機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、今回はバレンタイン番外編です。

レイ「バレンタイン番外編とか懐かしいね。二年ぶりだっけ」

ジャンヌ「そう言えばバレンタインの話は続きがあったように感じますが」

実際その続きです。難題とは何だったか。それを思い出すためにも番外編2を読むのでも、今回の話を見て思い出すもよしです。それではどうぞ。


番外編6 前編 一年越しの難題

 

 

 M.D.1430二月某日。この日ドラグディアの作戦会議室に人員が集められていた。黒和元を中心に、ローレイン、フォーン、テュート、ケルツァート小隊、そしてグランツが席に座り、彼のサポートにリリーが付き添うという構成だ。

 集まった面々に元は礼を告げる。

 

「本日は急な呼びかけに応えて頂き、ありがとうございます」

 

「まぁお前の相談事だったら、応じない訳にいかないだろ。とはいえグランツ総司令までいるのは、驚きましたけどね」

 

「いやはや、ファーフニル家に関わること、と言われれば断るわけにもいかんよ」

 

 ローレインの指摘にグランツ総司令はそう答える。少し大事になってしまう印象は少なからず与えていたようで、ジャンヌの姉ジーナの婚約相手であるテュートは完全に緊張してしまっていた。

 

「あ、わわ……こ、今回は、ハジメ大尉のお声がけ、に!答えさせていただき!」

 

「テュート中尉、そんなに緊張することはないだろう。君は彼の恋人の姉を妻にしているんだから」

 

「だからと言っても、階級は上なんですから!まぁ、頼りにしてもらえる以上、しっかりと義兄として妹さんの彼氏さんの力にはなりたいと思っています」

 

 アレクの言葉に本音を告げながら力になってくれることを言ってくれるテュート。その言葉は今の元に心強いものだ。

 テュートに感謝の言葉を一足先に告げる。

 

「そう言ってもらえると助かります。今回は特に、テュートさんとフォーン様に期待していますから」

 

「俺もか」

 

「そ、そうなのかい!?それは……ちゃんとしなくてはな!」

 

 その言葉を聞いて心なしか喜びを見せるテュート。頼られるというのが余程嬉しいらしい。

 そこでアレクから、未だ言っていない今回の議題について明かすように言われる。

 

「そういうのはいいから、俺達も暇じゃない。なるべく早く教えてくれ。お前の問題を」

 

「そうですね。では今回の議題は、これです」

 

 ホワイトボードにサラサラと議題を書いていく。数秒の間書き続けて書き終わるとその議題を見せる。

 そこには「ジャンヌからだけバレンタインデーのチョコをもらう方法」と書かれていた。それを見て、アレクがいの一番に言った。

 

「はい。では皆様お疲れ様でした」

 

「待てやアレク隊長」

 

 返る支度をしようとするアレクの肩をがっしりと掴み、抑え込む。無理にそれを引き剥がそうとするアレクは抵抗する。

 

「離せ!なんでこんなくだらない事を総司令呼んでまでしようとした!お前自身で考えろ!」

 

「考えてこれなんですよ!とりあえず話聞いてください。それがどれだけ重大なのか分かるので!」

 

 下らないと言われながらもなんとか席につかせ直す。他の面々もグランツ司令が微笑ましく笑っているが、ケルツァート小隊の同僚からは呆れられ、リリーとフォーンからはしらーという視線、テュートも肩透かしを食らったように肩を落としている。

 唯一事前に事情を知っているローレインもこの結果に予想通りと笑う。

 

「ほら言ったろ!いくらあれ解決したいと思っても、相談したら呆れられるって」

 

「それは予測してた。けどアレク隊長は去年の時点でそれ相談しているんだよ」

 

「あー……何か言ってた気がする。というか本気で考えてたのかよあれ……」

 

