機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、藤和木 士です。EPISODE60と61の更新です。まずはEP60から。

レイ「問題抱え込んだまま、次の作戦なんて大丈夫かな……」

ジャンヌ「クローザーの性能なら大丈夫、と言いたいところですが不安しかないですね」

その不安は今話でも色々な人に指摘されますよ。というわけでどうぞ。


EPISODE60 狙うエース・オア・ジョーカー3

 

 

 7月月末。愛智県の自衛軍新四ツ田第1基地に多くの人員が集まっていた。彼らは東日本各地から集められた精鋭達、自衛軍はもちろんの事、HOWに代表されるMS犯罪対策組織、MS運用組織、警察のMSを扱う特殊部隊や公安のMS対策班、そしてオースといった政府の計画した特殊技能運用組織のメンバーまで、メンバーは多岐にわたった。

 彼らが集められた理由は他ならない、西日本を未だ占領するカルト教団「ゼロン」の侵攻作戦阻止と攻略足掛かりとするための敵前線基地「四河港ポート基地」の攻略作戦「オペレーションヴァイス」のため。

 まずはかつて次元覇院に勝利した時の決戦の地、三枝を攻略することで機運と高めようとしていた。攻略後は三枝をそのまま前線基地とし、住民の浄化活動も行われる。

 数多くの英雄と呼ぶにふさわしい者達が揃う基地。そこに既に、黒和元率いるHOWのCROZE部隊もやってきていた。

 

 

 

 

 指定された部屋へと入ると、そこには既に各地から招集された作戦参加者が騒々しさと共に埋め尽くしていた。

 その人数に思わず声を出す。

 

「うわっ、凄い人だな」

 

「人もそうだけどそれを収容できるこの会議室の広さでしょ」

 

「この人たちが、一緒に……」

 

「各地で活動するゼロンや他の武装勢力と渡り合ってきた人たちばかり……」

 

 緊張を見せる新人達へ元隊長は引率者として定められた席へ向かうように言う。

 

「お前達、後が閊えている。早くこっち来い」

 

「あ、はい」

 

 指示に従って先を行く呉川小隊長とクルツ先輩の後を追う。当然ながら先頭を行く元隊長の後ろにジャンヌ副隊長が続いている。表面上は割と平静を保っているが、今日も朝から元隊長との会話はちぐはぐとしたものだった。

 心配はCROZEのチームメンバーも色々と察していた。しかし聞かれても隊長は問題ない、今はいいと言っていて聞けずにいるようだ。

 クルツ先輩も小声でこちらに尋ねてくる。

 

「……なぁ、やっぱ言った方がいいんじゃねぇか?ジャンヌ副隊長も相当気が滅入ってるの、分かってるよな?」

 

「はい。でも隊長が言うなら、今は触れない方がいいかと……」

 

「んー……けどよぉ」

 

 こそこそと話す二人に先を行く呉川小隊長が諫める。

 

「気になるだろうが、今はそれを言っている時ではない。どうにかしなければならないのは事実だがな」

 

「呉川小隊長……」

 

「はぁ、そうかい」

 

 気になりはするが今は触れない方針で、席へと急ぐ。

 人波を避けて席へと到着するとその周囲の人物に気づく。その人物達の方からこちらに声が掛かる。

 

「お、元君のCROZE部隊到着だね」

 

「あ、深絵さん」

 

 入嶋が顔を出して名を呼ぶ。同じHOWのSABER部隊の隊長、蒼梨深絵隊長が部下の隊員を連れて出迎えてくれた。

 あれから相変わらず、HOWの主力攻撃チームとして東響周囲のゼロン撲滅に励んでいるらしい。基地でもそれなりに会うのだが、それでも入嶋達は挨拶を行う。

 

「深絵さんもこっちの作戦参加なんですね」

 

「そうだね。とはいえ何人かは本部の防衛に置いて来てるし、何かあったら自衛軍の方でも対処してくれるから」

 

「でも、今回は深絵さんが作戦の指揮官というわけではないんですよね」

 

