機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも皆様。リライズショックとも呼べる話から平静を取り戻しつつある藤和木 士です。ヒロト君も仕方なかったよね……イヴがああしてくれなかったら、GBNの方がダメになってしまったかもなのだから……。けど苦しいなぁ;つД`)

ネイ「あ、そうですか。アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア~」

反応薄い(^q^)さて、今回はEPISODE55の公開です。人質奪還に並行して、MS隊の侵攻作戦です!

ネイ「人質側の動向は既に分かっている状況ですが……果たして元さん達は間に合うんでしょうか?」

グリーフィア「間に合わないと、あの強化されちゃったディスティニーライダーに、クルスに全員やられちゃうものね~。シュバルトゼロガンダムは間に合うのやら……」

それでは本編をどうぞ。


EPISODE55 運命の乗り手1

 

 

 作戦開始前、施設のおよそ500メートル後方の山中に元達は身を潜めていた。その山中から暗視ゴーグルを用いて敵施設の動向を見る。

 さっきフィクサーから施設の侵入に成功したと連絡があった。彼ら自身の偽装は強襲してきた敵部隊から拝借した物、そう簡単に見抜くことは難しいだろう。

 施設へのハッキング作業も引き続きダイバーの電子戦特化型ソルジアスが担当してくれている。護衛はボマーとハイヤーに任せ、突入は俺と正人、リッパー、それに……。

 考えていたそこに通信が入る。それは周囲を警戒していた機体からの増援到着の知らせだ。

 

『待たせたな、黒和元』

 

「あぁ、来たかRIOT」

 

 制圧部隊「RIOT」、その隊長である羽鳥綺亜だ。かつては防衛部隊GUARDIANに所属していた彼女が、今は真逆の敵施設制圧部隊のRIOTへと鞍替えだ。

 彼女専用のソルジアスとその部隊がやってきて、準備は整った。改めて作戦内容を伝える。

 

「これより俺達は、ゼロン秘密施設に対する制圧戦を開始する。既に自衛軍スレイブレイスのフィクサーを先頭として人質奪還部隊が動いている。俺達はそのカモフラージュ、および施設の制圧、もとい救援として向かう」

 

『救援?隠密行動が失敗すると読んでいるのですか?』

 

 正人から上がった疑問。他の隊員からも同じ声が上がる。その問いに対し答える。

 

「あぁ。これまでの行動、どうも敵に先手を打たれ過ぎている。余程勘がいいんだろう。もしかすると、敵には俺達と同じ、未来を見通せるほどのDNLがいるかも」

 

『そんな!奴らはDNLを否定して……』

 

「否定していても、奴らが力を借りていないと言えるか?奴らは己のエゴの為ならなんだってする。事実を欺く。かつて次元覇院がしたようにな」

 

『確かに、な。アイツらは勝利のためになら、何だってする連中だ』

 

 苛立ちを込めて、同意する綺亜。あの戦いを経験したからこその発言だろうか。ともかく油断ならない。早く行かなければ人質奪還部隊がどうなるか分からない。最初から全力で、敵の予想に正面からぶつかり合う。

 時間を見て、合図する。

 

「まもなく囮に使っている敵部隊が施設に戻る頃合いだ。交戦後、すぐさま出撃して混乱に乗じて囮機体を潰して施設へと突入する。先頭は会島正人少尉、その後ろに俺とマルコシアス部隊、リッパーで。綺亜は敵施設の最新の見取り図を各所の制圧をしながら捜索してくれ。突入チームのバックアップ、それと緊急事態の為の最後の要員として、頼めるか」

 

『バックアップ……最後の、要員か。分かった。任されよう』

 

「よし、いくぞ」

 

 綺亜の同意を得て元達はミッションを開始する。機体が夜の空へと飛び立っていく。

 

 

 

 

 施設周辺へと到着する頃には既に戦端が開かれていた。未だに施設側の部隊が囮として使われている味方部隊と乱戦状態にある。

 まだ混乱状態にはあるようだ。予定通り、まずは施設側の部隊への一斉攻撃を開始する。

 

「全部隊、施設防衛部隊への攻撃を開始せよ」

 

 一斉に空からの弾幕を放つ。突然の弾幕の雨に敵は混乱状態となり、こちらに目を向けだす。

 注意がこちらに向いた。続いて地上から近づいていた正人の部隊が囮となっていた部隊に向けて進撃する。

 

『悪いが、このまま落とす!』

 

 バスタースラッシャーAで横薙ぎに両断する。まず一機、続いて二機目をLLカスタムが落とす。後に続いたリッパーが残る二機を落とす。誰が落とされたのかを分かりにくくすべく、こちらも当てる気のないカモフラージュの弾幕で撹乱し続ける。

