機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、藤和木 士です。少々遅れた気もしますが、EPISODE39と40の公開です。まずはEP39から。

レイ「新装備、ユグドラルストーカー!名前からして追い掛けそうだね」

ジャンヌ「名称からして、ユグドラル関連の何かを追いそうですね。追って……どう捕まえるのか」

そこらへんを紹介しつつ、捕獲作戦が展開されていきます。というわけで本編をどうぞ。


EPISODE39 神話の担い手2

 

 

 カザノメカニクスの開発部主任舞島が見せたのは、筒の先にコブのような何かをくっ付けた兵装だった。

 いくら宗司より先輩と呼べる入嶋も、その武装が何という種類の武装に当たるのか全く分からなかった。HOWでは全くと言っていいほど使われることのないタイプの兵装。もしかすると試作品で、まだ世の中に出回っていないものだろうか。

 ところが元隊長達はその武器の外見を見て名を言った。

 

「これは、シュトゥルム・ファウストか」

 

「外観は概ねそちらを参考にしました。そちらとは随分挙動が違いますがね」

 

「シュトゥルム……?」

 

 隊員の若い者の何人かが首を傾げる。そんなこちらにジャンヌ副隊長が軽く説明する。

 

「現地改修で生まれた使い捨ての実弾爆発兵装ですね。現在からみると大分昔の兵装なので、馴染みはないかもですが、一応現役の兵装ではあるんですよ」

 

「そうそう!手にもって直接相手にぶつけてぼかーん!とかしたりね!」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 光巴のMS熱の入った解説が入る。余程この話をしてみたかったようだ。声が昂り、目がキラキラと輝いているように思える。

 更に話したがりそうな様子だったが、ここで光巴は周りの雰囲気に気づいて、自ら自己修正を行う。

 

「っと、これは失礼っ。お話の続きお願いしまっす!」

 

「はは、では続けますね。こちらの使用方法も概ねそのシュトゥルム・ファウストと同じ、この先端の弾頭部分を切り離して発射します」

 

 実物を見せながら暗くなった部屋のスクリーンに使用方法を映す。イメージ映像には切り離した弾頭がユグドラシルフレーム機を示す機体のシルエットの動きに追従する様に追っていくのが見えた。

 その部分について舞島さんは解説する。

 

「このユグドラルストーカーの推進力は内蔵したユグドラルフレームの共振作用の斥力です。ただこの共振に使われるのは使用者ではなく、ターゲットとなるユグドラルフレーム機のDNL音波によるもの。筒状のパーツは放った弾体にそのDNL音波を集めるための誘導装置としての機能を持ちます」

 

「ターゲットのDNL音波を利用しての共振……新しい発想の武器ですね。これならDNLではないパイロットでも扱える」

 

 ジャンヌ副隊長の言葉で期待が高まる。これまであらゆる手を尽くしてもDNLなしでは捕獲はおろか攻撃を当てることすらも叶わなかったというアンネイムドにも通るのではないか。

 舞島さんもジャンヌ副隊長の言葉を肯定し、その性能を宣伝する。

 

「はい。DNLに対抗するにはDNLしかいない。けれどもDNLは絶対数が少ない。だからこそ、相手を利用するという逆転の発想をしました。ストーカーという名前の通り、DNL、ユグドラシルフレーム機を理論上地の果てまで追いかけ続けて、着弾と同時に内部の強化トリモチを放って完全に動きを封じます」

 

「開発ありがとうございます。これならアンネイムドを捕らえられそうです」

 

「それだけじゃない。今後のMS開発において重要になってくる技術だ。対DNLとしても、今後開発される可能性のあるMSへの対抗策としても日の目を浴びるかもしれない」

 

「そう言っていただけると開発した甲斐があるというものです。急かされた側としては、それくらいの言葉は頂いておかないとと思いましたし」

 

「その件は本当に申し訳ないです」

 

 深絵隊長が深々と頭を下げる。納期短縮を迫る側として、それが申し訳ないものだったというのが感じられる。一番大変なのはその依頼側でもあるし、頼みこむ側も本来そうあるべきなのだろう。

 礼を述べて顔を上げた深絵隊長は元隊長達に顔を合わせ、頷き合うと隊員達一同に向けて命じる。

 

