機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも皆様。続けて投稿です。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。さぁ、遂にガンダムちゃんと元君の登場ねぇ、無事「引き継がれた」わね。うふふっ!」

ネイ「……お姉ちゃん、このことを予測してたの?」

グリーフィア「ネイ。私だってそんなに万能じゃないわぁ。作者さん、後はよろしくするわ」

はいな。EPISODE16公開です。遂に復活したガンダム。その力が発揮される…?それでは本編へ。


EPISODE16 引き継がれる、覚悟 Standby OK?5

 

 もうダメだ。そうジャンヌは思っていた。日常を破って自分を襲ってきたポルン達。フォーンが助けようとしてくれたが、ジャンヌが人質にされ、すぐに取り押さえられた。抵抗がなくなるとすぐにジャンヌ自身の服がはぎ取られていった。クラスメイトが逃げる刹那にその姿を目に焼き付けたのは間違いない。あんまりだ。こんなのは。しかもマキナスのMSを操る兵士達、そして主犯格のポルンには堂々と見られ、衣服を剥ぎ取られる。

 どれだけ隠そうとしても隠すことのできない体。その体を男達に見られる辱め。それでもポルンはやめることなく、更にジャンヌの下腹部の秘所まで手を伸ばす。もう消えたいとさえ思ったジャンヌは現実逃避しようとした。しかし、砂煙と共に現れた最後の希望が、それをすべて吹き飛ばした。

 機械の身体となったマフィアのボスの頑強な腕による拘束を弾き飛ばし、ジャンヌを救い出した戦士。助け出された当初はそれが誰なのかは分からなかった。しかし衣服を掛けられ、砂埃が晴れた先で見た男性の後姿を見て、その人物を知った。

 少し前に自分の家で雇った記憶喪失の青年。自分の我儘に嫌と言わず、正直に自分を見てくれた人。倒れても、気を失ってでも自分を助けようとした男性。そして、服を剥がれていく中、咄嗟に名前を呼んだ、自分の従者。ハジメ・ナッシュは確かにジャンヌの前に立っていた。

 

「ハジメ……なの?」

 

 思わずそう声が出てしまう。本来なら、彼はドラグディアとマキナスの国境にいるはずなのだ。しかし自分の従者はその質問にもいつものように素早く、そして丁寧に答える。

 

「はい。いや、正確には違います。記憶の戻ったあなたの従者です」

 

「え…………」

 

 ハジメの言葉に引っかかりを感じたジャンヌ。すぐにその引っ掛かりが、記憶の戻ったことだと気づくと、混乱が生まれる。

 え、記憶が、戻った?ってことは、今のハジメは、本当のハジメなの……?なんだか、話しかけづらいっていうか……今、何を言えば……あ~あ~あ~!!

 想定外の事実に、ジャンヌは言葉に戸惑う。加えて状況も切羽詰まった状況だったため、ジャンヌはすぐに思い付く言葉を口にした。

 

「……お、遅いのよ!!あなたは、いっつも……!」

 

 瞬間、ジャンヌの中で後悔が生まれた。ジャンヌは今まで男を遠ざけることがほとんどだ。そこに上着を貸されながらも裸体を隠さねばという思いが混ざった結果が、叱りの言葉だったのだ。更にジャンヌ自身は気づかなかったが、その言葉は記憶を取り戻すのも遅いという言葉にもなっていた。

 涙ながらの言葉にもなってしまい、ここで言うのはそんな言葉じゃないとその自己嫌悪も混ざった悲しみも顔に出るジャンヌ。しかし、震えるジャンヌの言葉に、従者たる青年は変わらぬこれまでの対応で、これまでよりも少し明るい声音で応えた。

 

「はい。自分はいつも遅い。それは自覚しています。だからこそ今だけは、いやこれからは全力で、貴女を護ります」

 

「ッ!!…………うん」

 

