レイ「オーヴェロンの経験を生かして、元君はどうするのか?」
ジャンヌ「無事、ジャンヌ・Fさんを納得させて、バレンタインを乗り切れるのでしょうか?」
ちなみにですが、ここの話書いてるときが一番楽しかった気がします。それではどうぞ。
そして来るべき2月14日。バレンタイン当日、元は朝早くから起きていた。忘れていたのだが実は聖トゥインクル学園の高等部3年はこの時期既に自由登校の時期となっていた。
迫る卒業に向け、次なる進路の為の準備をする人物も多く、学校に用事のあるもの以外は学校にあまり行かないというのがほとんどだった。元はその事を完全に忘れていたのだ。
かくいう元とジャンヌも迫った異世界転移の準備の為に自宅かあるいは基地で準備を進めている。となれば、バレンタインのチョコレートが届くのは当然ファーフニルの邸宅あてとなっていた。
ファーフニル邸前に朝早くというのに学園の女子が点々とやってくる。それに対応していたのは、他ならぬ元だった。
「すみませんが、そういったものを俺は受け取れないので……」
一人一人に事情を説明し、帰ってもらう。家への迷惑を考えて自分自身で応対し、チョコが無駄にならないようにする選択を取った。
これがほぼ追い返しというのは分かっている。故に当たり障りのない回答で応対し、納得して帰ってもらう。もちろん中には聞き分けの悪い人物もいる。それでも精一杯対応して周りの他の女子達に助けてもらいながら切り抜けていく。
そんな作業を繰り返してようやく学園の登校時間になったころ、一息ついていると人の流れが落ち着いた辺りで、家の方からやってくる人影を見て、姿勢を整える。やってきたのは自身の主にして恋人、ジャンヌ・ファーフニル。その姿は既に寝間着から普段着の白ベースのワンピーススタイルと羽織り物という着こなし。しかし問題はそこではなく、表情にある。
予想していた通り彼女の瞳は濁って、というより光が感じられない。それでいて笑みを浮かべており、同時に怒りを感じさせる、叱りつけると言ったような言い方が正しいだろうか。
そんな複雑な表情で彼女は朝の挨拶をしてくる。
「おはよう」
「おはようございます。もう支度出来ているんだな」
「それはそうでしょう?だって外で、あの五月蝿い女達があなたの事を奪おうとしていたんだから。そんなのにわざわざ構うなんて……あなたはいいの、私が、やるべきことなんだから……」
言って先程までいた女子達を追おうとするジャンヌ。朝がそれなりに弱いというのに、その執念だけは有り余っている。
とはいえ、これは予想通りだ。そのジャンヌへと向けて行動を起こした。
「そうですか。とはいえ、今日は基地の方お休み頂いているんで、出る必要ないんですが」
「あなたが出る必要はないもの。私は出る」
「そうですね、それじゃあ……だぁ……」
そのまま疲れに突っ伏す様子でジャンヌへと抱き付いた。外で、玄関先でいきなりそのような形となったジャンヌは奇声を上げながら呼びかけてきた。
「ひょえぇ!?あ、ありぇ、は、ハジメ!?どどど、どうしたの!?」
「朝4時起きなんだ……その時間くらいから来るだろうと思って……チョコをポストに入れられるのも返すのが面倒だったから」
その言葉通り、今日はかなりの早起きで眠気は絶好調。それを先程まで栄養ドリンクを飲んで起こしていたのだ。
とはいえそれでもまだドリンクの効果は限界を迎えているわけではない。疲れはもちろんあるが、ちゃんと思考があってこうしている。
戸惑っているジャンヌに対し、外へと出ないように身体を絶妙な力で支えながら言う。
「けど、丁度良かった。頼めるか、もう眠い」
「だ、だけど、チョコ渡そうとしたあの女達を!」
「寝てる間、ジャンヌの好きにしていいから、ジャンヌと今日は一緒に居たい」
「っっ~~~~~!?!?」
