ネイ「前回は進さんと宗司さんが主な活躍で見事ゼロンを退けた、という感じでしたね」
グリーフィア「んーやっぱ逃したの痛そうねぇ。MSのデータ渡っちゃったし」
島の占拠に執着見せなかったあたり、それも視野に入れてそうだからね。だがまだ戦いは終わっていない。シュバルトゼロが遂にタイプシリーズの親玉との対決に入るぞ。
ネイ「タイプシリーズの親玉……あの機体達の模倣ですか」
グリーフィア「英雄と称された力と同等か、それとも、って感じねー」
というわけでどうぞ。
時間は少し巻き戻って、オース明日那派基地にてゼロンが襲撃した頃。ゼロン一派である蒼穹島部隊はオース明日那派とHOWのCROZE部隊と接敵する。
基地内の美愛派による乱戦もあって蒼穹島の乱入は大いに敵を混乱させる。だがそれ以上に、増援の中にいた2機が敵の動きを阻害していた。
それこそ、蒼穹島最高戦力にして私達の機体、タイプ[イグジスト]とタイプ[ディナイアル]であった。
『クッ、こいつらイグジストとディナイアルだ!奴を倒そうとするな、足止めをっ、ぐぉあ!?』
「興司、倒すのはいいけど、やり過ぎると後が怖いよ?」
『うるさいなっ、こいつら全員俺達の敵だろ!銃なんか向けてる時点で!』
私、タイプ[イグジスト]を駆る
力で一気に制圧することは簡単だ。けれどもそれでは私の思う力の使い方じゃない。せめて力をわずかしか持たない兵には、戦わずして勝つ力で止めたい。
話に聞くDNLは意志を伝達し、危機を知らせたり共有できたりするらしい。それは素晴らしいことなのだろうが所詮は理想。それに対してこの機体は意志の画一。否が応でも、戦闘は意味がないと終わらせることも出来る。力と、私達の思いで、止められる。今の私には、それが出来る、気がする。
そう思いながら最低限の自衛をしつつシャイニーガンブレードランスから光を流出させていく。そのやり取りであの人から二人に対し声が掛けられる。
『―――二人とも、集中は切らすなよ』
「一真さん」
『真藤、隊長。切らしてないって』
私達の隊長、かつてイグジストを駆っていた
『本当か?ならお前もパイロットを殺さずにやれるだろう?』
『それとこれとは話が別、だろっ!』
『それから、美波もキリがいいところでそれは止めておけ。それよりも相手の武装解除をやった方が、今はいい』
「わ、分かってます。だけど、これが出来ればそれだって簡単に……」
『今はそれを優先するときじゃない。忘れたのか。今のこの島には、HOWの魔王がいる。それも、十全な状態で』
「うぅっ……はい、分かりました」
一真おに……一真さんの言葉の圧に負けて、作業を中断する。なんていうか、一真さんの声はいつも穏やかなのにこういう時は棘がある。エースパイロットだからだろうか。けれどそれだけじゃないかもしれない。
私達はまだ戦ったことが無いけれど、HOWの魔王はとてつもない強さらしい。旧式でありながらイグジストで倒すことが叶わなかったその人物に、危機感を抱いているのかもしれない。
蒼穹島の救世主と呼ばれる一真さんの警戒に自然とプレッシャーがかかる。対照的に興司はHOWの魔王を鼻にかける発言をする。
『フン。機体が変わっていようがこのディナイアルに勝てるわけない!臆病なんだよ、アンタは!』
「ちょっと、興司!」
言って再びオース、HOWのMSをその巨大な腕部による格闘戦と形成した超次元現象による斬撃で引き裂いていく興司のディナイアル。やれやれと言った具合で一真が美波に指示する。
『臆病、か。まぁでもそろそろここは終わらせたいところだ。美波、大砲撃でHOWの艦船を叩け。落とす出力じゃなくていい。だが射線上の敵機を薙ぎ払え』
「難しい注文ですけど、了解です。DB、始動!」
『DB「シャイニング・ライト・スマッシャー」』
