機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

18 / 322
どうも皆様、藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。さぁ、先週は華麗な指摘劇だったみたいねぇ」

まぁ、そうっすね。はい(´・ω・`)さて、EPISODE14公開です。

ネイ「なんだかハジメさんが負けるみたいな事を前回のあとがきで言っていましたね。本当に負けたらどう持っていくんですか……」

えーと、まぁやってくれるさ、彼なら(*´ω`)

グリーフィア「彼、って誰なのかしらねぇ……。ハジメ君ではないのかしら?」

うん……違うかな。それでは本編へ!


EPISODE14 引き継がれる、覚悟 Standby OK?3

 

 

「やれやれ……ここまで言っても、素直に救世主を渡してくれんとは……やはり竜人族のような血気盛んな、獣臭い連中ではわたしの話を理解できんようやな」

 

「……ようやく本性を現してきたようですね。ワルトさん。いや、これはマキナスの政府も積極的な案件のようだ」

 

 うって変わった反応に、バァンがそのように返す。周囲は静寂としていたが、両者のにらみ合いは先程の騒がしい時よりも激しさを増しているように見える。素人のハジメでも、その場の空気を吸いづらくなる感覚を覚える。

 俺の身柄ひとつでこんな……俺は、いや、あのMS……みんなが言う救世主(ガンダム)っていうのは、本当に何なんだ……。

 ハジメ自身、救世主ガンダムの姿は、教科書で見ている。しかし、その姿は自分が憑依……もとい装依したあの重装甲のMSとは、まるで違った。頭部のV字のアンテナは無く、目とも言えるメインカメラは2つではなく1つ、もしくは3つだった。それ以上に機体のシルエットは、ガンダムのような細いすらっとしたようなものではなく、ずんぐりとしたものだ。とてもガンダムのそれとは違う。だが、彼らは、ワルトはハジメのあのMSはガンダムだと言い張っている。そこまで彼らがガンダムであるという根拠に疑問を拭えなかった。

 あまりにも一方的なマキナスの言い分は、ハジメを混乱させていた。そして更にハジメを、否、ドラグディアの者達を混乱させる事態になっていく。

 

 

 

 

「そうだろうッ!!!ドラグディアの薄汚いトカゲ共がァ!!!」

 

『!?』

 

 

 

 

 それは、本性を現した、ワルトの怒声であった。

 

 

 

 

 それは怒りだろうか。怒りといっても色んな種類がある。いけないことをした相手に対する怒り、酒の席でのアルコールにより助長された怒り、あるいは拒絶されたことに対する怒り。

 そのどれもが場面ごとで異なる怒りだ。そしてガンドの前にいる老ロボット考古学者の怒りは、自身の思い通りにならないが故の怒り。もっと砕けて言うなら、我儘から来る怒りだろうか。ともかくその怒りが頂点に達し、出た言葉は想像以上に予想外の反応だった。

 先程までのワルトとは別人とも言える言葉遣いと態度は、完全にガンド達にハジメを彼らに引き渡してはいけないと覚悟させた。もし彼が本当にガンダムを使えて、彼らの命令を聞くことになれば絶望的なのは明らかだ。それにハジメの意志を無視したような命令をさせるのは目に見えている。マキナス・ドラグディア両国の過激派は互いの勢力を殲滅することがすべてだ。ワルトもそれであるのなら、ハジメがジャンヌを殺してしまう可能性もある。そんなことを、許すわけにはいかない。2人の為にも、ガンドはハジメを護るように前に出る。

 

「彼を見つけたのは私や!!彼の道を決める権利は私にある!!そうだ、私が救世主の付き人……私が救世主なんじゃあ!!」

 

 狂気的とも言える発言に、ドラグディアの兵士達が気圧されている。一方マキナスの方も一般兵達は若干の困惑がちらほら見られ、マキナスの者達も全員がそれを容認しているわけではないようだ。ライド、そしてアルスもあまりにも大声で騒ぎ立てるためか味方にも関わらず、不快感を顔に示していた。

