レイ「暴露もあったけど、ようやく任務のスタートってわけだね。宗司君達は生き残れるのかッ!」
ジャンヌ「初めからいきなりハードモード、であってほしくはないですよね。でもそれを許してくれるわけでは決してない、と」
いきなりレギュラーパイロットが死ぬかもしれないからね。ガンダムならあり得る話だから。というわけで本編どうぞ。
10時。オース、HOWのMS群が厳戒態勢を敷く中、遂にオース生誕25周年の記念式典が開始となった。
ステージの台上では既に大守明日那代表が観覧者と来賓に向け挨拶を行っていた。
『―――この日を迎えられたこと、とても嬉しく思っております。建国の父であり、我が父大守重玄もきっと空の上で喜んでいることでしょう』
「……今のところは、怪しい動きはないみたいだな」
『あぁ。美愛派も今のところは動かない』
宗司は進とそのように話す。彼らはステージ台の下、昇降口でMSを纏って待機していた。
両サイドに明日那派、そして美愛派が均等に配置されていた。敵の勢力が同じ側にいるというのは形式上仕方のないことらしい。もし美愛派をのけ者にした場合、始まる前にクーデターが起こりかねない。過去の繰り返しを極力繰り返さないためにこうなったのだ。
来賓の様子は会場に配置された監視カメラからの映像を機体に呼び出して見ていた。こちらとは反対側の来賓の席に、ターゲットとなる男性がいた。
ターゲット、ギルボード・デュランザメスの姿を見てエターナが呟く。
『いかにも、インテリって感じね。女っぽい髪がなんか余裕かましてそう』
「……偏見だろ。まぁ、言いたいことは分かるが……」
偏見がたっぷり含まれているが、否定はしない。科学者らしい几帳面な性格が格好に出ている。
それに偏見と思ったがよくよく考えるとそうではないのかもしれない。エターナのDNLが何かそれに値するものを感じ取って言葉に示したのだとしたら、納得が出来る。
そんな会話をしていると、元隊長が回線を繋ぐ。
『科学者だと思っても油断するな。あれでもゼロンでは派閥の異なる旧教団をまとめる立役者となった人物の一人。策士だ』
『はいはい。……って、あんたのその機体も随分重装備ね。羽に色々付けてさ』
隣に立つ元隊長達のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスはウイングにいくつもの銃器を取りつける格好となっていた。初出撃の際には見られなかった武装群は、いずれも調整が終わった換装式の専用装備であるとのことだった。
まさに武器庫と言うべきほどに、いくつもの銃と実体剣を取りつける姿に進の仲間の零が訊ねる。
『その装備群……マルチギミックタイプですか?』
『そうだな。分かるか』
『えぇ。インパルスのビームボウガンと同じ機構が見られますから』
『マルチギミックウエポン……それをいくつも……』
いくつもの武器に切り替えられる兵装。その圧倒的な数にオースのエース陣営は驚かされていた。ふとエターナに訊いてみる。
「なぁ、マルチギミックウエポンって、俺達の機体にもあったよな」
『ん?えぇ。コンバートライフルよね。あと、私達の機体はシールドライフルとマルチキャノン・ウイングもね。それがどうかした?』
「いや……確かに複数の機能を持った武器は難しいけど、そんなに注目することかと」
生粋の軍人が、そんな驚くことなのか。そんな疑問に当人たちである進と零が答える。
『多機能武器の扱いはもちろん心得てるさ。けどこの人のは違う』
『あぁ。君達のは銃か剣、あるいは砲か翼かと言った二択ばかりだろう。対して魔王のガンダムのそれは、おそらく剣と言ってもいくつものバリエーションがあるもの。適切な距離で、いくつもの種類の武器を多用に組み替えて完成する武器。そうでしょう?』
確認した零の言葉に元隊長は頷いた。
『そうだ。マルチギミックウエポンと言っても、かなり複雑化した部類の武器になる』
『おそらく、エターナをサポートに据えた宗司さんでも今使いこなすのは一つの武器でも無理でしょう』
「そんなに……」
こんな時に聞くべき話ではなかっただろうか。それを元隊長も承知しており、目を向けるべき対象に俺達に知らせる。
『風呂敷を広げればいつまでもこの話は伸びる。今はそれよりもステージ上のだ』
『そうですね。そろそろ代表が動くでしょう』
『エターナ、緊張しすぎないように』
『分かってるって』
『しくじんなよ……あいつ』
「……」
