ネイ「決着が決まった、というより元さんの判断で中断したって感じですよね」
まぁそうなるね。これ以上は意味がない、今後に備えてとのことでした。
グリーフィア「けど前の話でもそうだったけど、案外元君も千恵里ちゃんのこと考えているのねー」
だからと言って、それがベストとは限らない、かもしれないんですけどね。今回は本編中でようやくあの名前が登場、そして宗司の学園での一コマです。それではどうぞ。
仮想空間におけるガンダムDN同士の模擬戦が終了した直後、シミュレーターポッドから出た入嶋が起きた現象に驚愕を叫ぶ。
「何だったの今の!?後ろから攻撃は来るし、ビームが網みたいになるし!?」
今までに喰らったことのない攻撃は入嶋に相当ショックだったようだ。彼女の不意を突けたことをエターナと顔を見合わせる。
「何とか上手くいけたな」
「あっちが大きく回避してたら私達が喰らってたけどね。後ろに下がる判断してくれて良かったわ」
上手く行ったことにため息のようにホッと息を吐く。彼女の言う通りもし避けられていたら終わりだが、そんな後ろに目のついている敵がいるとは思えない。話に聞くDNLくらいの物ではないだろうか。
とはいえドライバ・フィールドに頼るほかなかったが、思った以上にやれたと思う。最初はイメージを現実化させる力場と聞いて難しいと思った。もちろんこれも簡単ではなかったが、使いこなしたい気は起きてきた。
予想外の戦果への称賛は来訪者からも上がった。
「そうだな。あれは入嶋の心理を突いたいいカウンターだった」
「元隊長」
「隊長!?あ、あうぅ……ごめんなさいぃ……不覚を取りました」
後輩に負けたことを不覚と体を震わせて頭を下げる入嶋。後からクルーシアや光巴、Gチームの呉川隊長やディランドル先輩に黎人司令も入ってくる。
その一番前で隊長は首を縦に振り、そのうえでそれぞれの称賛点と課題点を提示する。
「そうだな。蹴り飛ばしたまではいいがエラクス状態で止まったのはそもそも間違いだ。エラクスによる高出力戦闘では特化される性能を生かして戦わないければならない。今回の場合二号機は射撃とスピード特化だったから、そもそも格闘を仕掛けたのが間違いだ」
「ううっ!」
「しかし、突発的な行動で敵の読みを狂わせることは大事だ。その点では相模とエターナの機転は素晴らしい」
そう言われて悪い気はしない。あまり表情には豊かではないが、感謝の言葉を返す。
「恐縮です」
「フン、やってやったわよ!」
「……が、途中でも言われていた通り、お互いの呼吸を合わせることは大事だ。エターナだけじゃない、相模、お前もだ」
呼吸を合わせるという単語に内心びくりとする。どうにも出力が安定しないと思っていたが、やはりエターナと呼吸が合っていなかったようだ。だがどう合わせようものか分からなかった。そこはちゃんと後でどう合わせるのか訊かなければ。
エターナも気付いていたようで、もっとも彼女は責任が宗司にあると押し付ける。
「……フン、こいつが合わせづらい出力の出し方するからよ」
「エターナ、だったら後で相模さんと合わせる努力をしましょう?合わせ方は教えているんだから」
「うっ……でも……」
「……俺も、努力はします。全然今までの訓練用シミュレーターMSと違うのは慣れませんが」
と、俺はフォローを入れる。それぞれの反省点を出したところで隊長が一つ提案を入れた。
「模擬戦は終了、相模達は体を休める、あるいは残っている課題を済ませろ。今週末にはお前達に実戦に出てもらう。概要は後程。それともう一つ。これは完全に俺の独断になるんだが、いいか黎人」
「僕に聞く?内容は……」
「一号機、二号機なんて呼び方言いづらいだろう。バックパックもエディットバックパックシステムでありながらまだ名前が付いていないと聞く。お前達の戦い方からそれぞれの名前を考え付いた」
「コードネームですか。確かにいずれは考えておきたかったことですね。いつまでもガンダムDNではどちらを指すのか分かりかねましたから」
ガンダムDNの識別のための名前付けに面々は納得した様子を見せている。宗司としても問題はなく賛成する。
