レイ「宗司君がオーバードライバモードを発動させて反撃を開始するってところだったね」
ジャンヌ「ですが、また例の如く別視点のようですね。ですが、今回は分かりやすいかもです」
それもそのはず、いよいよナラティブ最終盤の再現だ。Ⅱニア・ゼロングとアンネイムド【フェネクス】の直接対決、勝つのはどちらか。というわけで本編をどうぞ。
硬直するⅡニア・ゼロング戦。それを打ち破ったのは思わぬ援軍だった。
『お前は!』
『嘘っ……何でフェネクスが!?』
「……」
敵と味方、双方が絶句する。攻撃を行おうとしたⅡニア・ゼロング。あのままなら千恵里を撃墜まで追い込んでいたであろう。しかしそれをビームサーベルの一刀で止めた。それは敵対していたはずのフェネクスだったのである。
フェネクスがここにいる、ということなら間違いなく元君達が作戦を成功させたってことだ。だけど、何をしに?
尽きない疑問。その答えはⅡニア・ゼロングのパイロットから投げられた質問で分かった。
『っく、おやおやぁ?フェネクス、あんなもん作っておきながらこっちに来るとはねぇ。あのまま殻にこもっていた方が良かったんじゃねーの?』
『……俺は、もう殻にはこもらない。梨亜は、死んだんだ』
平静を装うゾルダーからの挑発の言葉をフェネクスに装依しているであろう及川陽太は答える。しかし、その声には覚悟がこもっている。少なくとも深絵にはそう感じ取れた。
覚悟を決めた及川陽太はⅡニア・ゼロングに刃を向けて言い放つ。
『殻の中がどれだけ良かったとしても、俺は前に進む。鳥となって、この宙に向かって飛び立つ。だから、俺はお前を止める!梨亜の果たせずにいた願いを果たす!』
『良いぜぇ、ならさっぱりさせようぜぇ!!そんな願いなんてすっきり捨てられるようになぁ!』
明確なⅡニア・ゼロングとの敵対を発言した。そこまで聞けば、容易に元君とのやり取りは想像できる。私はⅡニア・ゼロング攻略部隊に命令変更を告げる。
「全機改めてフォーメーション確認。フェネクスを援護して」
『え、えぇ!?フェネクスを?』
『……分かりました。千恵里ちゃんフェネクスならこの状況を打破できるかもしれない』
『クルスの意見には賛成だ。DNアーマーだけではどうにもならん。いくぞ』
戸惑いはあれど、このままでは不利とちゃんと認識しみんな従っていく。フェネクス側も察し、腕部のタクティカルアーマー[ヴァリアントランス]を展開する。
Ⅱニア・ゼロングも迎え撃つ気満々でスレイブモビルスーツを展開し、DNウォールを発生させた。
『どんなモビルスーツだろうが、このⅡニア・ゼロングに及ぶとでも!』
『力を貸してくれ、梨亜っ!』
フェネクスへと向けた叫びと共に、ヴァリアントランスの周囲にあの光波を発生させた。その光波をⅡニア・ゼロングの操るMS目がけて放つ。
このままでは犠牲となったMS達が破壊されてしまう。一瞬焦りを感じるが、その最悪の結果にはならなかった。
放たれた光波はあり得ない機動で曲がりくねり、DNウォールとこれまで展開していることに気づかなかったユグドラルフィールドごと、コードを切り裂いた。
DNウォールとユグドラルフィールドが同時解除され、MSも解放されたことにゾルダーが絶句する。
『なっ……ゼロングの防御を突破しただと?クッ!!』
素っ頓狂なゾルダーの声が漏れる。が、すぐに反撃の為に手を伸ばす。何も感じ取れないが、おそらくあれはユグドラル攻撃だ。しかしそれも今のフェネクスを止めるに至らない。
これまでの逃走劇で見せたあの圧倒的な超機動で攻撃を避け、弾幕を掻い潜る。懐に飛び込んで敵の防御を担う腰DNウォール発生器と、後光のように展開していたユグドラルシャードを切り裂く。
展開されていたそれぞれの防御壁が弱まる。そこを逃さずDNアーマーS-Sideが突貫した。
『今度こそ、貫く!』
呉川小隊長の掛け声と共に遂にこちら側でもDNウォールとユグドラルフィールドを貫いた。貫いた直後肩部のビームキャノンを放つ。敵が腕部を振るって直撃を避けた。
だが同時に別方向からDNアーマーG-Sideが待っていたと言わんばかりに全砲門を向けて一斉射を放つ。
『行けっ、行けェっ!!』
『ぬぅぅ!!』
多量のミサイル、ビームに対し緊急回避を行っていたが、避けきれない弾がプロペラントタンク、そして形骸になりかけていたユグドラルシャードを粉砕していった。
