レイ「クローザーの活躍のおかげでフェネクスは捕獲に成功したってところだね」
ジャンヌ「タイトルからして如何にもフェネクスと関係ありそうなって感じですね」
というわけで本編どうぞ。
カザノメカニクスへ到着後、フェネクスはカザノのユグドラシルフレーム機強制拘束ハンガーへと格納された。
フェネクスの四肢は完全にハンガーの固定装置に装着されている。宗司にとってその姿はやや異常に思えた。
MSならパイロットを排出してしまえばいい。いつも鹵獲したゼロンのMSを無力化するときは装置でそうやっている。
それをやらないのはなぜか。その答えは程なくわかることになる。その様子をガラス越しに見るCROZE、SABER、極舞の主要メンバー達。蒼梨隊長が極舞部隊の隊長、新堂沙織さんに改めて感謝の言葉を贈った。
「先程は助けて頂きありがとうございました、沙織さん」
「いや、こちらとしても助けられたよ深絵君。元、流石は魔王だ」
「俺はやれることをやっただけだ。実際そちらに後半は任せきりだった」
お互い助けられたと礼の押し付け合いをする三人。が、それがいつものことと認識しているようで、三人の押し付け合いはそのまま終わり、話題が変わる。
「ジャンヌ君の方は大丈夫なのかい?」
「えぇ、今はちょっと疲れすぎててこんな格好ですが」
ジャンヌ副隊長は自身の状況を見てそう言った。服装は特に問題ないのだが、元隊長が持ち手を握る車いすの席に座っていた。
あの後装依を解除し医務室へと運び込まれたジャンヌ副隊長。原因はあのユグドラルキャプチャーとそれを打ち破るために使った「クローズモード」と呼ばれる機能の解放によるものらしく、反動で気絶するほど深刻なダメージだったらしい。
その姉を気遣うようにエターナが言う。
「姉様……疲れたってレベルじゃないでしょう。医務室の先生も安静にと」
「気遣い感謝するわエターナ。だけど、私は副隊長だから。あの機体の見分には可能な限り立ち合いたいの」
「姉様……」
今でこそエターナも落ち着いているが、直後の姉の容体を見た彼女はすぐさま元隊長に傷つけた責任を迫っていた。むしろよく冷静になったとこれまでの様子からみると言える。
しかし気丈に振る舞うジャンヌ副隊長への心配は、立ち会わせている蒼梨隊長や新堂隊長も思っていたようでため息を吐いて言う。
「とはいえ、私の観点からしても君の同席は好ましくない」
「そうそう、元君も大分心配しているみたいだから、本当に無理はしないでね」
「うっ、それは……」
無理に同席してしまっていることを指摘され、ジャンヌ副隊長は気まずそうに元隊長を見上げる。元隊長は呆れを表すように目を閉じると擁護した。
「俺はお前の意見を尊重するよ。これまでもそうだったから。それに、これは俺の責任でもある」
「!ごめん……ありがとう」
それは今まであまり見せてこなかったような口調でのやり取りだ。もっともエターナがむすっとさせたことから、彼女はよく見ていたようだ。
そこに作業を行っていた研究員から合図をもらった舞島さんがこちらに声を掛ける。
「お待たせしました。準備は完了です」
「よし、じゃあ始めるか」
始めるかという元隊長の言。それを聞いて進と入嶋が訊ねた。
「え、このまま?パイロットに聞くんじゃないのか?」
「そうですよ。こんな状態で話をさせるなんて、色々と不自由と言うか……あの、決して否定するわけじゃ」
フェネクスのパイロットに話を聞くのには些か不便な状況だというのは宗司も、他の面々も思っていたようでやや声が漏れてくる。が、自衛軍の面々は友直達も含めてむしろそのどよめきに首を傾げる。
「えっ、みなさん知らないんです?宗司先輩も」
「あぁ」
「えぇ、HOWの魔王がこの重要な前提条件言ってなかったんだ……それでよう捕まえはりましたね」
「どういうことよ」
一体何を言っているのか。その答えが新堂隊長から元隊長に質問し回答する形で明かされた。
「元君、隊員達に説明してなかったのかい」