「いいですね」
「私達の機体にも、ジェミニアスみたいな名前が付くわけですね。私も構いません!」
入嶋も喜んで賛成する命名についての多数決。問題は隊長を嫌うエターナの意見だが。
「……あんたが命名って言うのは嫌だけど、ま、今は良いわ。同じ名前だとこっちの手間もかかるわけだし」
ところが珍しく、というわけでもないが嫌そうにしながらもエターナもまたそれに賛成だと返答した。返答の内容としては、エンゲージシステムにおけるオペレートに不便さを感じていたようだ。
全員の賛同を得たのを確認して元は考え付いた名前を提示する。
「一号機は「アーバレスト」、二号機は「アルヴ」と今後呼称したい。バックパックもそれぞれにその名称を使う」
「アーバレスト……確か大弓を意味する言葉でしたっけ?でアルヴは」
「古い神話における「妖精」の一種だ。まぁ、神話から名付けるのはうちの理念に反していると思っていそうだが、特に既存の物語にケチ付けるつもりはさらさらないからな」
「アーバレスト……」
何だろう。名前を聞いて妙に愛着を感じる。良い響きだ。初めて聞いたが異論はない。むしろこれが良いとさえ思える。
その気持ちを告げる。
「俺は構いません」
「大弓ね。妖精と合ってそうで地味に対照的な名前で区別はしやすいわ」
「私も問題ないです!」
「ちなみに命名は二人の戦い方からだ。と、開発者の意見はどうだ、黎人」
「僕も構わない。むしろ名前に関しては困っていたところもあるからその理由づけも含めて採用させてもらおう」
開発者の同意を得て自らの機体は「アーバレスト」とコードネームが振られた。スターターを入れているハロを見つめる。ハロは跳ねる。
『ハロ、ドウシタソウジ?』
「……せっかくだから、ハロにも名前とかどうですかね。ペットネームというか」
「ペットネームかぁ、ありなんじゃない?ペット用ロボットとしての側面も持ってるし」
「あまり愛着が付くのもどうかだがな。まぁ許可はしよう」
唐突な意見に光巴が賛同する。隊長も好きにしろと言い出しっぺの法則で許可し、注目が集まる中、宗司はアーバレストから連想した名前を付けてみる。
「アーバレストを入れているハロ、短く、アロはどうだろうか」
「アロォ?ハロに引っ張られ過ぎでしょ」
「ちょっとそのネーミングセンスないかなぁ」
「あ、ならこれは?アルって」
自身の命名に散々な意見が飛ぶ中入嶋の命名案に目を付ける。アル、確かに最初の名前に近くて、ハロに似合いそうな名前だ。
入嶋の意見を採用して名付ける。
「アル、か。それで行こう。これからよろしく頼む、アーバレスト、アル」
「しっかり着いてきなさいよ、アル」
「私も、よろしくねアルヴ」
『ニンショウ、アル。ヨロシク、ソウジ、エターナ』
なんだかんだでこうしてゴールデンウィークの強化合宿は終わりを告げたのだった。
◆
ゴールデンウィークも終わり、東響の街はまた忙しい日々を生み出す。私立東響湾ピースランド学園でも平凡な学園生活が展開されていた。
相模宗司もエターナ・ファーフニルもそれぞれの新しい学園生活を忙しくも過ごす。彼らの編入は学園でもちょっとした噂となっていた。特にエターナが異世界の住人と聞いて人目会おうとクラスを訪れる。これには学園の教師や千恵里やクルス、特に同じクラスの光巴がそれを規制、もとい調整してパニックは避けている状態だった。
それ以外は至って平穏な学園生活。それもそのはず、この学園はHOWの管轄下。何かあればHOWがすぐさま駆けつけて防衛体制を取る。本部付きの魔王の存在に加え、教師もHOW所属のメンバーが多数任についており、おまけに学園生の数名もHOWや他のMS運用集団(HOWや政府から認可を受けた者)の在籍者がいる。この学園は今の日本でもっとも安全な学園と言える。
これもHOWというMSの平和的な活用を目指す組織が作った学校が故、学園生の安全だけはなによりも重視した結果である。もっとも学園生でその想い全てを知る者は少なく、知らぬままに学んでいるのだが。