ジャンヌの羞恥からの声が聞こえてくる。このまま家へとUターンしてくれればいい。後はフォーン様や庭師などに任せれば対応はできるはずだ。流石に一日中は体力的にも無理だし、本心としてはジャンヌに構ってやりたい。これならジャンヌの機嫌を取れる。
そう確信していた。しかし悶えていたジャンヌがふとスンと静かになる。こちらの背中に手を当て、言ってくる。
「……ねぇ、ハジメ……まだ随分余裕ありそうだけど?ちゃんと立ててますよね?」
トーンが落ちる。完全に気づかれたと言っていい。見透かした発言に誤魔化そうとする。
「気のせい、では?」
「そう言うんですね。ならこのまま倒しても追いませんよね?そんな体力ないでしょうから」
もう流石に無理だなと思う。そこで茶番の謝罪をする。
「すみません。それは勘弁してください」
「認めるんですね。騙したのはムカつきますけど、認めてくれるのならいいです」
「けど、疲れているのは本当だし、今日はジャンヌの好きにしていいのも事実だ。今日はバレンタインだ。少しでも一緒に長く居てやりたい」
「っむぅ……でも、チョコ渡してくる輩は、五月蝿いですし、それにその度に居なくなるのは……」
ありのままの気持ちを告げ、なんとか留めようと試みる。そうやっている内に次の訪問者が訪れる。
「あっ、あれ!ハジメさんだ!」
「ジャンヌさんとイチャついてる!?」
「っ、またっ」
「じゃ、ジャンヌ、抑えて」
何とか行かないようにするがジャンヌの力が強い。ここに来て本当に疲労が身体を襲う。更に渡し手側も焦って行動に出る。
「受け取ってください!私のチョコっ!」
「ちょま、投げるってそれ!」
「っっ!!渡させないっ!」
薙げたら意味がないのでは、ということを言う間もなく振りかぶったその時、手刀が投げようとした女子の手を掠めた。女生徒の持っていたチョコが地面へと落ちる。
落としたのは他ならぬ女生徒の付き添い。思わぬ妨害にチョコを渡そうとした女生徒が狼狽した。
「な、何で邪魔するの!」
「黙れぇ!邪魔してるのはお前だろう!」
『えっ?』
一瞬全員の反応が重なる。どういうことか、と思う前にその付き添いはこの場における感情を矢継ぎ早に語っていく。
「私はあんたがチョコをハジメさんに渡したいというからそれに協力した。しかし、今彼は恋人とこんな外で大胆な行動に出ているんだぞ!それを邪魔するとは何事かぁ!」
「えっ、いや、でも……チョコ」
「私は認めんぞ!この尊い空間にチョコと言う名の爆弾を投げ込む不届き者は!」
なんか、すごく熱心に尊さを語っていた。昔SNSで見たことがある。エモい、尊い、そんな光景に対し、熱心に語るアカウントが多くあったことを。その光景に近い。
その光景にただただ相手側もこちらも圧される。一方でそれらの発言で状況に気づいたジャンヌは顔を赤くして身悶える。
「あうぅ……ちょっ、こ、声……小さくぅ……」
肝心なところで怯えるその性格に何とも言えない気持ちになる。が、それよりもこの言い合いだ。女生徒はチョコを渡すことへの想いを語る。
「そ、それでも伝えたい気持ちがあるんだから、っていうかさっきまで気持ちが届くのはあれだけど渡すの上手くいくといいねって言って」
「そんな言葉、さっきゴミ箱に包めて捨てて来たわ!」
「速いよ!?そんな程度の気持ちだったの!?」
もう一人の付き添いの同級生も驚く。何という変わり身の早さ。友人関係が心配だ。
だが冷めぬ興奮のまま彼女は自分達の仲について昂る想いを明かしていく。
「見ろ!ハジメさんの目を!目の下に出来た隈、あれはお前達不届き者を下手に傷つけないようにしつつもジャンヌさんとの時間を邪魔されないようにした証だ!」
「あぁ、うん、まぁそう言えますね。ただ言われると恥ずかしい、かな?」
「その努力を貴様は今踏みにじろうとした!!万死に値する!」
「うん落ち着こうか?よくそんな言葉知ってたな」
興奮する付き添いを言葉で抑えようとする。何というか、凄い熱心な人だと思う。人の、恋愛を応援する姿勢は何とも嬉しいのだが、しかしその応援のされ方は気恥ずかしいというか、やりすぎと言うか。
