ネイ「革命と対峙する王……世界が変わるか、今を維持するか……」
グリーフィア「まさになるべくして敵対する者って感じよねぇ。でも今回は魔王に勝ってもらわなくっちゃね!」
というわけで本編をどうぞ。
『フン、ユグドラシルフィールドは絶対。壊すなんてことガンダムだってできないわ!』
内部から周囲に向けて流未緒の声が拡散される。もはやユグドラシルフィールドは彼女の制圧下にあると言っていいのだろう。
それを聞いてなお元はその剣を下ろさない。構えた状態でユグドラシルフィールドの読み取りを行っていた。
(三機分のユグドラシルフィールド……出力は高いな。だが、無理矢理引き出している分、安定性は……!)
まだ止められる。そう確信し、護衛に付いた白達に離れるように言う。
「白、利一、距離を取っていろ!」
『任せます、背後は任せてください』
『頼むぞ、魔王!』
二人の離脱を確認する。俺はジャンヌにも合図を出す。
「ジャンヌ、行けるな?」
『っ、はいっ。ジャッジメントクローズの負荷、まだ耐えられます!』
ジャッジメントクローズモードの押しかかる負荷にジャンヌは耐える様子を見せた。覚悟は決まった。そしてその剣を大仰に構え、振るった。エネルギーをチャージしたデトネイターで、ユグドラシルフィールドと激突する。
本来なら簡単に切り裂ける攻撃力。だが彼女の言葉通り、ユグドラシルフィールドはその攻撃を容易く受け止め、刃を通さない。どれだけ力を込めて押し込んでも、鉄に包丁を差し込もうとするかのように通さない圧倒的な防御力にジャンヌが苦悶する。
『っく、硬い!』
「単純な防御力じゃない……これは攻撃の拒絶か」
接触して感じ取る。ユグドラシルフィールドに込められた他者を拒絶する命令が、攻撃を通さない様にしていた。
これらはいずれもユグドラルフィールドに共通する性質だ。しかし今回はそれを増幅して現出させているユグドラシルフィールド。通常の時のように、同じユグドラルフィールドでの中和やパワーでのごり押しは効かない。やるなら、同出力のユグドラシルフィールド位の物だろう。
「だが、この程度ならっ!押し通る!」
その宣言と共に一度距離を取ったシュバルトゼロクローザーで突貫姿勢を取る。腰だめに構えなおした大剣で突き刺すように再度フィールドとぶつかり合った。
バチバチと、フィールドの抵抗を受ける。むしろ、その干渉を起こした電撃が、こちらを取り込もうと覆いつつあった。白が注意を呼びかける。
『元さん!それに飲み込まれたら……!』
危険は承知だ。しかし、手加減すればかえって危険だ。意識をフィールド側に持っていかれない様に強く持つ。
しかしその影響はジャンヌにも出る。精神への汚染に苦しみだす。
『ぁ……いやっ、私の大切なものが、上書きされるぅ……!元ェ!』
その悲鳴にわずかに均衡が崩れる。フィールドからの侵食を受け始める。戦うことこそが愚かなのでは、このままこの感覚に委ねたい気持ちが侵食していく感じだろうか。
こちら側に来い、とでも言うように取り込もうとして来る。一刻も離れた方がいい。しかし、クローザーをそのまま接触させ続ける。
『フフッ、もう逃がさないっ!このまま操り人形にしてあげる!』
未緒が一気にフィールドの侵食速度を上げてくる。機体が飲み込まれかける。その時、クローザーが動いた。
「っ!!はあああぁぁぁ!!」
『っぐ!?何っ!?』
刃をフィールドが侵食し始めた直後、一気にデトネイターを振り抜いた。フィールドに呑まれていた先がDNへと還元されかけていたのだが、気合を込めた直後再形成されてフィールドに切れ込みを生んだ。
侵食を物理的に切り払い、すぐに距離を取る。蝕まれていた思考もすぐに本来の自分へと取り戻していった。ジャンヌも珍しく半泣きながら自身を取り戻した。
『はぁっ、はぁっ!私……ダイジョウブ……大丈夫ですよね?元の事、忘れてない……!?』
「あぁ、忘れちゃいない。俺達は戦う。戦いを止めない。戦い続けて、勝つ、勝ち続ける!」