 しかし、周囲への迷惑も知らないように、ワルトはそのままの勢いで自身の野望を並べていく。

 

「そもそも、私は争いが大嫌いじゃった!私はオールドアンドロイドと呼ばれる、古い機人族の人間じゃ!!争いが嫌だというのに、旧式だからと戦地へ送られ、過酷な戦場へと消耗品のように使い潰されていく私の仲間達!!それを私はMSの開発現場で実践結果としてみることしか出来んかった……。そこで思った……なぜ私達がこのような目に遭うのか!!そして、私は様々な考えをシュミレーションした。そして分かった!!敵が居続ける限り、この連鎖は終わらん!!竜人族がこの争いの発端!!ならば竜人族を絶やさねばならん!!」

 

 あまりにも、短絡的な、かつ過激な発想だった。今でこそ両者がかつて過去に結んだ条約で、古い民族の過剰徴兵は禁止され、差別的な扱いは大幅に減少した。だがしかし、彼の場合はそれが遅すぎたのだろう。機人族という同胞に対しての是正ではなく、敵対勢力の殲滅に考えをすり替え、結果同胞を利用する。ガンドの目には、彼がこの戦争の生んだ歪みであるように思えた。

 しかしまだ彼の怒りは収まらない。なぜハジメを、救世主をそこまで欲するのかを彼は肩っていった。

 

「そのために私が目指したのは、戦争を終わらせる者……救世主の誕生じゃ。かつて再発した戦争で絶望し、消えてしまった救世主が再び降臨する方法を探るため、私は考古学者となり、遺跡を調査した!だが簡単には見つからない。救世主の歴史は辿れても、救世主を降臨させる方法はどこにもなかった。そうやって同じ日々が何度も繰り返された。それでも私は折れんかった!!そして!!遂に彼が現れた!!遺跡の前で光を発し、駆け付けた私の前に、救世主の証たる始動機を付けて!!これは天からの啓示!!私が!救世主を導くのだぁ!!」

 

 途中ハジメを勢いよく指さしし、熱弁する姿は迫力があった。立場が違えばそれは熱血というものだろう。しかし、傍から見れば、そのほとんどが彼を狂信者と言うに違いない。救世主信仰に溺れた狂信者。それが彼であったのだ。

 無論、それをドラグディアの面々は否定する。

 

「救世主の信仰……国が否定していない……むしろ、推奨した空想にすがるか。それに付き合わされるマキナスの兵士達は哀れだな。いや、それに加担している時点で、同類かな?」

 

「何?トカゲの分際で……!」

 

「ともかく、そんな連中にハジメは渡せない。彼はうちの娘がお気に入りなのでね」

 

 バァンの指摘した事実にライドが怒りの声を漏らす。だがそれに対しても、ガンドがはっきりとハジメの引き渡しを拒絶する。狂気的な人間に武器など、危険なだけである。そんな彼らにハジメを、あのMSを渡すわけにはいかなかった。ガンダムでもそうでなくても、渡せばどんなことになるか……。

 言葉では互角……より、ドラグディア側の意見が理屈的には優勢のこの状況。ところが、状況は思わぬところから崩れ出す。

 

 

 

 

「……何?本当ですか?……ガンド少佐!!大変です」

 

「……どうしたんだ、そんなに慌てて……」

 

 

 

 

 不意に連れてきていた兵士の1人が、慌てた様子でこちらに声を掛ける。緊急を要する姿に、嫌なものを感じる。続く言葉で、ガンドの考えは、恐ろしい方向で実現してしまうこととなる。

 

 

 

 

「聖トゥインクル学園を、武装集団が襲撃。ジャンヌ・ファーフニルを人質に立てこもっているとの連絡が!!」

 

「……何だと!?」

 

 娘の名前と、人質にされているという事実。それだけで思わず、父親としての側面が出てしまうガンド。反射的な反応だった。

 なぜ、娘が……。その考えだけがガンドの中を巡る。どうしてよりによって、この交渉の時にそんなことが起こるのかという疑念。更なる兵士からの言葉が、その疑念は、確信のある1つの事実にたどり着くこととなる。