DBの発動を宣言する。すると武器を握った手が結晶に覆われる。武器と腕を完全に固定させるとシャイニーガンブレードランスの刀身を開いて銃身へと変えた。迸るスパーク、エネルギーを最大圧縮してビームとして放つ。
放たれた一撃は直線状の敵機を巻き込んでHOWの母艦へと伸びる。DNウォールを展開したのが見えたが、それでも耐えられはしないだろう。
そこに割って入る存在が見えるまでは。回線に響く。
『そこまでだ、イグジスト、ディナイアル』
「っ!?」
間に入った黒い機体が砲撃を受け止めた。砲撃は押し留められて空へと霧散していく。
唐突に割って入った機体。その機体は接近しつつあったディナイアルに素早く構えた銃剣から放ったビームを直撃させる。
『グァッ!?』
「興司!?」
『あの機体は……』
興司が攻撃を受けたことに悲鳴を上げてしまう。機体そのものは大丈夫だったが、肩部装甲が融解していた。
そこに遠隔オペレートをしていた晃司が一真に状況を知らせるように言って来る。
『どうした一真、何があった』
『晃司、奴だ。お前の言っていたHOWの』
既に一真さんは敵の正体を分かっていた。煙を払って現れたのは、漆黒の、機械の翼を広げるガンダムだ。
息を呑む。機体の特徴、それだけでもう分かってしまう。けれどそれだけじゃない、心理的に圧迫してくる敵意を晃司さんと共有する。
その名を一真さんが呼ぶ。
「シュバルトゼロガンダム……黒和元かっ」
瞬時に私の前に出て守るような構えを取った一真さんのタイプ[ツー]。蒼穹島の他の仲間達も銃をその機体へと向ける。黒和元と呼ばれたそのパイロットが言う。
「その声、真藤一真か。イグジストではないようだな」
「機体に固執して、そんなに勝つことが大事か」
「そりゃあ少しは、な。お前ら二人に勝ち逃げされたまんまなのは、俺の主義的に納得がいかない。もっとも、仕事だから関係ないが」
「お前……!」
一真の声に怒りがこもるのを感じる。言葉からして余程一真と晃司の二人に因縁を抱いていると分かる。
そんなわけで今のパイロット二人に興味がないように言われて、興司が怒らないはずもなく、怒りを爆発させる。
『お前ら二人って、兄貴の事かぁ!!』
「よせ、興司!美波、着いて来い。あれを止めるぞ!」
「う、うん!じゃなかった、はい!」
急かされるままに美波はイグジストを飛翔させる。そんなに焦らなくてもいいのではと思ったが、すぐにその考えは打ち壊される。
突貫しながら腕部のグンターアームに超次元現象の球体を出現させたディナイアル。普段なら敵を異次元に吹き飛ばされるという恐怖で、近づけさせないそれだったが、シュバルトゼロガンダムはそのセオリーを無視して急接近。
その発想自体が狂っていると言え、更に続く動きはもっと難解だった。当たる直前で機体を下方に回避させ、銃剣から展開した長大なビームサーベルでディナイアルの両腕部を的確に、超次元現象部分に触れずに両断した。
『何っ!?』
「ディナイアルの超次元現象を越えた!?」
衝撃が大きすぎて援護も忘れてしまう。その間にシュバルトゼロが急速上昇を行い、シールドの先をディナイアルへと突き立てる。可動した直後シールド先が爆破し、何らかの攻撃を受けたディナイアルが落下していく。
『うわあああぁぁ!?』
「ディナイアルが、こうも簡単に……」
「来るぞ美波!」
「えっ、きゃあ!?」
斜め方向から落下しながら銃剣のビームでこちらを襲って来る漆黒のガンダム。咄嗟に肩の増加装甲「ノルン・ガーディアンユニット」で完全に防ぐ。
一真のタイプツーが接近するシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを阻むが、出力で無理矢理弾くと左の銃剣を切り替え、こちらにまた襲ってくる。バックパックの翼に設置された大小の剣を合体させて一本の長剣として振るってくる。
