機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、皆様。先日までの活動5周年の連続投稿お付き合いいただきありがとうございます。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~」

今回からはまた1話投稿です。それではEPISODE40の公開です。

ネイ「深絵さん達の戦いが終わった、となれば、後は元さんと沢下との対決ですね」

グリーフィア「理性的になれば何事にも臆することはないって聞くけど、果たしてそれが通じる相手かしらねぇ」

DNによる汚染状態が最大のイレギュラーとなる戦いです。おまけにシュバルトゼロガンダムは基本形態とエラクスのみ。元君に勝ち目はあるのでしょうか?と言った具合で本編をどうぞ。


EPISODE40 魔王の生まれた日3

 

 元の駆るシュバルトゼロガンダムと沢下の駆るマキシマム・タイラントの激闘は今なお続いていた。いや、その激しさは徐々に苛烈さを増す。

 

「このっ!はぁ!!」

 

『ふぅ!!その程度か!』

 

 沢下の煽りに何度目かの舌打ちをする。こっちも機体性能は最大限出している。出しているはずだ。だが、相手の出力を上回れない……っ!

 右手のブレードガンにビームサーベルを纏わせる。リーチの伸びた斬撃を一回転して振り回す。が、それを大きく宙返りして回避した沢下の機体。回避と同時に手を銃の形にしてビームライフルを乱射する。

 

「クソッ、ジャンヌ!」

 

『DNウォール、再度展開!機体駆動系にエネルギー優先供給!』

 

 ジャンヌの声と共にガンダムをDNの障壁が覆った。敵の攻撃をDNウォールで受け止める。

 弾丸が逸れて周囲の地面へと着弾する。DNウォールを解除すると同時に、再度攻撃を仕掛ける。今度はボウゲン・ランツェの斬撃からのビームスパイカーで攻める流れだ。

 自身の考えたように機体を動かす。ボウゲン・ランツェの槍部分は沢下の機体の振りかざす大型大剣に受け止められる。

 

『この程度、ぬるいんだよ!』

 

「そうかよ!」

 

 沢下に言葉を吐き捨てる。戦闘になって10分。どうにも押し切れない。シュバルトゼロガンダムがこれまでに会得した進化形態を失ったのは分かっている。だから俺自身、機体の操縦速度を上げて補っているつもりだった。

 ところが戦局は互角。それどころか相手の方が余裕の見られる状況。攻撃を裁き合い、一向に攻めきれない。

 おかしい。いくら機体性能が落ちていても、こうまで圧倒出来ないのは予想外だ。思い当たるのは機体性能の低下に加えてジャンヌの精密さが欠けているからか、と思うもすぐに否定した。

 

(いや、ジャンヌはやってくれている。これは俺自身の問題か!)

 

 まだシュバルトゼロガンダムの性能を生かし切れていない、自身の未熟さ。まだシュバルトゼロガンダムはこんなものではない。自身を奮い立たせ、大きくジャンプするような上昇で上から攻め入る。

 

「レイ・アクセラレーター、ビームソード補助出力へ!」

 

 シールドの下部から形成された光剣。ビームスパイクを放った直後、とんぼ返りの姿勢で空中回転して斬撃を行った。

 敵腕部を斬り裂く。そう思った斬撃は確実に捕らえていたコースを敵のビームスパイクを形成させた拳で狂わされる。

 逸らされたことで機体が不安定になる。その機体へマキシマム・タイラントの両拳合わせた振り下ろしが炸裂した。

 

『砕けろォ!!』

 

『きゃん!?』

 

「グァッ!?っ!!」

 

 確実に腹部へと刺さる一撃。それを、シールドで防御した。だが機体はそのまま地面へと叩き付けられ、地面を跳ね返る。

 追撃のストレートを何とか回避して、反撃を行う。反撃のブレードガンによる一閃は敵の手首を掠めただけに留まる。

 出力で負けている。たかが赤のDNでも四つもの膨大なエネルギー供給もあれば、ツインジェネレーターシステム機を圧倒できるとでも言われそうな戦力の差だった。

 だけど、それだけじゃない。俺は沢下から発せられる、狂っているが、狂っているからこその柚羽への想い。柚羽の為となる俺達への殺意の大きさが、執念が奴の機体に奴が付いていかせていた。

 こちらがその妄執に呑みこまれそうなほどの感情を抱いている……。これがプレッシャーとでも言うべきものか。そのせいか機体も重く感じる。DNLだからこその負荷が翔けられていた。

