レイ「いよいよアナザーSEEDDestiny編完結かぁ。長いから種命島編で良い?」
別にそれでいいよ、長いのは私が言うし。
ジャンヌ「けれど今回本当に長かったですね。今までの第2章と比べると」
大体第1部の3章近い量あるのかな。ここ入れたいとかプロットから追加した話もあるからね、特に明沢正との模擬戦話。
そんなこんな長くなった第2章、その結末は如何に?というわけで本編どうぞ。
種命島から間一髪脱出することの出来たギルボード達は潜水艦で本拠地ゼロン・フロンティアへの帰途にあった。
島の征服を果たすことが出来なかった。表向きは勝ちを譲っても勝利はしたと言ったギルボードだったが、本心は違った。
勝てる戦いを逃した。大和輝の介入さえなければ、HOWの魔王も動くことはなかったのに。
いや、そうではない。蒼穹島のイグジスト達が退けられたのを見て、そう思うのは楽観的だろう。黒和元の反応からして、全て分かっていたのだとしたら?それは充分あり得る。全てわかった上で手を出さなかった。そうならすべて彼の手の上で踊らされていたことに。
だからDNLは嫌いだ。人が生まれ持った、組み合わされた基盤を上書きして見下す彼らが。私の理想の邪魔となる存在。だからこそそれを滅ぼす可能性を持った正と進は手に入れたかったというのに。
「……先生……」
口を閉ざして考え込むギルボードを心配そうにのぞき込む美愛にも気づかない。そこにMSを固定してきた零と彼の元同僚で呼びかけに応じてくれたスパイの水無月加子が報告に戻ってきた。
「ギル。カオスとガイアの固定、完了しました。追跡も無いようです」
「あぁ、ありがとう零」
「ギル……今回の件不覚を取りました。よもや、大和進に後れを取るとは……!」
片膝を着き、申し訳なさを吐露する零。ギルボードは先程までの反省を振り払って零へと言葉を掛ける。
「いや、よくやってくれたさ。どのみち、今の黒和元がいる以上はゼロンの一派如きがどうこうできる問題ではない。イグジストやディナイアルがいても駄目だった。そしてCROZE部隊も例え新人でも精鋭ぞろい。改めてその認識をゼロン本隊に認識させることが出来たと思えばいい。それに、君達の機体はゼロンのMS技術向上に役立てられるのだから、無駄ではない。今はこうして合流できたことを喜ぼうじゃないか、零」
「ギル……はい。これからあなたの為に、この命尽くします」
零は忠誠を誓った。その様子を見て嫌煙する加子がこれからについて問う。
「はいはい、零良かったわねー。それで、今後の私の待遇についてはどうなのかしら?スパイはやったし、機体だって持ってきた。失敗した或と違ってね」
「あぁ。君は確かに役目を果たしてくれた。流石だと言える。しかし、残念ながら君の願望はいずれも叶えられそうにない」
「はぁ!?話が違うじゃない!」
声を荒げた加子が食って掛かろうとする。が、それをすぐに零が間に入って阻止する。
やはり納得しなかったか、と思う。彼女がこちら側に来る条件として出したのは、ゼロン旗下に加わった際の現時点での階級以上の地位と、オースガイアの専属サポート付与。しかしそのどちらも彼女は満たせない。現状の階級並みの力も、オースガイアの適性も彼女の遺伝子にはないからだ。それは事前に提出されていたデータからも分かっていた。
遺伝子の優れた者が多い種命島にも関わらず、彼女の力は中の上。貴重だが、だからと言って彼女のそれは文字通り「高望み」だ。それをはっきりと言う。
「君の持つ力はそれに見合ったものではない。幹部として組織を統制する者の意見では、期待に応えたい気持ちはあっても他の適した者達の不評を買う真似はしたくない。零が連れてきた者が分不相応だと言われたくないからね」
「言ってろ!そんなんだったら示してやるわよ、実力を!」
「なら、これからテストしよう。君が予定されているこちら側のパイロットとどちらが優れているか、生き残れるか」
ならばと加子に対し最後のチャンスを与えることにした。誘うような言葉に加子は躊躇いなく食いつく。
「いいわよ。そんなに私を蹴落としたいならね」
「そうか。なら見せてくれ」
「えぇ、いくらでも見せて……」
そこで加子の声が止まった。そう、止まった。彼女の胸元からナイフの先が貫通していた。
その光景に美愛が悲鳴を上げる。
「きゃあ!?」
「ガフッ、な、なに、が……」
「……私は言ったはずだ。これからテストすると、オースガイア、いや、ゼロンガイアの候補パイロットと。その候補パイロットは既にこの部屋にいた。まさかそれにも気づけないとは」
背後からの襲撃者は加子の体からナイフを抜くとその体を地面へと押し倒す。床へと血だまりを作っていく加子の体は痙攣の後、動かなくなった。
