機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、皆様。藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです。って藤和木、今回普段より投稿間隔空いているのでは?」

今作は明確に次回投稿間隔を言ってないからセーフ(;´∀`)(おい)さて、今回はEPISODE19、エラクスという節の3話目となります。

ジャンヌ「もうっ!……けど、今の今までエラクスという名前のあるものは一つもありませんでしたよね?」

レイ「そうだねぇ。……藤和木、出すの忘れてることない?」

そんなことはない(´・ω・`)……とりあえず、エラクスが示すものは何なのか?本編をどうぞ。


EPISODE19 エラクス3

 

 

「え……私が……?」

 

 ネアの呆然の声がその口から漏れる。いや、ネアだけではない。その場にいた彼女の知り合いが、各々驚きを隠せない。その可能性を唯一知らされていた元だけは、アレクを睨み付ける姿勢を崩さなかった。

 どうして……どうしてネアが……。情報漏えいって何なの!?逃亡幇助!?一体何の情報を漏えいしたっていうのよ……ネアが誰の逃亡を手助けしたっていうのよ!!

 ジャンヌの胸中はアレクの発言に対する反論が浮かんでいく。その反論に答えるかのように、アレクは困惑するネアに向けその罪の内容を通告する。

 

「えぇ。何でも以前貴女方が巻き込まれた誘拐事件及び立てこもり事件で、彼女は犯人に情報を流して襲撃を促した。また、犯人が病院に入院した際にはその脱走の手助けを行った。その主犯として、私は貴女を拘束するよう、上司に命じられたのです」

 

「そんな……嘘だよ、そんなの!ネアがそんなことするわけ!!」

 

 レイアの悲痛な声が響く。ジャンヌだってそうだ。ネアがそんなことに手を貸すわけがない。だが、それを聞いて疑ってしまうこともないことはない。誘拐事件の際の登校ルートはもとい、立てこもり事件の際にはハジメがいない隙を狙っての襲撃。後者はマキナスが手を貸しているとはいえ、それを成立させるにはポルンを病院から連れ出す必要がある。それを行ったのがもし、ネアだったのなら。想像したくない答えが脳裏をよぎる。

 当然ネアはそれを否定した。

 

「そうです……大体、何で私がお嬢様をそんな危険な目に遭わせる必要があるんですかっ!!」

 

 その言葉はもっともだった。彼女にはそれを行う理由が見当たらない。ジャンヌも使用人の中で最も信頼できるのがネアなのだ。2人の間にそんな事をする理由は見当たらないのは明らかだ。

 そこはアレクも推測の域を出ない答えを理由として口にする。

 

「ですが、それら事件の発端はファーフニル嬢、貴女の不評を買ったことから始まったとのこと。もしかすると、そういったことが彼女にもあったのかもしれませんよ?」

 

「っ!!貴方!言っていいことと悪いことが……って、ハジメ!?」

 

 ジャンヌの怒りが頂点に達した直後、ジャンヌを抑えるように元が前に出る。その様子にアレクが口元を緩めて笑みを作る。

 

「おやおや、主人の言葉を従者が遮ってよろしいので?」

 

「構いませんよ。それにお嬢様の感情をこれ以上逆撫でするようなら、それからお嬢様を護る必要が俺にはありますから」

 

 ハジメは毅然たる声でアレクに反論する。ジャンヌもその言葉で熱くなってしまっていたことに気づき、自身の胸に手を当て落ち着かせる。ハジメにも謝罪の言葉を掛ける。

 

「……ごめんなさい、ハジメ」

 

「いえ。……それより、そうは言っていますが、その様子だとまだ動機に確証がないように見えますが?」

 

「ほう、それが?」

 

 元からの問いにそう答えるアレク。当然とも言えるアレクの返答に元は追及を行う。

 

「でしたら、それは証拠になりえないのでは?動機が確定していないのに確保するのは、些かやりすぎのように感じますが」

 

「……普通はそうですね。だが、これは普通ではない。だからこそ――――邪魔しないでほしいな、救世主」

 

「ッ――――!?」

 

「ひゃあ!?」

 

 その瞬間、アレクの敵意とも言える冷たいものがジャンヌ達を襲う。民間人であるジャンヌ達が感じたことのない、軍人としてのオーラがその眼から迸っていた。ジャンヌもその眼に当てられ足がふらつく。そこを元が支える。

 駄目……お父様とは全然違う……これが本当に同じ人間だっていうの……?怖い……気を抜いたら、一瞬で……!