 クルスが訊ねると、深絵隊長は作戦司令の人物について言及する。

 

「そう。今回は私の恩師で、かつて次元覇院の衛星打ち上げ阻止の作戦「ホリンダウン作戦」でも一部指揮を執った須藤千司令が今回も指揮を取ってくれるんだ。ちなみに、ここの基地の司令さんでもある」

 

「あぁ、あのおっさんが今回も指揮だったな。とはいえ俺達は今回独自行動権もらっているが」

 

 元隊長も知っている辺り、親交は良いらしい。ホリンダウン作戦の時から指揮を執っていたなら当然なのかもしれないが。

 それにしても深絵隊長の恩師とはにわかに信じがたい話だ。もし狙撃のというのならあの狙撃技術の更に上を行くことだろう。同じ疑問に至った進が訊ねる。

 

「恩師って、狙撃の?」

 

「うん。元々狙撃はみんなからは得意だって言われていたんだけどどうにも自信が無くってね。でも千司令にアドバイスもらうようになって実感できるようになったんだ」

 

「へぇ……」

 

「お兄ちゃんまた言葉遣い」

 

 進の悪癖に文句を入れる真由。不味いと思った進が謝罪する。

 

「す、すいません……」

 

「いいよ。それより、元君とジャンヌちゃんの方が問題あると思うけどな」

 

 進への注意は程ほどに、むしろ問題があるのはこっちと元隊長とジャンヌ副隊長の方を指して言う。その指摘にジャンヌ副隊長が体を震わせた。

 元隊長が押し黙る。深絵隊長からしてもこの歪さには口を出したくなるほどだったのだ。

 深絵隊長はそのまま自分達の隊長に問う。

 

「どうしたの、二人が仲たがいするなんて」

 

「あ、ぅ……」

 

「問題ない。そんなことは」

 

「ないって言える?」

 

 いつものような朗らかさは鳴りを潜め、真剣な様子で元隊長へと問い詰める。隊長同士、というのもあるだろうがこれはきっと同級生だからこそ踏み込むという方が近い。

 怒りも込めた眼差しに元隊長は目を細めながら変わらず答える。

 

「……言えるさ。ずっと追い続けたやつがいる。これで、もう終わりなんだ、終わらせる」

 

「っ、あなたそれは」

 

「深絵さんっ」

 

 そこに声を上げて入る影。渦中にある人物のジャンヌ副隊長が二人の間に入った。遮る彼女に深絵隊長が戸惑う。

 

「ジャンヌちゃん……」

 

 震える声で、副隊長は言った。

 

「いいんです、これで。元々は、レイアさんを助けに来たんですから」

 

「でも、言ってたじゃない。ジャンヌちゃんは元君と」

 

「今、逃がしたらいつまたチャンスが巡ってくるか分からないんですっ!私達は、この瞬間をずっと待っていた……。ようやく、肩の荷が下りる」

 

「そんなことを言っているんじゃ!」

 

「お前ら、騒がしいぞ」

 

 と、そこに一人の男性が話に入ってくる。最初は単に注意をしに来た人なのかとも思った。が、元隊長や深絵隊長の反応で少し違ったことを察する。

 顔を見て、深絵隊長が目を丸くする。

 

「何を……あ、古橋君」

 

 知り合いを前にしたような反応。実際それは当たっており、元隊長が軽く挨拶をする。

 

「これはこれは、公安MS対策班の古橋じゃねぇか」

 

「その言い方、癪に障るぞ元」

 

「そりゃ悪かった。紹介しておく。こちら、警察公安のMS対策班班長の古橋 勇人(ふるはし ゆうと)

 

 やや無理矢理な紹介となっていたが、それを受けつつ名乗りを行う男性。

 

「古橋だ。一応こいつらとは同級生、四河の中学校の同窓生としてあのモバイルスーツ暴走事件にも巻き込まれた」

 

「あ、あの事件に……」

 

