機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうもお久しぶりです、藤和木 士です。EP53、54の公開です。まずはEP53から。

ジャンヌ「随分と時間が空きましたが、いつもの次章設定の為の準備期間ですね」

レイ「てことはもう今章は書き終えてるってわけだ!だったらもう先に話消化した方がいいのにねー」

それはちょっと思ったけどね。とはいえこれが私のスタイルだ。というわけで本編をどうぞ。


EPISODE53 虹と鳥と暴かれし者と1

 

 

 

 ユグドラシルフィールドを破壊、世界の書き換えを止めて「くれた」漆黒のガンダム。二機のソルジスタを引き連れて降りてきた魔王黒和元は、こちらと未緒の方を一瞥してこれまでの惨状に感想を吐く。

 

「お前達の勝手な期待で、多くの人が傷ついた。どういう思惑であれ、お前達はその道を自らの意志で取った。今更、止めたかったで言い訳なんて出来ない」

 

「確かにそうだ。だけど、それはあんただって同じだ。人なら正しく使いこなせると、ガンダムの情報を開示して」

 

「俺はそんな、人なら正しく使いこなせるなんて善意の理想で、MSの情報を開示したりはしないさ」

 

 未緒に従ったまで、とはいえ決してその技術を譲渡した根源を許すわけじゃない。魔王の真意だけは聞かなければ、謝罪が聞けなければまだ終われない。

 魔王に問う。

 

「なら、何の為に」

 

「人の進歩に、理由が必要か?」

 

「そんなの、当り前じゃないか!」

 

 理由のない進歩なんてない。そう言って見せる。空を飛びたい、そう思ったからこそ人は飛行機を作ったのだ。人々の生活を豊かにするために、人は成長していく。

 ところが魔王はその考えに異を唱えた。

 

「当り前、とは大きく出たな」

 

「何だと」

 

「進歩とは、人の歴史において生き残るために必要なものだ。その理由など、ただ生きるということだけで十分だ。それに基づけば、俺は生きるために必要だと思って情報を渡したに過ぎない。後の人間がどう使おうと、それはその起こした者達の問題で、俺の問題ではない」

 

「ふざけるな!そんな責任転嫁が許されるとでも!」

 

 すぐに責任転嫁だと否定する。ところがそこに割って入ったソルジアスのパイロットがそれを肯定する。

 

「いいや、魔王の言っていることは間違ってはいないよ」

 

「何っ」

 

 アンネイムド装依者本人の言葉が告げられる。

 

「人は時に過ちを犯す。誰だって悪に落ちる可能性を持っている。君だって、その悪の可能性に落ちた。だけど大事なのはその自分を肯定する、信じることだ」

 

 自分の肯定。その最たる例を先程の陽太の会話に当てはめて言った。

 

「さっき君も流未緒に願っていた、謝ってほしかったというのと同じだよ。自分の罪と向き合うことだ」

 

「そんなの分かってる。だから今魔王に聞いたんじゃないか!」

 

「なら、彼は既にその責任を果たしている」

 

「何だって……?」

 

 意味が分からない。一体どこが、責任を果たしているんだと。ただ任務に従って敵を倒しているだけの男が、どうやって。

 それは陽太の意識から大きく外れた、しかし思わずうならされるものだった。

 

「彼は戦っている。戦い続けている。どれだけ魔王と罵られても、前に出て戦い続けている。いや、むしろそう名乗った。それが彼の負った責任の形だ」

 

「戦い、続けている、それ自体が……責任?」

 

 一瞬、何を言っているのかと思った。戦っているのだったら意味はない、と思っていた陽太の考えに真っ向から否定する意見。

 意図を自分なりに汲んだソルジアスのパイロットは続ける。

 

「戦い続ける、なんて誰もが出来るように見えて、とっても難しいことなんだ。当たり前だと思っている人ほど、簡単に出来ると思い込んでいる。だけど実際はそうじゃないことの方が多い。元さんも例外じゃない。そうですよね?」

 

「まぁな。俺自身ジャンヌの献身あればこそ、戦い続けられている。俺は何人、何十人、何百人以上もの人の命を奪った。戦った者がいずれも敵だとしても、敵にも理念が、願いが、奴らの正義がある。それを潰しておいていい気はしないさ。ま、それでも叩き潰しはするが。それに俺は何も、争いを起こすために技術を提供したわけじゃない。寧ろ、終わらせるために開示したんだからな。お前にとっては争いを起こした側だろうが、白も例外じゃない、か」

 