 ようやく思い出したという様子を見せるアレク。そう、去年のバレンタインデー、それが全ての始まりだ。

 その日、学校登校時に下駄箱の前で野次馬が集まっていた。そこにあったのは自分宛てに送られたバレンタインのチョコの山。DNLによる選別で、全てが女生徒からの送られたものだと分かった。

 それはいい。いや、この後の事を考えればよくはない。それをどうするかと悩んでいる時、それを見せつけられたジャンヌが嫉妬に狂った目と声でハジメは悪くないと言いながら、送ってきた相手全員を始末するなどと言ったのだ。

 恋人と言わせてもらっている以上、流石にそんなことをさせるわけにはいかない。そこで昨年のチョコをもらってから、時折それの解決策を考えていたのだが、答えが出なかったために今回こうして集まってもらったのである。

 これだけ人数がいれば何かいい案が生まれる。そう思ったその期待は今裏切られようとしている。正直言って下らないのは認める。ジャンヌの想いまで下らないとは一切思っていないが、故に真剣だった。

 それら事情を話し、なんとか話を聞いてもらう。が、回答はあまりよいものではなかった。

 

「はぁ……事情は分かったけど、何しても無理だと思うぞ、お前の場合。もう英雄なんだし」

 

「英雄ならば、それくらいの事は誠心誠意ジャンヌお嬢様に気持ちを伝えて許してもらうべきだ」

 

「そうそう。僕もジーナに申し訳ないことをしたときは謝っているし」

 

 アレク、フォーン、テュートを筆頭に謝ればいいと大人の対応を返す面々。それはもちろん元自身も考えた。とにかく謝る。ジャンヌに誠意を見せることが何より大切なのは分かっていた。

 けれどもそれでも限界と言うものがある。ジャンヌに不快な思いをさせ続けることに元はつっかえを感じていた。

 それにお互い疲れていてはせっかくのバレンタインデーが楽しめない。ならば障害は取り除いておきたいというのが元の考えだった。それも踏まえて一同に伝える。

 

「それが一番なんですが……でもせっかくのバレンタインデーをお嬢様に満足してもらえないのはちょっと……」

 

「なるほどな……けどそれは流石に無理だぞ。わざわざドラグディア軍人入れて規制するわけにも……ねぇ?」

 

 アレクがリリー、そしてグランツ総司令に尋ねる。上への判断を仰いだアレクの言葉に、二人も難色を示すが、それでも協力の意志を見せる。

 

「今の時期にそれでは街の警戒が疎かになる。ノット・ア・ジーを抑える為にも枠は避けないだろう。もっとも、ハジメ大尉の思う理想は、叶えてあげるべきだとも思うがね」

 

「リリー君の言う通りだな。ファーフニル家はせっかく呪いから解放されたのだ。当たり前を過ごしてもらいたい。その為なら、当日以外なら何かしら協力はしたいところだ」

 

「ありがとうございます。自分のそのつもりなんですけど、案が思いつかないのでとりあえず意見を求めてるわけなんですが……というか、気になったんですけど、テュートさん妙に冷静ですよね」

 

 二人への礼を述べつつふとテュートに聞き尋ねる。するとテュートは知らないと言った様子で聞き返してくる。

 

「え?冷静って、何で」

 

「いやだって、ローレインの情報で知っているんですけど、去年俺の影響でテュートさん職場の同僚さんからチョコもらってますよね。それでジーナさんに知られて三日間ほど自宅に帰れなかったとか」

 

「何でそれを知っているんだ!?」

 

 隠していたことを暴かれたように驚くテュート。その反応にケルツァート小隊のシレンとティットコンビが人の目も憚らず爆笑する。

 

「ちょっ!テュートさんそんなことあったんだ!笑う~」

 

「うわ、これは恥ずかしい。俺だったら隠居してますよ。というか忘れたいから忘れてたのかそれは」

 

「やめないか、的確なツッコミを入れるのは!……これ、今年もあり得るのか?」

 

「でしょうね。ていうかもうハジメが有名になった以上関係者は結構人気出ますよ?」

 