 囮部隊の反応が全てなくなったのを確認して、空中部隊は一気に地上の部隊へと襲い掛かった。急降下したシュバルトゼロガンダムも着地と同時にシールドからの光剣を振り回して周囲を排除する。

 

「敵地侵入成功。予定通り、敵内部へと潜入した奪還部隊との合流を図る。各員戦術通りに対応しろ」

 

『了解!』

 

 隊員達に指示を出し、機体を施設入口へと向かわせる。立ち塞がる敵を蹴散らして、敵施設へと侵入を果たす。

 施設内では既に警報が鳴り響く。MSを纏った研究員相手に銃を向ける。

 

「抵抗は無駄だ。大人しく投降しろ」

 

『はっ!そんな旧式!』

 

「……テメーの機体も、旧式だろうが!」

 

 ザジンの弾道をすり抜けてその両腕を両断する。そのまま蹴って後ろに構えていた機体にぶつけて、ライフルで撃ち抜き爆発を浴びせる。

 やはり旧式機体ばかり……以前戦ったことのある機体はない。余程戦力を回したくないのか……。DNLを排斥する彼の意向を、ゼロンの上層部が煙たがっているのか?

 ゼロンのこれまでの行動ではDNLを排斥よりも、むしろ利用している側面を感じられた。上層部との乖離、それも視野に入れつつ敵を掃討していく。

 

『下へ降りる階段を発見。下へと向かいます』

 

「待て。先にドローンを向かわせろ」

 

『?了解しました……』

 

 疑問を感じながらも正人が手持ちのドローンユニットを発進させた。ドローンは自動操縦で階段をゆっくりと降りていく。わずかなローター音、それが爆音により途中で途切れた。その原因を正人が叫ぶ。

 

『トラップ!?』

 

「やはりか」

 

 ピアノ線によるグレネードトラップ。もし気づいていなかったら機体が大破していただろう。

 

『気持ち悪い感じがしましたからね。正人さん、細心の注意を払って進んでくださいね?』

 

『わ、分かりました』

 

 トラップを回避しながら突入隊は施設を進む。幾度かのMS戦も行われ、戦闘困難になった機体が一機、二機と下がっていく。

 戦力を削られてはいるが、それも想定通り。奥に着くまでに、あるいは合流するまでにどれだけ残せるかが勝負だ。最悪援軍を待って立ち止まることも想定しなければならない。

 とはいえそんな想定をしなくて済む被害で、事前情報の合流地点である地下5階までたどり着く。到着すると、銃声と金属音が響いていた。

 

『戦闘の音……まさか』

 

 勘づく正人。元も同じことを思った。

 既にこの地点で戦闘が行われている、というのは本来あってほしくなかった出来事だ。この地点までたどり着いたのは元達か、あるいは先に潜入したフィクサーの部隊。戦っているのは、おそらく。

 元はチームに伝える。

 

「急ごう。もう動き出しているのかもしれない。間に合わなくなる前に」

 

 装備を確認して先を進む。いくつもの通路を戦闘音に導かれて進んでいく。そして開けた部屋にたどり着く。その大部屋で目の当たりとなる。

 

 

「これは……」

 

 

 潜入したフィクサーの率いていたはずのソルジアスが二機沈黙する。まだフィクサーのソルジアスは健在だが、既に右腕を失っていた。

 その彼が見つめる先に、いた。もう一機のソルジアスを、腹から真っ二つに引き裂いた、あの蒼いMSが。

 悪魔を思わせる光景。その場にいたザジンを纏った男がこちらに気づく。

 

『おやおや?来たな、DNLを持ち込んだウジ虫が』

 

「その声……グレイブ・モセスだな」

 

『如何にも!私こそ、人類の救世主。DNLを排する者!』

 

 首謀者を確認した。その脇を別のザジンが護衛する形だ。しかし確保には向かえない。蒼いMSがこちらを見る。

 

(ディスティニーライダー……装備が変わっている。だが、乗っているのはおそらく……)

 

 睨み返すシュバルトゼロガンダム。フィクサー達の背後にいた千恵里が叫んだ。

 

「クルス……!どうして、クルスッ!」

 

『やはり、あのMSを纏っている、いいえ、纏わされているのは』

 

 クルス・クルーシア。彼女はまた戦いを選んだ、選ばされてしまったのだ。グレイブがクルスへと命令する。

 

「さぁ、ディスティニーライダーよ!狩りの時間だ。目の前の漆黒の、魔王のガンダムを殺せ!正義のままに!」

 

