レイ「新しい任務の通達って感じだったよね。宗司君にとっては初任務ってわけだ!」
ジャンヌ「果たして、初めての任務はどこになるんでしょうか」
それではどうぞ。
宗司達が到着した頃には既にミーティングルームにはCROZE部隊の全メンバーが揃っていた。だがそれだけではない。普段基地の方でCROZE部隊へのオペレーターをしていたり、部隊の機体整備をやっているという人もやってきていた。
CROZE部隊のミーティングならこれは当たり前なのかと思った宗司。だが入嶋の反応もまたこの人数に少々驚いていた。
「あれ、割と多い……?」
「千恵里ちゃん、今回は遠征だからCROZE部隊に関わる人のほとんどは空中艦のクルーになるんだよ」
「あ、そっか」
「まぁ、これからはそれが基本形態になるんだけどねー。MS母艦があるだけで作戦展開とか楽になるから」
どうやらこの人数の多さは空中艦とやらの配備故の多さだかららしい。現場に出る人数が多くなるから、これまで本部で活動していた人もこうしてブリーフィングに参加する。道理としては当然の事だった。
故にこの人から声が掛かるのは当然だった。
「よう、今回はお邪魔させてもらってるぜ」
「やーやー、入嶋ちゃん達~」
「星北整備主任」
「あ……来馬整備主任……ど、どうも」
星北平次と来馬真希。それぞれガンダムDNとシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの整備を中心に、CROZE部隊のMSを管理する二人とは面識があった。
ガンダムDNを宗司用に修正してくれた星北さんは元隊長の友人であり、無論頭が上がらない。一方の来馬主任の方は……。
「どうした、どうした~乙女達よ~!もっと、もっと私にその髪見せてっ!」
「あ、あはは……」
「なんでこの髪フェチまでいるのよ……」
「当然だよー、だってこの人元さんのガンダムの機付長だしー」
女子連中は微妙な態度を示す。来馬主任はどうも女性の髪に興奮を感じる人らしく、これまでにも多くの新人女性隊員がその被害に遭っていた。スキンシップの範囲ということで許されてはいるものの、エターナや入嶋、クルーシアは迷惑がっているのだ。光巴も声が棒読みになっていることから、初期メンバーと呼ばれる人たちは彼女の更生は諦めているとか。
とはいえ後輩達の迷惑は見たくないようで、星北さんが止める。
「来馬さん落ち着いた方がいいですよ。これから元とジャンヌさん来るんだし」
「ジャンヌちゃん!やっぱジャンヌちゃんの髪もいいよねー。前の一番長い時もいいけど、今の長さも新鮮だし。色も妹のエターナちゃんと合わせて眼福っ!」
「聞いてねぇな、この人」
「もうやめてよ……」
涙目になって引くエターナと苦笑いする女子一同。合間を見て宗司は星北に空中艦の事について尋ねる。
「空中艦の開発って確か5年前には出来てるって世間では言われている話でしたよね。これまでにもCROZEでは運用していなかったってことなんですか」
「ん?いや、どちらかと言えば今回は専用の母艦が初めて配備されるっていう話だな」
「専用の母艦」
聞き返すと星北は整備員としてその違いを教えてくれた。
「量産艦だと特別な機体の整備に時間がかかってね。特に君のアーバレストや一番わかりやすいのは元のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。特殊なシステムを外部への漏えい無しでやるなら、ちゃんと設備を整えておかないとね」
「あぁ……専用の奴を調整するのに機密性の高いやつがいると」
「そういうことだ。それ以外にもうちのエースは特に場所を取る構成でね。今回の艦じゃないと武装の整備も全部出来やしない。っと、言ってたら丁度か」
星北の指す方向の扉から、指揮官である元が入ってくる。ジャンヌ副隊長、それにもう一人、青と紫の髪色をした女性が続いて入る。
最後の一人は全く知らない人だ。むしろいたら気づきそうな人だから新人だろうか。元達が到着すると全員が合図で立つ。
「全員起立!」
「……集まっているな。ではこれより今週金曜日に行われるオース遠征について第一回ミーティングを行う」
席へと着くと説明が始まる。まず向かおうとしている場所、オースとは日本の外縁に位置する島々を管理する「疑似国家」と呼ばれる組織を指す。観光施設である島々で、本土から年間2万人が訪れるほど、アメリアのワイハのような場所である。
25年前に火山活動で出来たとされる島は四つから成り、その中核となる「種命島」にオースの運営疑似政権が置かれ、島を整備し疑似国家、特に観光面を充実させた観光国家として平穏を保っている。
相模家でも一度旅行に行こうとなったことがあった。けれども何やらいざこざがあったらしく飛行機が全便欠航となってしまった。その時に何やらテロリストによる島の占拠があったらしいのだが……。今は復興して観光客も元通り。この機会に街を散策するのも悪くないかもしれない。
島の紹介が隊長からされて、続いて目的の確認となる。しかし、予想外の言葉がいきなり飛んでくる。
「まず今回の目的だが、表向きはオース軍との軍事演習。お互いの新人達の模擬演習だ。だがそれはカムフラージュ」
確かに宗司はこのミッションが軍事演習であることを聞いていた。けれどもそれが表向き、カムフラージュだなんて初めて知った。
動揺は話を持ってきた入嶋達にも及ぶ。
「えっ、軍事演習じゃないの?」
「やるみたいだけど、それとは別に問題があるってこと?」
「……何よ、はっきり話しなさいっての」
エターナの言う事実の明らかにするようにとの進言に同意見だ。それを隊長達も当然であるとして話す。
「まぁ知らない者がほとんどだな。簡潔に言えば、もうすぐ行われるオース誕生25周年の式典を護衛する。それも対象はゼロンだ」
ゼロンの単語を聞いてどよめきが引いていく。隊長は言葉を続ける。
「この式典で、オース野党に位置する派閥、美愛派がゼロンのとある人物と密会関係にあると情報が入った。そしてこの美愛派はオースをゼロン勢力に合流させようとする集団であることがオース政府からの情報で分かっている」
難しい言葉ばかりだったが、言ってしまえばあのゼロンが島を占拠しようとしているかもしれないということ。そこで以前の出来事が思い浮かぶ。
あの時の事件がもし、ゼロンによるものだとしたら?
