ネイ「サブタイトルが変わっていますね。自由の剣、ですか」
グリーフィア「自由で剣ってSEEDで言ったら、彼よねぇ?」
大方の予想通りです。それに関連したとある小ネタが今回メインですがね。それではどうぞ。
模擬演習を終えて艦に戻った宗司達。彼らは疲れを癒すためそれぞれ艦の区画の1つ、大浴場「ハウDe湯」に駆けこんだ。
ちょっとふざけたネーミングの大浴場だが、そこはHOWの最新鋭艦。疲労回復を主軸にストレス解消や美肌効果などを揃えた湯を特殊な機材で保管、運用していた。
入った者達の声は様々だ。そして今日の振り返りを各々行っていた。
◆
「……聞くんですけど、これ戦闘艦ですよね?」
「それがどうした?」
湯船につかりながら宗司はふと、そんな質問を呉川にした。呉川はそっけなく返す。だがそれに込められた意味を同じく湯船を満喫していたクルツが指摘した。
「そういう意味じゃないでしょう隊長。こんな快適な施設が、本当に血みどろ混ざる戦闘母艦にあるのかってハナシ」
「まぁ、間違ってないからそれでいいです」
「あぁ、そういうことか。いや、他の艦はまだ取り入れられていないな。この温泉はまだこういった施設が必要か、という今後の為の調査も兼ねている。後々アンケートが実施されるだろうな」
まだ開発段階にある施設。そう言われて納得がいく。珍しいのも当然だろう。
温泉施設の感想についてクルツが問題なしと太鼓判を押す。
「まぁ俺としてはアリだと思いますけどね。ずーっと部屋の風呂で1日の汗流すばっかりじゃ、変化なくて狂いそうですしねっ!」
「おっ、クルツ分かってんねぇ!プロペラント圧迫するけども、やっぱこういうの無いとな!」
クルツに同調して他の部隊の隊員達も同意する。そう言われると納得する点は多い。人に銃を向ける感覚にまだ慣れない宗司。どうにもストレスが掛かってしまっていた。なんとなく感じていたその不快感は、今日の出来事も含めてさっぱりさせたいところだ。
ふと耳に女性陣の声が聞こえてくる。話の内容はあまり分からない。このHOWで湯の男湯・女湯は建てられた竹風の壁で仕切られていた。眺めていたこちらに、呉川が話す。
「念のため言っておくが、その竹の壁の間から隣を見ようとしてもダメだからな。その壁は中にDNフェイズカーボン製の板が仕込まれている。覗き対策にな」
「あ、なら良かったです。でも上は空いてますけど?」
「そんな奴は懲戒処分だ。それに壁には一定の圧力で電撃が流れるようになっている。くれぐれも気を付けろよ、特にクルツ」
「えぇ!?そ、そんなこと、しねぇって?」
きっぱりと言った呉島の言葉をクルツはしどろもどろになって答える。もしそんな事があったら女性陣からの軽蔑は確実。特に宗司達のGチームは女性メンバーが多い。エターナが永遠に許さない光景が見えるようだ。
エターナの存在を思い起こして、もう1つ覗きの可能性にたどり着く。それの対策について確認する。
「それなら多分クルツ先輩は大丈夫ですね。けど元隊長みたいなDNLとかの対策って、これあるんです?あ、もちろんそういった対策に関してちょっと興味を抱いたんですが」
「な、ソージお前……!」
「ほう」
顎に手を当てて考え込む呉島。ゆっくりと返答を待つこちらに、彼は知る限りの事を教える。
「そもそもDNLの絶対数が少ないのはある。だがこの艦は特にDNLの配置人数が多いのは確かだ。今後のお前の成長も含めて一応話しておくと、ありはするな。この風呂のみにDNLの妨害電波が流れている」
「あ、やっぱりそういうのあるんですね」
DNLの力を妨害する電波。やはりそれらは既に開発されているらしい。そのメカニズムについて呉川は語る。
「聞いている話ではかつてあったDNLへの対抗策として開発されたものが元となっているらしい。モビルスーツの兵装として使われたそれを出力を落としパイロットに不快とならないように調整しているらしい」
「モビルスーツの兵装から、ですか」
「あぁ。過去にはインターネットなども軍の運用から民間に開放された。その例は別に珍しいことはない」
「ま、兵器のお約束ってところだな。この機能が果たしていつ民間に移されることか」
「技術が、こうやって俺達の生活が変わっていくんですね」
浴場を見渡す。戦場に似つかわしくない物は、やがて当たり前の日常の枠組みへと取り入れられるのだ。
そんな現場にいると思うと、これも悪くなかった。と、唐突に話題は今回の模擬戦の反省へと移った。
「さて、この施設の充実さに満足したところで、うちの反省会だ」
「うっ……全然ガンダムの高性能を出し切れていなかったです……」