 慌てて敬礼で返す新人一同。だがそれだけでないことを続く元隊長との会話で明らかとなる。

 

「それで、そっちのガンダムの調子はどうだ」

 

「問題ない。今回でそちらの整備員にオーバーホールを依頼してもいる。万全で作戦を迎えられるだろうよ」

 

「えっ、ガンダムって……」

 

 入嶋のふとした疑問は、宗司達新人にも同じ反応を与えた。するとその中で事情を分かっている光巴が言葉の意味を教えた。

 

「実は警察組織にうちのカラーガンダム一機譲渡しているんだよね~」

 

「そ、そうなんです?」

 

「あぁ。ゲルプゼクスト、公安配属と共にお前達HOWから送られてきたガンダムだ」

 

 言葉の意味に納得する。だが同時になぜ送られたのかという疑問もあったが、それは実に単純明快なものであると、深絵隊長達が明かす。

 

「何せ私達の知り合いがこっちでMS対策のチームのリーダーになるって言ってたからね。私達もすぐに接触して色々便宜図ったんだよね」

 

「もっとも、本人は迷惑そうだったがな」

 

「当り前だ。いきなり来たと思えばMSを渡すなどと。しかもガンダムと来た。まぁその話は今いい。それよりだ」

 

 長くなる話を嫌って古橋さんは元隊長に今回の作戦について自分の意志を表示した。

 

「今回の作戦、俺はお前達にそのガンダムの配備の借りを返すつもりで来た」

 

「それはまた、真面目なことで。東響周辺のMS犯罪抑止の時点で返してもらっていると思うんだけどな」

 

 宣誓とも取れる発言に、肩を竦め、顔を横に振る元隊長。その様子にはいつも聞いて来たというような雰囲気が漂っている。

 警察組織の人間なら、そう言うイメージはついている。だからこれは別にこの人が特別真面目というわけではないのだろうと思っていた。

 しかし、それだけではないことを先程までの話題と絡めて古橋さんは言った。

 

「だが、今のお前の様子は見ていて気が良いものではない」

 

「っ……」

 

 古橋さんもまた元隊長とジャンヌ副隊長の不仲を問題視する。だが深絵隊長達よりは重大視していない、というより放任主義のように言って見せた。

 

「今は解決する気がないならそれでもいい。だったら今回の作戦が終わってからけじめを付けろ」

 

「……そう言ってくれると気が楽だ」

 

「あ……」

 

「むぅ」

 

 元隊長にとっては助け舟のようだった。対応が功を成す。その証拠に元隊長はこれまでの難しい表情をようやく崩し、ジャンヌ副隊長の肩を抱く。ジャンヌ副隊長も安心した様子で体を預ける。が、やはりそんな流れは良くないと深絵隊長は不満を見せていた。とはいえそれ以上の追求はしない。

 きっとそれが今の元隊長のメッセージなのだろう。これまでの反応の通り、今だけは見逃してほしいという。

 なら今は黙っているしかないのだろう。どれだけ言っても、これは二人の問題なのだろうから。物申そうとしていた様子のエターナの肩を持つ。

 

「エターナ、今はそっとしておこう」

 

「ソージ!」

 

「……下手に言うのも、その方が辛いかもしれない」

 

 宗司なりの言い訳だった。我ながら下手なものだ。けれどもエターナも認めるところがあったのか怒りの矛先を抑えた。

 他の面々もとりあえずはと言った具合で沈黙を守る。そこまで気遣って言える古橋さんに今は感謝しかない。

 と、その雰囲気に惹かれたのかHOWの陣営から自分達Gチームに声が掛かる。

 

「おっ、もうみなさん揃っているんですね~」

 

「あ!夢乃おばさん!」

 

 光巴がその人物の声を聞いて真っ先に反応する。光巴の言うようなおばさん、というには明らかに年齢が足りていないような気もする女性。しかしその人物が身に纏う夏用コートは元隊長や深絵隊長が纏っている物と同種のものだと判別できる。