 言葉の衝撃さに反射的に返事をする。顔が熱くなるのをジャンヌははっきりと感じていた。言葉による熱はジャンヌの本音を引き出したのだ。

 しかし、その言葉を聞いていたポルンがハジメの考えに自身が受けた仕打ちを交えて異を唱える。

 

「ヒーローのように助けに来られたからと言って、調子に乗るなよ救世主気取りの小僧!その女は、私を目立った理由なく捨てたのだ!どうせお前も、これが終われば私と同じになる。私はお前の未来の姿だ!!だから私の邪魔をするな!」

 

 自身とはまるで違ったハジメの言葉とジャンヌの反応から、嫉妬の混ざった宣告をされる。未来の姿という単語にジャンヌの中に不安が生まれる。本当にそうなってしまうのではという不安だ。だがハジメはポルンの嫉妬交じりの言葉を受け止め、そのうえで今の行動を取った自分自身の想いを押し通す。

 

「そうかもしれない。だけど、今そんなことは分からない。そんな恐れを抱いて、護れるわけがない。例えクビにされるとしても、今俺が彼女を護らなくていい理由になんかならない。だからこそ、俺はお前の邪魔をする!」

 

「ハジメ……」

 

「貴様ァ…………!」

 

 ハジメの言葉は、その言葉を這いつくばりながらも聞いていたフォーンと敵対するポルンの声を引き出す。そして、ハジメはボックス状のユニットを取り出した。

 背後から見るジャンヌも、そのボックス状のユニットが何なのか分かった。スターターだ。ハジメが誘拐事件の時に使ったのを、ジャンヌも見ていた。ジャンヌの中で、あの時の光景が蘇る。血が辺りに飛び散った地獄絵図に体が震える。恐い。あの時のようにまたここも血が飛び散るのなら、自分はまた正常でいられるのだろうか。

 ジャンヌの震えが止まらないまま、ハジメがスターターを装着する。腰に巻いたスターターに星と歯車の合わさったロックリリーサーを装填した。その光景を見ると、高笑いを上げてポルンは話し出す。

 

「アーハッハッハ!!またあの時のMSか。だけど無駄だ!」

 

 既に装着していたスターターを起動させてポルンはマキナスのMSを装依する。周囲のマキナス兵が装依するMSのカラーリングを黒に変更した、背部に装備のない軽装仕様のMSだ。

 

「この機体は、お前を倒すためにチューンナップされたマキナスのMS、マキナート・アンチドラグさ!それにモビルウエポンになったシグットもいる……。貴様に、勝ち目などないッ!!」

 

 ポルンは自身のMSに隠すことのない自信を言い放って見せる。シグットもかつての仕打ちに打ち震えるように駆動音を鳴らす。それどころか数が違う。いくらあのMSでも、どうにもならない。

 しかしポルン達の復讐の炎とジャンヌの心の中の不安を打ち消すものをハジメは見せることとなる。ポケットからカードを取り出し、ポルンの言葉に否定の問いかけをする。

 

「それは、どうかな」

 

「何?そのカードは……?」

 

 ジャンヌ自身からはカードの裏面の黒い部分しか見えなかった。だがそれがこの状況を変えるほどの何かだとハジメの喋り方からして予測する。

 ハジメはそのカードをスターターの横から内部に装填する。すると、ジャンヌへととあることを告げだした。

 

「お嬢様」

 

「な、何?」

 

「…………黒和元。それが俺の名前です」

 

「え……」

 

 名前だった。ハジメの本当の名前。なぜそんなことを今告げたのか。ジャンヌの疑問はすぐに答えが出る。

 

『Standby OK?』

 

 スターターを叩く音の後、確認を促す音声が響く。その言葉にハジメは応える。

 

「装依」

 

 光のゲートがハジメを挟み込む。挟み込んだ衝撃で周囲に突風が起こる。その突風にその場にいた全員が怯む。何かが激突する衝撃音も響く中、ジャンヌは必死にハジメの姿を視認しようと目を開く。