 支えた元の服の袖を固く握る。だがその元は一度こちらの眼をしっかりと見てからジャンヌに言った。

 

「お嬢様、ネアと一緒に居てください」

 

「ハジメ……?」

 

 不安そうになるジャンヌの声。だが元は奮い立たせるような声と共にカバンからそれを取り出した。

 

「―――――ガンダムで、行きます」

 

 救世主(ガンダム)の証たる、始動機(スターター)をその手に立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジャンヌにそう強く言って一歩前に出る元。だが、その内心は言葉とは裏腹にアレクの殺意とも言えるそれに強く影響を受けていた。

 ああは言ったが、これを退けられる自信はない。アルスなんかとは比べ物にならないくらいの敵だ。肌でそれを感じるくらいの強敵。これが漫画とかで言う「鳥肌が立つほどの強敵」という物なのだとしたら俺はもう終わりだ。正直言ってしまえば今すぐ逃げ出したい気持ちがある。

 しかし、と元は心で呟く。今日学校でローレインに言われた通り、ここでアレクを退けなければ軍の、ローレイン達の思惑から外れてしまうことになる。それに何より、ジャンヌが後ろにいる。そのジャンヌが必死にネアの事を庇っているのなら、退くことなど出来ない。

 腹を括った元はその腹を更に物理的に括るようにスターターを装着する。

 

『ゼロ・スターター』

 

「やれやれ、こうなることは避けられなかったようですね。もっとも、そのためのこの機体。無駄にはしない」

 

 アレクもこうなることは予想済みと、既に装着していたスターターを再起動させる。

 

『ドラグ・スターター、リスタート』

 

 ドラグディア軍共通のスターターの音声が響く。そして上部ボタンをアレクは左手の握りこぶしで叩く。

 

「装依」

 

 すぐにアレクの前後を装依用のアクセスゲートが出現し、彼の体を挟み込む。ゲートが消え、再びあの装飾の施された機体が姿を現す。見ると通常のドラグーナの頭部の上に更に西洋兜のようなものを装着している。ドラグディアが主力として採用しているMS「ドラグーナ」の系譜であることは間違いないだろう。だがその外観はまるで式典に並ぶために着飾られた部分を数多く有していた。

 こんなやつが戦えるのかと元も緊張感が強くなる。あの外見で圧倒されるようなことがあればガンダムの名も名折れだ。気を引き締めつつスターターにロックリリーサーを装填、ローディングカードを装填する。

 

『ZERO』

 

 ゼロ・スターターがカードを読み込む。元はジャンヌ達が下がったのを見て装依ボタンを叩く。

 

「装依」

 

『スターティング・ゼロ・アウェイクン』

 

 スターターの読み上げと同時にアクセスゲートが元を挟み込む。装依者を認識したゲートは、元のその身を黒い機動兵器へと憑依させる。スターターの音声が周囲に機体名を響かせる。

 

『シュバルトゼロガンダム』

 

「…………」

 

 先日ジャンヌの元へ舞い降りた黒き機動戦士。シュバルトゼロガンダムは再びジャンヌを含む者達の前に姿を現した。

 装依を終えた機体であったが、その姿は先日とは明確に違う所があった。翼だ。以前はウイングに小羽のように付いていたフェザー・フィンファンネルはその姿を一切なくしていた。その点をスタートが元に伝える。

 

『元、フェザー・フィンファンネルは前回の戦いで破損している。オールレンジ攻撃は使えない。まぁ、使いこなせる段階じゃないが』

 

 そう、フィンファンネルはジャンヌとフォーンを敵の自爆攻撃から守る際焼け焦げてしまっていた。その修復が済んでいなかったのだ。

 

「そうか。なら武装は……これだな」

 

 だがあれほどの武装を自由に使いこなせるわけではなかった。元は返答と同時に両腰に装備している銃剣に手を伸ばす。形状は銃の銃身に上下から剣の刃が挟みこんだものだ。電子状態のモニターには「ブレードガン」と示されている。それをブレード形態で構える。

 通学路途中の道で2機は臨戦態勢となる。幸い近くには街道を外れて原っぱが広がっていた。それぞれの機体はそちらに移動して武器を構える。それを両サイドの人々が見守る形だ。

 そして、戦闘が始まる。最初に仕掛けたのは元の方だ。

 

「行くッ!」

 

「ッ!!」

 

 ブレードガンを突きの構えでアレクのMSに向ける。だがそれをアレクは寸前で回避する。だがそれに構わず元はもう一方のブレードガンを振り上げる。それもアレクは回避する。

