機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー。藤和木、あとこれだけ打ち込めば終了!」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。これだけでも最後に打って明日を迎えましょう」

うん、眠気マックスだけど明日投稿なら今くらいしかないし;つД`)
それでは5周年を記念した連続投稿、その最後のEPISODE39の公開です。

レイ「魔王……って聞くと最高最善のあの王様だよね」

ジャンヌ「作品発表時期も丁度その期間でしたもんね」

正直言ってそこからもアイデアもらったけど私としては今後の展開としてその要素は必要だと思ったから取り入れた。でもどちらかと言えばこの日本でかの第六天魔王名乗った織田信長の話から取り入れているんだけどね。

レイ「でもその作品も織田信長関係あるじゃん?」

私まだオバクウォ見てません!( ;∀;)

ジャンヌ「平成に取り残された憐れな作者」

まぁこの自粛期間で見れればなぁとも。まぁ今回はその魔王はあんまり関係しないんだけどね。あと今回の途中からちょっと書き方変わってます。前に取り入れていたものを戻したって感じですが。というわけで本編をどうぞ。


EPISODE39 魔王の生まれた日2

 

「く、うぅ……」

 

『大丈夫か、羽鳥隊長』

 

 機体のフィードバックダメージに呻く。大型化したマキシマムに放り出された羽鳥。それを助けたのは間島だった。

 挟み込みを受けた機体はシールドで防御したものの、いくつかのスラスターが使えなくなっていた。だがまだ飛行は辛うじて可能なレベルだ。すぐに立て直して飛び立とうとする。

 

「くっ!」

 

『無茶すんな。圧迫されたせいで電子空間に影響が出ている。武器もろくにないんだ』

 

 制止する間島。彼の言う通り機体の電子空間が破損している。機体の反応も悪い。武器もサーベルくらいしかない。

 しかしまだ戦っている者達がいる。戦闘は続いたままだ。一人で撤退することを告げる。

 

「私一人で帰れる……っ!」

 

『お前なぁ……。おい、3番と5番機で彼女を後方まで下げさせろ』

 

『了解しました、間島隊長』

 

彼の部隊員が隊長からの指示に従い、こちらの機体を抱える。その時に見える。あの機体と機動戦を繰り広げる深絵隊長達の姿が。

 華穂の機体と、海上方面軍にいたはずの夢乃の機体。慣れない機体なのに、自分よりも上手く扱えていた。

 

(私、こんなところで……くっ)

 

 悔しさを噛みしめる。悔しいがどうにもできない。後退させられる中で、アラートが響く。

 

『ちっ、こっちの方に感けていられるのかよ、敵さんは!』

 

『隊長!』

 

『俺がやる!羽鳥を下げろ!』

 

 こちらを狙ってくる敵機が二機。応戦する構えを見せた間島がビームサーベルで斬りかかっていった。

 機体を担がれているため後ろの詳しい状況は分からない。回線だけで状況を探る。今のところ彼は上手く立ち回っているようだ。

 その中で爆発音が響く。敵機を撃破したのだ。

 

『まずは一つ!後は……って、そっちに一機行ったか!』

 

 間島の発言通り敵の一機がこちらに銃撃を放ってきていた。後方からの襲撃に対し、部隊員の一人が応戦しようとした。

 

『クソッ、ってあれじゃビームが効かない』

 

 敵はマキシマム。リフレクトアームの展開によりビーム兵器を無効化されてしまう。部隊員達のソルジアV2程度では応戦の難しい機体だ。

 敵はそれを分かっているのか、悠々とその牙を向けてくる。

 

『へっ、この機体に貴様ら程度のモビルスーツが敵うもんかよ!死ねっ!』

 

「くっ……私を離せ!囮になって……」

 

 囮になることを提案する。そうでもしなければ不利のままだ。ところがそれを止めるように間島の声が響いた。

 

『そんなこと、やらせるかよ!!』

 

『何!こいつッ』

 

 後方から追ってきた間島のソルジア・エース。右肩のシールドと左腕の肘から下を失った機体が突撃を敢行した。

 迎撃するマキシマム。それに立ち止まることなく一気に駆け抜ける。ビームの一撃がシールドアームを貫く。彼は止まらない―――そして。

 

『でぇぇぇい!!』

 