 悠長に構えていられないとのローレインの言葉に頭を抱えだすテュート。彼もまた困難に立ち向かうものとなった。

 そんな様子を見て情けないとこぼすのはフォーンだ。

 

「まったく、たるんでいるぞ二人とも。ファーフニル家の息女を預かっているという自覚が足りん。ガンドもそうだったが、ファーフニル家の女性の不満を受け止める覚悟をだな……」

 

「とか言ってますけどフォーンさんも今回大分ヤバいですよね?」

 

「ちょっと待て。何を言っているローレイン女史」

 

 そこでローレインが割って入るのをフォーンが訝しむ。どうやらフォーンもまた、あの事を知らないらしい。

 これもまた元はローレインからの知らせで知っている話だ。ローレインはフォーンの為に言ってやる。

 

「いや実はですね、ファーフニル家にフォーンさん宛てにチョコ送られてたんですよ。まぁそこは知っているかな?」

 

「あぁ、その事か。下らないから危険物の類がないかどうか調べて処理したが」

 

「それですね、クリエ様見てたらしくてその時からフォーンさんの婚活を真剣に考えていらっしゃるらしいですよ?古い友人とか頼ってて」

 

「排除しようとしているではないか、貴様!もっと早くに言え!」

 

 完全に寝耳に水という知らせに珍しく焦りを見せるフォーン。独身ではある彼だがそれでもずっとクリエの傍にいるという使命の為に結婚は考えていないらしい。もっともこの年齢から結婚というのも難しい話ではある。若々しいとはいえそこまで元気ではないのだから。

 三者三様に悩みだすファーフニル家の男面々。その様子を見かねてグランツが助け舟を出した。

 

「これは、ファーフニル家の女性達の為に共に歩むことを選んだ、男達の苦悩だな」

 

「父さ……グランツ司令、茶化さないでください。というか、その口ぶりもしや……」

 

「エルダには苦労させられたよ。もちろんクリエ君も、ガンドから泣きつかれたこともあったな、ははっ」

 

 どうやら、グランツ司令もその経験はあったようだ。こんなにもファーフニル家の女性に悩まされるというのも、もはや遺伝の問題と言ってしまってもいいかもしれない。嫉妬深さが遺伝するのはアニメや漫画の中だけにしてもらいたいものだ。とはいえ、そこもまた彼女のかわいらしさと思っている自分がいるのは、なんとも言い難いのだろうが。

 ともかく、このファーフニル家女性の嫉妬深さに頭を抱える者が何人もいる。その発端が自分というのは何とかしたいところでもあった。だが考えはそう簡単に思いつくものでもない。沈黙が部屋を支配する。

 

「うーん……アイデア出なさそうですね」

 

「ファーフニル家どんだけ厄介なんだよ。まぁ詩竜の呪印のせいで、跡継ぎ女性しか生まれなかったというのもあるでしょうが」

 

「んん?あぁ、そう言えば」

 

 と、そこで思い出したようにグランツ司令が名案を出してくる。

 

「何か閃きましたか?」

 

「いや、そもそもファーフニル家が嫉妬深いのは、機竜創世記時代からの名物だったなぁ、と」

 

 一瞬何を言っているのだろうと思った。失礼ながらボケたのかと思ったが、そこでそうじゃないということをリリーさんが気づいた。

 

「なるほど。ファーフニル家でバレンタインと言えば、血のバレンタイン事変がありましたね」

 

「血のバレンタインって……何ですかその物騒な単語は。大量殺人でも起きたんですか。というかファーフニル家が関係あるんですねそれ?」

 

 思わずツッコミを入れる。それを軽く受け流してリリーは詳細を語っていく。

 