それを見下ろすのはギルボードに仕える紺色の髪の少女。無感情の彼女がナイフの血液をふき取り、ギルボードへと尋ねた。
「うるさいネズミは排除しました、ギルボード」
「ご苦労、スリア。これであの機体は君の物だ」
これでいい。ガイアのパイロットは彼女以外に居ないだろう。その顔を横目に見た零は呟く。
「……その顔でこの行動。今の俺には刺激が強すぎます」
「こいつも始末?」
「いや、それは仕方のないことだ。じきに慣れるだろう?」
「えぇ。それに、こいつほど簡単にやられるほど落ちぶれてはいない」
零まで始末しようとするスリアと呼んだ少女に、説得して殺させるのを止めさせる。そんなやり取りは美愛には刺激が強すぎたのか、自分の後ろに隠れた。
もっともこれからが本番だ。この程度で怖気づいてもらっては困る。美愛のこれからに期待しながらギルボードは席を立って彼らを連れて部屋を出ていく。本国にも通信を入れなくてはならない。
「さぁ、行こう。我らギルボード派、いやデスティニーズの躍進の為に」
◆
オース25周年式典の動乱から一夜が明けた。本来CROZE部隊は式典終了後すぐに帰投する手筈であった。
しかし隊長の元がオースの事後処理についての対応を待ったこと、そして部隊員達にも休息が必要とのこともあって出発を一日遅らせたのだ。激闘を繰り広げた宗司達もそれは大歓迎であり、一日だけだが休暇としてオースで存分に羽を伸ばした。
お土産などを買い、そして完全に打ち解けた進や月子にオースを案内してもらった。観光国家のオースを短いながらも楽しんだ。
そして一日限りの休暇を終え、宗司達は東響へと帰る時が訪れた。基地の出発ゲートで宗司達Gチームと各チームの隊長、元隊長とジャンヌ副隊長、紫音艦長が大守明日那、明沢正、大和兄妹、本物の大守里奈と別れの挨拶の場に立つ。
「今回の事件解決、国の代表として感謝します。ありがとうございます」
「こちらとしてもゼロン侵攻を止められたことは大きい。それより、大和輝と大守里奈は表舞台に戻るのか」
「はい。国民に示しを付ける為にも、わたくしがまた出なければ。……いいえ、今度はもう甘えた手は使いません」
「表に出た以上は僕も戦います。進も守れるだけの力を持った。里奈を守らなくてはいけませんから」
「義兄さん……」
「そう、ですか」
大和輝達も本来あるべき立場へと戻るようだった。これでようやく、進の理想も叶うはずだ。宗司としてもそれは自分の事のように嬉しい。
その進も今回の戦いで戦死者、裏切り者含めて多く仲間を失ったが今後は進が後の後輩達の模範になっていくようだ。名前を元に戻した正さんが言っていた。
未来のエースと進の事をGチームの女子達と光巴がもてはやす。
「けど進もいいわよねぇ。あっという間にエースまっしぐらだし」
「一応そうだね。だけど進さんもこれからが大変だろうから」
「でも大好きな義兄さんの下で働けるなら本望ってもんでしょ?」
「あはは、大和進さんと同じ道歩んでいくわけだからねー」
「おい、そこの女子共……!」
「ほらーシン怒らないって。訓練生見てる」
訓練生の声を浴びて、怒りを下げる進。それに対して思う所があるのか輝やや苦笑いしていた。
明日那代表が今後の指針について述べる。
「今後についてだが、私達もゼロン撲滅のために技術協力は積極的に行っていく。結果としてゼロンにMS技術が漏えいしてしまったんだ。その代償として、既に打診している通りだが」
「聞いている。二つ返事だとな。だが、一つだけ、この段階になって申し訳ないが言わなくてはいけないことがある」
「この段階で……?何か追加の条件が言い渡されたのか」
ややもったいぶるような元隊長。エターナがそれを見て急かす。
「何よ、この綺麗に終わるタイミングで厄介事持ってくるの?」
「エターナ、静かに」
「エターナがまさしく言った通りなんだよな。残念だが、面倒事だ。お前達にとってもな」
「僕たちに……?それは」
輝が訊ね返す。元隊長はそれを明かした。
「オース政府には、今回の事件の初動ミスとして、停滞していたプロジェクトASのフェーズを強制的に進めてもらう。この意味、分かるな」
「!!それは!」
大守明日那の声が危急を要したものに変わった。それだけじゃない。大和進や、明沢正も動揺していた。大守里奈だけは厳しい顔で元へと問い掛ける。
「……元さん、あなたも知らないはずがないでしょう。私が代表の時、オースはこれ以上自国の人間、コーディネイティアの戦争利用を規制した。本来の宇宙開発の為に使うと」
「確かに、それは国で交わされた条約だ。この事件に至るまで、オースと日本との間でコーディネイティアの進出と実戦投入はなかった」