 挟み込まれたゲートが上から下へ通り抜けると更に強く風が吹き荒れる。しかしその風は唐突に止む。風を止ませた存在、ハジメのMSがその姿を現した。

 

 

 

 

「……え」

 

 

 

 

 ジャンヌの口から声が漏れる。それは動揺と、困惑、唖然を含む声だ。なぜ自分の前にそのMSがいるのか、なぜハジメがそのMSを纏っているのか。そのMSは、自分にとって最悪の存在と同じ姿をしていた。

 にもかかわらず、ジャンヌは酷く落ち着いていた。否、落ち着いていたのではない。そのMSに見惚れていて、言葉が出てこなかったのだ。いつの間にか彼女の頬を涙が濡らす。先程までの悲しみではない。感動とも呼べる、熱い情動による涙だ。

 突風の間に周囲のマキナスのMSを倒し、ジャンヌの元に駆け寄ったフォーンの視線も気にならない程、ジャンヌははっきりとハジメのMSの後ろ姿を見つめていた。

 黒い装甲に機械の翼を持った、蒼い粒子を放出するあの時の機体(ガンダム)を。その瞳には、かつての自分が持っていた救世主への憎しみなどなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『スターティング・ゼロ・アウェイクン シュバルトゼロガンダム』

 

 その体をガンダムに変えた元は状況を機体の示す情報から、周囲の状況を確かめる。そして後方に移動したフォーンに要請を飛ばす。

 

「フォーン様、ジャンヌお嬢様をお願いします」

 

「な、ハジメ。その姿は……」

 

 フォーンのやや狼狽した声が返ってくる。彼もまた元のガンダムに思う所があるのだろう。しかし事態は予断を許さない。元はそのまま言葉で押し切る。

 

「お願いします」

 

「あ、あぁ……分かった」

 

 声を溜めての発言にたじろぎながらも了承をするフォーン。元はそのままOSとなっているスタートに指示をする。

 

「スタート、拳による格闘戦で行く」

 

「格闘戦だと?……分かった。機体回路シフト」

 

(ありがとな、スタート……!)

 

 スタートが驚きの声を上げるも、素直にそれに従い機体の調整を行う。元としては今、ジャンヌの前でまた血を見せたくなかった。スタートが察してくれたことに心の中で感謝を送る。

 こちらが戦闘態勢を取るとポルンもまた立ちはだかる敵への闘志をみなぎらせ、マキナスの兵士達に指示を飛ばす。

 

「えぇい、ガンダムだとぉ!?それでも叩き潰す!!やれい、マキナスの兵士共!!」

 

「っ!命令するな、竜人族!!行くぞ、全機!!」

 

 隊長格のマキナート・アンチドラグを筆頭に4機からなるマキナスのMSは突撃してくる。先頭の機体がライフルをこちらに向けた。

 

「……行くっ!」

 

 元は機体のスラスター噴射と同時に地面を蹴って跳ぶ。その一飛びで距離を詰める。驚く暇を与える前に飛び蹴りを浴びせる。

 

「ガァッ!!?」

 

「……次っ」

 

 敵と接地したガンダムの足からDNの波動が発せられる。同時にマキナート・アンチドラグの胸部にへこみが生まれ、カメラアイから光が失われた。倒した敵を足場に、更にガンダムは他の敵へと強襲していく。

 蹴り飛ばし、かかと落とし、頭部を張り手してからの鳩尾への右ストレートでマキナス兵を全滅させる。破竹の勢いをそのままにハジメはポルンとシグットにも攻撃を行う。

 

「ぐえっ、く、速すぎる……!」

 

『オノレオノレオノレェ!!何故当たらない!!』

 