単純な攻撃、それでもノルン・ガーディアンは斬れない。そう思って防御した。ところが、触れた瞬間不安に襲われる。同時にノルン・ガーディアンユニットが防御した箇所から両断された。
「!!」
斬られたという事実に驚く間もなく、シュバルトゼロガンダムから強烈な蹴りを受ける。咄嗟に腕で防御するが、勢いまでは殺せない。
ノルン・ガーディアンユニットは次元電磁装甲付きの防御装甲。ただの実体剣で両断されるなどあり得ないことのはずなのに。
落ちていく機体に対し、追撃を放とうとするガンダム。しかし背後に回った一真がガンブレードランスでそれを阻む。
『させないっ』
『っ』
背後からの斬撃だったにも関わらず、シュバルトゼロガンダムはウイングのブレードユニットでガンブレードランスを受け止める。そこからウイングを跳ね上げて退けると、先程ユニットを斬った剣で叩き付ける。
凄い、強い。何とか体勢を立て直した美波は思った。シュバルトゼロガンダムの力と、それに対抗する一真に。一真の言っていたことは決して間違っていなかったのだ。
近接戦では自分は勝てないと判断しシャイニーガンブレードランスをランチャーとして固定、構える。そこで地面へと落ちていった興司が感情を露わにディナイアルで横を突き上がっていく。
その中で機体が結晶を生やしていく。同化の力がディナイアルを包むと欠損したはずの腕部と胸部が再生する。これが、ディナイアルとイグジストの力の一端。再生したディナイアルが、興司が咆える。
「この、時代遅れがぁぁぁぁ!!もう貴様の時代は終わっている!!」
「ちょっと、興司!?」
『ダメだ興司、冷静に!』
咆哮する興司は制止も聞かず真っ直ぐシュバルトゼロへと向かう。シュバルトゼロは一真さんのタイプツーと競り合っていたが、接近を察して力で弾き飛ばして離す。
上がっていくディナイアルと向き合うシュバルトゼロ。しかし向き合った時には既にその距離はディナイアルの距離だった。対応できないと確信し、叫ぶ興司。
『もらった!』
両腕の超次元領域で挟み込むようにするディナイアル。その時、シュバルトゼロが紅く輝く。
超次元領域がシュバルトゼロを挟み込んだ。今までならこれは絶対的に回避できない攻撃だ。超次元現象によって削り取って消し飛んだに違いない。誰が見ても、そう思った。ところが挟み込んだ後、美波は悪寒を感じ、すぐに一真が叫ぶ。
「まだ終わっていないぞ、興司!」
「後ろっ!」
『はぁ?ガァッ!?』
見回そうとした直後、その後頭部を抑え込まれるディナイアル。背後には先程消し飛ばしたはずのシュバルトゼロが紅い光をフレームに宿して浮遊していた。
一体何が起こったのか?それを知る者は少なかった。
◆
「は、離せこの、旧式……!!」
『旧式とは、随分生意気なことを言うガキですね!』
「な、にぃ!グァッ!?」
ディナイアルの「新米」パイロットの言葉を言い切る前にその背中を蹴り飛ばす。しっかりと掴んだ頭部が機体からもぎ取れる。その頭部をそのまま投げ返す。豪速で飛んだ頭部が敵の首にめり込んで爆発を起こす。
どんな悲惨な状況になっているか、今はそれも気にするところではない。燃え上がるような紅い粒子をフレームから放出するシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス、その背中の装備状況が変わっていた。一枚ずつ接続していた6対の羽は今、2枚ずつ縦に接続され、3対の翼として背中に広がっていた。
その状態のジェミニアスの状況を、ジャンヌが伝える。
『ジェミニアス、エレメントブースト安定状態。アレスモード各部正常に稼働中』
「実戦での発動は問題なし、か」
これはあのアレスモードであった。ただし前のアレスモードと違い、それの使用を前提に機体が組まれている。今のジェミニアスはアレスモード専用の発動形態へと移行していたのだ。