 つまりはHOWの隊長クラス。光巴に呼ばれたその人物は苦笑いで発言を咎める。

 

「こらっ、私まだ若いよ~?」

 

「えへへ、でも私からみたら叔母さんでしょ?」

 

「言い方っ!他の人もいるんだからっ」

 

「えっと……この方は?」

 

 二人の仲睦まじさに戸惑っている入嶋に、元隊長が代わって答えた。

 

「彼女は鈴川夢乃。光巴の母、次元光姫の妹だ。さっきも言っていたが叔母だな。ついでに言うと緑のガンダムのパイロットでもある」

 

「は、元さん!その言い方やめてくださいよ~!それとついではないでしょついでは~」

 

 親し気に元隊長と話す夢乃さん。光巴の母親の妹ということなら納得だ。もっともそれだけではないということも続いて知る。

 

「それで、お前も深絵と同じで引退は視野に入れていなかったのか」

 

「ちょっと、それ遠回しに婚期逃してるって言ってるよね?私達に」

 

「元さんだって同じじゃないですか。妹のかほちーにお前は結婚しろって言っておいて、ジャンヌさんとまだくっついてないくせに」

 

「っ!」

 

 楽しい久々のお話、かと思いきや再びの核爆弾。ジャンヌ副隊長がまた思いつめた表情をする。それにすぐに気づいた夢乃さんが状況を尋ねる。

 

「あれ、ジャンヌさんどうしたの?」

 

「あぁ、夢乃ちゃんは知らなかったね。実は……」

 

 事情を知らない夢乃さんに対し、深絵隊長がこれまでの経緯を簡単に話す。先月の事も教えられて夢乃さんは顎に手を当てて頷く。

 

「なるほど、確かに心配しちゃいますね。けど理由が分かれば私としては勇人さんと同意見だなぁ」

 

「えぇっ!?」

 

「ほう、珍しいな」

 

 意見の一致に古橋さんが返す。夢乃さんは理由を簡潔に言って見せた。

 

「深絵さんの言うように、作戦に支障が出ると危惧する気持ちは分かる。でもそれは却って過保護な気はする。他人の心配する前に自分の心配ってね」

 

「……あぁ、なるほど。理屈は通ってるね。でもそれって私や夢乃ちゃんも言えてるよね」

 

「深絵さんや私と?」

 

「他人の恋路より自分達の恋路」

 

「そういう意味で言ってませんから!?かほちーからも最近言われるんですよ!?周りの隊員にも指さされて!」

 

 割とあっさりと疑心は解け、笑い話でジャンヌへの言葉の矛先を逸らしていく。DNLの波長は感じないが、それでも意図的にずらしたというのは感じ取れる。ジャンヌ副隊長もクスッと笑い、緊張を解いていた。

 余裕も見られやはり歴戦のエースと言うべきか。と、話がずれたと夢乃さんは元隊長やこちらを指さして言う。

 

「と、それは置いておくにしても、新人さん達、今回の作戦はあなた達が経験してきた中でももっとも大きいと思う。元隊長さんの手も借りられない状況になるはず。けれど安心して。私や、他のエース達が強敵は引きつける。自信を持って、作戦に臨んで!」

 

『は、はいっ!』

 

「俺は別に、新人って程じゃ……」

 

 入嶋やクルーシアと共に返答を斉唱する。進だけ自分は新人じゃないとぼやく。が、それに特に触れることなく、言葉を続ける。

 

「それから、元さん。ジャンヌさんとの不仲は触れませんけど、心配はしてますから。これが終わってから、というより、今回の任務をちゃんと果たして安心させてあげてくださいよ?今のままだと華穂ちゃんにまで呆れられますから!」

 

「心配じゃなくて、呆れか。ま、あいつが心配なんて似合わないだろうからな。言葉は受け取っておく。失敗なんて、考えないさ」

 

「それで今は良いですよ。はい、この話終わり」

 

 釘を刺しておいてある程度収まったところに、懐かしい顔が次々とやってくる。進を呼ぶ声が聞こえる。

 