元も前回訪問時の状況を語った。
「前回の遠征に同行し、生き残った者達なら分かるだろう。あの時戦った、オース国内テロリスト「虚ろの零」。彼らはオース内で結託したゼロンの末端だった。その生き残りが、また今回もオースに悪しき種を蒔きに来た。これを何としても阻止、もとい確保することが本遠征の最重要任務となる」
「あの時の続きか……」
呉川隊長の表情が言葉と共に厳しくなる。他の隊長格の者達も周囲への表情を硬くしていた。
これはいきなりハードなミッションになりそうだった。そしてようやく、元隊長は新入りと思われる女性を紹介する。
「それと、知ってはいると思うがこの度俺達のチームに専用艦が配備される。こちらはその艦長を務める」
「紫音・プラネリアスです」
耳を疑った。新入りと思われた女性はこれから自分たちの上官と思われる立場の女性だったのである。
思わぬ事実に同じ予想をしていたと思われる入嶋も目を見開く。
「嘘……あの人艦長!?」
「声に出てるよ千恵里ちゃん……」
驚かない者も少なくない中で、紫音と名乗った女性は自己紹介を軽くする。
「私も入って二年目だから、至らないところは申し訳ないけどカバーしてもらえると助かるわ。基本的には黒和さんの指揮のまま、追いつかないところを私がフォローする形ね」
「無論、艦の指揮自体は彼女に任せる。一々艦内の状況まで判断して指揮するのは非効率だからな。彼女自身の腕は選んだ俺が保証する。既に別の戦場で彼女はいくつかの戦果を挙げている。どんなことがあっても、命令違反でない限りは彼女を信じろ」
「……そう言われても、ちょっと責任過多で困りますけど、全力は尽くすわ」
新しい上官、上司を得たCROZE部隊。元は今後の予定について全員に指示する。
「金曜日までにミーティングをいくつか挟み、出発とする」
「それまでに、各員は出発の準備を行ってください。隊員にはそれぞれ小さいですが自室が与えられます。持ち込んでおきたいものなど今週中に揃えてください」
「わぁ!自室だぁ!」
「へぇ、部屋までもらえるなんて待遇良いじゃない」
思わぬ点に沸き立つ者もいる。宗司も一人でいられる時間があるのは少なくない利点と感じていた。
金曜日からの遠征は不安と共に期待を寄せて、CROZE部隊の各隊員に活気を与えたのであった。
◆
西日本は現在ゼロンの支配下にある。その中心的存在となるのが
ゼロン・フロンティアの中、会議場で今ゼロンの幹部らが話し合う。
「まもなくか、オースの美愛派による革命は」
「はい。今週の日曜日に、オースの力は我らに合流します」
内容は今週末のオースで起こす作戦。種命島制圧はゼロンにとって非常に意味のある出来事だ。ここを抑えて、いずれ日本全てをゼロンの意志に従属させるための檻として機能させる。
それを任せられるのは美愛派とこれまでに何度も連携を取ってきた男性。男性は穏やかな面持ちで余裕を語る。
「オース政府はどうも、先月に反旗を再び翻したCROZE部隊を呼びよせるようですが、問題ありません」
「ほう。あの性能を持つ機体に、勝てると」
「負ける気はありません。美愛派の兵士は強い。加えて既に蒼穹島からこちらに増援を送ってもらう手筈です。そうだろう」
言って確かめたのは蒼穹島の代表者。彼はオース掌握を指揮する男性からの協力に首を縦に振る。
「あぁ。その要請を受け、こちらもイグジストとディナイアルの運用を承認した」
「おお、あの機体を出すのか」
わずかにどよめく。
会議に集まっていた者達は知っていた。その機体、イグジストとディナイアルと称される機体が凄まじい力を持つことを。
「それを出すのなら、もはや勝利は確定だろうな」
「正直、あれはいけすかん。だが勝てるのなら文句は言うまい」
多くがその機体の投入に賛成をする。それだけ期待値の高い機体が投入されることを意味した。
勝ちは確実。しかし油断するなと男に声が掛かる。
「そんな簡単なことなら、今までに落とせていると思うんですが」
「……君は、確か……代表の」
蔑むような言動をしたのは少年。この場を取り仕切る代表の傍に仕える形で参加していた。
その彼に乏しめられたオース制圧の指揮をする男性が平静を保って返す。