 敵のアームを躱して、その胸部にビームサーベルを突き立てた。完全な一撃。間違いなく討ち取った。

 不安定ながらも体を向き直った彼女も、それを見届けた。助かった。もう敵もいないはず……。安堵したその時、それは突然訪れた。

 

『この野郎!!』

 

『こいつ、自爆を!?』

 

「離れろ、間島!」

 

 貫かれたにも関わらず敵は未だ動いた。アームユニットで間島の機体を捕らえる。自爆に巻き込もうというのか。そうはなるまいと間島ももがく。

 

『クソッ、流石に訊いてねぇぞ!』

 

『た、隊長!』

 

 部隊員が助けようと試みるが、ライフルでは自爆に巻き込みかねない。じれったく思い、羽鳥はライフルを奪って放つ。

 

「貸せっ。……撃つ!」

 

 狙った一撃が敵のアームの一つを後ろから撃ち抜く。拘束が一つ外れたことで間島ももう一つのアームを引きはがした。

 

『よしこれで抜け出せ……』

 

 抜け出せた。だがその瞬間、悪夢は訪れた。拘束から抜け出したソルジア・エースの機体を、背後からビームの一射が撃ち抜く。

 一瞬、時が止まったかのように思考が止まる。なぜ?どうして撃ち抜かれたのか。羽鳥は知らなかった。間島が彼女達を助けるべく、迫ってきていたMSの一機に背を向けて向かってきたことを。

 

『……あ』

 

 間島は何か話そうとした。しかしそれよりも先に機体が爆散した。辺りを次元粒子がまき散らされる。その光景が目に焼き付けられた。

 何も言えなかった。自分を助けようとしたために、彼は死んでしまった。自身の身を顧みずに。いつもはやる気のなさそうにしていながらも任務だけはこなしていた。話口調や考え方から相容れることはなかった。

 そう、本来なら彼にだって自分を気に掛ける理由などないはずだったのだ。それなのに彼は……。

 隊長達をやられて部隊員達が放心する。

 

『た、隊長……』

 

『誰が……アイツか!』

 

 部隊員が指さす先には、空中姿勢に慣れていない様子のマキインが放ったばかりのライフルを向けてその戦果に舞い上がっていた。

 

『や、やった!素人が出てくるなとか偉そうなこと言ってたけど、簡単に倒せんじゃん!』

 

 あんなやつに、間島がやられたのか?この程度の事で子どものように無邪気に笑い、人を殺す戦闘の素人が……。

 沸き立つ怒り。敵はこちらを見つけ、愚かにもこちらに向けて近づいてくる。

 

『へっ、その機体も、火花挙げてんじゃんか!おらっ、嬲ってやるぜ!』

 

『くっ、羽鳥さんは下がって……』

 

「―――いや、私が、やる!!」

 

 ビームサーベルを抜き放つ。そしてスラスターが壊れているにも関わらず、距離を詰めた。近づけさせまいとビームライフルを放ってきてはいたが、先程の時のような鋭さはない。向かってくる敵に手が震えて、狙いは甘かった。容易く近づいた羽鳥は間島を失った悲しみをぶつけた。

 

「お前がっ、お前がぁぁぁ!!」

 

『なっ、このや……』

 

 逃げようとした時にはもう遅く、羽鳥の繰り出したサーベルの突き出しで貫かれていた。もだえ苦しんだのち、サーベルを抜く。だが続けて別の個所を貫く。何度も、何度も。

 

『がふっ!?ぐぅ!?』

 

「苦しんで、死ねっ!!」

 

 とても機体が限界とは思えない動き。間島の部隊員達も慄いていた。それに構わず羽鳥は続ける。

 何度目かの突き刺しで機体が負荷に耐えられずに爆発する。爆炎を耐えたボロボロのソルジア・エース。それでも彼女の怒りは収まらなかった。

 許さない。あんな不意打ちで彼を殺すなど、兵士の隅に置けない。ルールのない戦い、戦争だとしても、その行動を羽鳥は許せなかった。やはり次元覇院は、人の道を外れた外道はMSを持つべきではない。彼の無念は私が晴らす。その為に彼女は決意した。

 この世界に争いを齎すもの、そのすべてを駆逐する、あるいは「支配する」と。それはまさに彼女の正義が暴走した時だった。

 

 

 

 