とにかくそのやり取りで友人関係を壊さないことだけがハジメの不安だった。しかしそんなのは杞憂のようで女生徒と連れ添いの同級生が呆れながら呟く。
「ダ、ダメだ、こいつ……早く何とかしないと」
「そんなに、このカップリング尊い?」
「笑止千万!この尊さが分からんかぁ!だからお前達は阿保なのだぁーー!!」
「何か憑りついてるのかこの子……」
思わずそんな感想が漏れる。なおジャンヌは未だ先程の言葉に悶える始末だ。ともかく、このヤバい状況、早く何とかしないと近所迷惑なのは確かだった。
何とか付き添いの子にもう少し声のトーンを落とすように要請する。
「あの……そんなに騒がれると家の者も寝ている方が……」
「あぁあぁああ!失礼しました。ほら、帰るぞお前達!」
「ちょ、私チョコ渡しに……」
「多分ダメだと思う。私も流石に投げて渡すのは危ないと思うし」
「そ、そんなぁ」
付き添いの子を中心に(というかほぼ独断で)帰ろうとする一同。こうなってもなおチョコを渡して来ようとする女生徒だったが、その同級生が正論を告げる。
実際それは危険ではあった。自分に当たるのはまだいいが、いや、それだとジャンヌが制御不能になってしまう。しかしジャンヌにもし当たれば流石に自身の堪忍袋の緒が切れる。そこまでしてもらったチョコをちゃんと処理できる自信はない。乱雑に扱いそうで怖い。
それに、ないとは思うがそれがもし爆発物に偽装されている場合もあり得る。投げられた瞬間、ジャンヌを抱えて逃げていた、というかさっきはジャンヌを抱えようとしていたくらいだ。そう言った意味で、危険ではあるもののあの付き添いの尊さを推す人の行動は助かったと言える。
そういう意味で、やや焦り過ぎではあるものの、付き添いの人が行った行動は模範的な対応であった。度合いは激しいが、出来れば不干渉であってほしい。その行いが出来る人は好印象だ。
その流れのまま二人を、というかチョコを渡そうとした女生徒を連れて帰ろうとする付き添いの女性。ともあれここは乗り切ったと思う。後はジャンヌへの謝罪を、と思ったところで付き添いの人がこちらに再度向き直る。
「あっ、私達もう帰りますので、お幸せに!」
「えっ、あぁ……はい」
「あと、学園とか、学内のSNSとかでも言っておきます。あなた達の邪魔するなって!」
「えぇ!?いや、まぁそれはありがたいんだけど……いや、大丈夫?それ」
いきなりそんなことを言われれば周章くらいはする。そんなの個人で出来るものなのだろうか。そういうのはドラグディア軍を頼るくらいしか考え付かなかった。
しかし付き添いの女性は意欲的な返事を返した。
「大丈夫!世界敵に回してもこの尊さは邪魔させぬ!それじゃあ!!」
言って返事をする前に彼女は連れと共に走り去っていく。嵐のような出来事。置いてけぼり感が半端ではない。
そこでようやくジャンヌが平静を取り戻す。先程の女性に対し複雑な感情を口にする。
「何なんですかあの人……勝手に、私達のことを、あーだ、こーだ言って……」
不機嫌ではあるものの、戸惑いを隠せない顔だ。ああいうタイプの人物に応援されたことが少ない為に、反応に戸惑っていると見えた。
正直に言って自分もリアルでああいうタイプを見たのは初めてだ。当惑せざるを得ないし、あの対応が正しかったのかは分からない。
だが、悪意があってあんなことはしないのではないかと思う。狂喜乱舞するあの光景は見ていて引きはするが言われていること自体は悪いことではない。もっとも迷惑をかけるようならそうではないのだが。
一応ローレインの方に連絡を入れようとする。だがそこで体がふらつく。
「うっ……」
「ハジメっ!?えっ、本当に大丈夫!?」
ジャンヌに身体を支えられて何とか立ちくらみに耐える。疲労がピークだ。ジャンヌに家に入ろうと提案する。
「ごめん、流石に本当に無理だ……」