 目を光らせてディスティニーライダーが襲い掛かる。こちらも瞬時に戦闘体勢へと移行する。

 

「全機展開。03はフィクサーの直援に回れ。俺と残りのソルジアスと正人、リッパーは……ディスティニーライダーを止める!」

 

『了解しました!』

 

『了解した。さぁ、今度こそ俺が狩ってやる!』

 

 勢いよく飛び出すリッパー。ビーム・ガン・ポッドCでけん制しつつアサルトスラッシャーを振るう。が、それを容易く回避して見せるディスティニーライダー。その速さに驚く正人。

 

『速い?こいつ、前よりも……』

 

『だが対応できない程じゃねぇ!』

 

 まだだと素早く体の向きを変えると、そのままもう片方の手に握ったバスタースラッシャーを横薙ぎに振る。

 ところがそれも敵を捉えるに至らない。普通の機体ならあり得ない機動性。それに一切の苦悶を見せない。

 攻撃から逃れたクルスの機体は両腕を広げた。閉じていたアームガードが展開する。それはまるで獣の牙のような爪。爪の部分が赤く光り輝く。無言でそれがリッパーに対して振るわれた。

 

『ググッ!』

 

「下がれ、リッパー。援護する」

 

 リッパーの後退に合わせてライフル射撃を行う。ビームライフルの弾丸を素早く躱す身のこなし。スラスターの噴射が連続した。その間にリッパーは後退に成功する。

 あれだけ動かして動きに支障が出ていない。MSの機動には少なからずGが掛かる。それは今のシュバルトゼロガンダムも例外ではない。負荷がかかっているはずなのに、あそこまで動ける理由、作戦資料にあった耐G処理されたパイロットの確保。だからこそゼロン、グレイブは彼女にこだわった。

 続いてLLカスタムの正人が突撃する。ローラーによる高速移動で距離を詰める。

 

『俺が行く。支援を』

 

 アサルトサブマシンガンの乱射で動きを止めつつの接近。考えとしては悪くない。しかし敵の動きはそれを上回る。

 

「っ。こちらの弾幕も避けて……」

 

『速すぎる!?っ、パイロットが潰れるはずだろ?』

 

 弾幕を縫って回避する蒼い機体。バケモノだ。あの機動性。圧倒的機動性で撹乱する機体を見て、見学に徹するグレイブが答える。

 

『普通ならな。だが彼女は以前よりもシステムに特化した!記憶に必要な部分を消して、その脳領域すらも戦闘に使えるようにだ』

 

「記憶を……それでも人間か」

 

『魔王を名乗る男が、何を焦る?』

 

「その傲慢さ、償えよ!」

 

 ライフルでは捉えきれないと、こちらもブレードガンに切り替えてディスティニーライダーへ向けて斬りかかる。怒りを爆発させての斬り下ろしは、しかし敵を捉えるに至らない。圧倒的な運動性に乱れることなく、機械的な動きで確実にこちらと渡り合う。

 相変わらず、こちらの先読みを更に上回ってくる。上回るたびに紅いゴーグルパーツが煌々と輝く。話に聞くDNL殲滅システム「DIEND(ディエンド)システム」はかつて元が戦った機体と同等に動いていた。

 

「この性能……やはりアンネイムドシリーズと同等か」

 

『いいえ、元』

 

 ふと呟いた元の言葉にジャンヌがノーと答える。彼女は言う。

 

『あちらはユグドラシルフレーム搭載機。でもこいつは違う。爪のあれも、ユグドラルフレームじゃない、もっと別の……』

 

 言われてみて確かに感じる。DNLの直感で、あれがこちらを吸い込みそうな感覚を覚える。決してユグドラシルフレームのような感覚ではないと。

 背部のバインダーを展開し、距離を詰めるクルス。無言のままその手を向けた。こちらはその手に向けてブレードガンを振るう。

 機械音が響く。ブレードガンの刃がクローユニットに掴まれた。直後機体がぐらつく。

 

「機体が……重い?」

 

 変に重くなる機体。力を失ったように機体の出力が下がる。剣が押し込まれていく。出力を上げようとするが、その上がった出力すらもすぐになくなっていく。

 一体何が……。押し切られないように持ち堪える元の視線は再びアームユニットに向けられる。そして気づく。光る牙のパーツの光の流れが内向きに、剣からわずかにDNが漏れ出てその牙に吸い込まれていた。

 見間違いとも思ったがDNLの感覚でそれが間違いないことを悟る。そこで思い当たる。自衛軍が開発した素材を。

 

「この爪……ANDメタルか」

 

『ほう、気づいたか。その忌まわしい力で』

 