 

「避難した教師からの情報によると、襲撃犯はポルン・ドンドと名乗っているそうです。それに周囲には体を機械化した竜人族の男と、マキナスのモビルスーツもいるらしく……」

 

「ポルン……マキナスの……まさか!!」

 

 振り返って向けた視線の先には、マキナスの者達……そのうちの1人であるワルトは、先程の狂乱が嘘のような、恐ろしさを感じさせる穏やかな声でそれを明かす。

 

「いやぁ、素直に応じてくれなかった時の保険、見事に働いてくれたもんやぁ。同じ種族から見捨てられ、復讐を望むもんに、報いる私達のどこが哀れかな?」

 

「貴様ら……!」

 

 ガンドの声に、怒りがこもる。関係ない者達ではないが、それは決して許されるものではない。非道なものだ。一般人が見れば涙が出てしまうようなことは、軍人であるガンドも耐え難い苦痛だった。

 

「……そう来たか……」

 

 顎に手を当て、冷静に見るバァン。だがその言葉とは裏腹に、目は厳しいものへと変わっている。誰もが動揺、怒り、そして呆然を大なり小なり感じていた。ガンドの視界から外れたハジメも、主が再び、同じ者に誘拐されたことに大きくショックを受けていた。

 それを更に追い詰めるように、ライドが部下から受け取ったパソコンの画面をこちらに向ける。そこに映っていたのは、ナイフを持ったファーフニル家元従者のポルンと、機械化されて面影がほとんど残らない、前回の誘拐事件でポルンの共犯者だったシグット。そしてそのシグットに羽交い絞めにされ、抵抗する半裸姿のジャンヌの姿であった。

 

『数日ぶりですねぇ、お嬢様ァ!!』

 

『いやぁ!!離してッ!!』

 

「ジャンヌ!!」

 

 映像に映るジャンヌを見て思わず叫ぶ。自身の娘は制服のほとんどを剥がれてしまった後で、残るのは白の下着とズタズタに裂かれたスカートだったとは思えないもののみであった。

 今すぐ走り出したくなる衝動に駆られるガンド。険しくなった表情を見てワルト、そしてライドの追い打ちが飛ぶ。

 

「やっぱ娘の方が大事だなぁ!んだんだ!!」

 

「悪趣味……!」

 

「悪趣味?立場の優位性の確保は、政争としては基本だろう!そう思う貴様らが甘いだけなのだ」

 

 ヴェールが抱いた彼らの行いへの批評すらも、ライドらは切って捨てる。その姿勢はもはや軍人とはかけ離れているように思えた。

 ふざけるな……!軍人は人殺しではない。戦って人は殺すが、それは自国民護るための行動だ。決して人を殺すことへの快感が、護るという考えより上回ってはいけない……。彼らのこのやり方は、軍人である前に、人として失格だ!許せない……だがッ!!

 ガンドの拳が固く握られる。目の前の非道に対しての怒り、娘の窮地に向かえないくやしさ……。明らかに自身に対しての精神的な攻撃は、一つも狂うことなく彼に分かれ道を与えていた。非道に屈し、娘との約束を破ってでも娘を救うか。それとも非道に屈することなく、軍人としての誇りを守って娘を見捨てるか。

 この選択肢、彼にとっての正解は間違いなく前者だろう。数週間前に家に突然転がり込んだ使用人などより、十数年育てた自身の子どもの方が大切なのは明らかだ。無論ガンドもそれを選ぼうとしていた。

 しかし、その選択を昨日の光景が遮る。娘の涙ながらの告白。男性嫌いな娘が、初めて男性の事に対して気に掛けたあの姿が、どうしてもガンドは裏切りきれなかった。こちらに関心すら持たなくなってしまった娘の、久しぶりの、心からの我儘に付き合いたい気持ち。

だがしかし、ガンドも覚悟を決める。父親にとって、大事なのは娘の望むものではなく、大切な娘なのだから。ガンドは自らの口からハジメの受け渡しの返答を、自分達の敗北を――――