全員が緊張感を高める。ちなみにだが回線はオース軍明日那派のみの秘匿回線を使っている。それは美愛派も美愛派で同じ条件を用意できるということ。
相対する美愛派も今にも飛び出そうとしているのか、姿勢が前に出かける。明日那代表が予定されていた台詞まで到達する。
『3年前、虚ろの零により私達は大きく疲弊しました。それでも、前代表である大守里奈元代表の尽力で立て直し、私もそれを引き継いで今日この日を迎えることが出来ます。それは紛れもない事実です。ですが、今この場でどうしても明かさなければならないことがあります』
中継カメラの注目を集める明日那代表。そして遂に、その口から真実が明かされた。
『まだ虚ろの零の目論見は終わっていない。虚ろの零は、そのバックにある武装組織の援助を受けていました。その組織は日本本土で活動を活発化させる教団、ゼロン。その援助を受け、今もこのオースで勝手を行う者。その者は元々ある人物の影武者を引き受けたにも関わらず、役目を果たさずあろうことか立場を利用してこのオースをゼロンに渡そうとしている』
後方に振り返り、指さす先にはオース政府官僚、その一派を率いる歌峰美愛の姿がある。指さされた彼女は困ったようにおどける。
「あらあら~姉を指さしするなんて、お父様に恥ずかしいと思わないですの明日那ちゃん?」
「黙れ、お前は私の姉ではない。姉の顔を借りた影武者が、勝手にこの国を売ろうとした証拠は挙がっている!」
『やれやれ……あんまり熱くなりすぎるなと……』
明日那代表の言葉に頭を抱える様子の元隊長。
不安そうに見つめる中、流れはこちらの望む方向へと向かう。怒声を受けた歌峰美愛は肩を落としてやれやれとため息を吐く。そして事実もまた吐いた。
「ま、そうでしょうね。私はあなたの姉じゃあない」
「ようやく認めたか……」
「そこはね。でも後の二つは違うわ」
「何を……」
意味不明な言葉を口走る歌峰美愛に、明日那派の勢力に動揺が走る。そして彼女の口から信じがたい言葉が飛んだ。
「今の私はもはや大守里奈の影武者じゃない。この3年間大守里奈として活動した私は、この国の未来を考えられる新たな大守里奈にして、真の大守里奈なのよ」
「何だと!?正気なのか?」
影武者ではない、自分こそが本物の大守里奈であると、歌峰美愛は語った。無論宗司も明日那代表の言葉と同じ反応だった。
「何を……馬鹿なことを……」
『傲慢過ぎでしょ、それは』
『あの女……何言ってやがる!?』
エターナと進も歌峰の言葉に絶句する。荒唐無稽な理屈に、壇上の関係者一同が引く中で歌峰美愛は気持ち悪いその持論を述べだす。
「だってそうでしょう?貴方の慕う大守里奈は最初のころだけ携わって、結局力がないからと私に責任を押し付けて逃げた。最初は私もそれでも良かった。みんなの憧れの同級生だったあの子の代わりが出来る。あの子の為になれる。その為の事は何だって勉強して、受け入れてきた。あなた達に目立つなと出る杭叩かれても我慢してきた。けどそんなの卑怯じゃない」
「卑怯だと……影武者を自分から志願しながら」
「それでも、人としては最低限扱って欲しかったわぁ」
「生活は保障していただろう!それでもダメだと言ったのは、貴様の考えが姉の物とは乖離するものだったから!」
「自分達の考えることが正しい、それ以外のあり得る選択肢は認めない。そうして起こったのが3年前のあの戦争だってのに、それをまるで反省もしないあなた達を馬鹿にしない理由があって?」
「そんなこと……ない!」
歌峰の発言を負けずに否定し続ける代表。そうではないと必死になるのは分かるが、その必死さが却って怪しく思えてしまう。
拍車をかけるように元隊長も何やら呟く。
『……図星か』
小さく呟いた言葉をはっきりとは聞き取れなかった。しかし苛立ちを感じさせるような発言。その声音を維持したまま、元は宗司達に言った。
『ともあれ、もう少ししたら動くぞ。そのままで準備しておけ』
「りょ、了解」
息を整え、再び話に耳を傾けた。
「それを私に教えてくれたのは、先生だった。先生は私に真実を教えてくれたの。そう、私こそが真にオースの平和を導けるって。それ示すモノが何か、分かるかしら?」
何が彼女にそこまで自信を持たせているのか。先生という人物が誰なのかも気になる。それら二つの疑問について明日那代表は問おうとする。
「示すモノ?先生?……それは」
「それは、ここに居らせられるギルボード・デュランザメス様が教えてくれたもの、遺伝子よ!」