 強い。元はその二撃の攻撃でそれを直感する。連続した攻撃を回避されるこの動きを元は知っていた。ビレフトの状態でアルスと挑んだ時と状況が同じだった。このまま攻撃しても回避され続けてしまうのがオチだ。

 となれば射撃戦を織り交ぜていくのが吉。しかし元が武器のモードをガンに切り替え、トリガーを引いたところで異変が起こる。

 

『ワーニング ブレードガン ガンモード アクシデント』

 

「何!?」

 

 トリガーを引いてもビームは発射されない。同時に機体側からそのような警告が響いたのだ。同時にスタートもその状況を元に知らせる。

 

『不味い、ガンモード使用不能だ。クソッ、機体が眠り過ぎてて不調おこしてやがる』

 

「なんでそんなことが今起こるんだよ。それでも元英雄の一部か!」

 

 元は八つ当たりとも言える言葉をスタートに向ける。だがその不調をアレクは見逃さない。

 

「注意が散漫だ!」

 

「クソッ!ぐぅ!」

 

 アレクのMSが構えたランスの突きをブレードモードに切り替えたブレードガンで間一髪防ぐ。だがアレクはランスを体ごと退くと、機体のスラスターを吹かせて回転させながらランスを振り回してくる。振り回しを喰らう寸前にブレードガンで防御するも、重い一撃によって武器を弾き飛ばされる。

 このまま押し込まれるのは不味い。そう感じた元は距離を取る。同時に左ウイングの付け根からビームサーベルを取り出し武器を構えなおす。一方アレクは自機のMSのスラスターを噴射し、こちらへ再度距離を詰めようとする。

 

「せぇい!」

 

「っは!!」

 

 突き出される穂先に、腕を体ごと振り回す形で振ったブレードガンではじき返す。弾いたアレクの機体に更に蹴りを入れて距離を取る。

 互いに攻防を繰り広げる状況だ。距離を取ってもアレクの機体は元の機体への突撃を繰り返し、元はその度に攻撃をいなす。連続した激突の中で元はもう1本のブレードガンを失いつつも何とか持ちこたえていた。しかしその状況は傍から見れば危険な綱渡り状態。見ていたジャンヌからも叱咤の声が飛んでくる。

 

「ちょっと、ハジメっ!押されていますよっ!?」

 

「くっ!こっちも攻め手が足りないんですよ!スタート、何か武器は!」

 

 ジャンヌの言葉にはもっともと感じる元。スタートに残りの武装について問うも、スタートからの返答は重いものだった。

 

『……サイドアーマーのスラスターキャノンがあるが、既に老朽化が激しい。使えば機体が爆発する……残っているのはその手に握ったサーベルと腕部のサーベル、それに地面に転がっているブレードガンのみ……』

 

「……風前の灯火、ということか」

 

 元は達観したような声を発する。残りの武器が今握っている2本のビームサーベルと腕に格納されている通常のサーベル、そして弾かれた武器(ブレードガン)という射撃武装が一切ない状況は元を絶望させるには十分すぎる。

 だがそれでもこちらは退くことは出来ない。この戦いにネアの身柄が掛かっている。かつて自分も身柄の引き渡しという場面の当事者だ。本人の意志なき選択や事実無根な証拠で引き離される痛みを知っている。だからこそ元はこの戦いに挑んだ。実力が上なのは先刻承知。それでも、せめてこの場で連れ去られることだけは避けたかった。

 お互いがにらみ合う状況で、アレクが動く。

 

「そろそろ終わりにさせて頂く。このドラグーナ・レドルで」

 

「来る!」

 

 ランスを放ったアレクは、ドラグーナ・レドルの両腰に装備していたサーベルユニットを握る。ビームを発振させ、再び斬り合いの勝負へと持ち込んでくる。元もビームサーベルを固く握ってその攻撃を受け止める。

 しかしそのサーベルユニットを用いた攻撃は先程よりも激しさを増していた。攻撃を防いでもすぐに次の攻撃が機体を掠め、攻撃を行おうにも機体に届く前にそのビームサーベルで受け止め、弾き飛ばす。完全にペースは向こう側に移っていた。

 何度目かの激突で、左手のビームサーベルも弾かれる。続く振り下ろしを元は右のビームサーベルと左腕で防御する。機体の左腕装甲にビームによる斬撃が刻まれる。まだアレクは攻撃の手を緩めない。そのまま切り抜けで元のガンダムの左肩装甲を斬り飛ばす。

