ネイ「密会を経てからのこの話。どう進んでいくのでしょうか……」
グリーフィア「遠き過去ってことはそれを振り返る描写があるってことよね?」
まぁそんなところですね。じゃあ本編をどうぞ。
オース滞在の2日目。宗司達はオース政府のある政庁にやってきていた。オース政府の首長にして、今回の依頼人大守明日那との面会の為だった。
明を先頭に政庁を進んでいく。大仰な扉を潜ると一人の女性が出迎えた。
「首長、HOWの皆さんを連れて参りました」
「あぁ、ありがとう明。HOWの皆さん、初めまして、そしてお久しぶりです。オース首長を務める
やや気の強そうな女性が首長らしい整ったスーツ姿で出迎える。その顔立ちとは裏腹に彼女、大守明日那は丁寧な言葉で応対した。
やってきていたHOWのメンバーが揃ったところで明日那は今回の件について改めて説明した。
「我が国の現状は分かっていると思う。復興から3年、今この国の革命派、美愛派と呼ばれる私の政敵が貴君らの主敵とするゼロンと共謀して、此度のオース生誕25周年式典で動くらしい。今回はその摘発と確保をお願いする」
「あぁ理解している。会場にはCとR、それにGとシュバルトゼロが、そしてO、Z、Eが島外からの襲撃に備えてオース第1防衛基地で艦を守りながら待機する」
元はそう告げる。チームを半分ずつ分ける判断はどちらかに厄介な敵が来ても耐えられるようにということなのだろう。
しかし会場の方の護りが厚いのは一目瞭然だ。それだけ式典の方が崩れれば危険だということ。明も語る。
「もし式典で首長が逆に確保されれば、三年前の繰り返しになる」
「それを防ぐための戦力配置だ。そちらもそのつもりでいるだろう」
「あぁ」
「フリーダム、大和輝大尉がいないのはこちらも手痛いが頼む」
明日那が語ったその名前に引率として付いて来ていた進が舌打ちと共に口を開く。
「ちっ、いなくなった奴の事を考えたってダメだろ」
「進、お前……」
「そうだろ!?明日那だって姉貴が退いて自分が首長になったこと今でも納得いってないくせに!」
「お前!もう一度言ってみろ!?」
口喧嘩を始めた進と明日那。やり取りを見てこちらも動揺する。
「い、いいんですかあれ。首長なのに」
「首長と言っても割と同年代。あの二人は性格が似てるのもあって三年前から度々衝突してるのよ」
入嶋の心配に月子が答える。元もそれは予測していたようで肩を落とす。
「割と衝突の多いやつだったからな。姉と違って」
「くっ、元隊長もそれは言わないでくれ……姉さんとは違うんだから」
「分かっている」
「姉……そういえば」
姉という単語でクルスが反応する。
「明日那さんの姉って、多分大守里奈さんですよね?改革派の代表の。でも今回戦うのは美愛……これって」
「あぁ……これから説明しよう」
クルスが抱いていた疑問、それは宗司も作戦要項を伝えられた時から感じていた。今まで感じていた疑問の答えは明の口から語られる。
「今里奈として表に出ている改革派の彼女は、里奈の影武者だ。その名前が歌峰美愛。これは政府関係者なら誰もが知っていること。本来なら影武者として活動して、表向きの大守里奈は政権から消えていくはずだった。しかし……」
「……彼女は改革派のトップとして表へと出続けている。私の姉の名前と姿を使ってな」
「つまり……影武者が本物に成り代わった状況、ということですか」
「そういうことだ」
状況が読めてきた。反旗を翻したその美愛という人物が代表だから、そちらの名前の派閥で呼ばれていたのだ。ここまで情報を取っていた理由を元が語る。
「こっちに来るまでの間に言うと、どっかで情報が洩れてゴシップにかぎつけられる恐れがあったからな。直接聞いた方が分かりやすいだろうからな」
「ふぅん。でも、影武者が勝手なことしてるなら、それを罪状かなんかにして止められないの?」
元の言葉にふとそのような考えを口にしたエターナ。だがそれは出来ないと明日那は返す。
「ダメだ。影武者を使っていたことはあまり褒められたものじゃない。無理に辞めさせることも出来るが、何らかの置き土産を喰らうことも考えられる。もっとも、今回はそれを明るみにする必要があるとこちらは思ってはいるが……」
「フン、結局はあんたらが責任をあの女に押し付けようとしたから、自分に帰ってきてるだけじゃないか。やましいことしなけりゃ、俺達だけですぐに解決できるっていうのに!」
「やめろ進!首長にそんなことを言っては……」
「うるさい!父さん達を見殺しにした大守なんて!」
色々ともめてくるオース陣営にこちらもどうすればいいか戸惑いを隠せなくなっていく。
その状況を無理矢理崩したのはこちらの隊長黒和元だった。
「相変わらず騒々しいなお前らは。自分の大切な志、仲間をどんなことでも穢されたくない。3年前と変わらない」
「っ、何だよ。魔王もあいつらのこと庇うのかよ!」