強く宣誓する。それは魔王として敵対する者に対しての言葉。もう負けないとあの時、マキナ・ドランディアで誓った覚悟。
HOWの中核となったCROZE部隊の隊長の力を、見せる時だ。
DNLの能力で機体のフレームに作用させ、ツインジェネレーターの稼働率を上げる。加えて、もう一つの「奥の手」を取り出す。
背部に装着されたクローズフェニックス、その頭部パーツを引き抜く。異様な形をしていた頭部は手に持つことでやや不格好とも取れる銃、あるいは剣へと変わった。
一本の剣としたそれに、これもクローズフェニックスの合体したウイングパーツの片側から分離した鋭利な羽が分離して合体していく。6枚の羽根と合体した剣「エリミネイターソード」はデトネイターと同じ幅広の大剣「エリミネイターバスターソード」へと姿を変えた。
MSが、人の姿には些か不釣り合いな2本の大剣を握った状態から、DNFを起動させた。
『Ready set GO!DNF「エリミネイト・デトネイター」!』
大剣にエネルギーを集約させる。そのエネルギーはDN、ユグドラル、そしてエレメントを含み、剣そのものを光らせる。圧倒的なまでのエネルギーを剣の中に収めてそのエネルギーをぶつけるべく再びフィールドへと接近する。
先程と同じように大剣を振り下ろす。エリミネイターバスターソードでフィールドを切り裂こうとする。が、やはり強烈な拒絶を受けて刃は切り裂くに至らない。
しかしそのまま振り抜き、勢いのまま今度はジェミニアス・マテリアル・デトネイターで斬りつけた。こちらも同じだ。切り裂けない。
もはや打つ手なしかと思われた。だがまだだ。まだ、攻撃は終わっていない。まだ攻撃は途中の段階。二度の斬撃に続き、クローザーを操り三度目となる刺突を二本の大剣で同時に行った。二本の剣で同じ個所を同時に突く。
再び起こる干渉のスパーク。やはり反応は同じ。このままなら再び取り込まれかねないだろう。ところが、今回は変化が起こる。ピシッ、とフィールドに亀裂が走った。
『……嘘でしょう?何で、何でっ!くっ!』
起こり得ないと思われた現象を目にし、内部から見ていた未緒の声が震えだす。すぐさま亀裂の修復に入る様子を見せる。だがこちらはそんなものは待たない。ジャンヌに呼びかける。
「ジャンヌ、ここで決めるぞ!」
『早く終わらせましょう。こんな気味の悪い領域の拡大は!』
先程の侵食への恨みを口にして、ジャンヌが奮起した。出し尽くしていたはずのDNL能力をフレームへと伝達させ、更にシュバルトゼロクローザーの出力を上げる。それをちゃんと機体へも反映させていく。
機体に発破をかけるが如く、叫ぶ。
「こんのぉ!!」
より洗練させた切れ味を持ったバスターソード、デトネイターが遂に難攻不落とも呼べたユグドラシルフィールドを貫く。今度ははっきりと両兵装が現存したまま、内側へと入り込んだ。
フィールドに刻まれた亀裂が拡大していく。亀裂からは内部に充満していたはずのユグドラルが次々と漏れ出し空気中へと霧散していた。
更に内部にいたアンネイムド達にも変化が生じる。三機が一様に震え出し、苦しみだす。その耳に、脳裏にようやく残りの声が聞こえてくる。
『がぁっ!あ、あぁ……!』
『そん、な……こんな、ことで……っ』
『これが……魔王の…………こんなの、止められるわけ』
その声にわずかに耳を傾けてトドメを繰り出す。
「これでっ、壊れろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
クロスさせる様にして刃を引いてから、思い切り斜め上へと振り上げる。振り上げた剣の切っ先の軌道から衝撃波がユグドラシルフィールドへと伝わっていく。亀裂を砕いていくように衝撃波は走っていき、ユグドラシルフィールドは砕かれていった。
崩壊する流未緒の願う神話領域。破片は次々と海上へ落下していく前に空気に溶け、何も残らなくなる。人類進化の力とされたアンネイムドも一機を除いて、それぞれ地上へと力を失って降下していく。そう、たった一機を除いて。
