機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、藤和木 士です。今回はEPISODE62のみの公開です。

レイ「珍しいねぇ、一話だけって」

次黒の館DNだからどうしてもキリが悪くなるの……(´・ω・`)

ジャンヌ「それは言えてますね。事前情報では今回はゼロン側の話だとか?」

その通り。大作戦を迎えるゼロンは東日本連合軍をどう迎え撃とうとするのか、思惑は一体……という本編をどうぞ。


EPISODE62 狙うエース・オア・ジョーカー5

 

 

 自衛軍、HOWを筆頭とする東日本勢力が決戦に向けて動いている一方、ゼロンもまた決戦のために動いていた。

 元々はここ最近進撃を行っている名護屋勢力の押し返しだが、そこにヴァイスインフィニットが参戦したのには訳がある。とある存在の指示によるものだ。

 指示をしたのは他でもない、あの男……意識だけの奴だった。

 

 

 

 

「……では、君は神治と君自身、そして君の機体に捕らえている少女でシュバルトゼロを必ずおびき寄せることが出来ると?」

 

『あぁ。奴と俺は惹かれあう運命。それぞれの機体に選ばれるものは、必ず逃がせない運命を背負う』

 

「運命、か。話には聞いているが、それに神治騎士官も当てはまると」

 

 初老の男性が画面に向かって話しかける。彼はゼロンの創始者にして、西日本のカルト集団の長たる男、零崎秀夫だ。

 その彼と話すのはこれもまたゼロンに欠かせない存在。次元覇院の頃から自衛軍、MSオーダーズ改めHOWに反旗を翻す者達に異世界のMS技術を提供し、自らの機体の隠匿を依頼した異世界のガンダムのOS「エンド」。

 彼らが出会ったからこそ、このゼロンが生まれた。日本の半分を飲み込むほどの教団が誕生した。これは過去の最大勢力「ラウル神聖教」に匹敵しうる。

 そんな彼らが話しているのは次の一大決起作戦「名護屋『偽装』攻略作戦」について。偽装、というのは攻略そのものがとある目的のカモフラージュであるためだった。

 その目的とは他ならぬ魔王、エンドが宿るガンダム、ヴァイスインフィニットと対となる「シュバルトゼロ」の撃破を狙ったものだった。

 周囲ではその会話を聞いていた多くのゼロン幹部達が、議場に並べられた席へと座り、攻略作戦の概要について話し合う。

 

「偽装作戦とは、まどろっこしい。下の者にはそのまま襲撃することを伝えているのに」

 

「わざわざ当日の指示を最優先にと言ってはいるが……これで勝手に動かれては台無しだな」

 

 信者達をまとめる神官の何人かはそう愚痴をこぼす。だがそうでない者達もいた。

 数少ない理解者である蒼穹島管理者「真藤 史丈(ふみたけ)」が言う。

 

「だが、あのガンダムの無力化は必要だろう。うちのタイプシリーズすらも袖にされる」

 

 タイプシリーズ、イグジストとディナイアルのことだ。パイロット達は順調に成長していたが、それでも「今は」あのクローザーに立ち向かうのは厳しいとされていた。

 現在蒼穹島勢力ではそれに対抗しうるエースパイロット、史丈の息子真藤一真の新たな専用機の開発にいそしんでいる。それが無ければ対抗できないと踏んでのことだ。だがゼロン本部は本部で、今のままでも問題ないとしている。

 その要因であるゼロンのタイプシリーズのパイロット、ジョセフ・ゼロン・ガドナーが史丈の言葉に反論する。

 

「それはあの未熟なパイロットに任せているからだろう?カズマやコウジがまたあの機体に乗ればあんな程度は造作もない。俺とリズンでもいい」

 

「それは出来ん。またイグジストに一真を乗せれば、余計に症状が悪化する。ただでさえ新型のU(アルティメット)タイプシリーズに乗せようとしている。その前に果てる」

 

 実の息子に最悪の無茶をさせられないとする史丈司令。人の親として、もっともな意見だ。ゼロンとはいえその意見は無視することは出来ない。それに真藤一真は確かに強い。その新型に乗せるまで無理はさせられないだろう。

 だがゼロンは様々な考えを持った者の集まり。ジョセフと同じ考えを持った者も存在した。

 

「なら、果てる前に奴を潰すのは理にかなっていると思うが」

 

「ハリヴァー君」

 

 真紅の流星の再現たるクローン人間、ハル・ハリヴァーが言った。彼は先月、シュバルトゼロの新たな姿、クローザーと対峙した数少ない生き証人。

 クローザーの脅威を知る者の中で一番経験のある彼は意見の根拠も示した。

 

「奴の力は異常だ。既にMSの域をタイプシリーズとは違った意味で超えている」

 

「君が言うほど、か」

 

「まだ戦える、などと言っていたその白きガンダムのパイロットである騎士官ほど軽薄ではないのでね」

 