口出しされて即座に噛みつく様子の進。
ところが彼の思惑とは全く真逆の言葉を元は告げた。
「まさか。お前もまだまだだが、事今回に当たっては代表と隊長に非があると考えている」
「えっ」
「元さん、それは……」
「何が言いたい」
明日那代表の言葉が低い声音で発せられる。まるで元隊長の言動が気に入らずに処罰でもしようとする姿勢だ。
が、それも意に介さず自らの考えを述べる。
「結局のところ、俺も前代表、大守里奈の取った方策には納得がいっていない。政界から去るにしてもなぜ影武者なんて回りくどいものを立てたのか。彼女の策は理解に苦しむ面がある。それをなぜ庇う?俺は、それを庇い立て、あるいは責任転嫁だと考えている。そもそも、政界を去るなんて真似を不用意にしなければ……」
「貴様っ!」
怒りを露わに詰め寄ろうとした明日那。対立する両者に慌てて割って入った明とジャンヌ。
豹変した明日那の姿に宗司達も動揺を隠せない。
「わわっ、明日那さんガチギレ?」
「ちょっと、代表って言うからには感情のコントロールくらい出来なきゃじゃないの?」
「いやぁ、代表さんちょっと昔っから感情的になりがちで、よくあったのよねぇ」
入嶋とエターナの不安と疑問に月子がそう答える。オース陣営、それに3年前を知っている隊長達もやれやれと言った具合でそれを見ている。
何を呟くか迷っている間に明が元に先程の指摘へ返答する。
「……実際のところ、あの時二人の父親の遺言で大守里奈は代表となりました。ですが彼女自身は妹がその役に適していると感じていました」
「妹って、今の明日那代表ですか」
「あぁ。しかし父親の言葉を裏切ることも出来なかった。そこで自身が覚悟を決めて戻ることを考えて表向きの大守里奈として彼女、歌峰美愛を自身の影武者として立てたんです」
入嶋からの確認に明はそう答える。本来の意味での影武者、というよりかは代役と言った方が正しいだろうか。
理由は示された。宗司に加え、入嶋やクルスは納得を見せるが、納得しない者がHOWの方で多数いた。
その一人である呉川がそれは違うのではと指摘した。
「言いたいことは分かる。だが、やはりそれは間違いだろう」
「呉川さんまで……」
「姉さんの考えに間違いなんて……!」
「政治という人々の暮らしを支える人間が、優柔不断で良いわけがない。影武者と称して体の良い身代わりという逃げの姿勢、それを許したあなた達の判断もだ。戻るつもりなら影武者などと言うもどかしいものは使わなくていい。自分の力でまた上がればいい。オース政府に任せるという以前の選択は……」
「悪いが、その後は俺が引き継ごう」
間違いだったと続くはずだった呉川の言葉を元は中断させた。その後を引き継いで元は語る。
「俺達はその判断は間違っていたと思う。力不足なのはもちろん分かっていた。だがそれを認めたうえで正当な手段で完全な引退をすべきだった。
「元さん」
「だが失策だったことは伝えさせてもらう。分かっていながら早急にその芽を摘み取らなかったことも。それがなかったらこの面倒な事態は起きなかったんだからな」
「ぐっ……そんなの……」
自分は納得がいかないと、明日那代表は負け惜しみのように呟く。
宗司にも分かる。彼女は、彼女達はその点に関しては決して反論は出来ない。
今回はその尻拭いのような形の任務だとこれまでの話から推測できる。むしろもっと早い段階で介入すべきだったのではと思わされる。
これには明も頷くしかなかった。
「そう、ですね。それは申し訳ないです」
「今後悔や癇癪を起している暇があるなら前を向け。こいつの家族を失った怒りだって、当然の物なんだ。これでいいか、進」
「えっ……あぁ、はい」
だが結果として進の怒りは発散されたようだった。進の怒りを容易く収めたことにオースの新人パイロット達も唸る。
「すっご、シンの逆ギレをああも見事に……」
「これも、あのDNLと呼ばれる読心能力あっての……いや、違うか」
「どっちかって言うと経験だろうねぇ~。昔の戦い知ってるからってこと」
「まぁ、10年は戦っているらしいからな、HOWの魔王は」
HOWの魔王。そんな自分達の隊長は話題を本来の物に戻した。
「とにかくだ。今回の改革派の行動もまた、ゼロンの意志がある。その根拠は、改めて明日那代表からお願いしよう」
「……はぁ、分かったよ」
頭を搔いて明日那代表は改めてゼロンの介入する根拠、もといその発端について語る。
「詳しい説明は省くが、明日行われるオース生誕25周年の式典の参加者は、あらかじめ私などのなじみ深い人物を呼ぶことになっている。島内、島外を含めた来賓には美愛派の人物も呼ばれる。その中の人物が……この、ギルボード・デュランザメスだ」
落ち着きをすっかり取り戻して重い口調で端末を操作した明日那。部屋の照明が落とされ、スクリーンには一人の男性の写真が表示される。
