機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

17 / 322
どうも、藤和木 士です。
EPISODE13公開です。

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ。遂にDNも1章の佳境に入ってきたねぇ……」

ジャンヌ「そうですね、レイさんっ。……先週はわたくしモデルのヒロインが自分の気持ちに色々と思っていたようですが……」

レイ「今回はその続き?」

あ、続きと言えば続きだけど、、始まりはハジメ君視点からです(´・ω・`)

レイ「ありゃりゃ。てことはジャンヌ(F)ちゃんのお話は別の所で?」

ジャンヌ「え、レイさんそれジャンヌ・ファーフニルさんの略称です?」

レイ「うん。どっちもジャンヌちゃんだと分かりにくいでしょ?」

ジャンヌ「え、えぇと……そうですね……」

さて、引き渡し場所に向かうハジメ君の心境はいかに?では本編です。


EPISODE13 引き継がれる、覚悟 Standby OK?2

 

 

 夜は明け、その日は来た。

 この日、ハジメはドラグディア・マキナス両国家の国境にある神話時代の古戦場として知られる「ヴールーン古戦場跡」にて、マキナスに身柄を渡される。少女の涙でも、それを思う父の力でも、運命は変えられない。足りないのだ。

 だが、たった1つ、たった1つの事で運命は変えられる。それを成しえる覚悟を、思い続けることが出来るのなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメのマキナスへの身柄輸送団は今、引き渡し場所として指定されたヴールーン古戦場へと向かっていた。ハジメはその輸送団に護衛された車の中で、両脇をバァン、そして数日前まで雇い主であったガンドに固められてその時をただ待っていた。

 ジャンヌが無事ならそれでいい。そう言ったハジメだったが、その心の内は今になって決断に迷いがあった。

 

(自分は、本当にこれでよかったって、思っているんだろうか)

 

 一度は決めたことに躊躇う自分がいる。いや、躊躇うんじゃない。もっと違うことだ……そう、これは……後悔だ。

 記憶を失っての初めての後悔。しかし、ハジメはそれが後悔だと分かっていても、どうしたかったが故の後悔かを気づいていなかった。それが恩義を超えたモノであることに気づかずに……。

 ふと、隣にいたガンドが口を開く。その相手は他でもないハジメに対してのものだ。

 

「……昨夜、ジャンヌに君の事について訊いた。君をどうしたいかをだ」

 

「…………」

 

 その言葉に若干目線を上げるハジメ。しかしそれに気づいて、隠すようにまた視線を手元に落とす。手には暴動を防止するための手錠がしてあった。その手錠は果たしてあの殺戮をしたための犯罪者としてのものか、それともこれから裏切者になるが故に施されたのか。

 ハジメのそんな思惑は、続くガンドの言葉で一蹴される。

 

「……あの娘の親としては、そう答えて少し怖い。だけど、同時に良かったと思う。ちゃんと人を思うことが出来るんだって。……ジャンヌは、君が戻ってくることを祈っている」

 

「……え?」

 

 空耳かと耳を疑った。失礼なことであるのは分かっているが、それでも自身の主が自分の事を心配しているということが信じられなかったのだ。

 動揺するハジメに、ガンドが昨夜の出来事を語り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャンデリアの電気が消され、机の上のキャンドルだけがリビングの周りを照らす。炎に照らし出される少女……ジャンヌ・ファーフニルの姿は少ししおらしく見えた。

 娘のこんな姿を見たのは、いつ以来だろう。少なくとも高等部に上がってからは一切見たことがない。ハジメは、それだけジャンヌに影響を与えたのだとしたら……少し嫉妬してしまうな、がらでもない。

 心の中で動向を見つつも、大人げない親バカ妄想をするガンド。しかしその妄想に区切りをつけたところで、ジャンヌは口を動かした。

 

「…………わたくしは……何を思っているのか、分かりません」

 

「分からない……?」

 

「あらあら……」

 

『………………』

 

 娘の口から出てきたのは、分からない、という単語だった。その返答にクリエも手を口に当てる。唯一理由が知りたいのに、分からないとは、ガンドももう少し聞かねばと話を続けようとする。

 

「分からない、というと?」

 

