ネイ「フェネクスはゾルダーと共に天へと昇りましたが、ハリヴァーを撃墜できるのか……」
グリーフィア「こっちはどういう幕引きをしてくれるのか、楽しみね~」
それではどうぞ。
フェネクスの起こした奇跡を間近に見て宗司は絶句していた。
先程聞こえていたD4ガスは、この世界のDNジェネレーターの次元境界接触用ゲートを作り出すための加工に使われる物質。もしそれが爆発に用いられることがあれば、大規模な超次元現象を引き起こしかねないと、深絵隊長達が騒いでいた。
だから宗司もどうにかするべく行った方がいいのではと思っていた。ところが同じくハル・ハリヴァーと交戦しながら聞いていた白が手を出すなと言った。
『あれは、彼らに任せるしかない。僕らは信じてこのままハリヴァーを抑えるんだ』
などと言われてしまっては、従うしかない。彼の方がDNLとしてずっと先輩だったのだから。
エターナも珍しく焦燥に駆られていたが、パートナーとして言い聞かせてハリヴァーを必死に抑えた。その間にもハリヴァーは「ここら一帯が、地獄へと変わる」などと言ってこちらを焦らせに来ていた。
それでも諦めず、信じて抑えた。その結果が、この幻想的な光景だ。羽に似たユグドラルの塵が空へと舞い上がっていく光景に、エターナが唖然とする。
『何、これ……悪意も絶望も、全部包み込んで、抱擁して、空に還したの……?』
先程まで海中から発せられていた破壊音のようなそれは、全て羽の粒子に吸い込まれていった。それらは悪意の音を漏らすことなく、空へと消えて行っていたのだ。
今まで体感していたDNLの感覚はいずれも聞き取るくらいのものだった。だけどそれらは誰かの優しい言葉と共に包み込まれていき、封じ込めてしまった。DNL初心者の自分でもそれが誰によるものだったのかは勘づく。
一方で、それらを感じ取れる敵のハリヴァーはその光景を見て不機嫌さを表す。
『また、無駄なことを。どれだけ浄化しようとも、人は変わらない。だからゼロンがもたらす欲で器を満たそうというのに』
『僕たちはそれでも可能性を信じて、人の明日を信じる。他人を器なんて形容する、そのあなたの考えは傲慢だ。他のゼロンの人もそうだっていうのか』
『少なくとも、私はそういう役割を持たされた存在さ』
再びユニコーンとシナンジュが激突する。激突は既に熾烈を極め、両機共に正確無比な攻撃を躱してぶつけ合う状態だった。
白さんが使うL-DLaは前に陽太のサーガガンダムが見せた物とは全く違う、圧倒的で他を寄せ付けない性能を見せていた。それに追随するハリヴァーの腕も尋常ではない。
宗司は飛び交う攻撃は二つの防御領域で何とか防いで介入出来ていた。だが苛烈さはそれだけじゃない。
『ぐっ、ユグドラルフィールドの共鳴部分が拡大……もう他の非ユグドラルフレーム機からの支援は期待できないわよ!』
「それだけ、あの二人のユグドラルフィールドが強いってことか」
既にこの空域は多量のユグドラルフィールドの領域が展開されていた。エターナによれば力場が敵味方関係なく結合して、同じユグドラルの力を扱える機体でなければ近づくことさえも叶わないという。
それに対処しながら機体も動かす。当然それが初めてな宗司の機動は幼い。それを当然ハリヴァーも狙って来る。
『まずは足の遅いのを狙う』
「くっ」
『よそ見を!』
だがそれをカバーする様に白さんがシナンジュに発砲する。ハリヴァーも攻撃してくるユニコーンに目を向けざるを得ず、高機動による斬り合いを展開する。
動くことに精一杯な状況で、助けられたことにエターナは未熟さを呪っていた。
『……クソッ、こんな空間で、どうしてあんなに動けるのよ……』
「エターナ……」
実際エターナの言葉は的を射ている。体の重さ、周囲の動きづらさを感じているパイロットとして、あそこまで動ける二人に脱帽せざるを得ない。
助けられる現状に悔しい気持ちはエターナと同じだ。エターナにその想いを伝える。
「エターナ、俺もこのままじゃ嫌だ」
『ソージ……なら、どうすんのよ』
「俺自身のDNLとしての力、引き出してみせる。どうすればいい?」
シンプルな要求。だがそれをエターナに教えてもらうというのは、彼女の技量、知識的に無茶だろう。いくらDNLの先輩だとしても答えてもらえるかどうか。
もちろん答えてもらえない可能性の方が高い。一歩間違えばプライドを傷つける発言だ。それでも彼女は答えてくれると信じる。本音としては答えてもらわねば困る、だったが。
しばらく沈黙を続けたエターナ。彼女がそうする間も宗司は攻撃に備えて警戒する。
沈黙が長い。無理か、と思った時、彼女の口が開かれた。
『……私だって、感覚任せにどうにかやっている。こんな状況、体験するのだって初めてだし。正直、これが正解ってわけでもないと思う。でも、私がやっている感じはこの圧迫を相手から出されている音だと思っていて、それを自分側の音で相殺する、平たく言えば相手の音が聞こえない様にこっちの大声でかき消す感じ。……分かる?』
意外にも分かりづらそうでなんとなく分かる説明。もどかしさはあれどそれが彼女らしいと言えばいいか。
声を大きく騒がしく発する。音を能力のイメージとしたDNLの感覚はこれまでエターナの感覚を間借りしていた宗司も分かっている。そこにドライバ・フィールドで様々な物をイメージしてきた宗司にとって、イメージすることは朝飯前と言えた。
要は自分のDNLを操作し、憑依するユグドラルフィールドを打ち消せと言っている。二つ同時に扱うのは難しい、と思ったがそこでガンダムDNの変化に、否、自身の更なる変化に気づく。
(あれ、そういえば俺、いろんなことを考えながらドライバ・フィールドとユグドラルフィールドを制御してる……?)