拳から伝える蒼いDNの波動を体に受け、徐々に動きが鈍っていく2人。2人の攻撃に掠めることなくシュバルトゼロガンダムは連続して攻撃、反動で回避を行っていく。

 背部のウイングによる恩恵は伊達ではない。飛べそうにないウイングによる機動は元の中に確かな手ごたえを覚える。この機体ならやれると。

 続く猛攻にポルン達も動く。攻撃を何とか受け止めると、そのまま弾き飛ばして距離を取った。

 

「えぇい、調子に乗るなァ!来い、シグットォ!!」

 

『システム認証、モビルウエポンモードへ移行』

 

 シグットの機械的な口調と共にその体が胸部、両腕、脚部の5つに分離する。両腕はポルンの腕に上から装着される。続いて脚部が左右を逆に腕があったところに合体する。異形の姿となったシグットの身体は最終的にポルンのマキナート・アンチドラグの背部に合体し、背負う形となって足底に備えられたキャノン砲の砲口をこちらに向けられる。

 

「見よ、これが私の全力だ!!吹き飛べェ!!」

 

 ポルンの一声と共に両腕・脚部の4門のキャノン砲を発砲する。元は避けることなくその攻撃を機体の四肢で打ち消していく。

 

(後ろにはお嬢様がいる。ここは退けないッ!!)

 

 背後にいるジャンヌとフォーンを護るために、ここを退くことは許されない。しかしいつまでもこの攻撃を耐え忍ぶのは厳しいだろう。一気にとどめを刺すための一撃を元は欲する。スタートもその事実を指摘した。

 

「おい、このままだとジリ貧だぞ。どうする」

 

「分かっている。あいつに最大の一撃を叩き込む方法は!?あのMSが出した必殺技みたいなのは無いのか!?」

 

 元の言うあのMSとはマキナート・レイのことだ。あの時マキナート・レイはビームの剣を更に大きくしてビレフトの装依を解除した。あのくらいの一撃なら、目の前の敵も簡単に倒せるだろうと考えたのだ。

 このMS(ガンダム)もその流れの始まりと言える機体。元の要求にスタートは笑う。

 

「あぁ、もちろんさ」

 

「ならっ!!」

 

 元の声に答えるように、ガンダムがツインアイを光らせる。同時に光弾を連続して弾き飛ばす。返された光弾はそのままポルンとシグットが合体したMSに直撃し、引き下がる。

 

「うごぁ!?」

 

「今だ!」

 

 反撃により生まれた隙を元は逃さない。ガンダムが高濃度DNを多量に放出する。胸部のDNジェネレーターの回転駆動数が上昇する。

 

 

 

 

DNF(ディメンションノイズフルバースト)、ディメンションスパイク』

 

 

 

 

 スターターの音声が鳴る。放出されたDNは一気にシュバルトゼロガンダムの脚部に集中する。光が完全に集まり切ったところで、元は跳躍した。ウイングからも凄まじい量の高濃度DNが放出され、教室を再び蒼いDNが舞い散る。

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

「させるかァァァァ」

 

 元の声と共にガンダムは蹴りの態勢でポルン達に突貫する。ポルンもその攻撃を迎撃しようとする。だが、放つ砲撃はガンダムを押し留めることは叶わない。そのままボレーキックがポルンの顔を直撃して左方向へと吹っ飛ばす。

 

「がぁ!?あ、あぁ……」

 

 それでもまだポルンは倒れない。機体にスパークが散ってはいても、立ち上がって痛みに振るえる体を立て直そうとしている。元もそれを許しはしない。

 

「これで終わらせる!」

 

『DNF、ディメンションナックル』

 

 元の宣言に高濃度DNが今度は拳へと集まっていく。光を帯びた拳を握り、再び距離を詰めるシュバルトゼロガンダム。空いた手でポルンのマキナート・アンチドラグの肩を抑え込む。

 

 

 

 

「ひぃ!?」

 

 

 

 

「これが、俺の―――――覚悟だ!」

 

 

 

 