「えぇ。聞けば色々と支障が出かねないと判断したので。お前達には初耳だろうが、あのフェネクス、既にパイロットの肉体はない」
「ぱ、パイロットがいない?これまで全部オートってことですかっ!?」
「いいえ千恵里さん。パイロットがいないんじゃないです、パイロットの肉体がない、文字通り、その意味です」
「…………えぇ!?」
何を言っているんだ、と宗司自身も思う。パイロットの肉体がない、あるのは何なのか。その意味を素早く理解したのはエターナだった。
「…………それって、今はパイロットの意識だけが、機体に宿ってるってことですか、姉様」
「おいおい、パイロットの意識だけがあるなんてそんな馬鹿な話……」
「そうよ、エターナ」
「……マジで!?」
「やっぱり」
あるわけがないと否定しようとしていたクルツ先輩が唖然とする。元隊長はこれまで掴んでいたパイロットの状況について語った。
「俺達は二か月前、宇宙でフェネクスと戦った。その時にDNLの感覚でこの機体を確かめている。こいつの肉体はない。そもそも重力下であれだけの連続機動、身体に負担がないわけがないだろう?」
「……確かに」
納得を見せたのはクルーシア。フェネクス捕獲の立役者である。あの時彼女はシクサス・リッターに封印されていたというDIENDシステムを起動させたらしい。
システム発動後の負荷の影響で途中撤退したのは聞いている。そのクルーシアがたった10秒だけでもフェネクスと同等の機動性能を体感してそれなのだから、それをずっと続けていたフェネクスが例外なはずが普通はない。
ところがフェネクスはそれが出来ている。ならば、それはフェネクスが普通ではないということを意味していた。
事実に気づき、閉口する。だがまだにわかに信じがたい。MSに意識だけが宿るなんてことがあるのか。すると、舞島さんから肯定がなされる。
「元さん達の言葉は間違いないです。本来、この強制拘束ハンガーはMS確保後速やかにパイロットを排出する機能を持ち合わせています。ですが、それがされていない」
「つまり本当に……」
「えぇ、この中に、人の肉体は既にありません」
呉川小隊長の言葉に頷く舞島さん。
そんなことを言われて信じられないはずはない。そして、決定的とも呼べる発言が「彼女」の声で語られた。
『………………そうだよ。私の体は、もうない』
「っ、この声」
「あの時の!」
自身と入嶋、クルーシアが反応する。突如捕獲作戦中に聞こえた、少女の声と同じ物が、スピーカーから発せられたのだ。
心当たりを示した三人に他の面々が説明を要求する。
「三人共、知っているのか?」
「え、聞いていないんですか?あの捕獲作戦で邪魔をしないでって言ってたじゃないですか」
「は?入嶋なに言ってんだよ。そんなこと、誰も聞いてないだろ、忘れているのかもしれないけど」
進はそんな言葉は聞いていないと断言する。しかし宗司も似たような言葉は聞いていたことを告げる。
「いや、俺も撃とうとした時同じ声で言われた」
「マジで?私には聞こえなかったんだけど……DNLだったら、そういう声が聞こえてもおかしくないのに……」
宗司に聞こえても自身に聞こえなかったはずがないと話すエターナ。するとジャンヌ副隊長と、同席していた光巴がそれぞれ見解を述べる。
「DNLの能力は確かに他のDNLの声を傍受することは可能です。ですが相手よりレベルが低かったり何らかの処置が出来る場合だと並みのDNLでは聞こえない場合もあります」
「この囚われている子の場合は、届けたい人だけに届ける、っていう傍受対策特化っぽいかな。みんなの状況から察して、って見解だけどね。私も戦場が遠すぎて聞こえなかったし」
「そ、そうなんです、ね……」
エターナが複雑な表情でそう返答する。その目はやや涙目になる。
エターナは元々自分がいた世界の学園で、英雄と崇められていた姉と比べられるのが嫌でこちらに来た。その姉から間接的にレベルが低いと言われるのはそれなりにショックに違いない。