「では予定されていたように運搬係は武器の運搬を、使用者はラボから指導を受けてください。出発は40分後です」

 

「各員作業開始!」

 

『了解!』

 

 号令と共に各隊員達が動いていく。私もクルスと共に舞島さん、そしてラボの人からユグドラルストーカーの使用方法・扱う上での注意について教わる。

 ものの十分でそれらは終わり、私達は母艦ヴァルプルギスへと戻った。やがてすべての作業が終わり、艦長による発艦指示が通達される。

 

『現時刻を以って、本艦は石河県沖無人島の一つ、鳥島に潜伏中のアンネイムド[フェネクス]の捕獲任務に入ります。各員所定の持ち場へ』

 

 千恵里達MSパイロットは自機へと待機する。艦の加速の鳴動が機体を通じて体に伝わっていく。来る時よりもスピードは速めのように感じた

 それも仕方のないことだろう。フェネクスはとんでもないスピードでこれまで捕獲から逃れられていると聞く。今回の新装備でも捕獲できない可能性もあると舞島さん達も言っていた。

 不安はあれどもやるしかない。クルスと回線で意気込みを話す。

 

「フェネクス、絶対捕まえよう」

 

「うん……きっとそれが、私にとっての償いだと思うから」

 

 償いという言葉に重たさはあったが、それでも彼女の覚悟は分かった。DIENDシステムの原型、となれば気にもなる。果たしてその機体もまた、DIENDの呪いがあるのか。暴走がそれとも考えられる。

それを気にしつつも作戦地点への到着を今か今かと待った。

 

 

 HOWの作戦地点となった石河県沖の鳥島。そこは国の天然記念物の動物たちが少なくも存在する島だった。

 希少な天然記念動物たちを自然の中で復活させる。そのために島は駐留する県の職員の小屋以外人工物は存在せず、またその職員もこの日はいなかった。文字通りの無人島だ。

 その島の木々の中、自然には似つかわしくない黄金の機械があった。一角獣のような角を携え、鳥のような翼を広げる。そう言ってしまえば、古来から秘密裏に現存した想像上の動物がいると思ってしまうだろう。

 黄金の機械は森の中をステップする様に歩き回りながら、小鳥たちの囀りや動物たちとのワルツに興じているようだった。パイロットの趣味か、それにしては機械の体をそのまま自らの体として触れ合わせていた。

 そんな黄金の機械、黄金のMSは動物たちといつまでも触れ合うように思われた。ところが、黄金のMSは何かに気づいたように顔を上げた。

 その視線の先には森の木々ばかりで何も見えない。だがその視線の先には黄金のMS、フェネクスを捕らえようとするために東響からはるばるやってきたHOWの主力チームを乗せた空中艦2隻が確かにあった。

 危機を感じたフェネクスは動作で小鳥たちに離れるように促す。動物たちが離れたのを確認して、フェネクスは飛び立つ。島の木々を抜けて、すぐさま離脱に入る。そのはずだった。

 

 

 

 

「逃がすかよ」

 

 

 

 

 だがその直後、蒼い輝きを灯した飛行体がフェネクスの頭部を鷲掴みにした。それはHOWが誇る最強のDNL使いの機体。フェネクスはすぐさま振りほどこうとするが、その前に眼下の島の森の中へと再度降下させられ、地面へと取り押さえられる。

 HOWによるフェネクス捕獲作戦が開始されたのだった。

 

 

 元隊長の発艦直後のエラクスによる踏み込みで素早くフェネクスを抑え込む。その後を宗司達が遅れて発進していく。この流れについてエターナが繰り返すように呟く。

 

『まったく、動くぞ、って言われた時点で動けるのあのバカとお姉様だけでしょ!』

 

『あはは……元お兄ちゃんカタパルトロック強制解除して突っこんだからね……』

 

『そのせいでうちのお兄ちゃん出撃まだ出来てないっていうね……』

 

「あぁ、進は中央カタパルト使うから……」

 

 以上がその時起こったことの概要だ。現在回線で出撃が遅れていることに悲鳴を上げている進の声が聞こえたが、今は構っている暇はない。

 そんなトラブルがありながらもこちらも現場へと急行する。ふと右側を見ると見慣れないいくつもの盾を装備した蒼いガンダムが見える。

 

「あれって……」

 