 元の苦戦の理由を知っているはずもなく、沢下は変わらず柚羽の望んだという理想を無心続ける。

 

『さぁ、もうすぐだ、柚羽……。お前と共に、お兄ちゃんは楽園へと行く。この世界が楽園となる。その邪魔となるガンダムも、今ここで排除してやるからなぁ!!』

 

「そんな思い通りに!」

 

 消えはしない。この世界は死者の為の世界なんかじゃない。奴の考えを否定し、ボウゲン・ランツェを構えてシュバルトゼロガンダムで襲い掛かった。

 敵は対応を変えて腹部からマキシマム・ホーリーも構えていた銃斧と剣を取り出した。取り出した武装は一つになり、より大きな大剣へと形を変える。

 大剣を武器に沢下はこちらと切り結んだ。質量の重さと機体の出力で徐々にこちらが押されていく。

 

「くっ……ジャンヌ、パワーを上げろ!」

 

『やってます!でも、どうしたってシュバルトゼロガンダムだけじゃ……』

 

 当たりたくなくてもジャンヌに当たってしまう現状。こんなところで食いしばれなくてどうする?こんなところで終われない。俺も、そして、こいつも!

 元は確かめるようにシュバルトゼロに向けて語りかける。

 

「本気見せろよ、シュバルトゼロ!!」

 

 機体の瞳、そしてユグドラシルフレームが輝く。渾身の力を振り絞って敵の大剣を弾き返す。

 敵は後方に少しだけ下がる。その間に元はガンダムを懐に潜り込ませる。敵も払おうとしたが、それより前にガンダムの左腕、秩序の盾の先で一気に腹部を刺し貫いた。

 

『がっ!?タイラントの腹を!?』

 

 予想だにしない事態に沢下の動揺が声に聞こえた。

 確かに中央装甲、おそらく先程戦ったホーリーとかいう機体のシールドが形状的にそのまま使われているのだろう。かなりの硬さを誇っているのは見て分かった。だが構造的なもろさを既に看破していた。そこを一点収集して思い切り貫いた。

 内部に攻撃が通った。後は中で放つのみ。ボウゲン・ランツェの機構を操作した。金属の槍が徐々に縦に開こうと装甲を押し開く。

 

『くっ!離れろォ!!』

 

 当然沢下はこちらを振り払おうとした。だがその巨腕にこちらもビームマシンキャノンとレイ・アクセラレーターから形成したビームソードで応戦する。敵の大剣、そして腕部と競り合う。

 これしかない。全身があの反射装甲で構成されている以上、その内部に剣を突き立てて内側から砲撃する。刀身を開いて砲撃するこのボウゲン・ランツェなら、出来る。

 もうすぐ射撃態勢を取れる。敵の手を抑え込んでいる内に、と砲身の展開を心の中で急かす。しかし。鈍い金属の音が唐突に響いた。

 

「なっ……」

 

『嘘……っ?』

 

 折れた。敵の体に突き刺さっていたボウゲン・ランツェの槍が、根元からぽっきりと。刀身の展開が敵の装甲の強度に耐えられなかったのである。

 生まれる困惑。確かに刀身の強度が不安だとは聞いていた。けれどもまさかこのタイミングで、こんな重要な局面で折れるとは。

心理的不安定による隙を沢下も見逃さなかった。

 

『ぬうあぁ!!』

 

「ぐっ!?」

 

 大剣でこちらを弾き飛ばす。左腕で握っていたシールドが右肩のアームから引きちぎられた。

こちらが態勢を立て直そうとするよりも早く、沢下の機体が肉薄して剣を振り下ろす。剣の一撃がシールドごと左肩のアームを切り離される。

 たちまちシュバルトゼロの防御手段、そして攻撃手段が削られた。シールドを投げ捨て、得意気になる沢下の声。

 

『ハハッ……俺の、俺達の希望に傷をつけた罪、この程度で済むと思うなぁ!!』

 

 折れた剣に触れた後、大剣を構えて再度接近戦を挑んでくる。

 こうなった意地でも貫き通す。ブレードガンを構えて、その接近戦に応じる。ジャンヌからは警戒するように指示が。

 

『ちょっとハジメ!不味いですよ、接近戦は!』

 

「だけど、突破するにはこれしかない!」

 