「もうっ、そんなことになるかもしれないから、無茶しないでほしかったのに……。あれだってどうするか……」
ジャンヌはこちらを介助しながら立ち去った女性についてしきりに心配をする。余計なことをされて事態が悪くなることを望んでいない。ノット・ア・ジーの活動が続いている今の周囲への影響を気にしての発言、それに自分との間を邪魔されることを嫌がっての事だろう。
もちろんそれに対して考えていると告げる。
「それに関しては、ローレインに頼むさ。けど、眠い……」
「分かった、分かったからぁ!もう無理しないでっ、私も、いるから……」
ジャンヌが追わないことを約束して共に屋敷へと戻っていく。何とか目的は果たすことが出来たようだ。肩を貸されながら歩いていくうちに、元はつい先日の事を思い出す。
フォーンたちと書庫を調べた時に出たオーヴェロンの日記。その最後のページに書かれていたオルテンシア・ファーフニルの言葉が思い起こされる。
『この言葉は、あなたには届かない。だけど届くと信じて、残します。私は、あなたと居られて心から幸せでした。いつも、私の事を一番に考えてくれる。詩巫女というたった一人しか選ばれないという役割に、多様な未来を与えてくれた。きっと後世の子ども達は様々な未来を掴んでくれることでしょう。そして、私もそれに救われた。あなたというかけがえのない人に出会えたから。だけど、これを見て、悲しく思います。あなたは我慢をしてしまう人です。私には我慢をせずに、気持ちを表してほしいと言ってくれた。そんな気持ちに、私は甘えてしまった。だから、あなたの気持ちに気づけなかった。救世主様が舞い降りても終わらない争いに、心を痛めていたのに、私にはそれを見せなかった。ここでだけ、その弱音をこぼしていた』
事実、日記の過去の文面には目を凝らすと確かにオーヴェロンの苦悩とも呼べる弱音が散乱していた。形を変えての戦争の継続、騙し合いの国交、身内同士での権力争いもあり、ファーフニル家の地位確立も当代のフリード家当主との連携があったからこその物だったと書かれていた。
彼はずっとフリード家を継ごうとしていた。それでも最終的にはファーフニル家という新たな家を継ぐことを決めたのだ。もっとも、それは数年の短い間だったようだが。
そんなことを知った彼女は最後にこう残していた。
『だから、私はもっと理解してあげたかった。慰めてあげたかった。無理に我慢する必要なんてないことを、私があなたに教えたかった。それでもあなたは、悲しい顔をしてほしくないっていうんだろうけど。けれど、私はあなたと同じ気持ちを味わいたい。それが、私の最後の我儘です。もう叶わないけれど、いつかの未来、子ども達が、同じことに直面した時、分かってあげられる子が、困っている人に寄り添える子がいてくれることを私は願います。いつかの子達がこれを見て、愛する誰かに寄り添える未来であって欲しいな。君が望んだ未来も、そうだよね、オーヴェロン君』
そんな言葉を思い出しながら、ジャンヌの顔を盗み見る。彼女の顔は先程までの嫉妬に満ちた顔でも、かつての希望を見失った偽りの笑顔ではない。今を生きると前を見ている姿だ。
この顔を、守っていきたい。例え、元の本来いるべき世界に行ったとしても、この表情を守りたい。もう絶対に曇らせてはいけない。それが、レイアが救われるまでの自分の使命だ。
オーヴェロンとオルテンシア、二人のすれ違いを悲しく思う。けれども、自分はその二人のように、ジャンヌを愛せるのだろうか。違う世界の自分が、そんなことをしていいのか。同じ種族である二人でさえ、そんなすれ違いを起こしたというのに。
そんな事を考えて、ふと我に返る。今日はそんなことを考える日ではない。ジャンヌの想いを精一杯受け止めてやらねばならない。ジャンヌには無理を心配されている事を謝罪しなければいけない。肩を貸されながらジャンヌに尋ねる。
「ジャンヌ、こんなんでごめん。けど、やりたいってことはやるから……」