 

 

 

 

『助けて……助けて、ハジメェ!!』

 

「ッ!!」

 

 

 

 

 娘の叫びが口を再び塞いだ。確かに響いた娘の、ハジメを呼ぶ声がガンドの決意をまたも揺らがせたのだ。

 ……ジャンヌ。お前は、それほどまでに……。そうだ、オレがこの場にいるのは、ハジメを渡さないためじゃないか。それをオレは……しかし、どうすれば……。

 再びその言葉を堪えたガンド。この状況を打開するのは難しい話だった。自分達は動くことは出来ない。ドラグディアの者が動くわけにはいかない。マキナスの者達にはっきりと否定できるのは、彼らを今、退けられるのはハジメだけだろう。

 ……この状況を打開できるのは……あいつらの言うことが本当なら、いや、その意思があるのならオレは……もう、それしかない!!

 ガンドは軍服の内ポケットに手を入れる。取り出したのはハジメが救世主と推測された証拠でもあるスターターだ。無論それはハジメの物ではない、ガンド自身のMSドラグーナ・ガンドヴァルの物だった。それをおもむろに腰に装着する。

 

「おやおや……何をなさるつもりで?」

 

「…………装依」

 

 ワルトの声に反応せず、ガンドはそのままスターターを作動させ、MSに装依する。光の壁にガンドの身体が前後から挟まれ、灰色の大柄なMS・ドラグーナ・ガンドヴァルへと装依する。

 重要人物の1人がこの状況下で装依したことで、両軍に緊張が走る。ライドがその行動の意図をガンドに問いただす。

 

「まさか、私達に歯向かうとでも?そうなれば娘さんはどうなるか分かった上での行動ですか?まさか、家族をお見捨てにしてでもですかな」

 

「ガンド少佐……」

 

 唐突な行動にバァンも懸念する様子を見せる。しかしガンドは決めたのだ。この状況を打開できる可能性に賭けるのを。一度バァンの方に顔を向け、謝る仕草をしてからマキナス側に向き直る。

 

「ふむ、その言葉、半分は正解かな」

 

「ほう……半分。少々気になりますね。どれが半分だと?」

 

「全部の言葉に対してさ。お前たちに歯向かう。だが、それを行うのにオレの剣を向けるのはお前たちにじゃない――――――お前だ、ハジメ」

 

 振り返りながらガンドヴァルのビームサーベルを抜刀すると、その剣先をハジメに突きつけるガンド。突きつけられたハジメの表情が凍る。

 

「え……!」

 

「が、ガンド義兄さん!?」

 

「な……貴様、正気か!?」

 

「ガンド少佐!?君は!!」

 

「何をしてるっぺ!?救世主に向かって……トチ狂ったってぇか!?」

 

 次々と投げられるガンドへの非難の声。しかしそれでもガンドは剣を降ろさない。彼の遺志は揺らがない。それが彼の決めた、娘との約束の返答だったからだ。

 死への恐怖を感じ、手を前にして後ずさろうとするハジメをガンドは制止する。

 

「動くな、ハジメ。すぐに終わる」

 

「ぅあ……」

 

 振り上げられるガンドヴァルのビームサーベル。竦んでしまい、ハジメは動けなくなる。そして、それを止めさせようと様々な方向から声が飛ぶ。だがそれに応えることなく……。

 ガンドは、その光の光刃を振り抜いた。

 

 

 

 

 サーベルが物体を溶かす音と、物体が地に落ちる音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ハジメはもう終わりなのだと思った。信じていた人物が自分に剣を向け、振り下ろすなど思っていなかった。だが雇い主であるガンドは自分に向けて光剣を振り下ろした。気を失っていたとはいえ、かつて自分もマフィア達を虐殺するのに使用した武器と同じもので殺されることは、まるで運命のように感じた。天の裁きなのかもしれないとさえ思った。自分があれほどの事をしなのだから、その報いなのだと。