 なるべく距離を取るべくブレードガンにビームサーベルを形成する。秩序の盾も今ではもはや無用の長物。左腕から排除して両手にブレードガン・ニューCを構えて挑む。

 こちらのスピードを生かしての斬撃も、今の沢下相手には通じない。これまで以上のあり得ない程の反応速度でこちらを止めてくる。

 DNの汚染は搭乗者を狂わせる代わりにDNの力に対し非常に敏感になるという。おそらくその感知能力がこちらの機体を捉えている。

 こちらにも敵意を察知できるDNL能力があるにも関わらず押し込まれているのも、DNの汚染による狂化で機動の負荷が鈍くなっているのだ。動きは読めても、機体の速度が鈍い。

 せめてイグナイターなら……。機動性だけでも追従すべく、エラクスの起動をジャンヌに宣言する。

 

「ジャンヌ、エラクスだ!」

 

『機体ジェネレーター、各部エネルギータンクに負荷がかかりつつありますが……仕方ありませんね、了解!』

 

 気を付けるように言われたのち、エラクスの起動を行う。蒼く輝くと同時に敵の拳が機体を襲う。

 

『青くなったくらいでェ!』

 

「ぐっ、はぁ!」

 

 ブレードガンで受け止める。スパイク部分が剣の防御を抜けてこちらに刺さろうとするが、その前にエラクスの機動力で逃れる。

 急速離脱の後、すぐさま敵との斬り合いに発展する。スピードも出力も上がっている。その面では互角に渡り合える。だが、奴の動きはそれでも留められない。いや、むしろ奴は更な速さを伴ってきた。

 こちらの剣を受け止めたと同時に殴りかかってくる。反射速度とそれに対する行動が早すぎる。それに出力も押し切れるものではない。引き上げられる出力に、今のシュバルトゼロではエラクスを使っても不十分だったのである。

 何度目かの攻撃でブレードガンを弾き飛ばされる。

 

「ぐっ!?」

 

『お前に世界は救えない!』

 

 続くビームバルカンでビームスパイカー内蔵の膝ユニットが爆発する。

 

『お前に神は味方しない!』

 

『ハジメッ!』

 

 繰り出した蹴りが頭部を揺らす。頭を振って意識を覚ます。敵の肩部パーツが分離して遠隔操作端末としてこちらに砲を向けた。

 反射的にユグドラルフィールドで防御壁を張る。ビームを防ぐ。

 防御を張らせたまま、マキシマム・タイラントが迫る。

 

『お前は、悪だ!!』

 

「どっちが!!」

 

 横薙ぎに振るわれた一撃がユグドラルフィールドの防御壁を斬り裂く。直後不意打ちするが、それもビームシールドの前に防がれる。

 沢下がシールドを発生させた腕を振るった。放り出される機体を立て直し、右手にマキナ・ブレイカーⅡを抜き放つ。

 悪なんて、それはあいつらの事でしかない。それに気づかず、今彼らは武力を持ち出している。それに奴に限って言うならあいつは世界の平和と言いながら、個人の気持ちを優先させた。平和なんかじゃない、自分の都合のいい事実、世界を欲しているだけだ。

 こんなバカバカしいこと、早く終わらせる。そう思った俺に回線で沙織さんから内部状況が伝えられる。

 

『元君、今敵のマリオネッターシステム制御エリアに到達!敵の武装を解除させている』

 

「了解」

 

 マリオネッターシステムの操作停止は大きい。すべての敵ではないにしても動きは止まる。厄介な隊長クラスだけでもいなくなればその間に混乱する敵部隊を止められるはずだ。

 抵抗が無駄であることを今の話と共に沢下に告げた。

 

「聞こえただろ、お前達の希望だとか言っていたマリオネッターシステムは停止させた。各地の戦闘だって収まりつつある!柚羽の名前を盾にして、お前が戦う意味なんてもうない!」

 

『盾になどしていない!俺の妹の願いは、人類に対する慈悲だ!それにマリオネッターシステムを解除させても、我らの軍は、止まりはしない!』

 

 沢下はなおも妹のものだと主張する理念を掲げ、更に終わっていないことを語る。それを証拠に回線から爆発と声が響く。

 

『なっ、こいつら、捨て身で……!』

 

「沙織さん!……くっ、MSを纏ったのか」

 

 状況は分からない。けれどもそう判断せざるを得なかった。自分が死んででも武装を辞めない彼らに舌打ちする。

想定通りにならなかったことに、沢下はほくそ笑む。

 

『そうだ、お前達の考えは浅はか!我らの戦士は死を選んででも正道を行く!』

 

「正道だと!?」

 