 すると、ジャンヌは両手を胸のあたりで握りしめ、語り始める。

 

「最初は、どうでもいいって思ってた……。自分が選択を間違って家に入れてしまったんだから、何か理由を付けて、クビにしてしまえばいいと思ってた……。けれど、あの男はわたくしがどれだけ突き放しても、何も言わなかった。……嫌な顔……というか、困った表情はしていましたよ?……でも」

 

 勢いよく話したせいか喉の渇きを紅茶で潤してから、ジャンヌは再び話を続けた。

 

「あの男は、必死だった。自分の思ったことを、そのまま口に出来た。今まで周りの使用人やクラスメイトが裏でこそこそと悪口を言っていることもあったけれど……彼は、わたくしの事をそのまま見てくれた……。ぞんざいに扱われても、こんなわたくしを知ろうとか、どう思おうとか関係ないとか。……あと、アップルパイについての評価とか」

 

「…………!」

 

 そこでようやくガンドは気づく。娘の話した内容が、かつてハジメと執務室で言葉を交わした時の会話の内容が入っていることに。

 ……そうか、さてはジャンヌ、あの時聞き耳を立てていたな?執務室の隣の部屋でかすかに物音がしたと思ったけれど、そういうことか。

 過去の疑問点に納得しつつも、少し心の中でニヤついてしまうガンド。向かい側で話を聞くクリエも少し楽しそうだ。もっとも、あれはいじりたいという感じの笑みだろうが。

 

「けど誘拐された時、わたくしは彼に責任転嫁していました。後で考えれば無茶だというのに、護衛に付いていないからこうなったとか、後でやっぱりクビにするとか……。でも、彼はお父様とフォーンと一緒に駆け付けてくれた。倒れても立ち上がって、MSを纏って戦った。でも同時に怖かった。わたくしに銃が向けられても敵に向かっていった。正直、わたくしを殺させて今までの鬱憤を晴らすつもりなんじゃないかって。……でも違うって思ったの」

 

 いつの間にか、娘の目に水滴が溜まっていた。まだ決壊はしないだろうが、それもおそらく時間の問題だ。そして、娘は言った。

 

「近づいてきて、申し訳ありませんって謝ったの。持てる力をもって跪いて謝った……。けどわたしは返せなかった。彼が怖かった……。いいとも、ダメとも言えなかった……言って、彼の成長を促せなかった……だから、まず言いたいの。あの時言えなくてごめんなさいって……そして、これからも……文句を、言わせて……」

 

 そこで涙が頬を伝い始める。主の異変に気づき、幼少期から姉妹のように接していた従者のネアがハンカチを渡す。ジャンヌはそれをすぐに凄い勢いで奪い取ると目元を抑えて泣き出す。

 ……さてと、これは少し困ったな……。最後の締めくくりも問題だとは思うが、それ以上にハジメに対するものが、ちょっと予想を超えている気も……これはお父さん怒っちゃうなぁ……。

 ガンドは現在丁度50歳である。既に上の娘が家を出て嫁いだので、そう言ったものは既に経験している。むしろ上の娘が自由奔放な性格もあったため、これ以上上はないだろうと高を括っていた。だがしかし、ジャンヌから返ってきたものは先のあの内容である。ジャンヌは妻クリエの面影をかなり受け継いでいて、性格も含めて過保護になっている。だが、無論娘にはそういった気持ちを少しくらいは抱いてほしいとは親としては思っていた。けれど、ジャンヌが周りを遠ざけ、レイアに困った愛情をぶつける様を見ていたので、色々と多難だと思い、今回のハジメの存在が機になると思ったのだが……結果がこれだ。小説か、とでも言いたくなる。

 

(50年生きても、まだ新人なんだなぁ……グランツ司令、貴方の言葉が今よく分かります)

 

 目に見えて分かるほど大きな深呼吸をして、天を仰ぐ仕草をする。人生は常に勉強、という言葉を身に染みて学んだガンドは、言った手前引き返せないと覚悟を決めてジャンヌに誓った。

 

「そうか……分かった。その言葉、絶対に言わせよう」

 

「……はい、お父様」

 