まるで分かっていたかのように明日那の声を遮って名を呼んだ。この式典の参加者にして、事前情報でゼロン幹部と目されていた男の名前。視線が彼に集まる。
視線を受けて不敵な笑みを崩さない彼が彼女の声に応えて立ち上がって紹介を行う。
「そう、彼女の正さ、遺伝子の適性を証明したのは、この私です」
「ギルボード・デュランザメス……かつてのこの国の科学者が、国家転覆を狙うのか」
「国家転覆とは、相変わらずお父様に似てお国に固執していらっしゃる。そんな妄想を……」
「国の代表が、国の為を考えなくて何になる!」
敵の擁護をするわけではないが、明日那代表の言葉が強く出過ぎている気がする。強情に否定をしようとしていて、事実でも裏があるのかと思ってしまう。
その点に隊長クラスも気付いていた。元隊長のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスが動こうとした矢先、敵の出方が変わる。
「理念は理解します。お父様の後を立派に継いでいらっしゃる。ですが、この島の目指すために必要なのはそれではない」
「それ……?」
「影義明、いや、明沢正。彼のお父上の理念。彼が掲げた理想こそ、私の望むモノ」
「何!?」
段の下にいた明を、本名で的確に呼んだ。それだけではない。彼の父親について言及をした。かつてこの島にいた人物というのならあまりおかしくない話。だがそこに理念が絡めば疑念に変わる。
当事者である明は壇上に出て問いただす。
「父の理念が……?ふざけるな!」
「ほう?」
「父は俺達を戦争の道具にしようとしていた。あのままだったら、俺達はこの国外で戦闘の日々を過ごしていた。それを代表たちは!」
「しかし、この島の本来の目的からはかけ離れるのではないかね?いや、本来の目的から逸れたのは他でもない大守代表達だろう」
話に付いて行けない。本来の目的とは一体?観光国家の事ではない。つまり、遺伝子操作されて生まれた子ども達のことだろう。
その本来の目的が違う。どういうことか。疑問にギルボードが答える形で彼らに反論する。
「元々オースの建国目的は、遺伝子操作されて生まれた子ども達を有効活用するというもの。軍事目的は外されていたが、MSの登場から一転してそれを批准した。それを決めたのは他でもない、日本政府だ」
「……マジかよ」
『ちょ、はぁ?聞いてる話と違うんだけど?』
機体の中で話を聞いていたエターナまで動揺を口にする。宇宙進出の目的からかけ離れた事実に驚きを隠せない。
それは決して自分達に限らない。進もまた困惑を叫ぶ。
『どういうことだよ……オースの代表は、嘘ついてたのかよ!?』
『……』
『おい、明日那!どういうことなんだよっ!』
叫ぶ進。それに気を向ける間もなく、明日那代表はなおも否定し続ける。
「そんなものは関係ない!私達は戦いの道具ではない!」
「そうおっしゃるのであれば、彼に聞くのがいいのではないかな?」
ギルボードはある人物を呼び寄せる。その人物は……。
「どうだろう、HOWの魔王。この国の要請を受けてやってきた日本政府の使者よ」
「………………」
HOWの魔王。その名詞だけで分かる。こちらの隊長を呼んでいた。
ここでどう答えるのか。それによって士気も変わってくる。ジェミニアスが壇上へと上がる。
「ゼロンの幹部に話すことなんてないと思うんだがな」
「それとこれとは別さ。君の考えは聞く必要があるだろう。この問題に対し、どう思っているのか。意思表示は大事なはずだが」
話すことはないと断ろうとする元隊長。対してギルボードは否定する。にらみ合う中、元隊長は口を開く。
「愚問だな。だが言ってやるよ。確かに日本政府はMS登場後、この島の遺伝子改良された人間たち、コーディネイティアの戦争利用を定めた。が、正直に言ってこの島の判断は3年前の時から間違っていた」
「黒和元!」
「あらぁ」
「やはりか」
それぞれの陣営がざわつく。そして元隊長は自身の考えを述べる。
「国の方針は大守重玄氏のそれとは異なる。遺伝子改良によって生まれた島民は日本の為に働いてもらうことを約束してもらっていた。だが明沢鳶丸氏のようなこの島で生まれた者全員を戦闘員にする気もなかった。MSという未知の存在が出現した時点で、計画もまた修正される。それで対立が起こるのは二人の考えはもっともだった。そうして意見はまとめられていくんだからな。にも関わらず、重玄氏と鳶丸氏の持論による1か0の異常な対立が、3年前の悲劇を起こした」
「そう、彼らの思想の違いが、3年前の悲劇を生んだ」