二人とも声のトーンが重い。相手方である進と月子は分かっているのか顔を見合わせる。その間にこちらも情報を収集するため呉川隊長に尋ねる。
「あの、実戦投入って、実際にもう戦闘には」
「この島はカウントされていない。性格には島外派遣を意味しているのだろう」
「あぁ、そういう」
二人の会話に光巴が事情を整理して話してくる。
「本当なら3年前の時点で段階的に開始していくはずだったんだけどね。大守里奈さん達の父親の重玄さんが頑なに拒んでいたんだって。お父さんも戦力になるって期待してたのに、仕方ないとはいえがっかりしたって言ってたし」
さらっとその派遣先がHOWであったことを知らされる。こんな話さらっと聞く形で良いものなのだろうか。
そうこうしている内に元隊長と里奈・明日那代表たちの会話はヒートアップしていく。
「しかし、この島の開発理由はMS登場時にそれに適したものへと変わった。軍事利用も他国の制度変更に合わせて変わっている。そして今回の事件が、戦闘用MSパイロット派遣制限の弊害で起きたと国は判断した」
「馬鹿な!それは過去の話だ!それが危険だと父は命を賭して改変した。それを許せば、今回のような事を繰り返すだけに」
「新沢或。彼は戦いを求めてゼロンへと寝返った。水無月加子もそれが疑われる」
「水無月さんに関していえばそれは推測です。そんなものだけでは、彼らと同じではありませんか?」
話を聞いているだけなら、宗司としては代表たちの考えを推したかった。遺伝子改良された兵士。それが投入されるとしたら、どれだけ混沌とするか。
しかし元隊長は彼女達に卑怯とも呼べる一手を繰り出した。
「まだ分からないのか、お前達大守一家があの戦争と、今回の事件を引き起こしたことを」
「ぐぅ!?」
「それは……ですが」
「二度、いや、蒼穹島の件を含めて三度の失態。日本政府は見逃していない。そもそも俺達が派遣されたのはオース政府の依頼じゃない」
「それは、どういう?」
輝の疑問に元隊長は自分達にも知らせていない事実を述べる。
「依頼を受けた日本政府は、オース種命島の政府機関オースが島の資源流出を回避できないと判断した。そこでHOWに事態解決と共に凍結していたプロジェクトASの強制発動の代行を依頼してきた。次元黎人も了承し、俺もまた依頼を受けた。俺は、その派遣要員の見定めでもある」
「そんな!だったら何でこのタイミング……あっ」
「そうです、輝さん。だからこそ、このタイミングなんです」
反論を言おうとした輝さんは何かに気づく。それをジャンヌ副隊長が頷く。
宗司自身には分からない。エターナ達も何が何だかで狼狽えている。けれどこれだけは分かる。隊長達は大人として話し合いをしていたのだと。
煮える感情を押し留めて、正が選抜者について尋ねる。
「それで、誰を連れていくなんです?」
オース側が息を呑む。選ぶとしたらこの四日間で過ごした人物達だろう。しかし元隊長の口から語られたのは納得と、そして意外な人物だった。
「2人。大和進と、その妹」
「えぇ!?俺、と、真由!?」
指名を受けて驚く進。動揺は同じだ。妹がいるというのは昨日までに聞いていた。兄である進が軽く溺愛しているようだったから忘れるはずがない。
もう一人の選出理由、というより選出意図について義姉である里奈は問う。
「なぜ、真由さんを……報告では彼女と会うことは……進君が話したので?」
「い、いやいや、話してない、です。直接は。……宗司達?」
こちらに尋ねる。が、無論宗司達もプライベートまで話していないから、首を横に振る。
これ以上こちらに火の粉が掛けられるのを避けてか、その意図について元は述べる。
「妹さんはどうもこの島では有名な存在らしいな。情報処理技能あり、そして島内学校放送部の中で一番評判がいいと聞く」
「えっと……?確かに、そんな話は聞いたような……」
「そう、ですね。真由は確かに情報処理技能検定1級と、学校内のお知らせを読み上げたりするパーソナリティで一番声が通るっていうベテランです」
それが一体何に元の目が留まったのか。疑問が尽きなかった。元隊長はすぐにその疑問に答える。
「確かに進はMSパイロットしてだが、妹の真由さんにはうちの艦のパーソナリティ、いや、オペレーターを任せたい。そう言ったケースも必要だと言われているのでね」
「なるほど……うん?」
頷くも首をひねる。大方が納得しがたいながらも状況は飲み込んだ。飲み込んだところで認めるかは別。明日那代表が再び話を戻した。
「た、例えそう決めていても、私達には拒否する権利が!」
「大和進、お前はまだ火葉零の事、止めたいか?」
「それは……」
だがそれには耳を傾けず、進へと問い掛ける元。元は言葉を紡ぐ。