 夢乃も含んだMSオーダーズ最高戦力の三人が大型マキシマムを抑え込む。だが抑え込むのが精一杯。ゲルツの攻撃は更に苛烈さを増していた。

 

『愚か、愚か愚か!貴き者の前にこれっぽっちの力で、超えられる物かぁ!!』

 

 肩に装備していたアーマーが外れる。装甲が分離して、砲塔をこちらに向けた。

 

「遠隔操作端末……!?」

 

『あんなものまで……距離を取るよ、華穂!』

 

『了解っ!』

 

 空中を動き回るそれに対応する三人。それらもビーム反射装甲で構成されており、ビームの使用は厳禁だった。対して遠隔操作端末からはビームが遠慮なく放たれる。

 少しでも動きを阻害しなければ。華穂はガンランチャーの弾倉をクラスター爆弾へと切り替える。クラスターの爆発範囲ならまとめて態勢を崩せる。残り弾倉が少ないが、それでもやるしかない。

 

「っ!!」

 

 クラスター爆弾が放たれる。空中で分散して空域を爆発で埋め尽くす。迫りつつあった空飛ぶ装甲が爆風を受けて乱れる。予定通りだ、今なら当てられる。ガンランチャーの弾倉を、切り替えるはずだった。ところが。

 金属音と共に弾倉の回転が停止した。トリガーを引いても弾丸が出なかった。おかしい。異変を訝しむ。

 

「なんでっ……」

 

 そこで思い出した。作戦前に須藤司令に言われたこと。

 

(弾倉の切り替えと衝撃による弾詰まりには気を付けたまえ)

 

 弾倉の切り替え、そして発射の衝撃。これまで何度も放ち続けてきた、そのツケが回ってきたのだ。

それに最初の頃こそ慎重に扱っていたが、徐々に銃の扱いの方に気が回らなくなっていた。なるべくしてなった結果。だがそれがこんなところでとは。それを逃さず敵の端末が狙ってくる。

 

「っ!!」

 

『深絵さん!?』

 

『弾切れ?それとも……』

 

「ごめん、二人とも。これ以上手助けは……きゃあ!?」

 

 謝罪しようとしたのもつかの間、敵の射撃が機体を襲う。コンテナで防御する。コンテナの表面がビームで焼かれる。シールドの耐熱処理をしていなければ貫かれていただろう。

 残念だけどこれ以上の戦闘は私ではどうにもならない。せめて格闘に移行出来る兵装さえあれば……。

 

(私、射撃だけじゃあいつらに何にも出来ないよ……!)

 

 防御しながら距離を取る間、二人が果敢にも近接兵装で立ち向かっていた。二人に任せきりなのが悔しい。隊長なのにそんな嫉妬を感じるのはおかしいと思う。だけども無力な自分を呪っていた。

 せめてダンガンがあるのなら……そんな時、通信が開く。回線相手は須藤司令。須藤司令は待っていたと言わんばかりの言葉を掛ける。

 

『深絵隊長、苦戦しているようだな』

 

「須藤さん!すみません、一度撤退します。ダンガンの準備を」

 

『いや、その必要はない。それよりもいいものを、君のエンジニアから届けさせてもらっている』

 

「エンジニア……真希さんが?」

 

 真希からの配達に予想外な反応を示す。だって、もうそんな新兵装なんて聞かされていない。何を送ってくるのかと思う中、接近警報が近づく機体を示した。

 近づいてくるのは……自衛軍が採用する戦闘機「F-22改」。その機体がミサイルを発射する。そのコースに乗れとの機体コンピューターからの指示。既に敵の端末はこちらの追跡をやめて華穂達の迎撃に戻っていた。

 深絵は機体をミサイルのコースに近づける。相対速度を合わせて、ミサイルが分解した。中から出てきたのは、手持ちのライフルだ。戸惑いながらもそれを掴んだ。

 

「これは?」

 

『それは試作ブレードガン、「ブルー・ジョーカー」。元君の機体から技術を使用して、あなたの後継機開発に役立てようとしていた武器!』

 

 武器の経緯について話す真希。コンピューターにはその使い方が表示される。深絵はそれに従い、武器のストック部分を引き出し、持ち手を出現させる。握ると、銃の先の二つの穴から光剣が形成される。

 

『ビームサーベルなんかより、よっぽどあなたらしい武器だと思うよ』

 

「真希ちゃん」

 