「あれはブラウジーベンガンダム・ライブラ、SABER隊長の蒼梨深絵さんの機体だよ」

 

 その疑問に入嶋が答える。あれが、とその機体に視線を向ける。その機体について知っていることを入嶋が軽く説明する。

 

「HOWが本来主力に据えるはずだったカラーガンダム、その蒼を担当する機体。機動狙撃戦とビットによる多重の面射撃で押し切る機体。パイロットの深絵さんはそれだけで戦うわけじゃないけどね。私も久々に見るし、気になるのは分かる」

 

「へぇ、って入嶋ちゃんとしてくれよ。ユグドラルストーカー、元隊長がいつまでも抑えられるわけじゃないし」

 

「分かってる!気になってそうだから軽く言っただけ……」

 

 入嶋がそう答えた直後、その予感が的中した。空へ向けて緑色の光波が放たれる。それを回避する様にシュバルトゼロ・ジェミニアスが飛び上がっていたのが見えた。

 突然の事でこちらもすぐに意識を切り替えて突入する。

 

「元隊長、大丈夫ですか!?」

 

『入嶋、不用意に近づくな!』

 

「っ!入嶋っ」

 

 悪寒を感じ取り、すぐさまガンダムDNアルヴを抱えて緊急回避を行う。その横を再び緑の光波がえぐり取るかのような軌道で突き抜けていく。

 何とかそれには当たらずに済んだが、代わりにこちらに向かって来る機体を確認する。黄金色に染め上げられた一角のMS。ガンダムとは一見思えない顔だが間違いない、あれはアンネイムド[フェネクス]だ。

 抱きかかえられる形となった入嶋がすぐさまこの状態からの解放とフェネクスの追撃を指示する。

 

「ちょ!助かったけど恥ずかしい!後来てるから!」

 

「分かってるっ!」

 

 大丈夫な方向へとアルヴを突き飛ばすとビームライフルを構える。咄嗟の発砲の形になるが、既に2か月目、元隊長ではないにしても上々と言える狙いの速度で確実に撃ち抜けるはずだった。

 しかしその時、異常事態が発生した。

 

(……邪魔をしないでっ)

 

「!?」

 

 一瞬、エターナが言ったのかと思った。しかし声の主は彼女ではないとすぐに分かった。声の主は今までに聞いたことがない人物の物。一体、誰が。

 そんな考えをした一瞬の内にフェネクスに抜けられてしまった。入嶋とクルスに叱責を飛ばされる。

 

「そ、宗司君、何してるの!?」

 

「ちょっと!人を突き飛ばしておいてその様!?」

 

「え、あ、しまっ」

 

 いつの間にかフェネクスに背後を取られる形となる。が、フェネクスはその背後に見向きもせず、包囲網の脱出を試みていた。

 ところがそれらを遮るようにフェネクスを他方向からの銃撃が襲う。待機していたSABERとCROZE、そして対応して見せた蒼梨隊長のブラウジーベンガンダム・ライブラと、遅れてようやく到着した進のオースインパルスが相手取る。

 

『ここから先は、通さない!』

 

『宗司を越えても、俺を越えられるかっ!』

 

 インパルス・ルフトの格闘攻撃とボウガン一斉射がフェネクスを思うように進ませない。とはいえ網目のようなビームは抜けられない訳でなく、フェネクスは器用にその隙間を掻い潜ろうとする。

 それを阻むようにブラウジーベン・ライブラの一射が的確に放たれる。スナイパーライフルの一射はまるでその先が見えているかのようにフェネクスの機体の周囲に張られている謎のフィールドを掠め、留める。

 その姿はまるでDNLかのようだ。しかしエターナがそれを否定する。

 

『ううん、あれはDNLじゃない、全部直感でやってるとしか……』

 

「そう、なのか?」

 

『ええ、DNLの波音が感じられない。経験則、それに……』

 

 エターナの言葉を補足する様にうちの狙撃担当であるクルツが話す。

 

『あぁ、あの人、蒼梨隊長のあれは、俺達普通のパイロットがやっている狙撃じゃない』

 

「クルツさん?」

 

『あの人の予測射撃は、もはやDNLの域だ。風や大気状態、熱も全て瞬時に頭の中に入れて狙撃する。DNLですら対処できない狙撃を行う普通の人間、それがあの人だ。俺なんかじゃ絶対に到達できねぇ……』