 涙をぬぐいながらも見せたその顔は、初めて見たジャンヌの乙女としての泣き顔だった。

 

 

 

 

「……以上が、娘の本音だ。少し言葉足らずなところもあるかもしれないが、娘はそう思っているらしいよ」

 

「…………」

 

 家で訊きだした話を大まかに伝えると、ハジメはまた顔を下に向けてしまう。だが、ガンドはこれが決して嫌だから取った行動ではないと確信していた。

 少し話を削った部分もあるが、それは親としての懸念材料だ。これからも文句を言わせてなんて言葉をそのまま伝えるのもあれだから、まだ何も果たせてないという風に置き換えた。そう、これは父親として娘が心配であるが故の行動なのだ。

 頭の中で暗示をかけるガンド。とはいえ、それだけの言葉でもハジメの心にはしっかりと届いたようだった。ハジメの視線はただ下に視線を向けていたのが、真っすぐ手錠の方に向けられている。更にハジメは、ガンドに質問する。

 

「…………どうしたら、自分はお嬢様の言葉に応えられますか?」

 

「……簡単だ。帰ってやればいい」

 

「でも、自分は……」

 

 マキナスに身柄を渡される。そう思っているのだろう。確かに、マキナスからの要求を、政府は受けて指示を出した。だが、要注意人物を軍の意向を受けずに1人の人間の思惑で簡単に渡すほど、軍の人間はおろかではない。しかし、今話すのは、少々都合が悪い。だからガンドは、答えが曖昧な、しかし彼に希望があることを思わせる発言をした。

 

「それでも、君には出来ることがあるはずだ。自身が諦めれば、道は簡単に閉じてしまう。だから望み続けろ」

 

「…………はい」

 

 それ以降、目的地到着までハジメは真剣に考え込む。そして、その時は来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラグディアとマキナスは1つの大陸に隣り合わせで存在する国家だ。サーク・ノレ・ファイ大陸はとある古代文字の形状に似ており、北部、南部、そして中央部で地続きになっている。名称もそこから付けられた。

 その両国家の国境は多々戦場となる。そのため国境には古くから数多くの古戦場が点在している。ハジメの身柄引き渡し場となる「ヴールーン古戦場跡」もまた、そのうちの1つだ。特にこの古戦場は、かつて関所兼両大陸を結ぶ中立エリアだったこともあり、居住地の建物が多く建造されていた。しかし、戦火に呑まれたことで人々は離れていき、今では両国家間で戦史扱いされる場となっている。

 今現在両国家の間には数多くの監視場が設けられている。なぜそこではなく、この古戦場跡をマキナスは指定したのか、ドラグディア軍でも理解に苦しんだその理由。それは、マキナス軍にハジメの身柄確保を要請した、とある老ロボット考古学者の要望だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが…………」

 

「そう。ここが我が国ドラグディアとマキナスが、神話時代に争ったとされる戦場跡。「ヴールーン古戦場」だ」

 

 ガンドの口から語られた、かつての街の跡地。随分前に人がいたのではと思われるほど建物が残る街。しかし、人が最近住んでいたという痕跡はとてもではないが見えない。足跡は少し点在する部分もありはするが、それでも生活感は一切ない。完全な廃墟だ。

 まさに遺跡、という街の跡地に降り立ったハジメはその壮観さに圧倒される。しかし、今の場所が身柄引き渡し場所というわけではない。

 

「受け渡し場所はもう少し奥だ。行こう」

 

「はい。バァンさん」

 

 バァンの声に頷き、その後に付いて行く。ハジメとバァンの部下であるヴェールの前後がバァンとガンドに固められ、更にその脇をMSに装依した兵士2名が護衛。更にそれらの後方を、数十人のMSを装依した兵士達が同行するという厳戒態勢にあった。これは敵国からの正式な要請とはいえ、非常事態を危惧しての配置であった。

 過剰かもしれないそれは、どれも両国家の憎しみと恐怖を体現したものと言えた。その状態で街の中央広場に当たる部分まで進んだところで、反対側からも同じようなMSに護衛された団体が姿を現す。