「ま、いいんじゃないの。無理に出して、味方撃墜なんてことはしてないんだし」
「そうだな。相模は少なくともそこに配慮していた。動きが多少悪くなっても今は仕方ない。ガンダムならもっとやってほしかったというのはもちろんあるがな。だがそれはあくまで欲だ。先の模擬戦でそれは見ていたから、それを踏まえてこちらは動かすことが出来た。活かしきれなかったのは俺の責任だがな」
HOWとオースの遠征メンバー全員による部隊戦で、宗司達HOWチームは部隊半数が撃墜、全滅したことで敗北していた。ガンダムDNは両方とも大破判定を喰らっている。Gチームで最終的に生き残ったのは呉川とクルツ、それにクルスもだ。それはつまりガンダムDNを使っている2人だけがチームの中で落とされたことを示していた。
戦力を十全に発揮させられなかったと反省を口にする呉川。もっとうまくやれていればという気持ちが募るが、呉川は早々に後悔をやめた。
「だが相手も最新鋭のガンダムを備えている。やや不安は残るが、彼らがいればこちらの動きもフォローしてくれる、と思う」
「フォロー、ですか……してくれると思います?」
あまり言いたくないが、終わってからもオース、特に大和進からの誹りは多かった。隊長の明は協力する様にと言い聞かせていたが、こんなので協力し合えるとは思えない。他のメンバーもそうだ。
そして何より、こちらにも自身を含めて共闘を嫌がりそうなメンバーがいる。無論それは入嶋とエターナの2人だ。
それに関して同意見であることをクルツ、そして別部隊の人も示す。
「まぁ仕事としてはやってはくれるだろ。でも信用できるかって言われたら、ちょっと学生たちは納得いかねぇだろうな」
「そうだねぇ。腕が立つのは間違いない。けどあれだけ扱いづらいと俺達大人でも……」
「それに関しては我慢してもらうしかない。この仮想国家には既に敵がいる。今回の任務は、与党と敵対する野党側のオース軍なんだからな」
味方がオース軍なら、敵もオース軍。今回の作戦はそういった特殊な状況だった。オース政府内部の対立派閥の戦争、その敵対側にゼロンが付いている。
どうか作戦当日までに突っかかるなんてことは無いようにしたい。そう思いながら、宗司は肩まで湯船に浸からせた。
◆
「ぁ~……ごっくらく極楽ぅ~」
「船にこんな風呂があるなんて、便利よねー」
一方こちらは女風呂。Gチーム女子勢に加えブリッジ要員の光巴や整備主任の来馬もそのお湯で疲れを癒していた。
「あったかいお風呂……個室で入るより快適だね」
「天然温泉風の仕切りもいいかんじだよねー!」
「それより私は、長い髪の子がお湯でぬらさない様にまとめてる髪のうなじが見れて眼福だわー♡」
「ちょっ!裸で来るなっ!?」
来馬の変態的行動の被害に遭うエターナ。苦笑いしてそれを眺める千恵里達。最初は艦に温泉とミスマッチを感じていたのだが、入ってみるとやはりいいものだ。疲労回復に加え美肌効果もあるらしい。もったいない位の湯加減を楽しむ。
ふとクルスが今日の結果について振り返る。
「けどこのお湯で今日の結果を流せるかと言われたら……」
「うっ!……言わないでよクルス……」
「あはは、外から見てたけどちぇりーちゃん大分悲惨だったねー。特にあの3可変機に襲撃された時、真っ先に狙われてたよね」
「そう、それよ!」
力強く、水面を叩いて怒りを露わにする。あの可変機、青のオースカオスガンダム、緑のオースガイアガンダム、黒のオースアビスガンダムがこちらのGチームと当たった時に真っ先に3機が襲い掛かってきたのである。
もちろん迎撃はしたし、宗司のアーバレストや呉川のソルジアスが防御に入った。けれどもそこにあの憎きオースインパルスが乱入、抜群のコンビネーションとまたしても放たれた煽りを受けてやけくそにエラクスを発動、突貫してしまった。
一直線にオースインパルスへと向かって斬りこんだものの、それをなんとオースインパルスは合体を解除、上半身と下半身で別れてビームサーベルを回避されてしまった。
あまりにも衝撃的でエラクス中にも関わらず千恵里は茫然、その間に囲う形となったオースチームが集中砲火して撃墜される結果となった。
クルスが助けに入ろうとしてくれたのだが、呉川は放置。とはいえその理由も戦線が崩れるという至極真っ当なもので、模擬戦後謝罪された。
その時の事をクルスも振り返って謝罪する。
「ごめん。でも呉川隊長の言うことも正しかったから……流石に実戦で見捨てたりなんてしたりはしないよ」
「うっ……いや、私のせいだから……謝らなくて、いい……」