 

 クルツの言葉に同感せざるを得ない。事実目の前で何度も逃走に移ろうとするフェネクスを何度も妨害していた。挙句の果てに放つビームまで曲げ始めて、なお正確に動きを問えて見せた。

 辛うじてビームを曲げる端末は確認できるが、それでも文字通り針に穴を通すような行動で、唖然とせざるを得ない。HOWの隊長はみんなこんなレベルのことを平然とやるのだろうか。

 そんな想いに耽っていると、元隊長からも集中しろと檄が飛ぶ。

 

『気を逸らすな!まだ捕獲できないぞ!』

 

「っ!そうだった、エターナ、俺達も」

 

『さっさと行くわよ!ドライバフォームっ!』

 

 息を合わせて機体をドライバフォームへと移行させる。各部を展開させ、ドライバ・フィールドの出力を強化する。

 本機のドライバフォームもまた本作戦の必要な要。予定通り、エラクスを解除したシュバルトゼロ・ジェミニアスと共にフェネクスを追撃する。

 フェネクスは苛烈な攻撃に晒されながらもいまだ健在だ。あり得ない速度で回避し続けており、本当にパイロットが生きているのか怪しい。パイロットが意識を失っているのに動いている、なんて怪奇現象、信じたくはない。

 もしや先程の声は、そのパイロットの……通信ではない声、まさか幽霊という考えを捨て、ビームライフルを放つ。

 

「行けッ、このっ!?」

 

 狙い澄ました射撃。だったがその射線はフェネクスを掠めることなく過ぎ去る。その間にシュバルトゼロ・ジェミニアスが斬りかかっていくが、掠めてフェネクスが回避し、代わりにあの光波を腕部に絡めて放ってきた。

 それらの攻撃を何とか回避する。が、その後方にいた味方機にその光波が触れる。途端にその機体が浮力を失って落下していく。

 

『う、うわぁあ!!?』

 

「っ、あれがアイツの攻撃……」

 

『聞いてた通り、動力源の反応が消失してるわ。当たったら機体分解されるわよ!』

 

 エターナの言うように、奴の攻撃は「分解」。正確に言えば物体の時を戻すと聞いていた。目の前で落ちていった機体は徐々に機体のパーツが分解していく。パイロットが緊急リアライズされ、パラシュートを使う。当たれば如何にガンダムであってもどうにもならない。

 話によればドライバ・フィールドで防御は出来るそうだが、正直心配しかない。だが嫌でもその時が来てしまう。続けざまに放たれた光波がこちらに伸びる。エターナが気づき、悲鳴を上げる。

 

『避けられないっ!?』

 

「くっ!一か八か!」

 

 咄嗟にドライバ・フィールドを発現させた。直後光波とドライバ・フィールドが激突する。光波の余剰エネルギーがドライバ・フィールドから蒸発していくように霧散していく。ドライバ・フィールドも削られていくが、それでも何とか全てを防御しきる。

 その様子を見てフェネクスが驚いたように見ていた。エターナは機体情報を知らせて、突撃を命じた。

 

『機体各部問題なし!やり返せ、ソージ!』

 

「言われなくてもっ!」

 

 ドライバフォームの機動性で突貫を仕掛ける。フェネクスとの追撃戦が再開されていく。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP39はここまでです。

レイ「作戦開始してる!ってことで、新装備は何か凄い性能持ってるね」

ジャンヌ「撃ち落とされなければどこまでも追っていくシュトゥルム・ファウスト、と設定にはありますね」

ナラティブではNT-Dを用いたファンネルで捕獲してましたからね。非DNLでもDNL専用機捕まえるならこうかなと思った次第。まぁどっちかと言えば攻撃を積極的に行わないフェネクス用に調整されていますし、攻撃来たら自動的に避けるようにプログラミングはされているのでなかなか厄介かと。

レイ「これひょっとしてシュバルトゼロにも対策として通ったり?」

それを見据えていないと思う?

ジャンヌ「兵器はやがて両軍で共通化していく。ガンダム作品じゃあり得る話ですものね」

そういうこと。否が応でも両軍に共有されていくでしょう。それをどう切り抜けていくのかも見せどころというわけで。
では同日公開の次話に続きます。
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