「進、真由ちゃん」

 

「!輝義兄さん!」

 

「あ、輝お義兄さん、それに正お兄さんも」

 

 進、真由の故郷オース種命島の戦力としてやってきた大和輝さんと影義明さんがやってくる。名前からしてもう明沢正として戻っているらしい。それに引率される形で月子もいる。

 久しぶりの同郷との再会に進達が夢中になっている間に、もう一つの知り合いとも再会する。

 

「やぁ、宗司君」

 

「白さん、利一さんも」

 

 自衛軍の神鳴白、政岡利一もまたこの招集に集まっていた。個人的にはDNL同士ということで、あの時だけとはいえ良くしてもらっている。

 彼らがいるということは、つまり彼女ももちろんいた。

 

「はるばる遠路、お互いご苦労様だな、元君、ジャンヌ君、深絵君」

 

「あぁ、沙織さん」

 

「沙織さんお疲れ様です~」

 

 自衛軍極舞隊長新堂沙織、その後ろに引き連れた者には先日プールで一緒に過ごした友直さんと智夜さんもいた。彼女らもこちらに声を掛ける。

 

「宗司先輩、エターナ先輩、千恵里先輩にクルス先輩、光巴先輩もお疲れ様です」

 

「一々律儀やなぁ友直は~。先輩方も緊張してます~?」

 

「友直さんもお疲れ様」

 

「智夜ちゃんは大分余裕あるよね。羨ましい」

 

 彼女達も普段の調子を維持しつつこの作戦へ臨もうとしていた。前に共同戦線を張った時もそうだったが、ここに呼ばれるだけあって彼女達も実力は相応だ。

 これだけの戦力が整っているのなら作戦が失敗するなんて思わない。と、集合時間が来て部屋前方の方から呼びかけられる。

 

「えー静粛に。これより、明日のゼロン前線基地侵攻阻止、並びに攻略作戦「オペレーションヴァイス」の作戦確認の会議を始めます。各員所定の席まで……」

 

「時間だ。俺らは前の方で説明しなきゃならん。各チームのリーダーはこっちで確認を行っておけ。呉川はメンバーの保護者も頼むぞ」

 

『了解』

 

「了解です、隊長。Gチーム、静かにしているんだぞ」

 

 指示に従い、GチームはCROZE部隊に割り当てられたエリアの席に座っていく。

 全員が着席したところで参謀と思われる男性が会議の開始を宣言した。これが、初めてとなるゼロンとの大戦争、オペレーションヴァイスへの参加となる。

 

 

 

 

『今回の作戦はつい先日、ゼロンに侵攻の動き有りということで日本政府、自衛軍、そしてHOWが主導で行う防衛作戦である。が、予想以上に敵の攻勢を削ぐことに成功した場合、敵基地の奪還も視野に入れる構えだ』

 

 そのように説明する総司令官の須藤千氏。もうすぐ還暦を迎えると言うが、今回の司令役を買って出てくれた。

 会ったのが11年前。もしかするとこの作戦が最後の作戦になるかもしれない。そんな事を思ってもいたがもう一つ思うことがあった。

 彼の言った基地の奪還。確かに黎人達も視野には入れているがおそらく実行は去れないだろう。なぜなら今回の作戦は実質HOWの、俺の為の作戦でもあるのだから。

 向こうも承知しており、作戦概要の説明を参謀が引き継ぎする。

 

『作戦の流れに関しては既に配布されている資料で確認済みと思われます。が、同時進行するプランXに関してはHOWCROZE部隊所属のシュバルトゼロガンダムパイロットの黒和元に説明を譲渡します。元隊長、説明を』

 

「紹介に預かります、HOWCROZE部隊総隊長の黒和元です。それではプランX、レイア・スターライト奪還作戦に関して説明を開始します」

 

 スライドパネルを切り替え、ヴァイスインフィニットとそのパイロット情報が載ったモノを表示させた。説明を始める。

 