「政府からは国の問題は国の手で付けさせたいと言われている。種命島の技術には種命島の技術で。そしてお前はあの場で零を止めると言った。俺はそれを叶えさせてやりたいと思っている」
「元さん!?進は、そんな、事は……」
止めようとする輝。ところが進の顔を見てそれは途切れていく。話を聞く進の表情は真剣そのものだった。元は続ける。
「火葉零を止める。その言葉に、二言はないな?」
「……はい」
頷く進。それを聞いて、なおも止めようとする明日那。
「そんなものは詭弁だ!勝手に自国民を他国の戦争に駆り出すなど!」
「それもまた、詭弁じゃなくて?」
明日那へと意見する声、紫音艦長だ。紫音艦長は明日那の言葉に持論を語る。
「国の代表として、自国民を戦争へと駆り立てたくない気持ちは分かります。でも対価と落とし前っていうのは今回あなた達が払うべきです。それに駄々をこねれば却って不利になるのはあなた達ではなくて?」
「それは……」
「それにね。私も進君の願いを、ここで消化不良のまま残すのは嫌だって思うわ。敵でも戦友だった、いいえ、それ以上の信頼関係で結ばれた友達を今も止めたいって思っている彼の願い、ここで踏みにじると?」
「そんなものは!」
「おやめなさい、明日那」
強い拒絶を放とうとした明日那を、里奈が強く制する。明日那は沈黙し、里奈は態度を崩さない姿勢で、紫音と元へ告げる。
「私達は決して今後も自国民を戦争の道具にするつもりはありません」
「そう思うのはいい。そうだとしても彼らには」
「だけど、それでもどうにもならないこと、止められないことがある。でしたら、これだけは約束してください。……どうか彼らを、生きてこの島に返してください」
頭を下げる里奈。その言葉に紫音艦長が後ずさる。予期していなかったのか、しかし元隊長はすぐにそれに返答する。
「無論だ。それは任せられる隊長として最低限の義務。不当に扱われることも、させない」
「……分かりました。進君、いいえ、進さん」
「は、はいっ!」
呼ばれて進は里奈の前に出た。里奈は彼の前に立ち言った。
「あなた達の島外派遣を、二日後に指定したいと思いますが、それでもいいですか?」
「里奈義姉さん……了解っ!しました!」
「元さん、彼らの家族周りと部隊への別れの挨拶の時間、それから仕度の準備くらいの時間はよろしいでしょう?」
「無論だ。すぐにでも連れていきたい気持ちはあるが、彼らの時間を俺は尊重する。機体のパーツなども持ってきてもらわないとな、設計図含めて」
「えぇ、ありがとう」
それを受け取り、全ての仕事を完了したと判断した元隊長は、宗司達CROZEメンバーへと向けて号令する。
「以上を以って、オペレーションデスティニー、終了する。各員、直ちに艦へ乗艦。HOW本部へと戻る!」
『了解!』
こうして、俺達の初任務は終わった。
合わないこともたくさんあった。それでも俺は、この任務が最初の任務で良かったと思う。ここから学んだ、信じることと裏切られることの意味、信用と信念の大事さ、理想を追い求めることと真実を見つめる目を持つこと、それを信じることの脆さも。
そうしてHOW本部へと戻ってから二日後。予定通り、彼らは俺達の仲間として迎え入れられた。
「大和進、ただ今を以ってHOWに現着しました、で、あります?」
「お兄ちゃん言葉遣いざっつ!よく今までオース軍に居られたね」
「な、何だよ真由!放送部入ってたからって!」
「はいはーい。私大和真由でーす♡お兄ちゃんがズボラなのが心配なのと、スカウト受けてやってきました♪」
これから騒がしくなる。それは予感でもあり、真実でもあった。
第2章 END
NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE
EP34、LEVEL3第2章はここまでとなります。後は設定集関連ですね。
レイ「……まさかの加子さん死亡っていう……」
ジャンヌ「そんな上手い話はない、っていうのを見せつけてきましたね。因果応報、というべきか」
とはいえそのオースガイアがまた敵となるのは変わりませんからね。進君がどんな反応をするのか。
ジャンヌ「それと進さん達の引き入れ、政府はそのために今回元さん達を救援に出したというわけ、ですか」
まぁそうだね。3年前の続き、政府はいま進めるべきだと思ったわけだ。
レイ「うーん卑怯って言われれば卑怯だけど……これが本来の形、って言われちゃったら、ねぇ?」
とはいえ元君には別の思惑があるんですがね。それも後々明かしていくかもですね。というわけで今回はここまで。
レイ「次回の黒の館DN!は……何か初の領域に突入みたい!みんな、覚悟しててねっ!」