 護衛するMSにハジメは見覚えがあった。白基調の角張った装甲で構成され、博士帽のような尖った大型の頭部。そしてゴーグルの奥で光る2つの丸い眼光。以前教科書の中で見た、マキナスのMS「マキナート」だ。そう、彼らが今回ハジメの身柄受け取りにやって来たマキナスの使いだったのだ。

 マキナスのMS達もまた、こちらと同じく護衛する者達がいた。しかし、その中の1人とも言えるそれに少し注視させられる。機人族の者達は現在そのほとんどが竜人族と同じような外見の者がほとんどだ。かつてはMSのようなロボットじみた金属の肌だとはっきり分かる者達がほとんどだったという。これは結局のところ、かつての人々の姿に近い方が、例え竜、ひいては機械の力を得ても効率的だとそれぞれの遺伝子が判断したためだと言われている。護衛されている生身の機人族達もそれに沿った外見だ。だが、1人だけ如何にもロボットと言える外見の者がいたのだ。

 何だ……あの機人族の……人?なのか?もしかして、ポルンみたいなマキナスでいう所の古機人族みたいなやつなのか?

 すると、こちらに向かっていた機人族の軍勢が歩みを止める。こちらも同じく立ち止まり、相対する。静まり返る広場。そこにマキナス側からあの如何にもロボットな見た目の人物と、軍服を纏った老齢な男性と、反対に血気盛んな若い青年が前に出てきて挨拶する。

 

「この度はこちらの呼びかけに応じて頂いて、感謝申し上げます、ドラグディアの皆様。私、マキナス軍第2突撃中隊隊長のライド・アクセラー少佐であります。こちらは、部下のアルス・ゲート少尉」

 

「……どうも」

 

 上官と思われる男性の声に従い、こちらにそう口を開く青年。年齢は自分と同じくらいだろうかと思うハジメ。しかしその声は不満げのあるものだ。

 そして、続いてライド少佐からロボットな見た目の人物の紹介になる。

 

「そしてこちらが、今回の身柄引き渡しを政府に要請された老ロボット考古学者、ワルト氏だ」

 

「いやいや……また会えてよかった。救世主ガンダムの青年よ」

 

 一瞬、ハジメの表情が怪訝に曇る。また会えて、救世主ガンダム。その単語に対しての反応だ。

 

「……?それって、どういう……」

 

 疑問を口にする。すると、ドラグディアの方からバァンが前に出て、その説明を要求した。

 

「出来れば私達にも分かるようにお願いしたい。こちらもそれを聞いていたが、その真偽自体、確かめようがなかった。彼には記憶がないからね。特に彼が救世主であるということは、私達竜人族としても眉唾な話だからね」

 

「……それもそうですな。では、語らせていただこう……彼は私が最初に発見しただよ。とある遺跡で、ボロボロの彼をな」

 

 語られたのはハジメが最初に発見したのは、自分であるというワルトの発言。半信半疑の空気がドラグディア側に流れるが、すぐにそれを裏付けるようにワルトが話を続ける。

 

「私も最初に見つけた時は、すごい驚いたもんだ。遺跡は警戒はそれなりに厳しいのに何で?ってなぁ。けどほっとくわけにもいかんと研究所に運んだ。それから色々と彼が救世主であることを確信することに気づいて調べ出した。……けど、途中で様子がおかしくなって、彼は研究所を爆発させて行方をくらませたんじゃ」

 

 調べた、という言葉に何か不信感を思うハジメ。途中でおかしくなったというのもその発言と合わせて少し気になりだす。そしてロボット然とした機人族の博士が続いて救世主たる理由の話を始める。

 

「そして彼が救世主たる由縁。まずは、君達でも分かっているだろうことからだ」

 

 ワルトと名乗った古めかしいロボットの機人族は、手を広げ、右側に歩いていきながら語る。

 

「まず、彼の姿。彼は機人族ではない。機人族特有の微弱な電波を発することがない。そして竜人族でもない。肌に竜人族特有の若干のざらつきがない。ついでにその肌の臭いも私達のオイルっぽさや、君達竜人族の獣臭さもない。それらは特にDNAを見れば一目瞭然だ。何せ、彼は竜人族と機人族、両方の遺伝子と綺麗に真っ二つに持っているのだ。対立する2つの種族のDNAを持つ。これは奇跡、禁忌、そして、かつての姿とも言えるだろう」