「歴史の事件の一つだ。まだファーフニル家が出来る前、その当主となる男が、やがて妻となる恋人と過ごしていた時、同じように武勲につられて贈り物をした女性がいた。それに対し、その恋人は大層怒り、まるで古竜人族のような形相で男を市中引きずり回して、背中をすりむかせて町中血だらけにしたという話だ。あぁちなみに、ハジメ大尉は知らないだろうが、古竜人族は創世記の時代の時点では未成竜人族と呼ばれている。力のあったものだけが今の私達と変わらぬ姿をしているわけだ」

 

「あぁ、なるほど。っていうか市中引きずり回しとか怖いですね。ジャンヌのご先祖様そんなことしたのか……」

 

「そんなの初めて聞きましたよ!それが、ジーナの……じ、ジーナも、やったり?」

 

「はぁ……」

 

 男連中はそれだけでため息が出てくる。しかしその話を出した元々の人物であるグランツ司令はそこに一筋の救いの道がある可能性を見出してくれた。

 

「そうだったね。この話はかつてドラグディアの恋人のあるべき姿と紹介されていたこともあるらしい。それでこの初代ファーフニル卿は同じ過ちを毎年繰り返さないよう背中の傷に誓ったらしい」

 

「それが……何の関係が?」

 

「忘れていないかい?ハジメ大尉。君がどこに使えている身か」

 

 言われて気付く。そうだ。自分はファーフニル家に仕える存在。気付いた様子を見て、グランツは提案をした。

 

「ファーフニル家書庫には、昨年ドラグディア政府から返還してもらったファーフニル家の古い文献がある。それにそもそも、初代ファーフニル卿とまでなると元々保管してある可能性もあるから、この機に調べてみるといい。もしかすると、それを乗り越えた策、得られるかもしれないな」

 

「なるほど。先人の知恵に頼るというわけですか。けど、ありかもしれませんね。そもそも俺自身初代の事をあまり知らないですし」

 

 書庫の捜索、そこで手記なんかを見つけられれば打開策になるかもしれない。もちろん1400年前なので残っているとも限らない。だがここはマキナ・ドランディア。こちらの世界の1400年前と違い、記録はデータになっているためかすれて読めないなんてことはなさそうだ。

 テュートとフォーンもその案に賛成する。

 

「それに賭けるしか……ないですね……流石にまた家追い出しは嫌だ……」

 

「書庫の鍵なら俺が何とか出来る。このバレンタイン、乗り切るにはそれしかあるまい」

 

「ありがとうございます、グランツ司令。ローレイン、多分情報部のお前の方が探すの得意だろうから手伝ってくれないか?」

 

「ま、元々手伝うって言ってたからな。手伝うか」

 

「ははっ、貴君らの武運、期待している」

 

 話はまとまり、次なる場所へと元達は向かった。各々の未来の為に。

 

 

NEXT EPISODE

 




番外編前編はここまでです。

レイ「今初めて前編だということを知ったんだけど……ちなみにどれくらい続くの?」

中後編あります(;´∀`)

ジャンヌ「うーん、番外編にしては今回読み応えありますね。というか作者少し平気になりました?」

ちょっとだけ、感覚はまぁ戻ってきたかと。まだ鬱ってるけど。

レイ「まー少しでも戻ってきたならいいんじゃないかな。それにしてもファーフニル家の男子は大変だねぇ」

ジャンヌ「嫉妬は愛の裏返しとは思いますけど、テュートさんと元さん辺りへの被害が今回の問題でしたか……」

レイ「そのためにも、初代ファーフニル卿に御知恵を借りるっていうのが、今回の話ってわけだ!」

ジャンヌ「初代ファーフニル卿、ここでフォーカスする意味があるということ、ですよね?」

実際その通り。近いうちにこのファーフニル卿に絡んだことが起きるので、そこらへんは注目して頂ければと。またその時にはこの話読んでいるかの注意書きするし。

レイ「そんなに重要なんだ、初代ファーフニル卿」

ジャンヌ「本編はあんなことになっているのに、どう絡んでくるのか……」

それではそろそろ同日公開の中編、後編へ。

レイ「そうだねっ。続くよ~!」
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