今まではドライバ・フィールド単体と機体の制御、思考をエターナのサポートを受けつつで精一杯やってきていた。けれども今、現状維持だけでも最大稼働した時と同じだけの負担をこれまでよりも軽く感じていたのだ。
ユグドラルフィールドにドライバ・フィールドの維持。これだけでも煩雑になりそうなものを。これが意味する物を軽く想像できる。だが今は噛みしめている場合ではない。流れてきた弾をすぐに感知して回避行動をとる。ぼさっとしていたこちらにエターナは怒る。
『こらっ、何考えてる!もう少しで当たりそうだったじゃない!』
叱りの言葉を放ったエターナに俺は謝罪と、反撃の言葉を告げた。
「悪い。だけど、もう大丈夫。行くぞ」
『え―――――』
周囲の空気が揺らぐ。と同時にガンダムDNアーバレストが動く。その機動は先程までとは違う。ユグドラルフィールドが周囲に展開される前と、このモードが発動した直後と同じスピードで、高速機動戦闘を行うシナンジュ・ゼロン・ハルへと追いつく。
『何っ!?』
『これは……君は』
一目瞭然の変化に両機体のパイロットがこちらに驚愕し、目を向ける。先程までこの空間内で超高速戦闘を行っていた二人が注意を向けないといけない程にその変化は急で驚異的だった。
追いついたその速度のまま、宗司はビームライフルを放つ。
「行けッ!」
『っ、ぬおぉっ!?』
初撃は避けられる。が、二撃目は避けた先に直撃コースとなり、シナンジュ・ゼロン・ハルはシールドで防御する姿勢を取った。これまでよりもいい流れで、このまま行けると思った。
しかしそこでもまたおかしなことが起こる。直進していたはずのビームはシールドから少し離れた空間で着弾、霧散していった。霧散していくときにビームは不自然な弾き方で、円形を作るように霧散していった。
「何が……っ!」
当たっていないと判断して、続けて撃つ。だがまた直撃には至らない。追いつける速度まで行って何も出来ないなど嫌だ。そのまま回り込んで位置を変えたりしてビームを放ったが、いずれも防御姿勢すら取られることなくそのフィールドで防がれる。
流石にここまですれば宗司自身にも何があるのか分かる。こちらの無駄な努力をハリヴァーが嗤う。
『残念だが、君の攻撃では私を倒すには程遠い』
「みたい、だな。エターナ、ユグドラルフィールドの突破ってどうやるんだ」
ハリヴァーの発言に同意しながらも再びエターナに疑問をぶつけた。ハリヴァーが発しているのは間違いなくユグドラルフィールドだ。それを防御に使われた場合の対処法をもちろんしらない。
先程教えてくれたエターナに期待するほかない、と思って投げかけるがその当人は唸ってしまう。
『う……えぇと……』
『力場を持たせるんだ』
それを回答したのは白だった。白はそれを実践して見せる。
『こういう風に、攻撃にユグドラルフィールドを乗せる、相手は自分の心の世界を展開している。騒音を発してこちらの言葉を防御している。それを突きさすようにイメージして、攻撃に乗せる!』
言ってシールドのビームガトリングとバズーカと放つ。見るからに先程宗司の放ったビームライフルの威力よりも低かったが、フィールドに防がれることなくシールドへと着弾した。ハリヴァーも先程と違って鬱陶しそうに防御し、回避して対応する。
白はそのまま近接戦へと移行し、ビームサーベルで近接戦に移行する。その間宗司はDNL能力で観察する。すると、確かにその発言通り鋭さのある音がユニコーンのビームサーベルから発せられていて、それが敵のフィールド切り裂いて本体のサーベルと打ち合っていた。
エターナも同じように気づいてその技量に感嘆する。
『これが……本当のDNLの戦い……?』
「これが出来てようやくスタートライン……。行くぞ、エターナ」
『っ、私だって、DNLだからっ!』
二人揃って機体の操縦に合わせてDNLの感応波を通じてユグドラルの制御を開始する。感覚を掴みながら、行けると判断して再び追撃に入った。
向かってきたこちらにハリヴァーは無駄なことと吐く。
『また来たか。君達では』
「何度も、同じ手になるか!」