身軽になったとはいえ損傷を受けて動きも悪くなる。だがようやく攻撃態勢を再度整えた。ユニットを取り換えた指部ビーム砲からビームサーベルを形成し、振り払ってくる。
『うるさいハエ共が!』
「全機、回避行動!」
言って回避行動に専念させる。だが振るわれたサーベルは近くにいるだけで機体を熱し、エース機以外をたちまち蒸発させていく。先程操りから解放された機体が、次々とそれに蒸発させられていく。
私はホルスタービットを起動させて飛ばす。行き先はその機体達。動けずにいる機体達をホルスタービットで攫い、攻撃範囲から逃がしていく。
他を逃がしつつこちらも回避行動を取る。バックパックのブースターを噴かせて、ギリギリを回避して同時に狙い撃ちする。狙い撃った弾丸が、Ⅱニア・ゼロングの巨大な腕部を真正面から撃ち抜く。
そこに追撃を行ったのは他でもないフェネクスだった。高速移動で懐に飛び込むと、残りの腕部を展開したヴァリアントランスの巨大なビームサーベルで一挙に切り裂く。
あれほどの巨大な腕部が簡単に宙を舞う光景はそうない。追い打ちにヴァリアントランスがスカートユニットを斬り裂き、露出していたウエポンケージ目がけてビームを直撃させた。
『グッ!まだだ、まだっ!』
諦めを見せないゾルダーが機体を起こし、腹部のハイメガキャノンを放とうとする。
苦し紛れの一発、だがそれは間違いなく一直線上の全てを薙ぎ払おうとしていた。流石に不味いと深絵も咄嗟にライフルを向ける。ところがそれをまだ生き残っていたシトに取り押さえられる。
「っ!邪魔ッ!」
『このまま墜とす!』
無理矢理射線上に出される。ブレイドガンで邪魔してきた敵機は片付けた。しかしブースターは初速に特化していない。ビットを呼び戻すが、間に合わない。
そう思った。けれども再びあの機体が助けにはせ参じる。
『やらせない!』
『グッ!?またお前か!』
「っ、フェネクス!」
発射より前にその砲口をヴァリアントランスで貫き、そのまま撃ち抜く。内部のエネルギー回路に引火し、爆発を起こすと浮力を喪失。その巨体が海へと落下していく。
敵はその巨体を必死に制御するがもはや維持できない状況だ。無理と分かるとその機体を捨てる。が、まだ闘志は収まってはいない。
機体をドッキングアウトさせ、その両腕でウエポンケージに残っていたビームアックスを合体したビームナギナタをフェネクスに向けて振るう。
『ウゥォォォォォォ!!』
『!!』
対抗してフェネクスがヴァリアントランスを実体剣として構え、対抗して突撃する。一瞬その横に幻影のように少女の姿が見えたような気がした。あれは、もしかすると……。
幻影が見えたのもまた一瞬。フェネクスとプロトゼロンが一瞬で振り合い交差する。
一度目の激突、そこでフェネクスがアックスの接続部を叩き斬る。完全に両断され、ナギナタとしてではなくアックスとしての使用を求められ、ゾルダーは思い切って斬られた片方を投擲した。近接距離での対応としては隙を作る意味では間違ってはいないだろう。そしてやはりゾルダーは避けたフェネクスに対しもう片方のアックスで奇襲した。
しかし、フェネクスもまたポテンシャルは最高潮だった。それを回避し、更なる一撃を流れのままに、一回転して勢いを付けてヴァリアントランスでコアブロック、胸部を貫いた。
貫いたまま、機体を加速させるフェネクス。その先に見える空となったⅡニア・ゼロングのドッキングブロック。フェネクスは真っ直ぐ向かって機体を本来あるべき位置へとねじ込み戻した。
直後Ⅱニア・ゼロングが鳴動する。まるでパイロットがコクピットをやられ、もがき苦しむ様子を再現する様に。が、それが止まると残った腕部をだらんとさせ、ゆっくりと海に沈みだす。
Ⅱニア・ゼロングが落ちた。そんな瞬間に喜びが沸き立つ。
『やった……あの機体を落とした!』
『ギリギリ、だったな』
『はい……!』
「安心するのは早いよ。まだ元君達の方もあるから、そっちを―――」
手伝って。そう言いかけた時、危急を要する知らせがヴァルプルギスのオペレーターの光巴から放たれた。
『みんなまだ終わってない!あいつ、この海底奥底のD4ガスを爆発させようとしてるッ!!』
◆