 しかし、それでもいいとハジメは思った。ガンドにとって、一番大切なのはお嬢様……娘のジャンヌだ。この引き渡しの場は、あくまでハジメが重要なのだ。そのハジメが渡らない確固たる意志を持つ、もしくはこの場から消えてしまえば、それだけで状況を混乱させられる。ジャンヌを人質にする意味がなくなるのだ。ハジメというたった一人の犠牲に目をつぶれさえすれば。虐殺をした自分が死んで解決できるのなら、それでお嬢様が救えるなら、ハジメはそれを受け入れた。

 光剣が物体を斬る音と、斬れた物が地面に落ちる音がハジメの耳に響いた。しかし、そこで違和感に気づく。

 

(痛みが……ない?)

 

 そう、身体のどこにも、ハジメは痛みを感じない。斬られたはずだというのに、五体満足のハジメはどういうことかと恐る恐る目を開く。すると、そこには光剣を振り終わったガンドのMSと、拘束していたはずの手錠がなくなったハジメの両腕が視界に映った。

 地面に転がる先程までハジメの両腕を拘束していた手錠。それがガンドによるものだと気づく。だが同時になぜ手錠を斬ったのかという疑問が生まれる。ガンドの行動に戸惑いが生じる中、本人が装依状態でこちらに語りかけてくる。

 

「ハジメ、君の身柄引き渡しは両政府の考えからだ。私達軍人はそれを円滑に行うための存在……そこには当然対象の反乱防止も含まれる。しかし、それ以上は現場の判断が優先されることもある。オレは……いや、私はこの場にいる責任者の1人として、君に……救世主としてではなく、1人の人間として頼む願いだ。……娘を、助けてくれ」

 

「当主……」

 

 娘の救出。ガンドから願いだされた、ハジメへの命令ではない、懇願だった。身柄を引き渡す側のドラグディアの動きに対し、マキナスの者達は手を打った。しかし、この場でハジメの意志は尊重されている。そもそも、ドラグディア側はマキナスから引き渡しを要請されたものの、その身柄引き渡しの際には両国代表、そしてハジメ自身の同意が必要だった。ならば、ここでハジメがそれを断れば、今侵攻しているマキナスの者達、そしてポルンは犯罪者として討伐することが出来ると考えたのだ。

 しかし、これは当然受け渡しに反抗したということでもある。ライドらもガンドの対応に怒声を発する。

 

「ガンド・ファーフニル!それでも私達が引き下がるとでも思ったか!!」

 

「もう少し賢明な方だと思っていましたがねぇ?やはり竜人族の考えることは野蛮だ。救世主よ、そのような言葉に従えば、どうなることだか……」

 

 ワルトの皮肉めいた視線が、再びパソコンの画面に向けられる。羽交い絞めにされたジャンヌは、スカートの布もはぎ取られ、完全に下着姿となっていた。涙ながらに必死に抵抗するジャンヌがハジメの眼に焼き付く。

 許せない。絶対に自分は……いや、俺は絶対に、マキナスもポルンも、絶対に許せない!あいつらが俺のことを救世主だっていうのなら俺にはあるはずだ……この状況を突破できる力が。それが、俺のしたいことだから。だから―――。

 

「……俺は、貴方達のような人に付いて行く気はありません。だから、俺はお嬢様を取り戻す!」

 

「ハジメ……!」

 

 ガンドの横を通り過ぎながら、ハジメはマキナスの面々と対峙する。その瞳には、ジャンヌを助けるという確固たる意志を持っていた。初陣の戦士にありがちな目ではあったが、sれでも味方の側からしてみれば、今はそれでよかった。

 その姿に感嘆の声を漏らすバァンとヴェール。

 

「ハジメ君……君は」

 

「……ハジメ君、頑張って!」

 

 ハジメが前に出ると、マキナスの側でも動きがあった。ここまで一言程度しか口にしていなかったマキナスの兵士、アルス・ゲートが前に出たのだ。

 

「アクセラー少佐、自分の出番ですね」

 

「アルス少尉……そのようだな。頼む」

 