『言いたいことは分かる。でも、これは光姫さんからの遺言でもある。自分がいなくなって、深絵がどうしようもならなくなった時も考えて、気を回してあげてって。自分はそれに気づかずに負けただろうから。深絵ちゃん、それであいつを、ぶった切っちゃえ!』

 

 背中を押される発言。今まで避けてきた近接戦重視の兵装。ずっと味方に、光姫ちゃんと一緒に乗り越えてきた。だけどもう光姫ちゃんは居ない。華穂ちゃん達はいても、味方を守れる隊長は、SABERの隊長は私だけなんだ。

 それを理解して、前を向く。華穂も夢乃も剣を手に戦っているが、押し切れない。実弾で強力な援護がいるのかもしれない。だけどそれではこれまでの戦術と変わらない。あの敵に挑むには予想外の戦法、今までとは違う攻め方が必要だ。

 それを光姫ちゃんは予期してた。私は空を見上げる。もう朝日が昇り、空からは星が消えている。だけど感じる。光姫ちゃんの視線を、光姫ちゃんの願いを、感じる気がする。

 

(ありがとう、光姫ちゃん)

 

 そんな独り言を心の中で呟いて、それを用意し、手回ししてくれた真希ちゃんと須藤さんにも感謝を伝えた。

 

「ありがとう、真希ちゃん、須藤さん。私、行くよ」

 

『うん、深絵ちゃん!またその綺麗な髪、触らせてね!』

 

『憑き物が取れたようだな。行け、深絵。スナイパーに剣を抜かせたこと、逆に後悔させてやれ!』

 

「はい!」

 

 掛け声とともに、重りとなっていたコンテナを外す。ビームスナイパーライフルがあろうが、お構いなしだ。そして腰のエディットアームも外す。

 速さに不要な物をすべて外して機体出力をすべて背部ブースターユニットに回す。チャージの後、私は解放させた。

 

「いっくよぉぉぉぉぉ!!」

 

 突貫した。

 鋭く、圧倒的な速度を伴った突撃。真っすぐに敵大型MSへとその矛先を向ける。

 敵が気づく。しかし遅い。

 

「もらったぁぁぁ!!」

 

『何っ!?』

 

 確信を持って振り切った一閃。銃槍の光刃の一撃。その軌跡が敵の左腕を肩口から切り裂いた。蒼の一閃、それが戦況を変える。

 

 

 

 

 速かった。そうとしか形容できない一撃。夢乃も何が起こったのか分からなかった。敵が華穂へと狙いを集中し、殴り続けていた。こちらには端末を飛ばしてけん制。近づこうにも近づけない。

 攻撃を喰らい続けていた華穂は徐々に態勢を崩していった。それを見逃さず、敵は腕部にいビームのスパイクを形成した。確実に華穂を殴り貫こうとしていた。

 そんなのされたら華穂は……!私はすぐに向かおうとする。しかし遠隔操作されたアーマーがそれを許さなかった。

 

「この、邪魔よ!かほちー!」

 

 叫んだ。もう駄目だ。そのはずだった。だけども突然響いた深絵隊長の声に意識が向けられた。

 何で、深絵隊長の声が?私の疑問は続く一閃で吹き飛ばされた。蒼の狙撃戦仕様のはずだった機体が圧倒的な加速を以って突撃、あの巨大な敵MSの腕を斬り裂いてしまったんだ。

 あまりにもこれまでからは予想の付かない攻撃。第一狙撃機体が前に出ることなんて、普通は考え付かない。けれども、それは敵も同じ。予想だにしなかった一撃が敵の勢いを削いだ。

 突飛な行動に華穂からも困惑の声が漏れる。

 

『えっ……深絵さん!?』

 

 蒼の機体はそのままのスピードで直進し続けてからブレーキ、急転換する。その手に握るのはスナイパーライフルともガンランチャーとも違う、光剣を煌めかせる銃。

 その銃剣を構えたまま、隊長である深絵さんは私達へ指示を送った。

 

『華穂ちゃん、一旦距離取って!夢乃ちゃんは私に合わせる形で、近接戦を!』

 

『え、ぁ、はい!』

 

「で、でも深絵さん近接戦は不得手じゃ」

 

『うん。そうだった。でもやるよ。私のやり方で!』

 