その一機、流未緒の駆るアンネイムド[バンシィ]がユニコーンドモードへと解除されながらもこちらに襲い掛かってくる。
『魔王!よくも、私の願いを、世界をっ!』
「ふっ!」
振り抜かれたビームサーベルをデトネイターで受け止める。それを弾くと反対のバスターソードで頭部を体から斬り飛ばす。メインカメラを失い、コントロールも失ってバンシィが海上へと落ちて行った。
そこに護衛に付いていた白と利一が見渡して言った。
『流石ですね、元さん。まさか、本当にユグドラシルフィールドを破壊するとは』
『やはり、新型の力は伊達ではないか』
「そうでもない。二人が周りを片付けてくれたおかげで、こっちの対処に意識を割けた」
そう言って見せる。事実、あの攻撃はいずれも意味のあるもの。三回の攻撃すべてがいずれも寸分違わず同じ場所を攻撃し続け、ダメージを蓄積させていたのだ。攻撃が通らないとはいえ、あれらはいずれも本来ならMSはおろかMAすらも一撃で両断するとされる攻撃。それを止められた時点であのフィールドの硬さが相対的に分かる。
が、それらもここまでだった。フレームの輝きが青へと戻り、出力が下がっていく。同時に機体がやや不安定になる。
『あ、うぅぅ……』
「限界か。よく持たせてくれたジャンヌ」
ジャッジメントクローズが解除されるのはつまり、機体制御を担っていたジャンヌの限界を意味する。なるべくこちらに負担を引き受けていたつもりだったが、それでも負傷した彼女にとっては大きすぎる負担だったのだ。
ジャンヌは弱々しい吐息を聞かせながら元へと感謝の言葉を伝える。
『いいえ。本当なら、もっと……持たせられるようにしないといけないんですから、まだまだです。でも……今回ばかりは、本当にありがとう。あの時……肯定してくれて、だから私も持たせようって思えたんですから』
自然と出たあの言葉が、ジャンヌを最後まで支えてくれたらしい。MVPである彼女をすぐさま休ませてやりたいところだったが、そうもいかない。まだ仕事は残っている。
「そうか。でもまだ終わっちゃいない」
『えぇ……。二つほど、残っていますね』
二つ、海上に落ちたアンネイムドへの対処と今も戦いを続ける残りのメンバー達への支援。フィールドが拡大していたため、距離はあるがそれでも起こっている異変はすぐに分かる。
仲間達への支援に行きたさを抑え、それをしり目に元達は海上のローズ・ポート残骸、その上に乗る三機のアンネイムドの下へと向かった。
◆
海上に落ちたローズ・ポートの残骸、そのうえで陽太はようやく自由を取り戻していた。
「はぁっ、はぁっ!」
『陽太……大丈夫?』
荒く息を吐くこちらにフェネクス、梨亜が体の容体を気遣ってくる。梨亜も強制的に力を使わされた影響で体力を大きく消耗しているにも関わらず、こちらに気にかけてくれていた。
陽太は力を振り絞って大丈夫だと声を出す。
「大丈夫だ。梨亜こそ、大丈夫なのか」
『私は……もう肉体なんて概念はない。苦しさはあったけど、まだちゃんと動けるよ』
肉体がない、その言葉に苦しさを感じる。もう本当に梨亜は自分達の手の届かない世界にいる。
どう返せばいいのか分からずにいたところに、上空から落ちてくる機体があった。未緒の搭乗していたアンネイムド[バンシィ]が、頭部を失った状態で同じ破片の上へと落下してきた。
『ぁぁあああ!!』
『未緒っ』
「………………」
落ちてきた未緒に駆け寄ろうとする梨亜。けれども陽太はそれを無言で制止させた。
頭部を失い、手を右往左往させる未緒に近づいて見下しを行う。
「何だよ、結局お前の理想が負けているじゃないか」
『ぅ……陽太……っ!』
未緒は反論すら言えずにいた。あの領域発生時、陽太は未緒の精神と繋がっていた。その時に彼女の真意を改めて確認していた。
彼女は赦されたかった。俺をだまして梨亜を売った事、梨亜を救い出すことが出来なかった事。その為だけに彼女は今回の作戦を起こした。ユグドラシルフィールドで、お互いが分かり合える、嘘をつかなくていい、生者と死者が出会える世界を望んでいた。