ウイングが可動し、3対の翼が広がる。ウイングには先程までの装備とは違い、増加装甲のようにパーツがかぶせられていた。それらの間にエネルギーリングが展開し、機体の稼働率を高める。リングはまるで、観音の後光のように見えることだろう。
「―――行くっ」
「っ!!」
圧を飛ばしただけで真藤一真が身構える。しかしそれが意味を成すことなく、エネルギーリングにより向上した加速で距離を詰めると、そのまま拳を頭部目がけて右ストレートに振るった。
「ぐっ!?」
「っ!!」
攻撃は防がれる。だが止めることはなく、連続ジャブの後、ダンクシュートの如く放ったジャンプからの打ち下ろしで真藤の機体を吹き飛ばす。
上がった加速能力で下から狙い撃とうと構えるイグジストにもそのまま突貫を行う。こちらの接近に感づいていたイグジストは迎撃の構えを取った。ランチャータイプのガンブレードランスから拡散弾を放ち、接近を許さない。しかし今のジェミニアスにその程度の弾幕に果たして意味はあるだろうか。
こちらの予想通り、ビームは機体から発せられる紅い粒子に拡散される。正式システムとして採用される(仕様上せざるを得なかった)エレメント・フレアが敵の弾丸を弾き続ける。
その状態で近接距離まで持ち込んだジェミニアスは拳を振るった。が、それに対抗してイグジストも以前はなかった肩の増加装甲で防御する。それらは先程の合体剣「ディオスクロイ」は防げなかったが、今回のDNを込めた拳は真正面から防ぐに至った。
「拳では貫けない、か」
「くぅ!私は一人じゃないんだから!」
その言葉が裏付けるように、勢いで後退したイグジストを援護する様に蒼穹島部隊がこちらを包囲した。
その数、ざっと15体。更にイグジストの肩、サイドアーマーを構成していた増加装甲が分離し、小型MSとして包囲に加わる。
イグジストから発せられた海凪晃司の声が命令を下す。
『奴を葬れ、全機体砲撃!』
『おおぉぉぉぉぉ!!』
「っ!」
ビーム、実弾を絡めた一斉射撃が襲い掛かる。が、その直前に再びジェミニアスのモードを切り替え対応する。
「シフト、キング!」
『キングモード!』
フレームの赤の発色が黄色へと変わる。同時にウイングユニットが分離、ウイングとシールド裏から装甲が出現して瞬時にジェミニアスを覆っていく。重厚な騎士と見まがう巨大な槍とシールドを構える重装形態のガンダムが敵の攻撃を受ける。
受けると同時に敵にとっては信じがたい光景が映る。実弾攻撃はその硬い増加装甲に阻まれる。それは良いものの、その中でビームだけが放った方向へと文字通り反射していった。
「う、うわぁ!?」
「ビームが、跳ね返った!?」
「何!?」
『まさか、ゼロンのリフレクトパネル!?』
「いいや、違う!」」
戸惑う様子の海凪晃司に対し強く否定する。そのままシールド表面の砲門を光らせ、拡散レーザービームで周囲のMSに反撃していく。
重装備形態のキングモードは射撃を受け付けない重装甲と、圧倒的な火力が売りの形態。そこらの機体のビームライフル程度ではこの機体を攻略することは叶わない。
射撃が無理ならば、と接近戦を挑む機体も見える。それらを近づけさせないようにレーザービームを照射するが、それで全ての敵を倒せるわけではない。2機のタイプシリーズがレーザー対艦刀とビームナイフで切りかかってくる。
「このッ!」
「ここまで近づけば!」
しかし、言い放つ。
「未熟!」
先にビームナイフの機体をシールドで受け止め弾き飛ばす。その間にガンランスをもう一機の対艦刀装備の胸部に突き立てる。立てると同時にビーム口を露出させて撃破すると、返す刀ならぬ槍でもう一機。それらで大半の機体を落とした。
既にその圧倒的性能を見てオース部隊、CROZEチームRとEが後退して防衛線を再構築していた。それでいい。戦線を立て直すことが出来た。
その圧倒的性能を見て、機体を修復させたイグジストが唖然とする。
「な、何なの、この人……」
「こんな程度でェ!!」