謝罪こそされたものの、呉川からも短絡的な行動は咎められている。あんな動きはカバーしきれないと。エラクスシステム欠点の1つが一般機との連携が取りづらいという点であると元からも言われていた。
いつも元隊長が味方機と抜群の連携を見せていたように思っていたけど、あれは単純に他の相手を止めるくらいしか味方機が出来なかったことの裏返しだったんだ……。単純に強力な力は単機でぶつけるのが一番いい。シンプルな考え方だった。
自身の思い上がりに落ち込む千恵里。と、そんな声を聞いて反応があった。
「随分手ひどくやられていたみたいね、あなた達」
「あっ、艦長さん」
紫音艦長もまた、こちらの施設を利用していた。体を洗い終え、その大人らしい体を湯船へと浸からせる。
自分達学生組では到底及ばない体に視線を泳がせる。戸惑いながらも紫音に言葉を返す。
「み、見たんですか、結果」
「まぁ、艦長としてパイロット達の動きを見るのは今後の戦術のためにも必要だからね。私だけの主観としてだけどまず千恵里、あなたは射撃機としての機体性能を念頭に入れた方がいいのは確かね」
「うぐっ!」
自らも一番反省している点を指摘される。アーバレストもアルヴも強力な射撃兵装を備えたバックパックを装備している。特にアルヴはそれらの火力を生かした射撃戦をメインとしていて、エラクスも高機動射撃による圧倒を目指したものだと説明は何度も受けた。
なのだが今までの戦闘でよく千恵里は格闘戦に持ち込む癖があった。機体特性と本人の適性が合ってないのではと言われることもよくあった。
機体の采配について紫音もまた疑問を投げかける。
「……ねぇ、聞いている話じゃ、あなたの機体の決定は黒和隊長が決めているのよね?」
「えっ、あ、はい」
確かめた紫音は顎に手を当て考える素振りを見せる。そして言う。
「あの人が適性を見誤る……っていうのは、まぁあり得る話か」
「ちょ!元隊長がそんなミスなんてするわけないじゃないですか!」
思わずそう反論する。が、それを待っていたと言わんばかりにため息を吐いて紫音が指摘する。
「なるほど、それね」
「それって……?」
「あなた、大分元隊長に憧れちゃってるわよね。大方、あの動きを真似ようとしてるんでしょ」
「っ!」
図星を突かれて言葉に詰まる。見ていたクルスや光巴もやっちゃったと同情していた。追いかけっこをしていたエターナと来馬がお互い頭をぶつけて止まる。紫音は続ける。
「悪いけど、あの人みたいな活躍はやめておいた方がいい。あの人の強さは単体のパイロットとしての資質だけじゃない。サポートに回っているジャンヌ・ファーフニル副隊長を交えたエンゲージシステムのおかげだから。普通のMSのパイロットは機体性能で鼻から上回っていなきゃ勝ちようがない相手よ」
「か、勝つって、そんなつもりは……」
紫音の言葉を否定する。味方同士なのに、勝つなんてことは無くていいはず。それを言うなんて。
けれども紫音はそのまま続ける。
「そうね。1人でその動きを出来たって、2人分の仕事を出来るわけじゃない。けれどその動きが出来れば、元隊長と敵対した敵を上回れるわけでしょ。過去の元隊長には勝てるかもしれない」
「でも、そんなことして意味あんの?」
「エターナさん正解」
エターナの意味があるのかという指摘で待っていましたと言わんばかりに紫音は話した。
「それが一番言いたいの。動きを真似しても、それは過去の産物。自身に取り込むのは良いけど、慣れないうちから同じ動きをしようとしたらダメ。基礎の動きも出来ないうちからやっていたら変な癖が付いちゃう。射撃機なのに格闘ばっかりやる子を使いこなせる自信は私にはないわ。それにそこに行きつくまでの間に、元隊長だって経験を積んできた上で戦闘に組み込んでいる。基礎も出来ない子が疎かにして戦闘に生かせるものじゃない」
「……それは」
「それには私も賛成ね。元君機体の方の調整もピーキーなものを使ってるし、多分エンゲージ無しじゃ絶対出来ないと思う」
「流石は整備主任、ガンダムも担当しているから、よく分かっていらしゃる」
「まぁねー☆仮にも整備主任だし!」
「……こんな性格でも、ね。ホント、人は見かけによらない」
重たくのしかかる言葉。確かにこれまでの元さんの動きをアーカイブで見たり、実戦に巻き込まれた時に体感したりした動きを見よう見まねでやってきた。きっとうまくなる方法だと信じて。けれどそれが間違っていたと突きつけられる。
お湯に顔を半分浸からせて考え込む。その間に紫音はエターナに称賛を送った。
「それにしてもエターナ、あなた元隊長のこと嫌っているにしてはよく意味がないって分かったじゃない」