再びビームライフルから攻撃を放った。シナンジュ・ゼロン・ハルは再び余裕の構えを見せていた、が途中で瞬間的に防御の構えを取る。その行動が示す通り今度はフィールドを貫き、本体へと当てることに成功する。
その攻撃を白が称賛する。
『いいね。このままついて来れるか?』
「はいっ」
白のユニコーンと共に二機でハリヴァーの機体を攻撃する。慣れている白の援護を担い、ユニコーンが斬りこめばこちらはその後の隙をカバーする動きを行う。
だがこちらも近接攻撃を混ぜ、単調になりがちになる攻撃を複雑化させていく。ハリヴァーは何とか捌いていたものの、徐々に被弾を抑えられなくなっていく。ゼロン側のパイロット達が支援に入ろうとしていたが、そこで障害となっていたのは他ならぬシナンジュ・ゼロン・ハルも展開していたユグドラルフィールド。こちらのユグドラルフィールドとも結合して強固なフィールドを作り上げ、他機の接近どころか攻撃も通さない。
本当ならユニコーンと一騎打ちとなるはずの領域が、こうしてハリヴァーを苦しめていた。だがゼロン側は必ず手を出せないわけではないようで、シシャの特殊カスタム機が救援へ向かおうとしていた。しかしそれは相手にしていた進が阻む。
『えぇい、邪魔な!ハリヴァー様、逃げてください。あなたがこんな……!』
『宗司、決めちまえ!』
抑えてくれている進の言葉に報いるべく、決意と共にエラクスを起動させた。モードに掛け合わせてのエラクスの速度は全力機動しているユニコーンとほぼ同等以上だ。二機で次々と攻撃を繰り出す。
ドライバ・フィールド弾、ビームマグナム、ビームサーベル、蹴り。攻撃の応酬が続く。負けじとシナンジュ・ゼロン・ハルも応戦した。
『うぉぉぉぉ!!』
「ぐっ!?クッ!」
攻撃を行おうとしていたビームライフルが爆発を起こす。何かが入りこみ、ビームライフルの中を爆発させたような感覚を感じ取る。更に意識外だったシールドビームライフルにも同じことが起こり、瞬時に分離させてまとめて爆発するのを回避する。
原理は分からないが、これもまたユグドラルフィールドによるものだろうか。ユグドラルフィールドを今度は介入されない様に注意しながらビームソードを展開して斬りかかる。
「えぇい!」
『くっ!』
出力全開で切り結ぶ。受け止められてもエラクスの勢いでそのまま押し切る。シナンジュ・ゼロン・ハルの出力が上がっていてもお構いなしに押し開くその光景はドライバ、ユグドラル、エラクスの三つの力が合わさっているからこそだ。
シュバルトゼロでも持っていないその三つの力。どんどん宗司自身の中に確信が生まれていく。それが最高峰に達した時、一気に勝負を掛ける。
「はぁぁぁぁぁ!!」
光剣を交差させて切り抜ける。シールドを十字に切り裂いて、遂にシナンジュの左腕部と左脚部を腰の増加装甲ごと切り裂いた。
増加装甲を切り裂いた瞬間、周囲のユグドラルの圧迫が弱まった気がする。ユグドラルパーツを切り裂いたからだろう。しかしシナンジュはそのパーツをすぐに再生させていった。
『くっ、まだユグドラルの力は尽きないぞ、ガンダム!』
諦めを口にしないハリヴァー。明確にこちらを「ガンダム」と認識していた。そこにもう一機の「ガンダム」がそのハリヴァーに続く一撃を加える。
『なら今度こそ、あんたは落とす!』
ユニコーンが突貫し、両腕部のホルダーに収まったビームサーベルを装填したまま突き立てる。トンファーとしてのビームサーベルでシナンジュ・ゼロン・ハルの両肩へと繋がる胴体部を貫く形となる。
シナンジュ・ゼロン・ハルは腕部をがたがたと震わせる。ビームライフルも取りこぼしていた。押さえつけられたような状態でユニコーンを介したハリヴァーの接触通信が聞こえる。
『また、君は人に戻れなくなりたいか……っ』
戻れなくなる。それが意味する物を宗司は理解しかねた。けれどもそれを分かっている様子の白は返答した。
『もう戻れない。確かにそうだ。いつかは僕の意識は次元世界の中へと消える。だけど、今の僕は、俺は、彼女の下に、
『DNLなどという希望など持つから、世界の争いが無くならないのをまだ洞察出来ないか、君も』