「そもそも、ヴァイスインフィニットガンダムとは、シュバルトゼロガンダムの兄弟機と推測されます。性能も似通っており、おそらくゼロンはもちろん、かつて我々がMSオーダーズの頃から敵対していたカルト教団次元覇院のMS技術確立の要因となった機体です」

 

 話を聞く隊長クラスから唸る声が聞こえてくる。「あの頃から」という単語も聞こえてきており、そちらに関しては当時からのパイロットが多い隊長クラスではMS技術の成熟性から納得するのは早いようだ。

 あの頃の次元覇院のMS技術はまだ拙さがあるとはいえあの時代においては驚異的なものだった。シュバルトゼロガンダムという対抗存在がいなかったならあのまま押し切られてしまっていた可能性も十分ある。

 その屋台骨となっていた可能性には元も当時気づいていたが、明確にそうだと確信したのは先月の遭遇時。確かな確信を持ったからこそここで明らかにした。

 確信に触れて更にパイロット情報について話す。

 

「操縦パイロットは黒和神治」

 

 名前が出た途端ざわつき出す。当然の反応だ。作戦を話している本人の苗字と同じ、血縁者と誰もが思っただろう。

 これに関しても宗司達からの追求があったことで予想は出来ていた。話したくはなかったものの、話さざるを得ない。重くなる口を開いた。

 

「彼は、俺の母が次元覇院に傾倒して引き取った養子です。無論そこに俺や妹の意志は介在されていない。言うなれば、勝手に引き取ったどことも知れぬガキだ。そいつのせいでうちの家族は死に別れることになった。血も繋がってない、なのに黒和家の後継者を名乗る、疫病神だよ、こいつは」

 

 口調を崩し、威圧を強める。もちろん言葉に嘘はない。アイツや、あんな母がいなければ父だって来たはずなのだ。

 言葉に含まれる怒りを分かる者は少ない。そう言っても理解しない、疑いの晴れないのは分かっている。それでも言わずにはいられない。

 それに今回知らせるべきなのはそこではない。話の筋を戻す。

 

「それは今回置いておくとして重要なのはこのガンダムに人質が取られているということ。本プランではその人質、異世界マキナ・ドランディアの住人のレイア・スターライト奪還が最優先事項となります」

 

 そこで多数の手が上がる。発言を許可し、質問を聞く。

 

『そのレイア・スターライトとは何者なのですか?』

 

「レイア・スターライトは向こうの世界での、一般人です。ですが、こちらにいるジャンヌ・ファーフニルと同じ学校で詩巫女と呼ばれるDNLの力を扱える人物の一人でした。その彼女をエンゲージシステムで強制的に捕らえ、こちらが迂闊に撃墜できない様にしつつ、そのエンゲージシステムの力を強制的に引き出す道具として扱っています」

 

 質問に応じてレイアのプロフィールについて明かす。詩巫女に関しては親しい人物や政府上層部にしか明かしていない。初耳という人間も多かったが、DNLの力を扱えることとエンゲージシステムの力を引き出すということで理解は進んでいた。

 今話している本人がその力を扱えるからというのも大きいだろう。シュバルトゼロの圧倒的性能はおそらく敵も味方もよく知っている。

 それらは分かった事だろう。手も降りていく。して、その捕獲方法に関して言及していく。

 

「これに対抗する為に、俺達シュバルトゼロガンダムパイロット・パートナーは特殊兵装、並びに特殊DNFによる敵エンゲージパートナーの奪取を11年前から計画してきました」

 

 奪還方法が表示されたスライドへと切り替わる。難しい理屈は後で理解してもらうとして、簡単に言えば接触した面から敵エンゲージシステムに介入し、引き摺りだすというものだ。

 普通ならあり得ない現象ばかり。実際元達もこれは理論の話で実戦はほぼ一度もない。いや、理論の一部を利用した戦闘も少ないが経験はしている。特にクルス・クルーシアの関わったDIENDを巡る事件で、システムに取り込まれた彼女を救い出すためのあれに近い。