 正解と煽るように称賛するグレイブ。ANDメタル、正式名称「アンチディメンションメタル」。その名の通り、DNに対する特殊金属で接触した機体からDNを吸収する能力を持つ。

 DN稼働機にとっては脅威な能力だが、接触しないと吸収できない性能から扱いが難しいこと、そして武器としての加工が難しい為その生産は少数にとどまると聞いていた。しかもその製法は自衛軍しか知らないはずだった。だが目の前の機体は確かに使っている。

 すぐさま元は機体の腕からブレードガンを離す。素早く後退して距離を取った。ブレードガンはそのまま敵のクローに粉砕される。自軍の技術を使っていることを聞いて、正人は驚きを隠せない。

 

『馬鹿な!?ANDメタルは僕達自衛軍の技術だ。その製法は秘匿で……』

 

「盗んだんだろうな」

 

『……そんな』

 

 裏切り者。自衛軍のデータベースに精通した何者かが、その精製技術を横流しにしたのだ。それでようやく繋がる。スレイブレイスが動いたのは、DIENDのプロトモデル、あるいはANDメタルの流出を察知してのことだと。

 それを手負いのフィクサー、虎治郎が頷く。

 

『残念だが事実だ。DIEND、そしてANDメタルに関係するデータが何者かによって盗まれていたことを、俺は上官に告げられた。裏切り者がいると。それによって作戦を進行していた』

 

『そんな……裏切り者は一体誰が!』

 

『その上官が、その一人だよ』

 

『えっ』

 

『最初の作戦の後、俺はおかしいと思った。わざわざ新型機の対応を、マルコシアスに頼んだんだ。いくら数が少ないとはいえ、そんなことを指示した。気になって俺は新堂中佐にこの作戦について知らせた。そこで分かったんだ。今回の作戦を、自衛軍本部は一切周知していないと』

 

 抱いた違和感。それを怪しんだ彼の行動で、今回の事件が明るみに出たのだ。更にフィクサーは驚くべき事実を、元達に関わる情報を明かす。

 

『奴はすぐに新堂中佐の率いる部隊に御用となった。そして奴の私物が押収されて調べられた。それによって、奴の共犯者が自衛軍、そしてHOWにもいる可能性が浮上した』

 

『HOW……私達の組織に!?』

 

「…………」

 

 自衛軍、そしてHOWの中に裏切り者がいる―――。そう考えれば今までの作戦で、敵に先手を打たれていたことにも一応の納得がいく。

 しかしこの一概に不利な状況を逆転するわけではない。敵との近接戦は絶対に行えない。アレスモードは実質封じられたにも等しい。手をこまねく元達にグレイブの嘲笑が響く。

 

『愚かなお前達だが、礼を言わせてもらう。わしらにこれほどまでの力を明け渡してくれたことになぁ!』

 

「それでも、俺達はその機体を、操り人形を破壊する」

 

 ライフルを向ける。敵は背後のバインダーを展開、バレルとしてこちらに向けた。両者放ったビームが周囲に雨のように拡散する。

 一室が地獄のように思われた。それほどまでに、この戦闘は激しい。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。DNを吸収してしまう強敵ディスティニーライダーを攻略できるのか( ゚Д゚)

ネイ「それもですがその技術を提供したのが自衛軍、並びにHOWの裏切り者、ですか」

グリーフィア「自衛軍側の裏切り者は分かってるし、あとはHOWの裏切り者ってわけね。でもこの裏切り者、前にもどこかで言ったけどなんとなーく思い当たる節があるのよねー」

ネイ「そういえば姉さん前にもそんなこと言ってたね」

そして私が口止めしてる(´・ω・`)まだ言わないでよ?

グリーフィア「さて、それは触れないでおくにしても聞きなれない単語が聞こえたわね。アンネイムドシリーズ?」

あ、それに関してですがL3で登場するMSが属するカテゴリですね。実は既にその機体に関する事件が起こっており、その機体は既に自衛軍の手で封印されているのです。

ネイ「封印……そんなに危険なものだったんですか」

シュバルトゼロガンダムに匹敵するDNLの感応力を引き出すくらいだからね。それをデータ盗んで作り上げたのがディスティニーライダーなわけだ。ちなみに第二装備もその機体のデータの片方をベースに作り上げてるよ。

グリーフィア「元君は戦ったことがあるようだし、ある意味リベンジマッチなのかしら?」

まぁ、そうとも言える。その時は同型機が解決してくれたわけなんですが、果たして今回はどう処理するのか……というわけで今回はここまでです。

グリーフィア「次回、ディスティニーライダーとの戦いに決着が……?次回もよっろしくー」

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