 逃げることの出来ない敵機へ光り輝く拳を叩き込む。装甲との衝突で周囲の空気が、建物が衝撃に震える。それだけでも凄まじい威力。だがそれでは終わらない。そのまま地面へとポルンの機体が叩き付けられ、教室内を砂塵で埋め尽くした。

 衝撃を受け建物が振動する。ポルンを挟んで伝導した高濃度DNによる打撃はまるで地震が起こったほど衝撃を周囲に与える。そしてそれをもろに喰らったポルンは地面へとその体を投げ出す形で身動きが取れなくなっていた。背後に背負っていたシグットも地面とのプレスで大破している。どちらも身動きが取れない状態で完全に機能を停止していた。

 戦闘の終了と共に、元はジャンヌの方に顔を向ける。拳の衝撃で耳を塞いでいたジャンヌだったが、戦闘が終わったことに気づくと塞いでいた手を降ろす。ジャンヌの口は呆然でお開いたままだ。

 元はガンダムの状態でジャンヌの方へと歩きで向かっていく。危機感を覚えたフォーンが遮ろうとしたが、ジャンヌがそれを手で断って横に控えさせる。その表情は先程までとはうって変わって肝の据わったような落ち着いた表情だ。元はそのまま距離を詰めていく。そうしてジャンヌの目の前まで来たところで元が動く。ジャンヌに対し膝を折って跪く。

 唐突な行動はフォーンに戸惑いを露わにさせる。しかしジャンヌはそれを分かっていたようにじっと見つめる。元は顔を下げたままジャンヌに報告する。

 

「周囲の敵を制圧しました、お嬢様」

 

 元はそう明言する。先程の元とはうって変わるような発言だ。だが従者として元はそう言わなければならないと判断し、ジャンヌの前でそう言ったのだ。

 だがジャンヌもまたそれを理解していた。だからこそジャンヌは裸体を隠す元の上着の前を強く握って隠すようにしながら返答する。

 

「……ありがとう、元。顔を上げて」

 

 ジャンヌの声に従って、顔を上げる。するとそこには今までに見たことがない、ジャンヌの微笑みがあった。同時に破顔寸前で大丈夫だろうかと思う部分もある表情だ。しかしその表情に元はどこか安心感を覚えた。むしろそれを見て元の心はとても充足感に満ちていた。自分は護ることが出来たのだと。

 

「お嬢様……」

 

「も、もういいから!あ、いや、今だけはって意味で……」

 

 

 

 

 しかし、甘い時間は終わりを告げられる。

 

「クソォ……よくもぉ!!」

 

「っ!まだ動けるのか」

 

 後ろで物音がして振り返ると、体を無理に起こそうとするポルンの姿があった。だがそれだけではない。先程の攻撃で機能を停止させたはずのマキナスのMSもぎこちない動作ながらも全機立ち上がろうとしていたのだ。

 自然と戦闘の構えを取る。しかしそれが無意味であることを知らされる。

 

「こうなれば、最後の策だ!!」

 

 ポルンの声に共鳴するように、全機から同じような音が響き始める。甲高い音で周囲に響く音はただ事ではないことを3人に感じさせる。だが音を聞いていたフォーンがすぐに正体に気づく。

 

「まさか、自爆か!?」

 

「何!?」

 

「そうだ、死なばもろともォォォォォ!!」

 

 ポルンの雄たけびが響いてすぐに元はジャンヌを抱きしめる。少しでもジャンヌを爆発から護るために咄嗟にとった防御行動だ。

 当然それだけでジャンヌを護ることなど出来ないと分かっていた。しかし元は何があってもジャンヌを護るという決意があった。ジャンヌの無事を強く願望する。

 

 

 

 

(頼む、俺にお嬢様を護る……力を!!)