そのタイミングで頭を飛ばしたはずのディナイアルが合流し、再度攻撃を仕掛けてきた。破壊されたはずの頭部は結晶化して再度復活し、また五体満足な状態で向かって来る。
同時にジャンヌが周囲の状況を知らせてくる。
『元、残りの敵機の内、真藤一真機とイグジスト、ディナイアル以外が撤退を開始。更に海上からこの基地に目がけてミサイル反応確認!』
レーダーを見ると、確かに敵機が後退している。そして海上から熱源が接近しているのが見え、それが今多数の小型マイクロミサイルに分裂した。
キングでは間に合わない。だからこそ再びジェミニアスのモードチェンジを叫ぶ。
「了解。シフトハルピュイア!はっ!」
『ハルピュイアモード』
「逃がさな……何っ!?」
モードチェンジをすると瞬時にその場を離脱する。青い残光と共に更に上へと上がったジェミニアスは、円形に広がったウイングをバックパックから展開されたパーツに接続させた、より薄い青色、空の色とでも言うべき色をフレームに宿す形態へと移行していた。
腰背部に鳥の尾羽と言うべきパーツが接続されたジェミニアスは、ミサイルを見据えると尾部から小さな端末を放出する。
「フェザービットC、アクティブ!」
遠隔端末を放出したジェミニアスはすぐさま向かって来るミサイル群にそれらを向かわせた。羽のようなビット達はビームを纏って突撃、あるいはビームを放って次々とミサイルを落としていく。
ビットを正確無比に操る。それだけではない。下から果敢に追いかけてきたディナイアルと真藤機がこちらを捉えて攻撃を仕掛けてくる。
「今度は逃がさない!」
「っ、避けたところを……何っ」
突撃と待ち伏せでこちらを撃とうとする2機。だがハルピュイアは軽やかな動きで、踊る妖精の如くその立ち回りと弾幕を抜けていく。それも、ビットを操作したままだ。
戯れるように両機体と渡り合う。追加でウイングからビットも展開して二機をオールレンジ攻撃する。その間に先に放ったビットが全てのミサイルを撃ち落とす。離れてそれらをすべて尾部とウイングへと仕舞う。直後ビームが襲って来る。イグジストもまた追いついて不意打ちを仕掛けてきたのである。
「何とか、追いついた!」
「ここまで振り回されるとは……美波、興司、連携で行くぞ」
「連携なんて、まどろっこしい!」
連携を拒んだディナイアルが単身攻め込んでくる。止めようとした真藤だったが、やむを得ずそれに合わせる形を取る動きを行った。
こちらも再びアレスで迎え撃つ、そのつもりがトラブルに見舞われる。機体のコントロールが手元を外れる。
「ぐっ、動かない、これは」
「今度こそ、もらう!」
好機と見たディナイアルが再三以上に渡る特攻をかける。機体のコントロールが奪われた今、元にどうこうすることは出来ない。
そう元には。フレームが紫を帯びる。超次元現象を帯びた敵の腕が迫る。円盤状に圧縮形成したそれがのこぎりのように押し付けられる。それをジェミニアスは右手で受け止めに掛かる。
「ハッ、ただの手で!」
受け止められるはずがない。ディナイアルのパイロットの考えは間違いない。それが今のジェミニアスでなければ、だが。
圧倒的な破壊力を持つそれをジェミニアスは受け止めた。表面を削りながらも受け止めた手は両断されない。それに怪訝な声を上げる敵。
「なっ、止めてる!?」
『……ぁあ、止めてる、ぜぇ!!』
元とジャンヌではない第三者の声が返答と共にディナイアルの顔面に円盤を逆に叩き付ける。自身の攻撃で自分の頭を切り裂く結果となる。
その状態でジェミニアスは三枚一組のX字となった翼に装備された銃とアサルトナイフでディナイアルを痛めつける。
反撃は出来たものの、その光景に見かねて元は語りかける。
「やれやれ、やり過ぎるなよ……」
『スタート凄い生き生きしてらっしゃいますね……』
苦笑いする二人の反応の通り、これは二人の操縦ではない。これはスタートが操る形態だったのだ。
