなくていいの」
「お母さん……」
「ただ歌えればいい。他の人と同じように、だけど心だけはあなただけが大切に思うものを背負って」
そう言われて脳裏に浮かぶ一人の人物。きっと母もそれが誰なのかすぐに分かるはずだ。
彼がいてくれたから自分は諦めずにいられた。呪われていても立ち止まらなかった。私の胸にあるのは、大切な
パートナーである彼の為に、全力で応えたい。これが私の歌う理由。原点になる。
教えてくれた母に、フォーンに礼を述べる。
「うん。ありがとう、お母さん、フォーン。私、明日頑張る」
「えぇ、お母さんも丁度行くから、忖度はしないけど応援するわ♪」
「お嬢様なら出来ます。元にもちゃんと見るように言っておきますので」
◆
7月7日、夜。遂に詩竜双極祭が始まった。修復・改装されたドラグーンオベリスクの前に司会者と多くの参加者達が並ぶ。観客やテレビ局も大勢詰めかけていた。
そんな彼らの安全を守るべく、ドラグディア軍は警察と共に警戒態勢を敷いていた。学校敷地内の警備にはアレク・ケルツァート、そして黒和元もいた。
警備を行う二人は任務に従事しながら舞台を見る。
「あれから一年、か」
「ですね。まぁ前年はあんなことになってしまったので、優勝者はいませんでしたが」
「だよなぁ。ドラグーンオベリスクは完全に壊れて、機能を発揮していた中のワイバーンはお前の所持物に。急いで直すより、一年かけて機能再現した方が万全ってもんだ」
一年前の詩竜双極祭はヴァイスインフィニットとの交戦で完全に潰れてしまった。とても開催できる状況ではなかった。広場は戦闘の後で酷く、肝心のオベリスクもGワイバーン覚醒と共に砕けた。
この一年はそのオベリスク再建のための時間だ。オベリスクが元来持っていた機能を取り戻し、例年通りのイベントとする。伝統と言うものだ。
それでよかったかどうか、今日決まる。もっともこの二人にとっては重要なのはそこではない。参加している二人の想い人の結果こそが重要だった。
司会者のやり取りを聞きつつ、参加者を見通してアレクがため息を漏らす。
「しっかし、今年は参加者多いな」
「前年の卒業していない参加者も出ているそうですから。今年の分と合わせて、多くなっていますよ」
「あぁ、グリューネとかか」
「だから、今回は最大規模の双極祭になっていますよ。マキナス側のも含めて、ね」
視線の先に大型スクリーンが。マキナス側の詩竜双極祭「奏機双天祭」の一つの会場の模様が表示されていた。マキナスの有名な奏女官の学校で、司会役はあのフェルナが務めていた。今はそれぞれの詩巫女と奏女官の応援者の言葉を訊いているところだ。
『姉妹揃っての参加、頑張ってくださいね~グリューネさんネアさん!さて、次はジャンヌ・ファーフニルさんの応援者、なんとこの学校のOBにして名誉詩巫女、ジャンヌさんのお母様のクリエさんからのコメントです!』
「おっ、やっぱお前も代役立ててたのか」
アレクの言う代役。アレクも本来ならグリューネの応援役として壇上に上がる予定だったらしいが、仕事の為に代役を立てていた。ちなみに代役はグリューネの母親ノルンだった。
一方のネアの方は同じ参加者のグリューネが応援役として兼ね、先程コメントを言っていた。
俺は頷くが、しかしと付ける。
「えぇ、でもまぁ大まかなものはクリエ様に任せていますからね。俺の言葉は頑張れ、としか伝えてないですよ」
「何だよ。味気ねぇな」
「それ以上に、ファーフニル家としてはこの参加は非常に意味が大きいんですよ」
呪いによって左右されることのない詩竜双極祭。それを親子で迎えさせたい。それが元のささやかな願いであり、今回のイベントでの贈り物だった。
ファーフニル家の娘達は去年のこの日までずっと、呪いから逃げるためにこのイベントに参加してきたといっても過言ではない。そのせいでジャンヌはずっと参加しないといけないにも関わらず避けてきた。だけどそれはもうない。そしてジャンヌは今年の詩竜双極祭に参加したいと言った。なら俺はそれを全力でサポートする。かつてジャンヌを追い込んでしまったことへの贖罪をするために。
その言葉でアレクも事情を察してくれた。
「ふぅん。ま、殊勝なことだ」
と、いよいよクリエの応援メッセージが送られる。
『私達はこの日を待ち望んできました。まっさらな気持ちで、この詩竜双極祭を迎えられる。家族として願ってもいないことです。それに参加できる私の娘には、ぜひとも優勝してもらいたい。だけど、優勝できなくてもいいとも思っています。だってこれが、娘にとって最初で最後の詩竜双極祭。どんな結果でもきっと娘は成長できると信じていますから。だからここでもう一人、ジャンヌを応援したかった人の事について紹介します』