「そうやってかつての僕のような敵を作ってきましたね。そんな真っ直ぐに動いて、反発を買うように。だからこそ、ジャンヌさんの信頼を得られているんでしょうが」

 

 そんな会話に閉口する。梨亜もただ黙って俯いていた。自分達の考えていたことは、もうとっくの昔に、この人達にとっては通ってきた道なのだと。ただやり方が違っていて、それに気づかなかった。

 その紹介を受けて黒和元は戦いに賭ける想いと共にこれからどうするかを陽太に語る。

 

「俺は立ち止まるわけにはいかない。勝者は戦場に残り続ける。そしてお前も、まだ戦場に残っている」

 

「なら、どうしろと」

 

「足掻き続けろ。それでも、と。俺はフェネクス、鳥金梨亜の望みを否定する。そいつの望みは人類の進歩を後退させる。だがお前はその彼女を、彼女の残留思念だけの存在を護りたいのだろう?ここまでしたお前に、その覚悟がないと?」

 

 ここまでしてきたことに省見ればこれくらい、とでも言うような、いや実際言っている魔王。言うことは癪に障るし、梨亜も言い分に懐疑的だ。

 

『覚悟だなんて。陽太はただ、私に』

 

「こいつの覚悟を、お前が語るな。こいつの覚悟は、こいつ自身の物。そしてフェネクス、お前は鳥金梨亜として望んでいたものは、何だ」

 

『それは……』

 

「鳥金梨亜が望んだこと、一つくらいは叶えてやる。お前とフェネクスで、決めろ」

 

 決めろ、と判断を委ねられることに戸惑う。そんなことでいいのだろうか。おそらく、その一つ以外は容赦なく落とす、ということの裏返しなのだろう。

 先程の言葉が蘇る。黒和元は真っ直ぐに動く。これは魔王が望んでいる事なのか。その言葉に従うように、フェネクスを見返す。

 

『陽太……私、前にも言ったよね』

 

「……あぁ、鳥になりたいって言っていた」

 

 なんとなく、そう訊き返す。いつも交わされていた中で思い入れのある内容。本当にそうかは分からなかったけれど、今はそれを話したかった。

 するとそれは正しかったらしく、梨亜は肯定して語り出す。

 

『うん。私の名前にもあった生き物。この3年、私は宇宙を渡っていく鳥として、この世界を見てきた。追いかけられるばかりの日々だったけど、やっぱりこの世界の事を見捨てるなんて、出来ないよ』

 

 ずっと追いかけられてきた。それはきっと自分達の事も指している。未緒に従っていたとはいえ、そう言われてしまえば梨亜にも謝罪が必要だ。

 未緒の企てに加担してしまったことも含めて謝罪する。

 

「ごめん、俺も追いかける側だった」

 

『そう、だね。陽太も追いかけてきていた。でもそれは私に会いたいって気持ちからで、未緒や自衛軍、魔王とも違っていた。だから、着いて行っても良かったかもしれない』

 

 梨亜を宿したフェネクスはそのように呟く。こんな自分を許してくれるのか。だけど最後に乗り越えるべきことが語られた。

 

『けど、謝るならもう一つ謝ってほしかったのはあるかな』

 

「もう一つ、謝る……?」

 

『私が自衛軍の高官に連れられて行くとき、陽太違うって、言ったよね。未緒に言われただけだって』

 

『っ!』

 

「……あぁ、そうだな」

 

 思い出す。あの時、確かに俺はそう言って、許してもらおうとした。思えばあれも言い訳だ。

 その話を振られて未緒がまた言葉を詰まらせる。けれども俺は違う。アンネイムドの視界に同型のフェネクスの顔を入れて、モニター越しに伝える。

 

「あの時、俺は言い訳をしてしまった。俺が話を聞いて、決めたことだったのに」

 

『うん』

 

「今さら遅すぎるって分かってる。でも、俺は言わなくちゃいけない。―――ごめん、護ってあげられなくて。一緒に居られなくて。約束を破って」

 

 かつて戦闘に巻き込まれた時に誓ったこと。同じ物を見ると誓ったのに果たせなかった。その謝罪をする。

 その言葉を聞いて、フェネクスは何も語らない。けれどもその手を今の陽太の機体、アンネイムド[ユニコーン]の胸に当てる。

 

「っ!!」

 

 

 

 

 すると、その意識が転移させられた。体が自由になったかのような感覚を覚える。そこに居たのは、あの時別れた姿のままの彼女。梨亜がその姿で陽太に寄り添って来る。

 