 分からない者達に、今言える最低限の確定情報を告げる。

 

「成功率は不明、これはヴァイスインフィニットとの接触回数が少ない為想定だけの話になります。よってこの戦闘でそれらを計測しぶっつけ本番で作戦を完遂します。時間稼ぎをなるべく悟られない様にするべく、プランXは自分達シュバルトゼロのみで行い、戦線維持とメインの作戦進行、ゼロンの東日本進出阻止を全軍に担ってもらう動きとなります。つまり、本作戦でシュバルトゼロの支援はそう受けられないと考えてください」

 

 単機でヴァイスインフィニットを抑える。非常にリスクが高い選択で戦闘しながらの計測は困難になるものの、データの正確な計測ならこっちの方がいい。とはいえそのためには最大戦力を縛る形となる。敵の戦力の一つを抑えられるとはいえ、それでもタイプシリーズといった超常機体が残っている。

 それでも今は遂行しなければならない。今後のために、戦力低下を行うためにも元は彼らに言い放つ。

 

「戦線は任せます。どうか、奴らの猛攻を凌いでくれ。彼女を奪還することは今後俺達と別次元マキナ・ドランディアの人を繋ぐ架け橋になる」

 

 礼をしたのち再びバトンを参謀に返す。任せるという行為に嫌悪感がある故にほぼ終始丁寧語になっていたのは自覚している。

 それでも言わずにはいられなかった。架け橋と言う表現も間違っていない。彼女が奪還できるかどうかで再び戻れるかも決まる。

 果たして奴が一騎当千のエースか、はたまた番狂わせのジョーカーか、

 参謀からの話は続く。むしろここからが全体に向けた作戦指示だからだ。じっと聞き入る。隣のジャンヌのいたたまれない表情に背けて。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP60はここまでです。

レイ「うーん今回文字というか話が多いような……」

あ、久々のストーリー本編9000字越えです。とはいえ分割できなかったのでこのままなんですが。

ジャンヌ「なるほど?それで今回はまたあの因縁の海上での戦闘ですか」

境界線がそこになっているからね。衝突しやすいのはそこになるでしょというわけで。

レイ「メンバーも層々たるメンバーだね。黄色のガンダムと緑のガンダムまで登場だよ~。しかもパイロットも新しい人に夢乃ちゃん!」

夢乃さんはあの後外縁の敵侵入を阻止する部隊の部隊長を務めていたんですよね。とはいえそれでも東響に敵を入れてしまっているんですが」

ジャンヌ「それ、どこから入ってきているんですか?夢乃さんが裏切っている、とは考えたくないですが」

何処からなんでしょうねぇ(とぼけ)まぁそのルートも追々明かされる時は来るでしょう。そして黄色のガンダムのパイロット君に関してですがこれは完全に前から考えていました。

レイ「その割には名前が出てないよね。プロローグにもいないし」

ジャンヌ「プロローグに居ないだけで描写としてはいたんです?」

そこにも描写書いてすらいないんだよね(;´・ω・)でも居たので。彼は元君のタメで話せる友人であると同時に、宗司君とも関わりを持たせていくつもりですのでそこら辺は追々分かっていくはずです。

レイ「宗司君とねぇ~。あ、ちなみにだけど華穂ちゃんも子育て頑張ってるみたいだね!」

ジャンヌ「東響の方にいらっしゃるんです?」

そらそうよ。彼女の夫がMSオーダーズ時代からの同期って設定だし、彼自身HOWのパイロットとして働いていますからね。こちらものちに出てきますよ。

ジャンヌ「華穂さんは、残った唯一の肉親ですから、どうにかしてくれるといいんですが……」

レイ「でも母親になったあの子がどういう感じで登場するのかとか楽しみだよね~あと子供も!」

一応もとのキャラクターのイラストレーターさんがレイさんと同じだから何かしら絡ませたいところではある。と、雑談はここまでにして次話へと続きます。

ジャンヌ「それでは続きます」
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