「そうだな。そうならざるを、得ない。むしろ当然だ」
元隊長は敵の言うことを肯定した。心の中で息を飲む宗司。回線からも少数の息を飲んだような声が聞こえる。
肯定した元に対し、明日那代表はなおも反論しようとする。
「黒和元大尉、それでも彼らは!」
「お前達ゼロンは、それに付け込んだ」
「ほう?」
しかし元が言葉を遮る。代表の言葉を遮って、その中にある事実を知らせる。
「狂真 嵐、それをお前はよく知っているな」
「…………ほう」
「狂真……嵐!」
聞いたことのない名前だ。だがそれがオースの陣営ではよく知られた名前であることをすぐに知る。
『狂真嵐って……それって!』
『進?あんたなんか知って……っておい!?』
何かを知っているような進が反応する。エターナが理由を聞こうとするが、その前に進は前へと飛び出していく。
壇上へと躍り出た進は三つ巴の状況の中声を上げる。
「狂真嵐って、3年前の事件の犯人じゃんか!?」
「進!」
制止しようとする明日那代表だったが、代わりに元がその前に出る。
「どけよ!」
「まだ話は終わっていない」
そう言って元隊長は再びギルボードに向き直る。
「狂真嵐、3年前の虚無戦争の黒幕。虚ろの零を、明沢鳶丸を裏から操り、凶行に及んだテロリスト。その男とお前が、8年前から交友があったことは既にHOWは知っている」
「知ってはいても、彼に私が何をしたと?」
関係を宣告する元。余裕を崩さず、質問を返すギルボード。両者の間で空気がピリピリとする。
ここを詰め時と見ただろう元隊長が一押しする。
「狂真嵐の最後の機体、オースプロヴィデンスの残骸からあんたが作成した薬が発見された。それは、テロメアの延長を目的とした違法薬物。そして奴の部屋から見つかった端末に、あんたとの通信履歴が残っていたよ。創生計画、種命島の最終兵器、リ・ジェネレイションを使った人類遺伝子管理システムの発案者、それを手土産にゼロンへと渡っていることも知っている」
「……フフフ。そうか。そこまで調べ上げていたとは。なら、もうこうして芝居するのもよそうか。美愛君」
「はい、先生♡」
その暴露でギルボードは対応を変えた。大守里奈、否、歌峰美愛を呼び寄せ、元隊長に、明日那代表に、そしてオース、CROZEに対し宣戦布告を行った。
「ではゼロン幹部として君達に勧告する。―――――オースは我々ゼロンの使徒が接収する!」
「やっちゃいなさい!」
直後、号令に合わせてオース美愛派が俺達に襲い掛かった。戦端が開かれた合図であった。
NEXT EPISODE
EP28はここまでです。
レイ「うぅーん、日本政府も現実とは違って結構派手にやってる感じが出てるね」
ジャンヌ「戦争利用とか一部の人が反発起こしそうな……ですね」
けどいくら島の事は島の人達が決めていくとはいえ、その上に居る最終決定者、主は日本政府の関係者って構図だからね今回。周りの国も既に遺伝子改良した人種たちの利用を始めているわけだし、ゼロンと対抗するためにも有利なカードは持っておくに越したことはないですよ。それにこれ、あくまで戦争利用は志願者のみを募っている形ですよ。
レイ「志願者のみ?え、なら自由与えているじゃないの?」
そこだよ。ここで重要なのは反発しているのは人じゃなくてオース政府、それも明日那派、大守一家ってところ。原作と照らし合わせるとクライン派とかの周辺が近いです。国の決定をただやみくもに争いはダメっていう子どもの考えで頭ごなしに否定している感じです。
ジャンヌ「うわぁ、言ってることは分かるんですけどなんか私怨混ざってそうな言い方ですね……その通りなんですけど」
まぁこの話で言うならオース政府明日那派が騒ぎ過ぎてるって話です。それだけ拒絶しているからゼロンに付け居られる隙を与えているんですから、裏切りも当然おきますわ。みんながみんな兵士になりたくない送りたくないってわけじゃないんでしょうから、大和進みたいな憧れを抱いて入る人もいるかもですし。後の話で総括しますが意見の押しつけが今回の原因です。
ジャンヌ「まぁそれは置いておくとして、とはいえその付け入ったギルボードや美愛も随分考えがぶっ飛んでいるようで……」
まぁ間違った考えの反対がまともな考えとは限らないわけですし、元君としてはどっちも認められないって感じでしょうからね。てなわけで今回はここまでです。次回から遂に戦闘開始ですが、まだ何か展開があるようです。
レイ「え、どんでん返しでも起きるのっ?」
かもね。というわけでまた次回。