名前の通り、外国の人物だ。男の人には珍しい長髪の髪を肩より下まで伸ばしたその人物の詳細を明日那が語る。
「この男はかつてこの島の住民だった。虚無戦争の前後で島外へと出てその後科学者としてゼロンの勢力発展に貢献しているらしい」
「ゼロンの……科学者」
「クルス……」
クルスが呟く。入嶋もややそれに反応していた。
一方クルツの方がその男の専門分野について語った。
「こいつ、確か遺伝子工学で有名な奴だったよな。こっちでも遺伝子工学を?」
「そんなところだ。観光国家といっても、そういう科学を島の中でやらないわけじゃない。医者だって普通にいるんだから」
一見して里帰りのように思える来賓の選択。しかしそこにゼロンが絡めば一段と怪しくもなった。
とはいえ科学者がこの島を乗っ取ろうとするというのはあまりに飛躍しているように思えた。何が目的なのかが見えない。この島を我がものにしようとする思惑をもともと持っていたのだろうか。
だがこの男が問題視される理由がもう一つあった。
「彼は既に美愛派に匿われている我が国の科学者、種田博士の弟子だ」
「あの爺さんと……」
元隊長がすぐに何かに気づいたように反応した。分かっていない組の中でエターナが姉に尋ねる。
「種田博士って?」
「あなた達が戦ったオースインパルスに搭載されているSEEDシステムの開発者です」
「はぁ!?そんなシステム今も使ってるの!?」
エターナが仰天する。彼女と同じことを宗司も思った。敵に渡った人物のシステムを継続して使うなど正気とは思えなかった。
もっともこちらにもそう言う機体が存在している、などとは思ってもいない。加えて元隊長やジャンヌ副隊長はそれほど問題視していないようだった。
「まぁシステムを使うことには問題ないだろ。あの爺さんだし」
「そうですねー。あの方はむしろ使わせたい感じですし」
「いやいやいや!おかしいでしょ!?姉さんもどうしたっていうの!?」
切羽詰まるように危険だと訴えるエターナに対して面倒そうな二人。その理由は明の方から語られる。
「二人のおっしゃる通りです。元々種田博士は研究に関しては敵味方問わず対象にする人物。出奔時SEEDシステム関連に一切手を付けることはありませんでした。寧ろ博士はSEEDシステムに関する試作段階の技術まで残していきました」
「な、何よそれ……けどそんなの絶対に使わない方がいいじゃない!」
もっともなエターナの言葉。だが明は首を横に振った。
「現状、SEEDシステムは俺達の勢力でしか使うことは出来ない。それに何らかの事があった時の事を考え、現在ではSEEDシステムをベースにした疑似SEEDシステムを開発してそちらの開発を優先的に行っています。俺達にはSEEDを使うしか、この国を護れない」
「そこまで聞いておけば、あの爺さんはやらない。どれだけ自分に不都合になる可能性があろうともそれすらも自分の探求を満たそうとする。敵に有利になろうと。リ・ジェネレイションの弱点を教えてくれたのも博士だったしな」
「う……変な信頼のされ方ね」
納得がいかないが、博士よりも今は弟子のギルボードについてだ。明がギルボードの動きについて話す。
「しかしギルボードに関しては別だ。事前情報によれば彼は今回、美愛派の外部特別顧問と称しての参加らしい。今回の訪問も、彼が主導している可能性が極めて高い。ここでどう動いてくるのか」
「ここで何としても3年前から続く悪夢を終わらせたい。それはきっと、本土の日本政府にとっても力になるはずだ」
「CROZE部隊、了解した」
要請を受諾した元隊長。こちらへと向き直り、元隊長は今後の行動について通達した。
「本作戦での最重要ターゲットはギルボード・デュランザメス、歌峰美愛。この二人を確保すること。美愛派はオース政府に引き渡す。この後会場チームは明日那派オース軍と共に現地の下見を行う。残りの者は母艦にて第3種警戒態勢、いいな」
『了解』
大守明日那の前で号令が行われる。気が抜けない。ここからは本当に小さな戦争の始まりだった。
NEXT EPISODE
EP23はここまでです。
ネイ「明日那さんは雰囲気からあのカガリさんのモデルでしょうか」
グリーフィア「そしてギルボード、美愛ってのもなんとなく察しついちゃうわねぇ。ていうかEP22で元君大和輝の行動を擁護していたように見えたんだけど、これはどういうことかなー?」
まぁ彼の選択は否定しないけど、本来取るべきはこうだったって言いたいんですよ元君は。自分の気持ちと上からの命令とかで板挟みになっているわけでして。
グリーフィア「あー、なるほどね~真面目だからねぇ」
ネイ「それにこれは進さんの信任を得ようって見方も出来ますね」
そうそれ。じゃあそれを経てどうなっていくのかは次に続くというわけで。続きます。