「はい。……救世主だか知らないが、そう呼ばれたくらいで調子に乗るなよ。お前がその名を持つなら、俺にもある。「星剣使い」の名を持つ俺が、お前を跪かせてやる」

 

 星剣使い。その言葉を聞いていたドラグディアの兵士達がざわつく。その名に心当たりのあったバァンがその詳細を口にする。

 

「星剣使い……マキナスに珍しい、格闘戦MSの装依者……。まさか、彼だとは……気を付けたまえ、彼はエースだ」

 

「エース……」

 

 エース。その言葉の重みを感じるように、復唱する。それだけの相手が自身の相手であることにハジメは緊張感を抱く。本来エースと素人など、戦いにすらならない彼らが戦えるのでは思わせているのは、間違いなくハジメのMSの力が未知数であるためだろう。生身の人間相手とはいえ、あの性能は目を見張るものがあった。そしてそれを操るハジメは、マキナスから一方的にとはいえ救世主と呼ばれている。ドラグディアの面々も、否定こそしてはいても、無意識にそれに機体を寄せていたのだ。

 ハジメは脳裏でとあることを思い返す。それは、ヴェールからこの引き渡し日までの間に学んだ、スターターの装依法だった。あの時ヴェールはマキナスでももしかすると必要なこと、と言われていたが、もしかするとこの事を想定してなのかもしれないと考えていた。

 偶然とはいえ、今はそのおかげで戦える。思い出した行程を基に、ハジメとアルス、2人が向き合うと、同時にスターターを装着した。

 

『ゼロ・スターター』

 

『マキナスターター』

 

 それぞれのスターターが装着音声を鳴らす。アルスのスターターはマキナス軍共通のものだ。装着すると、互いにペンダントのようなものを、それぞれのスターターに装填する。スターターに記録されたMSのプロテクト解除用ドッグタグ「ロックリリーサー」だ。ハジメは星と歯車が合わさったようなものをスターター前面を手前に開いた部分に装填し、閉じる。

 同じく、アルスもマキナスターターの上部スリットからロックリリーサーを装填し、完全に格納させる。そして、同時にスターターの装依起動ボタンを拳で叩く。

 

 

『装依』

 

 

 同時にそれぞれの前後に光のゲートが展開される。それらは2人を挟み、ハジメの方はゲートが上に一回転してから下に潜り抜けるとそれぞれのMSが姿を現す。黒い重装甲を持つ、3つ目のモビルスーツ「シュバルトゼロ・ビレフト」。それに相対するは白色に、赤いラインがペイントされ、各所で十字を作る、マキナートによく似たモビルスーツだ。

 その機体の名を、ライドが呼んだ。

 

「マキナート・レイ。我が軍の剣が、救世主にどこまで通じるか……」

 

「勝てますな。何せ、あのMSはわてが過去にMSの技術者として開発したMSの発展型……不完全と思われる今の救世主相手に勝利するのは造作もないこと……」

 

 不敵に笑うワルト。そして、戦闘の火蓋が切って落とされた。先手を取ったのは、ハジメの方だ。

 

「いくぞっ!はぁッ!!」

 

「…………」

 

 腕部から取り出した端末を握り、光の剣・ビームサーベルを形成させるとそれを振り抜く。それをアルスのMS「マキナート・レイ」は後方に回避する。

 避けられた……でも、このまま攻める。避けたってことは、それで精一杯ってことのはずだ。攻撃し続ければきっと!

 隙を作らせない。ハジメのその判断は正しかった。戦闘においては間隙を作らず、攻め続けるのは戦闘における1つの戦法だ。ハジメも直感的にそれを考え出したのだ。攻めを続けるハジメのMSはアルスを避けに専念させ、押していた。作戦は上手くいっているように思えた。

 だが、相手は若くとも軍人なのだ。素人ではない。その認識が全く違うことにハジメは気づかされることとなる。

 

「ッ!!はぁッ……はぁッ!!……」

 

「…………その程度か」

 