 

「ッ!追いつけない!?」

 

「これで、終わり!!」

 

 背後を取られる。元は機体を振り向かせるが距離を取っていたアレクの機体には当たらない。ビームサーベルが空を薙ぐ。

 攻撃を回避したアレクはサーベルを柄尻で合体させる。2本のサーベルは光の双刀へと形を変え、アレクがそれを振るう。飛び込みから放たれた一撃がガンダムの胸部を切り裂く。その光景を見てジャンヌが叫ぶ。

 

「ハジメっ!?」

 

「ダメ……ハジメ君!!」

 

 レイアの口からも悲鳴が走る。だがアレクは攻撃の手を緩めない。そのままトドメとも言える一撃を繰り出す。

 

「言ったはずだ、これで終わりだと!!」

 

 双刀状態のビームサーベルを飛び込むと同時に繰り出す。自身に向けて伸びた剣は寸分狂わずガンダムの胸部に伸びる。

 死ぬ。このままだと俺は撃墜される。こんなところで終われない。終われるはずがない。必死に考える。だが最適な策が見つからない。死ぬのか、俺は……いや。

 

(こんなところで、終われるかよ!)

 

 元の心の声が反抗心を奮い立たせる。元の脳裏に今までに見た景色が映る。小学校・中学校で幼馴染と共に見た思い出、中学後半から高校、専門学校の気力のない生活。

 あの日、成人式の場で友人達と過ごした時間、長い間会っていなかった自分の事を心配してくれた少女。この世界で出会った数々の恩人達。そして自分を従えてくれた主の顔。それらの光景が走馬灯のように流れる。

 負けるわけにいかない。彼らの為にこんなことで死ぬわけには行かない。俺は、絶対に負けてなんかいられない。あの時のように……手が届かなくなるなど、そんな俺を許しはしない。

 だからこそ、元は叫ぶ。決意を込めた、怒りの叫びを。

 

 

 

 

「こんなことで、死んでたまるか!!」

 

 

 

 

 その怒りが、脳から発せられた電気信号がガンダムに伝播する。元の怒りの感情を受け、ガンダムはその力を解放した。元の咆哮に合わせ、機体のインターフェースが変わる。機体の色がたちまち胸部のクリスタルパーツの紅い一点を除いて蒼く染め上げられる。機体のジェネレーター駆動数が急激に上昇し、出力が上がっていく。

 迫る刃。敵機と自機の状況を映すインターフェース。スターターが怒りに任せ起動した力の名前を読み上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ELACS(エラクス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 蒼く染め上げられたガンダムは超機動で、残像を残すほどのスピードを以てアレクの機体が繰り出した双刀の突きを回避したのだった。

 

 

 

 

 ハジメのガンダムが貫かれた瞬間、ジャンヌは悲鳴を上げる。

 

「ハジメぇ!!?」

 

 悪夢とも言える光景が、咄嗟にジャンヌの喉からその声を発させたのだ。が、その後の光景をしっかり見ていたネアがその認識を正す。

 

「いいえ、回避した!?」

 

「す、すごい。ハジメ君、攻撃を回避したよ!!」

 

 レイアの嬉しさのこもった声に導かれて恐る恐るその光景を見るジャンヌ。その眼には確かに突き出したビームサーベルから逃れたハジメの機体が、蒼く染まった五体満足の状態でいるのを確認した。

 そしてハジメの機体はすぐに腕部からビームサーベルに柄を取り出し、再び光の剣を出現させて反撃に移る。先程とは違ってハジメが今までとは違う圧倒的な速度でアレクを翻弄していく。

 直後、ジャンヌの膝が折れ、地面に座り込んでしまう。無事だったことへの安堵に力が抜けたのだ。そんな彼女にネアが声を掛ける。

 

「お嬢様!大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ……でも、あれは一体……?」

 

 手を支えてもらい立ち上がったジャンヌの意識はすぐに蒼く染まったハジメのガンダムに向けられる。蒼いガンダムは圧倒的なスピードでアレクのドラグーナ・レドルに猛攻撃を加えている。先程までの劣勢が嘘のような動きは凶暴さを感じさせるほどの攻めに変わっていた。

 レイアやネアもその動きに不安さを見せる。

 

「んー……パワーアップ?押してはいるけど、でも見てて不安になるっていうか……」

 

「……もしかして……暴走……?」

 

「そうそう!なんかヤバそうっていうか」

 

「ッ!?」

 