フェネクスに残された全体回線から絶叫する様に放たれた言葉。それを聞いてフェネクスの中の梨亜が言葉の指し示す意味に気づく。
『陽太、Ⅱニア・ゼロングだ。あれに残ったユグドラルフレームの怨念が、地下のガスを引火させようとしている。もし爆発したら、この石河の街が大災害で滅茶苦茶になる……!』
「何だって……くっ!」
そんなの、ダメだ。いくら襲撃したとはいえカザノの人を巻き込むわけにはいかない。それにまだ未緒達もこの海上に居るはずだ。
HOWの方は対処しようと方法を模索し始めていた。が、これと言って有効な策を見いだせずにいた。
『ヤバいですよヤバいですって!もう海の中に沈んじゃってるし!』
『落ち着け入嶋。艦長、来馬整備主任、DNアーマーの水中行動は』
『流石に無理、だったわよね?』
『そりゃね。どうにか出来るとしたら、元君位?』
『くっ、今からでも、元君に状況を知らせて、来てもらった方が』
HOWの魔王。彼ならばこの状況を何とかしうるだろう。だがその魔王は今、白の重装型と戦いの真っ最中。回線で彼女らの言葉を聞いて応答する。
『聞いている。今向かいたいが……くっ!』
『こいつ、しつこいっ』
このままでは間に合わない。今から止めに入らなければ引火まで抑えられないと直感する。
ならどうするのか。動ける者がほとんどいない。けれどもこれをどうにか出来る可能性を陽太は感じ取っていた。
償いをする。そう決めたなら取るべき行動は一つだった。梨亜が行おうとしたそれを果たす。梨亜に確認を行う。
「梨亜、君のやろうとしたこと、出来るか?」
『うん。今がその時だから。力を貸して、陽太』
優しく誘う梨亜。その言葉に従って、機体のコントロールを委ねた。デストロイドモードのまま、ユグドラルフィールドを展開した状態でフェネクスが海へと潜った。
海水で本来は動きが遅くなるのを、フィールドの防護で素早く動いていく。海底へと目がけて沈んでいくⅡニア・ゼロングからは、確かに海底へ向けてユグドラルの不協和音が海底へ向けて流されていた。
海底からは爆発を想像させる音が脳に直接聞こえてくる。DNLが感じ取るそれを陽太もまた感じ取っていた。あれを爆発させてはいけない。
沈みゆくⅡニア・ゼロングの巨体。それに速度を合わせてフェネクス、梨亜が動く。ユグドラルの特殊な領域が展開されていく。
それは一面緑一色の世界。海の暗さがどこかに行ってしまった。その中でただ一人佇むフェネクスと落下状態のⅡニア・ゼロング。
プロトゼロンがねじ込まれた場所から亡霊の如く人型の影がはい出てくる。亡霊が語りかける。
『お前も嫌なんだろ?この不条理な世界が。俺もさ。勝手に作られて、英雄の身代わりにされそうになって。それでも希望に満たないからって予備として捨てられて』
それが誰なのかなんとなくだが分かった。しかし俺は断固として拒否する。
「嫌だったさ。こんな世界、変えたいほどに。本当なら苦しい思いをして今を生きたくない。梨亜と一緒に生まれ変わりたいくらいだ」
『陽太……』
「でも今はまだ梨亜に付いてはいけない。梨亜の望んだことを、果たすために!お前を止める!」
フェネクスのユグドラシルフレームが活性化していく。やがてフェネクスのバックパック、ウイングが光を帯びていく。光が伸びていき、そして―――――巨大な光の翼を形成した。
まるで本物の鳥のような翼だ。もし周囲の光がなかったならその光景はクリオネのように見られたかもしれない。
広げた翼はⅡニア・ゼロングの巨体を包み込む。光の伝播が起こっていき、それは海底の怨念にも伸びていく。悪意をすべて包み込み、浄化するかのように。
フェネクスの中にいた陽太は心地よさを感じる。梨亜の優しさを一心に受けているようだった。その時、イメージが陽太を引き込む。
引き込まれたイメージの先で陽太は見る。梨亜が一人の少年を抱きかかえている。泣きじゃくる子供をあやすかのように、その姿は聖女か。
その少年が誰なのかは察しが付く。嫉妬はあれど、それより意外さがあった。あやす梨亜が言う。
『彼は、身体こそ大人だけれど、実際はそう長く生きていない。誰かのコピーとして生まれた。彼にはその道しかなかった。それ以外を、求められなかった』
「同じだ。俺達と。自由に生きたくても誰かの思惑に縛りつけられていた頃の俺達と、それに、今の君と」