 

 DNAの話はハジメも聞いたことがあった。ファーフニル家に拾われた次の日、病院で血液検査をして、その結果どちらでもないDNAが検出されたという。初めは戸惑ったが、最近は慣れてきた話題が掘り起こされ、しかもそれが救世主であるという証拠だなど、ハジメには想像もつかないほどの発想だ。

 踵を返すと、今度は反対に向かって歩きながら、2つ目の証拠を口にした。

 

「そして2つ目。彼が装依に使用したスターターっべ。それは今のモデルじゃない。一番似ているのは、創世記から残る遺跡の壁画などに描かれてる、救世主様が装着しているスターターだっぺ。わてらやあんたらが使っているスターターのプロトタイプ。その形状は間違いなく救世主様が使っていたものに違いねぇ!」

 

 元の場所まで来て立ち止まり、指先を向けるワルト。その指摘にハジメは喉の音を鳴らす。

 やっぱり、自分はその救世主……ガンダムなのか?でもガンダムって2本のアンテナに2つの目、それに顎のでっぱりのある機体だと学んだ。でも俺が装依したあの機体は……シュバルトゼロ・ビレフトとは全然違う。

 この2日ほど、ハジメはヴェールから様々なことを教えられた。その中にハジメの装依したMS、あのスターター「ゼロ・スターター」から得た正式名称「シュバルトゼロ・ビレフト」も知っていた。失われたと名付けられたその機体は、まったくガンダムらしいなりではない。大柄な装甲は全くと言っていいほど、教科書に描かれる救世主の姿には似つかわない姿だ。

 しかし、それだけの証拠があるというのならハジメに言い返せるものはない。マキナスへと渡るという不安が心を支配していく。

 ところがそれにバァンたちが待ったをかけた。

 

「ふむ。それらの話納得できるところはある。だが、それは本当にハジメが救世主であり、彼をマキナスへと引き渡す理由なのかな」

 

「何?どういうことだ」

 

 ハジメもバァンの言葉に困惑する素振りをする。言っていることが分からなかった。先程ワルトが話したのに救世主かどうか、それ以上に自分をマキナスに引き渡す理由なのかという質問は話が納得したということではないように思えたのだ。

 だがしかし、バァンはヴェールに向けてハンドサインを出して近くに来させると、その質問の意図を明確化する。

 

「簡単だ。話の方だが、君達はこれがあった、だからそう思ったということが理解できるものだ。だがしかし、それは私達が引き渡すという理由に直結してはいない。最初に彼を発見したのは君だという話だが、そこから逃げたということは、ハジメ君が君を嫌がった、ということではないかと私は思う」

 

「ふん。世迷言を……そんなもの、あるはずがないだろう。それを……」

 

 バァンの言葉を一蹴するように話を切ろうとするライド。しかしバァンはそれを機にすることなく、続いての証明に移る。

 

「2つ目はそれぞれの証拠だ。DNAの件はこちらも把握している限り確かに間違いないだろう。だが、こちらでは別の解釈をしている。……DNAが半分一致している部分は、機人族、そして竜人族共に同じ所だということだ」

 

「ならば何の問題も……」

 

「そこが問題なんだ。同じ所がそれぞれ一致するのなら、どうやって彼は、救世主は私達に竜と機械の力を分け与えたんだい?」

 

「……あ」

 

 瞬間、どよめきが起こる。彼らが言う救世主とは、竜人族と機人族のそれぞれの力を与えた機竜を従えていたという。そしてこれまで予測されている救世主の想像図は機械と竜の特徴を併せ持つ、ハイブリットとでもいうべき存在だと語られているのだ。ならばハジメも、それに忠実でなければおかしいことになる。肝心な姿の違いを、彼らはそして、本人も失念していたのだ。

 何とか反論しようとするマキナスの者達。だが、バァンが続けざまにスターターに関しても反論を挙げた。

 

「そして、スターターについてもそれを調べた技師から話が」

 

「はい」

 