 ネアの一言にジャンヌは悪寒を感じる。かつてハジメが誘拐事件の際に装依したとき、あの時もハジメは暴走しながら重装甲を纏ったガンダムで敵を殲滅していた。今の戦闘の流れはスピードこそ段違いなものの、あの時の光景と似ていた。

 不安になったジャンヌはハジメに向かって叫ぶ。

 

「ハジメっ!!行けそうなのっ?」

 

 状況の良し悪しを確認する声。だが従者たるハジメはそれに答えなかった。いよいよジャンヌの不安が現実のものとなる。聞く耳を貸さないハジメはそのまま痛みつけるようにアレクの機体を何度も殴りつける。地面へと叩き付け、更に一度距離を取ってからジャンプして高高度から蹴りを敢行する。

 その一撃を全力で拒絶する様に起き上がって飛びのくドラグーナ・レドル。飛び蹴りが地面へと決まり、芝生にクレーターを作り出す。凄まじい威力だ。もし直撃していたら装依者もただでは済まないように思える。渾身とも言える一撃が外れてもなお、ハジメは蒼く光を放つガンダムをアレクへ向け飛翔させる。徐々に機体からスパークが散ってくる。攻撃を受けている側だけでなく、攻撃を行っているハジメの機体も、その至る箇所から電気が迸っている。限界を超えて動いたことによる弊害のように見えた。それはジャンヌの心に危機感を抱かせるには十分すぎた。

 

「ハジメ!止めなさい!!」

 

 ジャンヌが叫ぶ。しかしハジメは、蒼く輝くガンダムはそれを聞かない。ヒット&アウェイで殴り続ける。一度身をひるがえすも機体にビームサーベルが握られ突撃状態で構える。あれでトドメを刺す気なのだ。ジャンヌの背中に冷たいものが走る。

 

(駄目!それだけは!!)

 

 よろけるアレクの機体。機体のスパークに加え、煙を上げ始めるガンダム。どちらも危険な状態となる2人に、ジャンヌは全力で従者の方を制止した。

 

 

「やめて!!止まって、ハジメェ!!」

 

 

 

(なんだ、この力は)

 

 それは元が姿の変わったガンダムで戦って最初に思ったことだ。絶対に負けられない、負けてたまるかという反骨心を抱くと同時に機体の動きがいきなり素早くなった。

 だが素早くなったと言っても軽くなったとかそういう物ではない。いきなり動かす力が強くなりそれに機体が引っ張られているかのような感覚だ。最初は危機を脱したことで安心したのもつかの間、すぐにその機能が引き起こしたもう1つの状態に戸惑うこととお鳴った。

 距離を取った際、立とうとしたにも関わらず機体が勝手に動き出した。勢い余ったというのに近いが、どちらかというと一旦傾いた駒が戻ることなくグラグラとふらつき、ずっとその運動状態を維持するような感覚だった。初めの内はそう思っていた元も次に攻撃を開始した瞬間、その認識が大きく違うことに気づかされる。

 ドラグーナ・レドルに接近しつつサーベルの柄を取り出そうとしたが、それが間に合わずタックル。次こそと思ったものの機体は止まることなくいつの間にか左拳を掲げる形アレクの機体に突撃。頭部を殴り抜け、機体の機動運動のままに地面を蹴ってターン。そこから更に殴って殴って殴り続ける。それが勢いのまま、機体に操られるような動きで攻撃を加えていくのを繰り返していって初めて元は気づいた。

 

(機体が……暴走している?)

 

 動きを止めようとしても、これまでの攻撃と機体への過剰な粒子供給で機体の動きが止まらない。むしろ加速がついて敵への突貫スピードは上がっている。むしろ止める方が更に体力を使い、機体の動きにも付いて行くのがやっとだった。

 不味い。危機的状況は脱したが、このまま動き続けたらこっちが持たない。何か止めるスイッチみたいなのは無いのか?