『そうだ!そして、それに応えるべくお前を、お前達を殺す!』

 

「自ら死に行くような選択の、どこが正道だ!」

 

 怒りを露わに、剣を振る。死んでいった人達が当然など、そんな世界を許さない。

 元の怒りにシュバルトゼロの出力も上がっていく。だが敵の出力が未だに上。力任せの攻撃でマキナ・ブレイカーⅡAが飛ばされる。

 元は叫んだ。

 

「認めない!」

 

 人の死を勝手に決めつける彼らを。どんな願いを背負って戦い、死んでいった者達にそれが宿命などと、勝手に理由を決めつけてそれが無駄であるとする行いを元は許さなかった。

 例え夢乃に到着前に言ったような、戦うための力、技術を認めようとも彼らの思想は認めない。認めればここまで生き残った自分を、関わり散っていった人達に申し訳ない。

 

「絶対に認めない!」

 

 柚羽、ガンド様、光姫……。彼等のおかげで今の俺が出来ている。

 生者が死者の願いを背負って生きていくことは、別におかしいことじゃない。だけどそれを曲解することは違う。柚羽も、ガンド様も、そして光姫も、世界を憎んでいなかった。愛する人達へ最期に笑っていたから。

 そして残された者達も笑っている。深絵、ジャンヌ、光巴……。彼らの笑顔を守り続ける。それが俺の使命。俺の願い。

 もう片方のブレードガンも拳と打ち合った衝撃で手元から零れる。だが死者の気持ちを勝手に代弁するんじゃないと、元は残るビームスパイカーで回し蹴りを行う。

 

「俺の護りたかった人達は、生き残った人を泣かせる人達じゃない!」

 

 渾身の一撃をやり過ごしたマキシマム・タイラント。その機体は素早くこちらの背後を取る。

 元の語った言葉にうんざりとするように沢下は冷たく反論する。

 

『喚いてろ、一生。死んでも!人を殺した悪魔が!運命に屈しろ!』

 

 黙らせるために大剣が振り下ろされる。避けられない。エラクスでも間に合わない。完全い背を見せていた。

 終わる。それでも諦めない。諦めてしまえば一緒にジャンヌが死ぬ。ガンド様から託された敬愛する彼女を死なせない。

 まだ何も成していない。彼らを阻止することも、レイアを救い出すことも。

終われない、終われないんだ。動け、動け動け、動け!戦う意味はまだ残っている!生きているんだ!何の為にあの時絶望した?何の為に絶望から這い上がった?立ち上がり続けなきゃ意味はない。

死んでいった人達と選んでくれた彼女の願いの為に、今立たなきゃいけない!例え悪魔でもいい。本物の神様を敵にしたっていい!だけど、今は、だから!

 

「動けよ、ガンダァム!!」

 

 怒りと願いのこもった声、それが電気と炎と共に周囲へと響いた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。危・機・的・状・況( ゚Д゚)

ネイ「いや、ふざけてる場合じゃないです」

グリーフィア「んーいけないわねぇ。これは。元君まったく太刀打ちできていないし」

それだけ汚染状態のパイロットと四個乗せがヤバいんだよ(´・ω・`)ツインジェネレーターシステム機も出力はあるけどそれが直接戦闘能力に影響されるわけじゃない。むりやり出力を上げて性能を上回っていく。それが今回の敵なわけだ。

ネイ「はい。けど元さんも要所要所で対応はしてますよね」

元君もついつい機体に対して本気見せろと言ってる辺り、割と熱血なんだよね(´-ω-`)

グリーフィア「そうねぇ。ただその直後に刀身割れるのは……お約束?」

これのモデル元も大概折れたり焼き尽くされたりしたからねぇ。流石に再生はまだ出来んよ。

ネイ「モデルと言えば、元さんと沢下との掛け合い、後半ちょっと見たような気が」

(´・ω・`)まぁ、似たり寄ったりよ

グリーフィア「そうねぇ。それは言わないでおくけど、元君もちゃんと言う所は言うのねぇ。守りたかった人達は生き残った人たちを泣かせる人じゃないだなんて」

ネイ「護りたかったけど護れなかった。だからこそ、残った人たちの幸せを護るっていう元さんの気持ちはLEVEL1から変わらない、元さんを形作るものなのかもね。でも危機的状況なんだよね……」

それこそ「人類は、変わらなければならない」ってカットイン来ないとね( ゚Д゚)気になる続きはまた次回!

グリーフィア「それじゃあ、次回もよろしく~」

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