姉のジャンヌ副隊長もそれは知っている。すぐにそれに気づいて訂正を掛ける。
「あ、いや、エターナはまだ成長途中だからそんなに落ち込まなくてもっ」
「い、いえ……姉様は、偉大ですから……」
「……はぁ。とりあえず、話進めるぞ」
「あっ、すみません」
「フン、アンタに言われたくないわよ」
「エターナ先輩……仮にも魔王相手に、凄いなぁ」
姉妹のやり取りに元隊長が本筋へと戻す。エターナは姉との会話に邪魔されたことへやや不満そうにする。ブレのなさに違った意味で関心を寄せる友直さん。
そんなわけで話は捕まっているフェネクスに宿ったパイロットの話へと戻る。こちらのやり取りにフェネクスのパイロットの声が笑う。
『……魔王って、面白い家臣を従えているんだね』
「面白っ!?」
「別に部下達に思想の強制まではしていない。無論戦場で生き残るために必要な思考を育てる訓練は課しているがな」
それは元隊長、魔王の考え方が意外だったとでも言うべき発言。元隊長も訓練などには厳しく、訓練のある日の起床時間等の時間の徹底などもしているがオフの日には羽を伸ばせと放任主義を貫いている。
とはいえ自分達のやり取りを見て、面白いなんて言われれば入嶋のように微妙な面持ちをせざるを得ない。
フェネクスに宿った声の主はフェネクスの顔を動かし、頷く。
『そっか。魔王も名前の割りに悪くあろうとはないんだね』
「それはそうだよ。元君はやみくもに人を恐怖に陥れるために魔王になったんじゃない。人を護るために名乗ったんだから」
蒼梨隊長は元隊長の魔王の名乗りをそう言った。しかしフェネクスのパイロットは否定する。
『けどさっきは私の大切な友達を傷つけた。陽太も、未緒も、彼らが悪いわけじゃない』
「庇い立てするっていうの、あいつらは作戦を邪魔してきた!」
「そうですね。自衛軍の作戦を妨害した。しかもフェネクスの力を神と崇めるやつらに渡すわけにはいきません!あなたはそんな奴らに協力したいと?」
『違う!二人の望みには応えない、応えられない。だけど、私がしようとすることに、二人は必要なの!』
「―――それは、ニア・ゼロングを止める、ということかな」
そこでフェネクスに問い掛けたのは、自衛軍側のパイロットの一人だった。白髪の髪をややカールを掛けて全体的に広げさせた髪型の自衛軍制服姿の男性、その隣には同じ服装で、銀髪の男性が頷く。
「ニア・ゼロングの危険性はこちらも把握している。その為に俺達は派遣されてきた」
「……まさか、君達と再び会うことになるとは、思ってもなかったがな」
「呉川小隊長、知っているんですか」
見知った様子の呉川小隊長に訊き返す。呉川小隊長は彼らの素性を明かす。
「こっちの男は
「アンネイムドのパイロット!」
「確か、ユニコーンとバンシィでしたっけ!?」
アンネイムドの残る兄弟、ユニコーンとバンシィの事は聞いていた。だがそのパイロットが今目の前にいる彼等だとは思わなかった。
その姿を見て進も意外を口にする。
「あんたらが、あのラプラス事件を解決したっていう」
「そうだよ、オースからの新人さん。君のお兄さんとも、一応顔を合わせたこともある」
「に、義兄さんの事を……」
「まぁ、諸々の時期が重なってたまたまだな」
オースからやってきた新人へと語ってみせた白と利一。白さんにはどこかミステリアスさを感じる。対して利一さんは人間らしいけだるさ、もとい落ち着きがあって練度が高そうだ。
彼らの事を智夜が自信満々に語る。
「二人はな、事件の後自衛軍でも白雷と黒霞って呼ばれてたんや~。まぁ政岡さんはお父さんが当時の防衛大臣の息子さんなんやけども」
「そうなんですか」
「まぁ、そうだな。とはいえ白も、元々はこのカザノの工専の生徒だったんだがな」
「それどころか、僕はこのカザノのかつての代表だった家系の末裔なんだけどね。あまり言いたくはないけれど」
智夜の説明に付け足すように二人は話した後、ここへ来た理由ともう一つ明かす。