「いいんだよ。そうでなければ、二人とまた会うことすらもなかったんだから」

 

「梨亜……っ。それでも僕は、君と居たかった……いなければいけなかったのに!」

 

 心象世界で、あの時の姿となって抱き返す。二人揃って涙を流していた。届かなかったその手が、声が、ようやく届いた瞬間だった。

 再び顔を向き合い、笑いかける梨亜。

 

「うん、ありがとう、そう思っていてくれて。それだけで私は、こんな姿になってまで、この世界に残れて良かったと思うよ」

 

 その言葉と共に徐々に意識が遠くなる。気付くと再びもとのアンネイムドの装依空間へと戻っており、目の前にはフェネクスがいた。そのフェネクス、梨亜が先程までの会話に返答する。

 

『まだ遅くない。私の今の望みは一つ。ある意味、今の私はフェネクスっていう、鳥、不死鳥になれた。願いは叶った。でもやらなくちゃいけないことがある。陽太は?』

 

 自分が何をしたいのか、どうしたいのかを尋ねる梨亜。陽太は自分自身の、アンネイムドの体を通して自身を見つめる。

 そんなの決まっている。もう今なら、これしかない。

 MSの装依を解除する。未だ戦場の真ん中で、装依を解除して解除したスターターを本来の持ち主、ソルジアスのパイロットへと返す。未緒の分まで謝罪を込めて。

 

「すみませんでした」

 

『構わないさ。返してくれるのなら、それ以上の事を僕は求めない。それより、君の答えは』

 

 陽太の出した答えにソルジアスのパイロット、本来のユニコーンのパイロット、神鳴白はそう返した。

 俺の出した答え、それは―――。

 

 

 

 

「君が鳥になったなら、俺も、俺も鳥になる」

 

『うんっ!私もまた陽太に会いたいから、何度だって生まれ変わる』

 

 

 

 

 フェネクスと手が触れあう。直後、フェネクスの機体が電子状に分解された。宙に浮かぶように出現したスターターが自動的に陽太の腰に巻き付けられ、起動した。

 自身の体がアンネイムド[フェネクス]へと憑依していく。その過程で彼女に抱きしめられるかのような感覚を覚える。

 確かに彼女は、鳥金梨亜はここにいる。その感覚を確かめ、完全にフェネクスへと装依する。

 装依すると同時に機体のL-DLaが機能する。だがそれは決して暴走などではない。やるべきことを成すために、フェネクスが彼女の思念がそうさせた。L-DLaの発動がフェネクスを本来の姿へと移行させる。装甲を解放し、ユグドラシルフレームを露出したガンダムとしての姿。

 一角が割れて翼を広げたようなアンテナに形取る。ユグドラシルフレームの蒼い光が溢れ出す。ツインジェネレーターの駆動にも問題はない。フェネクス、梨亜と息を合わせるようにして飛び立つ。

 

「アンネイムド[フェネクス]、及川陽太、行きます!」

 

 ユグドラルの加速を伴って、今ニア・ゼロングを止めるべく不死鳥が飛翔した。

 

 

 

 

 フェネクスが飛び立っていくのを見届ける元達。そこに装依を解除させられた未緒の乾いた声が聞こえてくる。

 

「何で……何でなのよ、梨亜。あんたはそうやって、いつも私から欲しいものを持っていって……」

 

 先程の対峙で、彼女の考えが読み取れた。彼女は鳥金梨亜に嫉妬していた。持たざる者が必死にやって手に入れた物を、彼女が持っていたから。そしてどう頑張っても手に入れられないものを彼女が持っていたから。

 その彼女に言ってやる。

 

「それを、言えばよかったんじゃないか。及川陽太に」

 

「……」

 

「及川陽太が言ったように、素直に言えばもうそこで後悔は終わっていただろう。お前は問題を先延ばしにしていた。恥を隠した」

 

 恥を承知で明かせる人物であったなら、こんなことにはならなかった。だが流未緒はそういう人間だった。

 そういう人間は立場問わず多い。変にプライドの高い人間の悪い癖だ。頭が回るほどこういう時に声を出せなくなっていく。

 案外と、自分も同じタイプだ。それが言えない気持ちは分かる。だから俺は言ってやる。

 

「もうあいつに届かない、と思っているなら無駄だが、そう思わなければまだ届くだろうさ。届かなかったとしても、お前の周りにはまだその手を取ってくれる人間がいるんじゃないか?」

 