「そんなこと、今言わなくていいからっ!……強いて言うなら……無理しないで。一緒に……ねて、あげたい……」
「……分かったよ。常識の範囲内で、な」
「うん……」
その返事を聞いて安堵する。そして心の中で思う。
(オーヴェロン、オルテンシア、これで、よかったのかな……あなた達の大切な子どもへの贈り物は)
この時、元達はまだ知らない。元はもとの世界で、大切な仲間を、家族を失い、心を閉ざしていくことを。ジャンヌはそれを見て、何も出来ないことをずっと心の中で悔やみ続けることを。二人の仲は最悪の形で砕け散りそうになることを、まだ知らない。
それでも今は、今だけは平和に過ごす。
この日は昼過ぎまでずっと二人で眠っていた。それを、無事婚活を回避したフォーンも目撃し、気を利かせて休ませてやった。同じくその光景を目撃し、写真に収めようとしたクリエを諫めながら。
そうして昼からは邸宅でゆっくりとジャンヌの作ってくれたブラウニーを紅茶で頂きながら、戦いのひと時を忘れる日々を過ごせたのであった。
ちなみに、その後の知らせでテュートも何とか追い出しは免れたという。
◆おまけ
「おーハジメ。ちょっといいか?」
「ローレイン。どうした」
「この前のバレンタインの時の頼み事なんだけどさ、あれでちょっと事態が動いてな?」
ローレインから告げられる頼み事の件、と言われて思い出すのはあの付き添いの少女の発した言葉。あれの進展は確かに気になるところだった。
しかしその事態は思わぬ動きとなっていることを知る。ローレインが告げた。
「あれな、聖トゥインクル学園側が竜騎士詩巫女研究会として発足したわ」
「は?どういうこと」
「端的言うと竜騎士と詩巫女をもっと知り、その歴史を復活させていこうって流れになった。まぁ内容はお前達のファンクラブだけどな」
「ファンクラブ!?何だそれ……まさか、そのクラブ……」
「そいつらの最初の活動で、お前宛にチョコ渡さないようにってなったぞ。良かったな」
「やってる事過激すぎる!?いや、助かるけども……それは」
思わぬ副産物。正直言って望むところではある。また同じ事をされては迷惑だ。もっともこれから別世界に行くことになるので、ほぼ見る機会はないのだが。
それでも後顧の憂いがなくなったことはいいことだ。それをやってのけた付き添いの彼女には頭が上がらない。何かお礼をした方がいいだろうか。もちろんジャンヌと相談してだが。
そこで彼女の名前を聞いておこうと思い、尋ねる。
「それで、多分その中心になった女生徒の名前って、分かるか?」
「あぁ。名前はデジタンス・アウネス。っていうかお前も多分近いうちに会うぞ」
「えっ、何で」
「彼女な、学園卒業後ドラグディア軍の広報担当になるんだよ。で、そこで竜騎士詩巫女の宣伝部長をやる」
「えぇ……彼女が?」
当惑する。なぜそうなったと問いたくなる。しかしその前にローレインはそのまま役どころについて語る。
「急な進路変更だけど、元々そういう類の、雑誌担当目指していたらしくてな、今回の経歴とか含めて、うちが引き抜いた」
「お前が噛んでるのか……」
「だって行動力としては百点満点だぜ?トレノ先輩も当人がいない間の竜騎士詩巫女のイメージアップ担当としてはまず間違いないって太鼓判押してるし。ちなみに彼女の面接時の採用決定資料これな」
言われて渡されたのは一つの本。やけに薄い。表紙には大分美化された自分とジャンヌのイラストが描かれている。
めくっていくと二人の関係がいい感じに脚色されたイラストが複数載せられている。思いきりツッコミたい内容も多数みられる。所謂同人誌、薄い本と言われる部類の本だ。
しかし素人がただ書きたい内容を書いただけかと言われれば、そうではないように思う。メディアリテラシーに合わせ、過激な物は抑えている。というかイラストに関しては彼女が実際に目で見たであろうこちらの実際の風景をアレンジして描かれているように思える。構図には覚えがあった。