『うるさい!過去や今に縋っているあなたに、未来は分からない!』
これまでとは違う気迫の白が言い放つ。直後突き刺していたビームサーベルをそのまま極大化させた。
串刺しのままシナンジュ・ゼロン・ハルの機体は上空へと飛ばされる。その後出力限界を迎えたビームトンファーが爆発した。ユニコーンの機体がぐらつく。
ビームトンファーは背部のウイングスラスターまで貫いたようで、それにも関わらずハリヴァーは空中で浮遊を維持する。周囲の音からユグドラルで何とか浮遊していることが分かる。
だがそんな満身創痍のシナンジュを見てもまだ白さんは、白は逃すつもりはなかった。手を手刀の形に構え、DNFを宣言した。
『DNF Authorize 「ユグドラルブレイカーブレード」!』
『亡霊は、次元の彼方に還れッ!!』
巨大なユグドラルフィールドを手に纏わせる。手を軸にしたそれは大振りの大剣の如き形を取り、天高く研ぎ澄まされる。
普通の人には見えない、不可視の刃。けれどもDNLには分かる。音を軸に気づけば、その大剣の鋭さが。
その音の大剣を満身創痍のシナンジュ・ゼロン・ハルに向けて振り下ろした。間違いなく叩き斬れる。これで、戦いが終わる――――――。
そう、思った。
『や、ら、せ、る、かよっ、お前達如きに!!』
そんな声と共に向かってきたのは、元隊長と対峙していたはずの白い重装機。既に各部を損傷させていたが、搭載されているのであろうユグドラルフレームの力を纏ってこの力場の中を突っ切ってきた。
大剣の前に到着するとその機体は肩部のシールドを構える。そんなもので防御できるとは思えない。だが意外にもそれはちゃんとDNFによる攻撃を受け止め、同時に爆発が起こる。
爆発の煙が周囲を覆った。攻撃を受け止められて白もこちらも視界不良に陥る。
「くっ、視界が……」
『落ち着いてくれ、DNLの力を使うんだ』
言われて宗司はDNLの力を研ぎ澄ます。いつもなら何も見えない、状況を把握できないとエターナに任せていたが今は自分でも分かる。すぐに煙の中の状況を把握できる。
中でうごめく音。装甲か何かの金属音がガラガラと音を立てている。しかし中の者、爆発の中心部からは未だDNジェネレーターの駆動音が響く。二つのゲートの駆動音が聞こえる。
その時、元隊長の声が回線から聞こえてくる。
『……ゲートの駆動音が、二つ……、いや、四つ?』
言葉の意味を理解しかねる。が、すぐにその意味を知る。煙が晴れる。そこに居た機体は先程とは違っていた。
「あれは……!?」
『アイツ、は……まさかっ!』
煙が晴れた後にいたのはシナンジュ・ゼロン・ハルと見慣れぬと言ってしまえばそうではない、だがあり得ない色の機体。
NEXT EPISODE
今回はここまでとなります。
ネイ「……いやいやいや、え、最後……?」
グリーフィア「あらら~……今回の話、ひょっとして今回最後のやつを一番だしたかったって作者君の気持ちかしら~?」
まぁ、元々最後のあれは最初からこの第3章に織り込むつもりで作ってましたからね。それ以外は割と途中変えてたりとかはしたんですが。
ネイ「思えば、ナラティブ編、ユニコーンとバンシィが出る時点で察せるといえば察せるとも言えたわけですか。ユニコーンたちはアンネイムド、名前のないですが、シュバルトゼロ、そして、あの白いガンダムは「名付けられている」……」
グリーフィア「そしてその二機のガンダムは、奇しくもユニコーンとバンシィと同じく特殊フレーム付きで、対照的な色をしている。主役が黒ってことを除けば似てるものね~」
とはいえ、それ以外にも名付けられしモノの意味は他にもあるんですが、今章で覚醒したアーバレストのオーバードライバフォームもアンネイムド達と関係あるし、そこらへんもひっくるめてこの小タイトルです。
ネイ「これ、まだ話はあるんですよね?」
あ、本編はあと一話です。
グリーフィア「一話でどう終わらせんの~!?」
如何なる終わらせ方でも第3章ストーリーは残り一話。最後までお付き合いください。それではまた次回。
ネイ「よ、よろしくお願いします」