 必死に機体の状況を映し出すスクリーンを確認するが、そこに映っているのはモードの名前と、異常に上がった機体の出力係数。そして目まぐるしく景色の変わる機体カメラの映像だけ。が、そこで唐突に機体のスクリーンにとある表示が浮かび上がる。

 

「なん……だ?……これ、は!?」

 

 浮かび上がったのは、Emergencyの文字。見ると機体出力が限界で、もうすぐ機体の許容出力を超えるというものだった。

 それを知らせるかのように機体がスパークを帯びる。やがて煙も上がっていき、元は本格的に止める方法を探す。しかしいくらスクリーンを見ても何もなく、止めようとしても機体は慣性で勝手に挙動を行う。そのせいで更に状況は悪化していく。

 

「……スタートッ、これ、止められないのか!?」

 

 スタートに今の暴走を止める方法を問いただす。だがスタートから語られたのは、無慈悲な言葉だった。

 

『む、無理だ。今のこの機体でこの力を……エラクスを止めることは不可能だ!』

 

「なんだよ……それっ!!」

 

 スタートの言葉に舌打ちをする。スタートですらどうにもならないこの状況。そして状況は更に悪い方へと進んでいく。

 機体のスクリーンに映し出された危険を知らせるアラートが更に大きく鳴り、ポップアップが増殖する。機体の挙動も飛び蹴りをかましてからすぐに殴りつけてアレクのドラグーナ・レドルを吹っ飛ばす。そして機体の動きが十分でないそこに狙いを付けるように、一度距離を引いてビームサーベルを構える。もはや元ではなくガンダムが戦闘を行っていた。アレクに対し、突撃を掛けるガンダム。

 

「クソッ、止まれよ!」

 

 元は機体を止めようとする。これ以上暴走したら機体自体どうなるかというのがある。それ以上に元もアレクを殺す気など毛頭ない。ジャンヌの前でだけはそんなことはしたくない。だからこそ元はガンダムを制止させようと試みる。

 だがしかし勢いの付いた物体を止めるのは難しい。DNジェネレーターの生み出す多量の高純度DNの影響で、機体の動きは更に止まるところを見せない。暴走し続けるガンダム。その動きに元の体が悲鳴を上げ始める。

 くそ……やっぱり素人でこんな動き……!体中に負荷がかかっている。体を電子化するMSでも鍛えた軍人でないと耐えられないのか……。

 元が初めてMS、いやモバイルスーツを見た時、体を電子化すると聞いてそれなら体に負荷がかからないのだろうと思っていた。しかし今のこの状況は違う。MSもまたG等軽減できない物が存在する。だからこそ体をMS装依前提に鍛えなかったことを後悔した。このままではアレクの機体を串刺し確定だ。しかし体がガンダムを抑えるに至らない。

 

「ぐうぅぅっ!!」

 

 必死に止めようとするも、ガンダムの突撃は止まらない。このままでは串刺しにする――――その時だった。

 

 

 

 

「やめて!!止まって、ハジメェ!!」

 

 

 

 

 唐突に響いたジャンヌの声。悲鳴とも取れるその声に、元は意識を向ける。するとガンダムに変化が生じる。ブザー音と共に機体のエンジンの出力が下がり始める。機体の速度も落ちていき、重力に引かれて地面へと不時着、転がり落ちる形となる。

 右手に握っていたサーベルからの光剣の発振が止まる。機体の発光ももちろん止まり、いつもの黒いカラーリングとなっていた。そして機体からは黒い煙が上がっていた。煙の出所は機体胸部のダクトからだ。おそらく主動力機関からのものだろう。既に動力音は小さいものとなり不規則なものとなっていた。DNもドラグディア軍で正式採用されているDNジェネレーターから排出される赤色となっていた。

 ボロボロの状態となっていた2人に、それぞれの陣営の者達が駆け寄る。更に空から飛龍の群れが、その上に乗ったドラグディア軍の者達が次々と集結する。そして元達はドラグディア軍の飛龍達に乗っていた、以前元が世話になったかの三竜将の男性に助けられることとなったのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。エラクスの正体が少し分かって戦いは一旦幕引きです。

ジャンヌ「そう言えば最初に触れるのを忘れていましたが、結局のところ、ネアさんの情報漏えいとか逃亡幇助って前章の事件の事ですよね?」

はい。

レイ「え、あれってマキナスのせいでしょ?何でネアちゃんに罪がかかるの?」

何ででしょうねぇ( ˘ω˘ )

ジャンヌ「……藤和木?何か裏があるということですか?」

それは次回辺り明らかになる予定ですねぇ。……まぁ予測だけになると思いますが。

レイ「ふーん。で、話を戻すけどさ、エラクスって前作のSSRでガンダム00から流用したトランザムシステムが元?」

あぁ、まぁそうですね。詳しい話はまた解説回で明らかにするつもりだけど、今のところトランザムと厳密に違うのは、システム作動中のデメリットがあるってことだね。え、00も暴走の危険性とか停止したことがあった?( ̄∇ ̄;)ハッハッハじゃあ今回はここまでで。

ジャンヌ「では、次回もお楽しみに」
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