「ん?」
首を傾げる。予定ではもっとジャンヌに対しての言葉が続くはずだ。しかし彼女は別の人物について紹介しようとしていた。一体誰が、と思っていると、その名が明かされる。
『それは娘の従者にしてパートナー、ファーフニル家の使用人の一人クロワ・ハジメです』
「何だよ、ちゃんと代役頼んでいたんじゃねーか」
「い、いや、俺知らないんだけど」
アレクに肩を叩かれるが、もちろんこんな流れは知らない。元の知るところではない。分からぬままコメントはそのまま進行していく。
『一年前のこの日、彼はこの場所で戦いました。そしてこのニューワールドデイズはその彼が戦った軌跡そのもの。その最初の日となるこの7月7日の詩竜双極祭を彼はとても楽しみにしていました。ですがこの場に本来、パートナーとして立つべきにも関わらず、彼は参加者を守る側に付いてくれた。ここで私に預けてくれた応援の言葉は「頑張れ」の一言だけですが、それだけ娘の、そしてこのイベントに思い入れを掛けてくれた彼の想いは推し量ることが出来ます』
……何か、恥ずかしいな。その通り過ぎて……。
自然と顔を背けてしまう。それに気づいて面白おかしく指摘するアレク。
「おいおい~恥ずかしいのか?本心言われて」
「分かっているんだったら、言わないでください」
ため息で返答する。が、それでも受けはいいようで観客からも声が上がる。
『だからこそ、この場に立つことを譲ってくれた彼の為にも娘には優勝してもらいたいものです。自分の詩を信じて、ね?』
軽くウインクすると歓声が上がる。人の波間に見えるジャンヌの姿はどこか恥ずかし気に思える。だがその顔は昔では考えられない位、詩に関わることで良い表情で……。
見ていた元の緩んだ顔をアレクに指摘される。
「にやけてんぞ?」
「ん?そう、ですね。なんていうか、笑えてよかったなって」
「笑えて?」
「えぇ。ジャンヌが、詩の事で、笑えるようになって」
思い出すかつての記憶。資料室で現実を突きつけてしまった時の彼女が、今この場で笑えている。それだけで元の心が沸き上がる。
きっと大丈夫。そう信じて、警備に戻る。
◆
ニューワールドデイズ最初の詩竜双極祭、その勝負は苛烈さを極めた。サランディーネ家、リントヴルン家、そしてファーフニル家と言った名家による競演。オベリスクは今世紀最大の輝きを見せた。
一体誰が優勝か、審査員もそして観客すらも分からなかった結果は、機械による判定も困難を極めた。
固唾を呑んで見守る一同。そして決まった瞬間、大歓声が爆発する。沸き立つ喜びの嵐、壇上に立ったのは、
「ありがとう、ございますっ」
ファーフニル家の少女だった。すべての呪縛を振り払い見せた笑顔は、しっかりと学園の優勝者記念撮影に収まった。屈託のない笑顔がまぶしく映る。その笑顔は、未来永劫、学園へと刻まれた。その脇で、黒き竜騎士もわずかに笑顔を浮かべて。
NEXT EPISODE
今回もお読みいただきありがとうございます。今回は7月7日に合わせるために一日だけ投稿間隔をずらさせてもらいました。
レイ「んー、七夕の日に代わるイベントが詩竜双極祭だけども、十分関連のあるイベントになったみたいだねぇ♪」
ジャンヌ「クリエさんとガンドさんの思い出、そこにジャンヌさんと元さんの新たな思い出が積み重なる……。その思いは10年近く経っても変わらないということが分かります」
まぁその10数年後が、今まさに激闘の真っただ中なわけなんですがね(;´・ω・)そんな本編は二日後に更新予定ですっ。
レイ「でも作者頑張ったね~これ書き始めたの確か3日前だよ?」
それで本編滞ったのもあって昨日本筋投稿できなかったんです(´ρ`)
ジャンヌ「本当は昨日投稿したかったんですね」
3日前に「あ、もうすぐ七夕……ってそれつまり詩竜双極祭じゃん!やっべ番外編投稿する予定だったのに時間ない!」ってなったんですよねぇ(´・ω・`)元々は2話構成にしたかったんですが、今回は断念して一話構成です;つД`)
レイ「残念だねぇ」
ジャンヌ「予定を確認しておいて動いてくださいね?」
はぁい(T_T)次の時は多分ジャンヌ・ファーフニルの誕生日、8月21日くらいですかね……その時にはまた忘れたなんてしたくない。
というわけで今回はここまでです。
レイ「次回は二日後!またね~」