『フフッ、そうだね。私も結局はフェネクスに縛られて、だからユグドラシルフレームやDNLを知らず知らずのうちに憎んでしまっていた。魔王と話して、今陽太と一緒に戦って分かった』
気づかずに抱いていた恨みを、梨亜も理解する。あの事件で誰もがずっと心に苦しみを抱いていた。それはきっと、彼も同じだ。今なら分かる。彼が、彼らが生まれた意味を。それはきっと、このアンネイムドに関わる。
梨亜は少年をその手に抱いて、こちらを向く。それはとても寂しそうで苦しそうだった。その訳を話す。
『陽太、私この子と行くよ。Ⅱニア・ゼロングも、この子のゆりかごと一緒に。この世界にあってはならない存在だから』
「……あぁ」
悲しみをグッと堪える。本当は嫌だ。だけども、これは必要なことなのだ。この世界を護るために。
それが、きっと梨亜とまた会うために必要なプロセスなのだ。出会いがあるなら、別れもある。梨亜は「何度だって生まれ変わってまた出会う」と言ってくれた。なら、今は送るべきなのだ。
梨亜はその子を連れて、遠ざかっていく。その途中で振り返る。
『大丈夫だよ、陽太は。きっと、これからも戦っていける。この世界の争いは当分終わることはない。でも戦うことを諦めちゃいけない。諦めたら私と同じ側になっちゃう。苦しいと思うけど私と同じにならないで。そしたら、私もそっちに追いつくから』
道を踏み外したことを梨亜は後悔している。やっぱり本当はそうなりたくないのか。梨亜は最後に掛け合いをする。
『陽太。また三人で一緒に、友達として出会おうね』
三人。ああはなっても梨亜は決して未緒を恨んでいなかった。その優しさに応えたい。俺は頷く。
「あぁ、もう一度、やり直そう。生まれ変わった、その先で」
そう答えた瞬間、梨亜の影が揺れた。少女の姿から大人びた姿に。全身傷だらけのパイロットスーツ姿、だけどそれが一瞬で消え、白いワンピース姿の可憐な女性に様変わりする。きっと、それは本来歩んだはずの、イフの姿。その姿で微笑んだ。
「うん。さようなら」
その声を聞いた時には、既にフェネクスは海上へと上がっていた。気付いた陽太はあたりを見回す。だけど、そこにはもうⅡニア・ゼロングの姿はない。
また違和感にも気づいた。フェネクスの姿が、ガンダムからもとの一角獣、ユニコーンドモードへと変形していた。
もう、そこにあのDNLの力を感じない。それを実感して理解した。理解して海を見つめた。
「……行ったんだな、梨亜」
海から空へ、海鳥と共にユグドラルの羽が舞い上がっていった。
NEXT EPISODE
EP55はここまでです。
レイ「概ね同じだけど……また新しい単語が出て来たね。D4ガス?」
ジャンヌ「……ちょっといいです?性質は分かりませんけど、この世界の成り立ちとかと絡めつつ最近の作品と絡めますと……」
いやぁ、ZとAの競演は熱かったけどあんな爆弾が残ることになろうとは……。
ジャンヌ「……やっぱり」
レイ「ごしょーわ!」
止めんか!(゚Д゚;)手間がかかる!
レイ「えーでもあの作品ならご唱和は必要でしょ?」
そうだけど違う。
ジャンヌ「いや、吹っ掛ける形になったのは作者ですし」
まぁ次の話の冒頭でちょっと言うけどあれよりは厄介なことにはならない……っていうかもう人類の科学力が触れる奴になってるから。名前はちょっと借りたけども。
レイ「あははっ、最終盤でそれを利用した兵器出てきたらご唱和しないとね~」
ない、と思いたい。その時はウルトラ申し訳ない気持ちでございます……って言うわ。
ジャンヌ「それで話を戻しますが、まぁ最後の演出はちょっと違ってましたね、ニュアンスと言いますか」
レイ「そうそう!宇宙の彼方へ機体ごと!じゃなくて、意識だけが抜けていったって感じ?」
ジャンヌ「それを海鳥で表現するのはちょっとポエマーぽくって気持ち悪いですけど」
(´・ω・`)……いいじゃない、そういうことしたって……。
ジャンヌ「まぁ否定はしませんけど、作者はあなたですし」
レイ「でもでも、ナラティブと違って舞台が宇宙じゃなく地球だからこそ出来た演出だよねー」
割と今回生き物の描写を多く入れてますからね。ある意味動物たちが今回はキーポイントだったかもと思っていたり。
と、色々話したいけど次の方に行きますか。
レイ「だねー。次は多分、宗司君達の決着だねー次へゴーゴー!」