 ヴェールは前に歩み出ると、映像投射機を近くの建物に向ける。光を照射すると、そこに彼女のパソコンの画面と思われる映像が映し出される。それを示しつつ、彼女は説明する。

 

「彼の始動機ですが、解析したところ制作されたのは丁度神話時代の真っただ中の物であることが、年代調査によって分かりました」

 

 その発言を聞き、マキナスのライドはホッとした様子で息をつくと、馬鹿にするようにその事実を改めて口にする。

 

「創世記時代のもの……ならば、彼が救世主であるという証拠ではないか。救世主は創世記の……」

 

「そこが、問題なんです」

 

「何?どういうことだ」

 

 筋が通っていると思うマキナスの兵士達は、皆一様にヴェールの言葉に疑問を浮かべる。ハジメも創世記時代のMSなのだから、ハジメのスターターもそれくらいにあって当然の物だという考えが頭の中を支配した。

 何でヴェールさんはそんな当たり前の事を……マキナスの人達の言う通り、伝説に登場する人物なら、創世記の物として出てきてもおかしい話ではないと思うのに……。

 マキナスの兵士達と同じことを考えるハジメ。だがしかし、続くヴェールの言葉で、重要なことに気づかされる。

 

「救世主ガンダムは、かつて争いあっていた私達の祖先の前に現れた存在です。ここで言う創世記の時代とは、その発展の中での話です。ここでもう一度言いますが、ハジメ君のスターターはその創世記時代の物です。……その中で作られた物なのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのは時代的に考えて矛盾していませんか?」

 

「あ……」

 

「っ……!」

 

 そこでハジメ、そしてライドとマキナスの兵士達もようやく理解する。そう、時間関係が合っていない。ハジメが救世主であるというのなら、ガンダムを装依するスターターは、創世記以前の物と鑑定されなければならない。だがしかし、ハジメの使っていたスターターは創世記時代に作られた物。創世記で稼働していても、それ以前の記録がないなら救世主ガンダムではない。となれば、必然的にハジメのあのMS、そしてハジメ自身が救世主であることは証明できない。切り替えたと言うのなら話は別だが、それでも可能性が限りなく小さくなったのは間違いない。

 バァンも前に出て、マキナスの兵士達に告げた。

 

「そもそも、彼にマキナスへと渡る意志はない。彼はやるべきことがある。果たさねばならない忠義がある。だからこそ言わせてもらう。君達の横暴に、我らは付き合うつもりはないとな」

 

 バァンの口からはっきりと語られた事実。ハジメもジャンヌの気持ちをガンドから聞かされ、変えたのだ。まだ自分にはやることがあると。ハジメの瞼が細められる。細めた視線の先には、歯がゆそうに拳を固く握るライドと、苛立ちを前に出したままこちらをにらみ返すアルス、そしてそれらを聞いても態度を崩さない、余裕を見せるワルトの姿があった。

 しかし、ハジメ達は気づけなかった。ワルトの目を映す液晶画面の目のヴィジュアルが、ほんのわずかだけ動いたことに。その眼に、明確な怒りがあったことに。

 まだ交渉は終わらない。いや、ここからが本当の「交渉」の始まりだったのだ。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。

レイ「ドラグディアの人達も、みんなハジメ君がこのままでいてくれることを祈ってるんだね!これはハジメ君責任重大だね!」

ジャンヌ「確かにジャンヌ・Fさんの想いも含めて、感慨深いものがあります……でも、今回の終わり方が完全にフラグとしか言い切れないんですが……。あと、マキナスとドラグディア勢同士の会話もぎこちない気も」

ギクッ(;´Д`)

レイ「あーそうだねぇ……ちょっとこなれてないっていうか……。けどこれはまた、何かやってくる感じだよ……でもでも、ハジメ君ならッ!!」

ジャンヌ「何とかしてくれる……と思いますね」

フフーン……それはどうかなぁ?ハジメ君が負けないとでも?(^ω^)

ジャンヌ「え……違うんです?」

レイ「えぇー!?それだったらハジメ君ジャンヌ・Fちゃんの約束守れないよ!?」

さてさて、その気になる先はまた次回!

レイ「続きが気になるよぉ~!また次回っ!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。