 おかしい。どれだけ攻撃を重ねても、攻撃はアルスのマキナート・レイに一太刀も当てることは出来ない。それどころかこちらが先に息を切らして動きが鈍る。その様子を嘲るアルス。脚部からDNを吹かせ、距離を更に大きく取ってからシールドの先のパーツを取り外して右手で持つ。そのパーツは先の部分が分かれると、分かれた先から幅の広い光の剣を作り出す。ビームソードだ。ハジメのMS「ビレフト」が持つサーベルも、普通の物と比べればソードに近いものと聞かされていた。だがアルスが持つそれは、ハジメのサーベルよりもより大きなビームの刃を持っているように思える。正真正銘、ビームの剣と言えるだろう。

 光の大剣を構えて、アルスが言い放つ。

 

「もう少し遊んでやろうと思ったが、これで終わりにしてやる!」

 

「何っ」

 

 今までの動きは本気ではない。そういった趣旨の発言にハジメは驚きを隠せない。大剣を構えたアルスが、MSにとって必殺とも言える一撃を繰り出す。

 

DNA(ディメンションノイズアタック)!!」

 

DNA(ディメンションノイズアタック)、シャイニング・ブレイド』

 

 ディメンションノイズアタックの音声が響くと、アルスが大剣を振り上げる。振り上げた大剣にスラスター各所から放出されるディメンションノイズが集中する。そして更に大きく、そして光を増した剣を形成した。

 一目でわかる。あの一撃は危険だと。ハジメは距離を取ろうとする。

 

「甘い!!」

 

「なっ……ぐぅ!?」

 

 だが距離を取る前にアルスが距離を詰める。そして強化された光剣がハジメのビレフトに襲い掛かる。連続した剣戟。すぐにビームサーベルは弾き飛ばされ、猛撃をその身に受けていく。連撃の〆に、アルスは大きく振り抜く。直撃だ。ハジメは大きく弾き飛ばされ、地面を転がっていく。

 機体の装甲に傷は出来ていない。しかし、装依したことで装依者にダメージは反映される。転がりの止まったビレフトだったが、立ち上がろうとしたところで地面にその体は伏せる。同時にビレフトの装依が解除され、ハジメの身体が横たわる。勝敗が決した。

 敗北したハジメを見て、ヴェール達は意気消沈する。

 

「そんな……」

 

「あのMSでも、ダメだったか……」

 

「ハジメ……クソッ!!」

 

 バァンやガンドも各々悔しさを隠せない。ガンドは歯ぎしりを見せるほどだ。希望が潰えた衝撃は伝播し、ドラグディアの兵士達にも不安が襲う。

 

(ダメ……だ…………こんな、ところ、で……止まっちゃ……)

 

 諦めたくない一心で、立ち上がろうとするハジメ。しかし、うつ伏せの状態から動くことも敵わない。朦朧とするハジメの耳に、アルスが現実を突きつけた。

 

 

「言っただろう。救世主と言われて浮ついただけのやつが、俺に勝てると思うな。素人が」

 

 

 悔しい。反論したいのに、口も禄に開かない。言葉を口にしようと思っても力が入らず、うめき声にしかならない。

 

「うぅ…………ぐぁ…………」

 

 遠のく視界。そしてハジメの意識が闇へと誘われる。護りたい者の姿が、ジャンヌの姿が瞼に思い起こされ消えていく。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「あらら……本当に負けちゃったわねぇ」

ネイ「負けちゃった、じゃないよ姉さん……。ここでハジメさんが倒れたら誰がジャンヌ・Fさんの救出をやってくれるんですか、藤和木さん!?」

誰がやるかって?もちろんガンダムさぁ!

ネイ「……いってらっしゃる意味が分かりませんが?」

あわわ(;゚Д゚)落ち着いてくださいぃネイさん!

グリーフィア「ネイ。そこはガンダムが決めてくれるのよ!(ビシィ!)」

ネイ「姉さんも何言ってるんです!?」

それは次回明らかになるかな?物語が引き継がれる、覚悟という物語が!

グリーフィア「それじゃあ、また次回見ましょうねっ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。