 

 

 

 

 その時だ。奇跡が起きた。いや、軌跡が現れたとでもいうべきだろうか。元のガンダムの背部、ウイングの羽とも言えるパーツが根元から6つ分離する。それらのパーツは空中を光の軌跡を生み出しながらハジメ達の周囲に展開すると、光の壁が彼らを覆うように生成する。

 それに関係なく、ポルン達の機体が発光し大爆発を引き起こす。教室内の全てを破壊するほどの大爆発が教室を包み込む。

 爆発が収まると教室内は焦土と化していた。机の中に入っていた教科書なども全て燃え尽きていて、机は炭へと変わってしまっていた。ただ唯一、教室内で先程と同じ状態で残っていたのは光の障壁で覆われていたフォーンのドラグーナ・ガードマンと元のシュバルトゼロガンダム、そして元が庇うように抱きしめていたジャンヌだった。

 轟音が止んだのを感じ、元は恐る恐る目を開ける。と周囲が光の障壁で覆われていることに気づく。スタートに何が起こったのかを問いただす。

 

「スタート、これは……一体……」

 

「……あり得ないな。だが、これはお前がやったことだよ。機体のダメージはフィン・ファンネル以外一切ねぇ」

 

 スタートがフィン・ファンネルと呼んだそれが光の障壁を消失させると、力を失ったかのように地面へと落下していく。同時に元は自分の中で何かの感覚がなくなったのを感じたが、それよりも元は先に腕の中にいたジャンヌの無事を確かめる。

 

「お嬢様!大丈夫ですか」

 

「え、えぇ……だいじょ……ッ!?」

 

 ジャンヌの声が唐突に止まる。急を要するような反応で下を見たジャンヌに元は何かあったのかと同じく下を見る。

 

「え…………あ」

 

 そこで気づく。思い出した。ジャンヌの現在の状況に。

 ……そうだ、今お嬢様はほぼ裸の状態だ。あの状態を見るのは流石に恥ずかしいと思って上着だけ羽織らせたけど、それもスズメの涙程度の遮蔽物だ。それを忘れて今俺はお嬢様を抱いている。……これ、不味いやつだ?

 ガンダムを挟んでいるとはいえ、元は半裸状態のジャンヌを抱きしめていた。この状況をセーフかそれともアウトか。判断するのは他人、そして抱きしめられているジャンヌ本人だ。

 当の本人は顔を赤くしている。そして元は顔を下に向けたまま、ジャンヌの機体に押し付けられて少し潰れている胸が半分見える形になっている。このままだとダメなことは元にも分かっていた。しかし彼も1人の男性。主人とはいえその体に興味が抱かないわけではない。

 ダメだ、見るな自分。いや、でも意外とお嬢様ってそれなりにスタイルはいい……ってそんなこと考えている場合じゃな……。

 やがていつまでも自身の裸を堪能するような形となっている元に対し、ジャンヌは顔面を真っ赤にして現在抱いている気持ちを象徴する絶叫を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?じろじろ見ないでぇ!!?抱き付かないでぇ!!?」

 

「も、申し訳ございませんでしたッ!?」

 

 

 騒動の収まった学園に2人の声が響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、校庭には警察のテントが張られていた。そこはジャンヌを人質にしたことへの対策本部が設置され、避難してきた学園の生徒達も避難していた。

 爆発が収まったことで全員騒然としていたのだが、直後にジャンヌの声が響いたことで別の意味で騒がしくなっていた。

 

「この声……お嬢様!?」

 

「うん、ジャンヌちゃんだよ!!しかもハジメ君もいるみたいっ!!よかったぁ、無事だったんだぁ!!」

 

 ジャンヌの無事に安堵を見せるネアとレイア。2人の眼には涙が浮かんでいて、心配さを物語っていた。ジャンヌの無事に安堵する一方、クラスメイトの一部が絶叫の内容に気づく。

 

「ねぇ、なんか見ないでとか、抱き付かないでとか言ってなかった?」

 

「確かに……。そういえば、ジャンヌさんって犯人に服を無理矢理剥されてなかったっけ?」

 

「あ、私も見たー!……え、まさか……ハジメ君そんな大胆なことを!?」

 