 既に海上からこちらに向けて脱出用の小型空中ボートが向かって来ている。MSも護衛に付いているが、こちらへの攻撃の意志は見せていない。救助に来た、と思われる。

 だがそれでも未緒の表情は浮かない。それは彼女の口から語られる。

 

「もう無理よ。ルウォは私を見捨てるだろうし、このまま捕まる。もう何もない」

 

 当然と言えば当然だ。もちろんそれを考えていない元ではない。罪を犯したなら罰を受ける。

 それを踏まえて上での発言である。だがこれまでの彼女からしてみれば、そこから這い上がるのはまさに奇跡と思っているのだろう。

 実際そうだ。罪を犯して、更生出来た人間は多くない。未緒にも事実を告げる。

 

「そうだな。何もないだろう。それでもお前は生きなければならない。傷つけ、利用した人間に贖罪する為に。罪を隠し続けてきたお前には酷だろうがな。利一、ここは頼む」

 

「了解だ」

 

 そう言ってこの場を利一に任せる。既に白が本来の機体、陽太から返却されたアンネイムド[ユニコーン]を纏って準備を終えていた。

 白が未緒の今後についてクローズ回線で尋ねる。

 

「と、仰っていましたが大丈夫なんです?」

 

「まぁ無理だろう。とはいえルウォ側は弁護士を付けるらしいし、縁を切るとしても会社には残すだろうな」

 

「そうですね。まだ使える、と言った具合でしょうが」

 

 選択の先が残酷でも見捨てられないだけマシ。そうとしか言えない。それ以上の介入をしようとも思わない。介入するのは価値があると思った時だけだ。傲慢だろうがそれを決めるのは自分だ。

 それに、こうも思う。彼女は自らの意志で立ち上がらなければならないと。

 

「まぁあいつなら大丈夫だろう。あのルウォの相談役にDNLでもないのになれた。ルウォ側も途中から分かっていてもきらなかったのは純粋に彼女の実力だよ」

 

「つまり、それだけ信用されるだけの仕事はしていたってわけですね」

 

「そういうことだ。さぁ、俺達も行こう。ジャンヌ、最後の大一番、行けるか?」

 

『えぇ。十分休ませてもらいましたから。……ですがあの子達に大分負担を……っ、これはっ』

 

 大丈夫と答えたジャンヌの声が上擦った。元も、白もまた感じ取る。急激に増加するDNL反応とユグドラルの音。

 ユグドラルの反応はこれまでに感じたことのないものとそれなりに感じていた物とが混ざっている。それに合わさるのはドライバ・フィールド固有の音だ。

 それらを発する機体は今までに存在しない。が、あり得る話だった。あの機体が、宗司が目覚めたのなら。確信を口にする。

 

「目覚めたか、相模宗司。お前もまた次元世界の力に触れる時が、ガンダムDNアーバレストが「真に目指す領域」に」

 

『行きましょう。彼らをサポートする為に』

 

「アンネイムド[ユニコーン]、いつでも行けます」

 

 二機のガンダムが同時に残骸から飛ぶ。宿敵ハル・ハリヴァーを今度こそ叩くために。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP53はここまでです。

レイ「フェネクスいよいよ陽太君が搭乗!まさかサーガガンダムの方じゃなく、こっちで口上言うとはねぇ♪」

ジャンヌ「あちらはナラティブガンダムで言っていましたが、こちらではフェネクスに装依してからに変更したんですね」

まぁ大きく動く、加えて言っても不自然じゃないって考えるとここくらいでしょ。前の時点ではまだ敵ムーブしていたわけだし。

レイ「決意をした、かつ流れが変わるからこそ言ったって場面だもんね原作じゃ。ならここだね」

ジャンヌ「それにしてもやっぱり元さんが敵っぽい発言ばかりしている件に関しては……」

兵器に関しての持論の場面ね。やっぱ悪役の理論よねぇ。でもまぁ元君は劇中でも言ってるけど終わらせるために開示した。それに今は開示した技術で起こしたことに責任は持たないと言ってるけど、前もどこかでその責任は感じてるみたいに言ってたはずだしね。

レイ「どこの場面かなぁ」

ジャンヌ「分かりやすく明示して頂けているならいいんですけど」

ま、それは後々確認し直していただけたなら。しばらく更新が遅くなりますから。というわけで次話にていよいよフェネクスが戦場を駆ける!と見せかけて、もう少し別の話が続くんだ。

レイ「えぇ~まぁどんな話か、楽しみだねっ。次に続くよ~」
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