ネクロモードと呼ばれるそれは闘争本能を刺激されたスタートが、コントロールを奪って操作する。スタートがかつて英雄と呼ばれるほどの存在だというのは聞かされていたが、今まで眉唾物だった。しかし今こうして振るう力は、間違いなく英雄だったのだろう。こんな荒々しい戦い方かどうかは疑問だが。
隙を与えることなくスタートがディナイアルを叩き潰す。繰り出される超次元現象の攻撃もフレームから放出される粒子エレメント・カオスでいなす。
手も足も出ないディナイアルにスタートが指摘した。
『ディナイアルも所詮、機体だけが優秀か!』
「何、だとっ!!がっ」
「……っ」
なおも反射的に噛みつこうとするディナイアルだったが、それすらもスタートの刺突で黙らせる。劣勢を悟り真藤がディナイアルを引き戻す。そのタイミングでスタートから操縦権限を戻して、通常形態へとジェミニアスを戻す。
「お疲れさん、もう流石に良い」
『あぁ?まだ!……いや、大丈夫だ』
闘争心がまだ残りかけていたものの、すぐに落ち着きを戻す。あまり使いたくはないモードだ。
モード解除を見て、まだやれると真藤に物申すディナイアル。
「真藤一真!まだ俺はやれるっ!」
「いや、もう限界だ。ギルボードも撤退した。この作戦は失敗だ」
失敗という言葉に元は悟る。そして一真はこちらに対し述べる。
「新型は伊達じゃない、か」
「ごもっとも。そっちは宝の持ち腐れか。イグジストもディナイアルもお前達二人が乗るべきだった」
「っ!こいつ!」
挑発に挑発で返す。ディナイアルのパイロットは食って掛かろうとするが、真藤一真は沈黙でそれを制する。
沈黙の後、真藤はイグジストとディナイアルの二人に言った。
「美波、興司、撤退だ」
「一真お兄ちゃん!」
「撤退だ」
「あ、はい」
イグジストの女性パイロットは渋々従った。ディナイアルも先程のがあってか何も言わず、超次元現象を発生、3人まとめて離脱していった。
残ったのは超次元現象の風のみ。眼前の基地もまた争いが終結していく。ヴァルプルギスから通信が入る。
『全敵行動沈黙。救援感謝します元隊長』
「あぁ。紫音艦長も、よく持たせてくれた」
『いえ。ドームの方も収まったようです』
『それより元お兄さん、みんなを迎えに行ってあげたらどうですか?』
「仕事中だぞ、光巴オペレーター」
光巴のやんちゃにため息を吐く。だがそのつもりだった元は否定しなかった。
手ごたえとしては充分だ。イグジストとディナイアルとも戦える。ジャンヌもまた発言する。
『これで、憂いはないですね』
「何とかな。とはいえ、使いこなすのはかなり難しい」
『えぇ。でもそれは後にして、彼らを迎えに行ってあげましょう?』
「そうだな。行こう」
そう言ってドームへと戻っていく。こうしてオース防衛戦は幕を閉じていくのであった。
NEXT EPISODE
EP33はここまでです。
ネイ「なんというか……凄いオーバースペックと言いますか」
グリーフィア「武器を何でも持ってこれる、なんてマルチ・スペースシステムは恐ろしいわねぇ」
まぁもとがあんな機体達だからね。そこに戦闘スタイルを変えるエレメントブーストが入る。
ネイ「すべての武器を最適に扱える。今までの換装システムの最上位と言っていいですね」
グリーフィア「これは今後のこの世界の新たなフォーマットになりそうねぇ、MSの装備の」
ガンダムじゃよくあること。
あ、あと最近シンエヴァ見てきました。追告見る前に見られて良かったです、色々と驚きますわ。
ネイ「エヴァモチーフの機体とか、出るんです?」
それは今言わないでおく。
グリーフィア「あらあら。じゃあこの話はここまで?」
そういうこと、こんなところでネタバレするのはご法度だし、報告みたいなもん。
というわけでEP34、次回がLEVEL3第2章最後のお話です。続きます。