陽太はずっと前から、彼女の気持ちに気づいていた。けれども陽太自身はもう既に彼女から興味を失っていた。今更答える気にもならない。結局今回も未緒のエゴに付き合うことになってしまった。
ならばどうして今回の企てに乗ったのか。梨亜に会えるから、というのが第一だったが、それだけじゃない。本当に確かめたかったのは……。
「未緒。もう終わりにしよう。お前ももう、梨亜に囚われるのはやめろよ」
『!陽太』
『陽太?何言ってるのよ。あたしが、梨亜囚われてる……?冗談じゃないわよ!あたしが、梨亜程度にそんな入れ込んでいるとでも!』
未緒は必死に否定する。自分はそんな小さい人間ではないと、動けない状態で喚く。
梨亜もそれを分かっていたのか、何も言わずに見守る。俺は未緒にここまで着いて来た理由を語る。
「俺はずっと求めてきた。梨亜の、俺達の運命を狂わせた者達の謝罪を。もう梨亜は戻らないって、どこかで思ってた。梨亜が戻らなくたっていい。だけど、なら謝ってほしかった。誤ってくれさえすれば、もう俺はそれでよかったんだ。そして、俺自身も謝りたかった」
許し。それが及川陽太の望んだものだった。だけどそれは未緒の赦しとは違う。赦されるために行動したのではなく、ただ謝りたいという気持ちからの行動。梨亜に謝りたい、そして自身は、未緒を許したかった。その気持ちを伝える。
「お前がただ、俺に謝罪してくれれば良かった。もうそれで終わりだった。だけどお前は梨亜に会えると言った。たった一言の「ごめんなさい」じゃなかった。変わってないって思ったから、俺もまだ、自衛軍を、あの時の大人達と同じ選択をしている人達を恨むしかなかった」
『何よ……そんなの、言ってくれなきゃわかんないわよ!!あたしは、あたしがベストだと思ったことをやってたのに、そんな事だけで許してくれるなら、あたしのやってきたことは何だったのよぉ!!』
泣き叫ぶ未緒。彼女の言い分はもっともかもしれない。言わなければ伝わらない。陽太もそれを含めて彼女に黙っていた自覚があった。だけどそれは未緒にも当てはまる。ユグドラシルフィールドを無理矢理使用するシステムで、自身や梨亜の意志を無視して道具として扱ったことも例外ではない。
だが言わなかったのは彼女自身が気づくべきことだったからだ。彼女自身が気づかなかったら、謝罪も形だけの物でしかない。彼女が梨亜への後悔の念から解放されたうえで、謝る。それが、及川陽太の願いだった。
もっとももうそれは望めない。事は大事になってしまった。本当ならフェネクスだけを助け出すはずが他のアンネイムドまで奪い、使った。いくら逆恨みとはいえHOWや多くの人を巻き込んで、世界を勝手に書き換えようとまでした。
上から聞こえてきた声も、それを指摘した。
『―――謝罪だけ、と言っておきながらここまで周りを引っ掻きまわすとはな』
『―――あっ』
『うぐっ、HOWの、魔王』」
HOWの魔王が、ここに降り立った。
NEXT EPISODE
EP52はここまでです。
ネイ「ユグドラシルフィールド、発生者の想いを実現するべく、接触したものを取り込む力、ですが」
グリーフィア「想いのこもってるのはシュバルトゼロクローザーも同じ、力のままに切り裂いたって感じねぇ♪いや、パートナーへの気持ちが勝ったってところかしらぁ?」
未緒は二人に良かれと思って勝手に、対して元とジャンヌは互いに思いやって侵食と戦っていた。これが両者の分かれ目っす。
ネイ「だけど、未緒さんも、そして陽太さんもあんなことを思っていたんですね」
グリーフィア「赦されたい。簡単だけど、難しいわよねぇ。赦すこともまた同じ。すれ違いだったこの子達も今回は救われてほしいものねぇ」
まぁこれだけのことやってHOWとかには許されないでしょうけどねぇ。だけど、少しは道を変えられる、ということを見れるといいですが。と、今回はここまでです。
ネイ「それではまた次回」