この日も学園は無事終業。各自が部活動か委員会活動、学習塾への移動か帰宅していく。それらの中で相模宗司も学園の友人と話しながら下校の準備を行う中だった。
◆
「よーっす、宗司、今日暇か」
「ん、信也、それに牛原さんも」
「おつかれでごぜぇます!学校はなれましたでぇすか?」
クラスメイトの二人に声を掛けられる宗司。声を掛けてきたのはこの学園で初めての友人、
もっとも二人はそんな重い物に縛られずにMSという最先端の塊の使い手として学ぶべくこの学園に入ったらしい。少々絡み辛いところもあるが、編入当初から声を掛けてくれて助かっているところもある。何より本クラスでのMS教習におけるチームメイトだ。友人として二人に返答する。
「まぁ、ぼちぼち。それで今日は予定とかなかったはずだけど」
今日の所は特に訓練もなかったはずだから、そう答えると手をポンと叩いて信也がこの後の予定を提案する。
「おっ、ならゲーセン行かね?俺の所の幼馴染の後輩にお前のこと紹介したいし、ちょっと実家に帰って不満溜まってるしさ」
「あー……なるほどな。そういえば言ってたな」
信也の後輩、どうやら二人がこの学園の中等部に通っているらしい。特にその内の一人はつい最近自身と同じように編入した生徒だという。幼馴染の後輩が編入と少し気になっていたのでこれを機に聞いてみるのがいいだろう。
「分かった。ならエターナとかに連絡入れて」
「―――話は聞かせてもらったけど、生憎キャンセルしてもらうしかないわ」
と予定をキャンセルする様に言ったのは隣のAクラスの入嶋。クルーシアやもう一つの別クラスの光巴にエターナまで勢ぞろいしてやってきた入嶋に用件を尋ねた。
「入嶋。キャンセルってどういうことだ?」
「忘れてない?今週金曜から私達の初任務。オースの種命島で軍事演習があるでしょ。それの確認とかを今日の午後からやるの」
言われた出来事に思い当たりはある。夕べ確かに専用端末に来たメールで金曜日からのオース遠征についての知らせが来ていた。近日それについてのミーティングを行うとも書かれていた。
とはいえそれが今日からとは聞いていなかった。いや、もしかすると端末の方に入っていたのかもしれない。いずれにせよ知らなかったことを謝罪、信也達にも断りを入れた。
「あぁ、日程は知らなかったな。すまない。信也達もごめん」
「いいって。仕事の事なら俺達が口出しできるわけでもないし」
「そうですそうです。しっかし金曜ってこたぁ夜中に出発ってことでぇすか?」
気にするなと返答した二人。優しい、と思う。一方で牛原の疑問に対し光巴が答える。
「ううん、朝から行くよ」
「えぇ?だったら学校は……」
「この学園には「特別単位引き換えシステム」があるから」
「特別単位引き換えシステム?」
首を傾げる一同。その仕組みを光巴が解説してくれた。
「この学園に通う生徒には私達のように外部のMS運用組織に所属している場合もあってね。なるべく学校のある時間に任務へ駆り出すなんてことはないようにしていても、緊急の用件で授業を抜ける時、代わりに任務を社会勉強って枠で授業を肩代わりできる制度なんだよね」
「へぇ、そんな制度が」
「あーあれの事っすね。あたしも一回使った奴ですねぇ」
陣泰高校ではなかった制度。この学園だからこその特例か、はたまた今後の為のテストケースなのか。入嶋が言うには、その両方らしい。
「基になったのは元隊長が昔通っていたって言う職業学校の制度らしいわ。けど黎人司令も真面目に検討して今も試しているって感じね」
「でも、それが通っても良いことばっかりじゃないよね」
「そそ。元お兄ちゃんも言ってたけど、そもそもMSを扱えてもその技能を発揮するのは出来るだけ学校を卒業してからにさせたい。これはその道を目指す、あるいは宗司君みたいにせざるを得なかった人に対する救済措置ってわけ。学業を疎かにさせたくないっていうのが元さんのポリシーでもあるから」
様々な人の想いを込めて作られた制度。そう言った物の積み重ねがこの学園にはある。案外最初からこっちを選んでも良かったかもしれない。
それらを説明し終わると、待ちくたびれたようにエターナがこちらを急かす。