「僕らはフェネクス確保のためと、ゼロンが投入してくるであろうエース、ハル・ハリヴァー一派の企みを阻止する為に、残されたアンネイムドと共にやってきたんだ」
「残された、ってえぇ!?アンネイムド持ってきたんですか!?ていうか持ってこれたの!?」
「千恵里ちゃん声が大きい……でも、アンネイムドの機体は私のDIENDと同じ特級のはず……危険じゃないんですか」
騒ぐ千恵里を窘めつつもアンネイムドがあることに疑問を抱く。フェネクスと同じなら、と思っているとその心配がないことを独さんが告げた。
「心配はご無用です。既に我々の方でお預かりして、フェネクスと同じ部屋に安置されていますよ」
そう言って端末を操作すると、フェネクスが捕まっている部屋の左右の床が開き、似た、とは言いづらい増加装甲を取り付けられた機体がハンガーに収められていた。
姿が違うことにエターナが疑問を投げる。
「あれ、こっちの二機の装甲は?封印装置?」
「みたいな感じではあるね。実際これは元々アンネイムドのL-DLaが暴走しない様にするための拘束装置兼増加装甲兼武装格納アーマー、アーマードアーマーなんだ」
舞島さんはそう言って見せる。実際の使用者である政岡さんが使い心地を語った。
「動きが重くなるがそれも合わせて非常時の起動停止には役立っていたな。もっともあの時は収まらなかったが」
「あの時?」
「僕がフェネクス、今の彼女と同じ状況に陥りかけた時の事だよ」
「白さんがフェネクスと同じように!?大丈夫なんですか!?」
入嶋は大丈夫なのかと不安を漏らす。今こうしているのだから大丈夫なのだろうと思ったが、白はそうでもないと答えた。
「いいや、その代償に僕の精神は今でもあのユニコーンに流れて行っている。……いずれは彼女と同じになりかねない」
「嘘……」
まさかの事に言葉が出ない入嶋。同種の機体に乗っている政岡さんにも同じなのかと問う。
「それは、政岡さんも同じなんですか?」
宗司の質問に政岡さんは首を横に振った。
「いや、俺は残念ながら、というべきかDNLの力が彼等より完成されていなかった。そこに行けたのはこいつらだけだ」
「そ、そうなんですか」
「まぁそれは置いておけ。今は彼女の目的を明らかにするべきだ」
政岡さんは言ってフェネクスへの質問へと話題を戻す。フェネクスは先程の神鳴さんの質問に答える。
『そう、私はこのフェネクスと同じ、いいえ、それ以上に危険な人の意識を具現化しかねない、この世に存在してはならない機体「ニア・ゼロング」の最後の一機を破壊するために、この星に戻ってきた』
「やっぱり」
「ニア・ゼロング……?」
ネーミングになんとなくゼロンとのつながりを思わせる。そして声の主、彼女は自己紹介を行う。
『話すよ、私のすべて。私は元自衛軍特殊MSパイロット、
この作戦「フェネクス捕獲作戦」の根源が明らかとなる。
NEXT EPISODE
EP45はここまでです。
レイ「あんまり話としては進まなかったけど、やっぱりタイトルの事はフェネクスで間違いないね」
ジャンヌ「それがガンダムナラティブという作品でのキーパーソンというわけですし。それにニア・ゼロング……ネーミングからしてあの機体の関連機ですよね」
士「概ね原典と同じ理由で、フェネクスが戻ってきているのは変えたくなかったのでね。とはいえ、ここで終わるわけじゃないんだよねぇ」
レイ「終わるわけじゃない?」
ジャンヌ「他にも理由が?」
それは次のEP46でのお話かな。ユニコーンとバンシィのアナザーも出しましたし、劇中では遂にユニコーンとナラティブの競演からどうなっていくのかと言った具合です。
レイ「封印されていたものを引っ張り出してきた理由もそのニア・ゼロングってやつが関連してるよね。前にグリーフィアちゃんが言ってたけど、やっぱり怪獣大戦争みたいになっちゃうのかな?」
それは……あり得るけどその時をお待ちください。と、そろそろこのあとがきはここまでです。
ジャンヌ「それでは続きます。そのまま次のお話へどうぞ」