それはきっとよく見ていると言いたいのだろう。しかしエターナは首を振ってそうではないことを言った。
「だって、あいつの言葉に大した意味もないじゃない。ちょっと英雄だっておだてられてるからって、調子乗り過ぎよ」
「あぁ、こっちはこっちで、単純に嫌いってだけでか。こっちも困ったわ」
「ど、どういう意味よ!」
恥ずかしそうに水面を叩くエターナ。揺れた水面で目にまで湯が掛かり、反射的に目を閉じる。目をこするこちらにクルスが気を落とさない様にと話す。
「仕方ないと思うよ。戦った私としても、あの人の技量は恐ろしい。機体性能で勝っていたディスティニーライダーとわずかな時間でも互角に渡り合ってる。それで生き残っているんだから。真似しようと思っても自信はないかな」
「そう言えばそうだね……高望みしすぎなのかな……」
「今は目指さなくていい。元隊長も基礎をって言ってるから、ちゃんと言うことを聞いて前に出たい気持ちをぐっとこらえるのがいいと思うなー」
光巴からもそう言われる。悔しいが、今はそうした方がいいのだろう。名残惜しさを残してそれらに従うことを宣誓する。
「うん、これからは射撃をベースにやっていきます」
「そうしなさい。と言っても担当は多分中距離射撃がメインになるだろうから、狙撃担当のクルツさんだと難しい……呉川隊長が適任でしょうね」
今後の指導に適任な人物は誰かと考えを巡らせつつある紫音。やっぱり艦長と言うだけあって、そう言った目利きはしっかりしているのか。その中でクルスが紫音に尋ねた。
「あ、そう言えばジャンヌ副長ここに居ませんけど、今艦長さんの代わりに艦の指揮をやっていらっしゃるんですか?」
素朴な疑問だった。艦長がここにいるなら、それに近い人物が艦の指示出しなどをやっているに違いない。そうなると適役は元かジャンヌになるのだろう。ところが紫音はそれを否定する。
「あぁ、ジャンヌ副長さんだけど、今は元隊長と共に種命島の街に出ているわ」
「街に、ですか?」
「姉様と2人でっ!?」
それに大きく反応したのはやはり姉の事が心配なエターナだった。またいつものようにわなわなと手を震えさせている。が、そうではないと苦笑しながら制止した。
「デートとは違うわよ。ある意味そうだけど、同伴者にはあの影義明さんもいる。彼の案内でちょっと行きたい場所があるらしいわ」
「3人で、かぁ。まぁ前の事件の時に会っていたからってことで、その縁でってことかな?」
「そう言うことみたいね。ただ私も何の為かまでは聞いていないわね」
「あ、私も。なんかあけざ……じゃなかった、影義君とは会うけど、どこに行くのかは聞いてなかったなぁ」
「え、えぇ!?さ、三人でな、なな、何、するのっ!?」
紫音と光巴、そして来馬3人がそう語る。それらを聞いてエターナが一気に謎の不安感に襲われる中、千恵里は1つだけ気になる点を見つけ、それを尋ねた。
「あけざ?影義さんってあれが本名じゃないんですか?」
「あっ、いや~……まぁ、そう、だね」
「えっ、言いづらいことなんですか。聞いちゃいけなかった……?」
ギクッと体を震わせて言葉に詰まる来馬に申し訳なさそうに訊き返す。聞いてはいけないことを聞いたような反応で、こちらも困った。しかし来馬は考えてから観念する様に開き直って話し出す。
「あー、いや、まぁ別にいいか。後々嫌でも知らなくちゃいけないかもだし」
「嫌でもって、それ面倒なんじゃ」
「でも知っておいて損はないよ。これはあの事件、オース国内テロリスト「虚ろの零」によるオース解放事件に介入した、あるいは知っているなら他の隊員でも知っていることだね。―――影義明、彼の本名は「
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EP21はここまでです。
ネイ「初っ端のネーミングセンスが壊滅的なんですがそれは」
グリーフィア「ハウDe湯って名前考えたの誰よ、ろくでもないわね」
命名は伏せさせておこう。メタ的には私だが。
グリーフィア「それだけ分かるだけでも作者がくだらないってことが分かるからいいわぁ」
ネイ「あはは……それで地味にお風呂回だったわけですが、前話に続いて反省会って感じでしたね。そして来馬さんの暴走が……」
また重ねていくのは良くないと思ったんですけどね。どうしてもこのシーンは入れておきたかった。紫音の考えと、あと元君達の行方とかね。来馬さんは、もうこの話の時点で察してください。
グリーフィア「それよそれ。影義君も名前明らかになったし、あの流れにそうとすれば……」
ネイ「会う、んでしょうか?」
それは次にて明らかに、それでは続きます。