「え!?うっそー!?」

 

 生徒達の話に黄色い物が混ざり始める。徐々にその話が警察の人達の耳にも入って、状況は混乱していく。

 

「え……ハジメという生徒は、人質救出の為に飛び込んだ生徒の名前ですか?その生徒は何かそういった前科のある人物で……?」

 

「い、いや、多分ないと思うんですが……。と、とりあえず状況確認をして、それ次第で身柄確保ということで!」

 

「わ、分かりました!全部隊突撃準備!!」

 

『了解!』

 

 警察も先生達も不安の中教室内への突撃を検討していく。そのテントから少し離れた木陰で1人の少女がコンパクトを見つめていた。コンパクトには鏡ではなく液晶が付いていて、しかも液晶は黒くノイズで塗りつぶされていて何も映らない。

 ……まさか自爆するだなんて。これであのMSのパイロット達から情報を引き出すことは出来なくなっちゃったってことね。しかも仕掛けていた監視カメラも燃えちゃったし。あれ高かったんだけどなぁ……。

 ため息交じりにコンパクトを閉じる。少女はジャンヌ達の教室に監視カメラを仕掛けていた。それも設置型ではなく、飛ばしてリモコンで操作できるリモート式のものだ。彼女はとある理由でジャンヌ達の教室を前々から監視していたのだ。

 今回は少女の目的に関わってきていなかったので状況確認がてらに使用していたのだが、そこで彼女は予想外の物を目撃した。

 

(ハジメ・ナッシュ。いえ、今はクロワ・ハジメかしら。話には聞いていたけど、いつのまにガンダムに……。けどこれは嬉しい誤算ね)

 

 少女はその顔に笑みを浮かべる。数日前は不安を多数抱えていた彼女は久々のグッドニュースに頬が緩んだのだ。

 計画は順調。彼も無事ドラグディアに残ることになった。なら、後は計画を実行に移すだけ。私の妹が危険な目に遭ったにも関わらず、もみ消そうとしたあの人に復讐するまで、あと少し……しかも、ガンダムの力を借りられるかもしれないだなんてっ、これで私の願いは果たされる……。首を洗って待っていなさい、お父様、それにお義母様?うふふっ。

 少女は空を見上げる。濃い目のオレンジ髪が揺れる。左右それぞれで大小2つのツインテールを結んだ髪は雰囲気と合わせてお転婆さと気品さを同時に感じさせる。そのような不思議な少女はご機嫌な様子で校舎内へと戻っていく。彼女の物語がもうすぐ動き出そうとしている。

 

 

 

 そしてその少女を見つめるように白色の髪の少女の姿があった。その少女もまた口元を酷く緩めていたのだった。

 

 

 

 

 竜と機械の世界、マキナ・ドランディアの運命の歯車は動き出した。新たな戦場は円形の決闘場。竜の怒りと共に新たな物語を生み出す。

 

 

第1章 END

 

NEXT EPISODE AND NEXT CHAPTER

 




今回もお読みいただきありがとうございます。いやぁ……やっぱ主役機が動くのはいいねぇ……。

ネイ「そ、そうですか……でもジャンヌ・Fさんと元さんの最後のあれは……」

あはは(´▽`*)アハッ

ネイ「アハッじゃないです。今すぐハザー○フィニッシュされたいですか?」

ごめんなさいッ( TДT)

グリーフィア「まぁまぁ、いいじゃないの~。それより、私はファンネルが動いた時のスタート君の反応と、最後の描写が気になったわぁ。あれだれ?」

あなたが言うとすっごい動揺するんですがそれ……(;´・ω・)まぁ、次の章への伏線ですよ。とりあえず今はそれで。

グリーフィア「ふーん、そう。まぁ気になることは他にもあるけれど、それは次の黒の館でね!」

あっはい(´・ω・`)では次は黒の館になります。次回も……

ネイ「よろしくお願いします」
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