「あいつ個人の考えとかどーでもいいから。さっさと行くわよ」
「どうでもは良くないが、分かってる。それじゃ、信也、牛原」
「あぁ」
「また明日、あと顔合わせはまた機会みてっすね」
友人と別れて宗司は入嶋達と共にHOWベース・ネストを目指した。ファースト・ミッションの概要を聞くためにだ。
◆
同時刻、CROZE部隊の隊長、黒和元とジャンヌ・ファーフニルは共にオース遠征の準備を行っていた。
「オース遠征、あれから3年か?」
元はジャンヌに確認を取る。オースへの訪問はこれが二度目となる。前回の訪問では酷いものだった。あの時はよく旧式のシュバルトゼロガンダムで戦えたと思う。ジャンヌも返答して当時の事を思い出す。
「そうですね。今回の用件もまたその時と同じくらい厄介事でなければ良かったんですが」
そう、これは厄介事。入嶋達にはまだ軍事演習としか伝えていないが、実際はもう一つ、今回任務が存在する。そちらこそがメインミッションとなる。
前回もまた非常に厄介だった内容だが、今回も非常に厄介な内容。そんな任務に新人を駆り出すのは危険とも思えたが、あえて元は決断した。その方が彼らにとって成長になると。ジャンヌの言葉に頷いて、かつ切り替えろと言う。
「言っても仕方がない。俺達の仕事はそういう厄介事だ」
「ですねぇ。けど実は私今回の任務楽しみですよ。新型艦の配備もされますし」
「あぁ……そうだったな。艦長もいい人材が見つかってよかった」
オースへの遠征に際し、今回からCROZE部隊を各地へ派遣させるための空中艦が配備されることとなった。初の空中艦にして量産艦であるフェアリーから発展したCROZE部隊などのエースチーム向けの艦の配備は、今後のHOW運用において重要となる出来事だ。
艦長は元が兼任することも考えられたものの、前線で戦うことを考え専門職に当てることになり、ゴールデンウィークの強化訓練の合間にクルー選出も含めてHOWの職員から選んだのだ。少々癖はあるが、いい人材だと元は思っていた。
その人物もこのミーティングで隊員達と初顔合わせとなる。その性格と外見に果たして何人が手を焼くことになるか。心配半分だが、変えるつもりもない。ジャンヌも言及する。
「私も彼女はあの年で逸材だと思います。けど……エターナは怒りそうだなぁ」
「ま、変えるつもりはないさ。これで合っていると分かってもらうまで付き合ってもらう」
「その前に、あの艦長が非難に耐えられない可能性考えてます……?」
ジャンヌの言葉にノーコメントで資料をまとめる。あまり言いたくはないが、その可能性は十分にある。こちらからは頑張れとしか言えない。
そうこうしている内に時計はミーティング開始の十分前を示す。資料を端末に移し、ジャンヌに声を掛ける。
「行くぞ、ジャンヌ」
「はい」
この作戦は失敗できない。この任務の裏には彼らが、ゼロンの意志があるのだから。
NEXT EPISODE
今回もお読みいただきありがとうございます。
ネイ「アーバレスト、アルヴだけでなくハロの名称もですか……これ原作から引っ張ってきてますよね、アーバレストの」
あれです、何らかの収斂進化ですよきっと。
グリーフィア「何でもかんでもそんな言葉に頼るのはダメよ~」
それは置いておくべきこととして、今回は宗司君達のクラスメイトも紹介ですね。人物モデルには私の好きな作品から持ってきてますね。
ネイ「ちなみに作者のその作品での推しは?」
戌の後輩ちゃん
グリーフィア「んーこの白髪銀髪ブロンド髪好きめ」
性癖は語るに限る。けど今回この牛ちゃんの喋りやっぱ難しいです。標準語すら疎かな私に期待はするな。
とはいえ出しているから当然出番はそれなりにあるわけでして……随分後になっての大活躍を括目するつもりで待っててください。
ネイ「次回から初任務についてのお話ですか……」
グリーフィア「今章からは歴代ガンダム作品のオマージュというかリ・イマジネーションやるみたいだからね~。まぁ章ごとにリ・イマジネーションってどうやるのか疑問なんだけども」
ディ○イド並みに短くなるかと。それではまた次回、早いうちに更新したい。