この世界に転移する前はメディア系を目指していた自分でも、広報としては理想とする嘘は書かない、はっきりと目立つ見栄えを重視しているようにも思える。それにイラストに添えられたコラムも、やや気恥ずかしい内容だが見守る信条の物が多かった。
そういった部分も含めて正直に感想を述べる。
「んー……こうして見るのは恥ずかしい、けど、メディアとしてはいいと思うな。彼女はそういった経験が?」
「元々はアニメとかのカップリングイラストとかをオリジナルで描いてコミックランドで販売する小さめのサークル主だったらしい。学園でも言われればどんなカップリングでも描く人らしくてな。レイジャン……あぁ、レイアとジャンヌのカップリングとか、ネアとグリューネ、それに前の時点でお前とジャンヌの絵も描いてたらしい。その一部をこっちにも持ってきてるらしいしな」
「すご。そういうサークル主とか初めて会うな。もとの世界含めて」
「そういうの知ってるお前にも驚くけどな。でも当人からそう言ってもらえたなら大丈夫そうだな」
「あぁ……でもジャンヌには一回話通しておいた方がいいかも」
「なるほど。また嫉妬するかもしんねぇしな。伝えておく。けどいい子だと思う。俺も情報屋として何度か依頼されてたし、信用できる」
それらを聞いて、その日早速ジャンヌに話を通した。かなり恥ずかしがってた上にやや不満げな彼女だったが、後日実際に会った彼女は、圧倒的なまでの馬鹿デカい感情を再び披露し、ジャンヌを黙らせた。
そうして彼女、デジタンスは広報担当に採用が決定したのだった。その後の活躍を、まだ元達は知らない……。
END
はい、バレンタインデー番外編、これにて終了です。
レイ「うーんオタクの反応結構あったなぁ……って感じだね」
ジャンヌ「デジタンスさん、途中00とかGガンダムのキャラクタ―乗り移ってませんでした……?」
けど私のバレンタイン絵とか見た時の反応とか考えてみるとそうなるのかなって思った次第ですよ。
レイ「反応のモデルは作者かい!」
ジャンヌ「何か最近はわたくしのカードイラスト見た時よく公式のツイートに「ありがとうございます」ってだけ付けてることが多いんですけど、実際そういうこと言いたい感じです?」
この気持ち、まさしく愛だと叫びたい気分だわ。今回のイラストもどれもいいんですよね。
レイ「ほ、本気だこの作者。でも、そんな暴走から生まれたこのデジタンスちゃん、行動力は凄いね……薄い本作るとか」
ジャンヌ「作者としてはこのキャラはどういう立ち位置で作成したんです?」
今回用のキャラとしつつも、後々出せるような感じだね。本編での登場も予定しているので、待っていただければ現在の元君達への反応をみられるかもです。
レイ「や、やめといた方がいいと思うな!?」
ジャンヌ「今の元さんとジャンヌ・Fさんの仲を見たら、色々愕然としそうですよね」
多分「つら……マジ無理……死ぬ」とか言ってそうですね(;´・ω・)
レイ「書く気満々だぁ」
ジャンヌ「そのまま反応で書くんです?」
もう少しショック受けさせた反応書きたいところです。とまぁ、こんな感じでしたが、いかがだったでしょうか。
レイ「この頃はまだ元君も、ジャンヌ・Fちゃんを大事にしてたのに本編と来たら……」
ジャンヌ「大事に、というより、過保護になり過ぎている感じですよね。もっと壁を作らずに触れ合えるようになってほしい。いえ、今度こそですね、すれ違いのない遠慮とか、申し訳なさのない関係を築いてほしいと思います、二人には」
というわけで今回はここまでです。次回本編もよろしくお願いします、大体本編投稿の6日後あたりですね。
ジャンヌ「それでは、よいバレンタインをお過ごしください」
レイ「それ危険な香りがするなぁ……」
ジャンヌ「ですよね。まぁでもこれが台本ですし」
それ以外思いつかなかったです。また次回。