 私のやり方、そう言われて察するのは難しかった。それでも考える。さっきの言い方から夢乃自身が主軸となれば、深絵がカバーしてくれるのだと。

 これまでとは違うやり方だが、考えを持って動いてくれるという彼女の確かな自身を感じた夢乃。エリミネイターソードⅡを二刀流で構え、それに応えた。

 

「了解っ!」

 

 応答してエリミネイターソードⅡで仕掛ける。片腕を失って敵は避ける方向に動きを変えてきていた。それに残った遠隔操作端末を直接ぶつけてこようとしていた。

 

『このッ、まぐれの一発くらいで……!』

 

 まぐれの一発、確かにそうかもしれなかった。だけど戦いではそれが左右することだってざらにある。

 これまで神名川支部で戦い続けてきた夢乃はそれを見てきた。そして気づいた。昨日の元達の言葉で。今まで戦ってきた味方、そして敵もそのまぐれの一発で生き残り、また死んだことを。

 敵も味方も、生き残ることに必死だった。生きるために相手を殺す。偶然かもしれない一撃も、裏返せば生き残るための博打の一撃なのだ。

 そしてそれを深絵さんは掴んだに過ぎない。それでもそれが確実にあの人の戦闘技術に磨きを掛けた。その証拠に。

 

『このっ!!』

 

『ぐぅ!この野郎、狙撃機が前出てきて、トチ狂ったか!!』

 

 深絵さんが機体の背部スラスターを用いて繰り出す瞬発の一撃は、確かにあのMSを攻め立てていた。攻撃は大振りなものが多かったけれど、これまで左手に装備していたシールドで隙を小さくして攻めている。

 相手の言うことも分かる。だけど今のこの状況に限っては正しい選択だ。相手自身がそれについていくのに後れを取っていた。それを生かすために、私も剣戟を絶やさない!

 

「このっ!遅いっての!」

 

『ぐぅ!?この……小癪な……ぐぉ!?』

 

 二人の斬撃に圧されていくゲルツ。反撃しようにもそれを許さない二人の剣戟が機体に次々と傷を付けていく。鏡のような機体が今や裂傷が醜く残る機体に。再び機体を突貫させて振り上げた深絵の一撃が、肩のアーマーユニット接続部を斬り裂いた。

 左腕の分と合わせて端末のマウント部分は封じた。回転効率の更なる低下を受けて、ゲルツが怒りに声を震わせる。

 

『おのれ、MSオーダーズの素人どもめ……!前線に出たスナイパーに負けるなど、あっていいわけねぇだろうが!!』

 

 エネルギーの残りに気に掛けることなく遠隔操作端末を差し向ける。そして敵は残った右腕からビームを放ってくる。

 こんなの簡単に避けられる。そう思って右に避けた。けれど反対へ避けた深絵さんが何かに気づいてこっちに叫んだ。

 

『!ダメ、後ろ夢乃ちゃん!』

 

「え……うわぁ!?」

 

 着弾と思われる爆発。嘘、避けたのに!?そう思った私は機体状況を疑わしく確認する。イミテーションウイングに着弾したという事実をコンピューターは告げた。一体、どうやって?

 続く砲撃を一旦後方に注意しながら避けてみる。すると後ろに回っていた敵の遠隔操作端末がその輝く表面で敵の放ったビームを受け止め、こちらに弾き返しているではないか。

 

「端末で反射してこっちに!?」

 

『その通り!お前らをこのままこのビームの檻に閉じ込めてくれる!』

 

 ビームの檻、とはいささか言い過ぎだとは思う。既に左腕を無くしている時点で、ビームの放つ本体の箇所は途切れている。

 しかし、それでも周囲の端末がどれだけビームを残しているのかは分からない。迂闊に敵に飛び込んで、後ろからビームでも喰らえば……。

 動けない二人。そんな二人を嘲笑うゲルツ。

 

『ハハハハハッ!狙撃に徹していれば、道はあった物を!』

 

 こいつ、さっきまで押されてたくらいで!怒るもその通りどうしようもできない。だけども奴は忘れていた。もう一人の存在を。

 そしてその存在、彼女は思い切り後ろから奇襲した。

 

『私を忘れてなーい!?』

 

『ぐぅ!?』

 

「かほちー!」

 