「確かに、君の言うことも一理ある。かつての次元覇院でも、勝てると思って足元をすくわれた。あのガンダムに」
「そうだ。その思い上がりで、どれだけ世界の正常化が遅れたのか。知らないわけではないでしょう?」
若いながらも、事実を突きつける少年。隣に座る代表の関係者ともあってか、気迫は凄まじい。
周囲の人間は小声で話す。厄介な、あるいは若造がと悪口をぼやく中、男性は彼の考えに頷く。
「君の考えは正しい。我々が正しい、だから何物にも負けないという意気込みがあったからこそ、私達を含めた各地の教信者達は彼ら悪魔に煮え湯を飲まされた」
「あんた達はそうだろ。それで」
「だが、私は知っている。彼らに勝るものはただ一つ。遺伝子。人を形作る運命は何者にも劣りはしない。私の見出した者達、優秀な遺伝子を持つ彼等なら、機体性能だけのガンダムなどおそるるに足らない。遺伝子は絶対だ。蒼穹島と種命島はそれを目指した島なのだからね」
男は知っていた。遺伝子、それがこの世界のすべてを決めると。彼自身が極めた道こそ、ゼロンを大きく勝利へと躍進させる一手。
蒼穹島、そして種命島のオースは彼の発言を強く後押しする勢力だ。
二つが揃えば、如何にガンダムが強大だろうが有象無象。そう断言できる遺伝子という名の力を二つの島は持っている。だからこそ、彼は種命島、オースを獲得するための作戦を描いた。
「……それも、驕りだろうが」
「私は目的を果たす。君のように、ガンダムを殺すことだけに執着しない。組織を生かす選択をするさ。その選択は、やがてあらゆる人が従属するだろう」
「どっちが組織を生かす選択だ……」
「そこまでにしておけ、二人とも」
制したのはこの会議の代表。我が子のように二人を宥める壮齢の男性は長としての決定を下す。
「オース攻略は君に任す。もっとも、先程の発言はしっかりと果たすこと。それがこやつや、他の者達からの信頼にも繋がろう」
「分かりました。信用は得ておかなければなりませんからね」
「うむ。これで今回は終わりとする。各々、それぞれの担当区域の不信活動には目を見張るように」
『ゼロンに誓って』
会議は終了した。が、立ち上がろうとした代表を補助する形で少年は直談判する。
「代表。なぜ僕をオース襲撃に加えてくださらないのです。黒のガンダムが再び力を現した今、対抗できるのは僕の……」
少年の熱い進言を、代表は冷静に説き伏せる。
「よいか。黒のガンダムは新たな力を得ている。その新たな力を見極めるまでは、私達は決して戦力を無駄にしてはいけない。今は、なるべく外の勢力か、末端の者を使うのだ」
「ですが……ただそれをただ、手をこまねいてなど」
納得できないと言う少年に再び代表の男性は言い聞かせた。
「今は我慢の時。君の怒りは分かる。復讐は必ず果たされなければならない。だからこそ、最後の切り札は温存せねばならないのだ。君も、分かってくれ。君と君の機体こそが世界を変える。本当の姿に」
誇張でも拡大解釈とも取れる言葉。しかし少年はそれをよく理解していた。
その言葉でようやく少年は首を縦に振る。
「……分かりました。今回はあの男の手腕を見ます」
「そうしてくれるとありがたい。よく見るのだ。魔王の今の戦いぶりを。そして上回るのだ。奴の力を」
「はい!」
親子を超えた二人の言葉。
復讐が果たされる日は近い。
NEXT EPISODE
EP16はここまでです。
レイ「オース……種命島……」
ジャンヌ「この章の名前は運命の種の行方……単純ですね」
単純って良いことだよ(適当)ある程度関係性は示していかないとですから。
レイ「うんまぁね。でもそれってことは、この章でのキーパーソンは彼かな」
ジャンヌ「島から、というより島国から出なかった彼、ということに、なるんでしょうか?」
なるかもね。そしてゼロンもまた次の動きを見せていますよと。
レイ「何か気になる面々はいくらか出てるけど、果たして全員名前が出るのはいつになるのやら。あと星北君と来馬ちゃん久々登場だね。味方陣営の新キャラもだし」
ジャンヌ「元さんも凄い敵を作っていて心配になります。けどそれ以上に来馬さんの暴走が重症な件について」
それは知らん。そこらへん黒の館DNで書いていきたいところ。ではEP17に続きます。