 かほちーナイス!心の中で華穂の奇襲にグッと称賛した。思い切っての後頭部への斬りつけで敵の頭部半分にMS刀の刃が刺さった。

 本来もっとも対策すべき奇襲。ところが彼は先程までのこちらの怒涛の攻めと呼べる攻撃に華穂の存在を忘れていたらしい。非常に滑稽だが、しょうがないのかもしれない。

 訪れた好機。深絵さんにも叫んだ。

 

「深絵さん!」

 

『うん!』

 

 二人で武器を構えて周囲に展開する端末に攻撃を仕掛ける。こちらへの初動対応の遅れた遠隔操作端末は、あっという間に光剣、そしてシールドのバンカー部分で貫かれて破壊される。

 不覚を取った間に武装のほとんどを撃破されたゲルツが、華穂を小バエのように振り払いながらわなわなと拳を握る。

 

『貴様ら……こんな小細工しか出来んのかぁ!!』

 

 小細工とは、笑わせる。もともと味方を呼ばなかったのはそっちなのに。

どうであれこのチャンスを逃しはしない。深絵さんが銃槍を腰だめに構えて再び突撃の体勢を作ってこちらに叫んだ。

 

『夢乃ちゃん!あいつを抑えて!』

 

「はい!」

 

 エリミネイターソードⅡを両手に突撃する。ビームライフルを撃ってくるがその程度かすりもしない。かほちーも撹乱に徹してくれていた。

 

『ほら、ほらぁ!!こっちだって!』

 

『くぉの~……!!』

 

 二人に警戒しなければならない敵は素早く手を動かして弾幕を散らす。うち一発が私の目の前に。だけどそれを右手の剣で切り捨てて、反対の剣を一気に振るう。

 

『いっけぇ!!』

 

『づあっ!?』

 

 敵の機体の腕部、その中でも一際脆いであろうビームライフルの銃口になっていた指部分を手甲に向けて斬り裂く。

 ビームスパイクまで潰す一撃で敵の攻撃の手をほぼ完全に排除した。私は深絵さんにトドメの一撃を託した。

 

「今です!!」

 

『これで、終わりだよ!』

 

 溢れんばかりの叫びと共に、ブラウジーベンが加速する。再び蒼き閃光となってマキシマムへ向けて突き進む。

 妨害などない。敵は機体のスラスターを噴かせて必死に逃れようとする。けれども深絵のブラウジーベンもスラスターで位置を調整する。

 

 

 

 そして、その一突きが敵を貫く。敵の装甲を真正面から、中央を貫いた。間違いなく、敵の息の根を止めた刃の入り方だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「羽鳥さんに変なフラグが立った件について」

ジャンヌ「これもう裏切る奴じゃないですか?え、大丈夫です?」

それは今後の展開に注目しよう(´-ω-`)

レイ「流した……って書き方変わったって深絵ちゃんとかの心情の言葉を()表記しないで地の文に加えたってところ?」

そうそう。まぁこれからも()使っていくんですけどね(´Д`)

ジャンヌ「昔はそういう使い方していたんですか?」

ネプの方見てた方なら覚えているかもですが、途中からなくなっていますね。どうしてその書き方やめたのか未だに謎ですが(´・ω・`)そういう書き方好きだったんだけどなぁ。

レイ「けど改めてそういう書き方に戻すのもいいんじゃないかな。それよりも語彙力増やすのが重要だけども」

はぁい(T_T)

ジャンヌ「まぁそれはそれとして。深絵さんの格闘戦、ブースターの加速力に任せたヒット&アウェイでしたが、それが見事にはまりましたね」

隙を見て重い一撃で一閃の華穂、連撃の夢乃、一撃離脱の深絵。急造チームだったとはいえ、それで見事に撃破ですからね。ただこれもうちょっとだけ続くんじゃ(゚∀゚)

ジャンヌ「いや、どうやって続くんですか」

それはのちのお楽しみに。

レイ「まぁでもこれで深絵ちゃんの方は敵陣地に取りつけそう♪後は元君の方。沢下をやっちゃえ~!」

それでは今回はここまでです。ようやく寝れるよ……( ;∀;)まぁ1時間程度だったけどもここまで。

ジャンヌ「お疲れ様です。それでは次回からはまた一話ずつの投稿、お楽しみに」

最後に、5年間の間に作った作品を見てくださっている方々本当にありがとうございます。これからも続く限り書いていきますので改めてよろしくお願いします。

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