「っ、貴様、まだそんな世迷言を!」

 

 同じく話し合いの場にいた件の白のガンダムパイロット、黒和神治は声を荒げてその言葉を否定した。

 神治は今もあの判断が間違いだと思っていた。今のハリヴァーと同じように、一刻も早く奴を殺したかった。にも関わらずそのハリヴァーに引けと言われたから引いたというのに、と。

 かつてとあべこべの事を語る彼を引き合いに神治が長にして親代わりの零崎へと上申する。

 

「零崎代表、こいつは私があの場で奴を葬ろうとした時その絶好の機会を逃したのですよ!?それを今さらになって早いうちに始末をなど……!」

 

「ふむ、それは確かに訊いたが、それについて申し開きは?」

 

 ハリヴァーへと尋ねる。ハリヴァーは質問に対し当時と今の状況とで答える。

 

「あの時は生きて情報を持ち帰ること、何よりヴァイスインフィニットの彼を生きて帰すことが私の任務でした。撃墜よりも、そちらの方が何よりも優先される。現にこうして奴の危険性について話すことが出来ている。では、不満ですか?」

 

「何を!それ以前の……」

 

 意見を押さえつけようとする神治に手でかすかに制すると、向き合って答える。

 

「不満はないさ。事実の確認をしたまで。で、その時は無論、かの魔王の撃墜は意識したのであろうな?」

 

 そこで尋ねたのは意志の確認。魔王を前にして倒す気はあったのか、という問い。問いに対してハリヴァーはもちろん、と答える。

 

「はい。気持ちだけは。口惜しさを噛みしめ、そのうえで彼と共に撤退しました。今の私達では勝てない、強く痛感して」

 

「なら、それでいい」

 

「それでいいなどと!私達は撤退したんですよ!?敵を前にして、逃げて……」

 

「落ち着きたまえ、神治騎士官」

 

 オールバックの髪型の男性、シャア・アライバルが熱の入る神治の仲裁に入った。ハリヴァーと同じ声を持つ男。ハリヴァーのオリジナルである彼が、己のクローンであるハリヴァーの、ひいては話を聞いた零崎の考えを諭す。

 

「君はおそらくだが、負けることが嫌い、いや、許されないと思っているね」

 

「そんなの、誰だって同じだろ!負けるのなんて……あなたは違うって言いたいのか!?」

 

「いいや?私、いや、ここにいる者すべてが負けるのは嫌いだろうな」

 

 そう、負けるのが嫌いな者はいない。ここに限らず、おそらく自衛軍やHOWの人間も同じことを言うだろう、人類のほぼすべてが思う共通の思想。

 争いという話題で唯一どんな人間でも共通するだろう。とても皮肉なものだ。ならばシャアは何を言いたいのか。零崎はなんとなく予想が付いていた。シャアは零崎の思う言葉をッ代弁する。

 

「だが、負けは嫌いでも、許されなくとも認めなければならない。もっとも私もかつては君と同じように認めたくなかったがね。いや、今もか。負け、いや、若さゆえの過ち、驕りを」

 

「くっ……」

 

 シャア・アライバルの過去、彼はかつて熱心なMSパイロットとして自衛軍で別の教団を相手に戦ってきた。零崎もなぜその彼がこちら側にと思ったが、その熱さこそが理由と知った今では心を許す同志としてその手腕を振るってもらっている。

 それに関しては聞き手であったハリヴァーも同意する。

 

「そうだな。負けを認めるのも必要だ。ただ認めて次に生かす。それが大人の特権だろう」

 

 これもまたシャアのクローンだからこその一致か。しかしシャアはそれが明確に自分と違うことを指摘する。

 

「ただ認めるのと、苦しく認めるのとでは違う。君の言うそれは諦めだ。初めから諦めているのでは成長も出来ない。彼の悔しさは彼の人生でかけがえのないものとなりうる」

 

「熱意……私のオリジナルはまだ持っているんだったな。だが、私は生憎、そんな不安定な人々の波に埋もれた物を信じようとは思わない。君が持っていることに異存はないが、彼は重要な戦力、感情に絆されるのは良くない」

 

「それもまた、君の感情だろう。クローンだとしても、お前はお前なのだから問題はない」

 

 クローンだとしてもそのすべてを受け継いでいるわけではない。それはいい意味でも悪い意味でも言える。全く同じ人間が生まれないこと、個性があること、偏見への対応、どう受け取られるかもまた扱う者の腕次第か。

 そう言った意味ではシャアとハリヴァーの関係は表向き良好なのかもしれない。一線を越えずに、互いの主張は認める。腹の内は分からないが、それはシャアに任せよう。

 そう言う意味ではゼロンにおけるクローン製作者であるギルボードが言いそうだが、彼はそれに触れることなく話の脱線を指摘した。

 

「クローンや神治君の苛立ちはさておき、作戦の方に話を戻さないか?」

 

「そうだね、ギルボードの言う通りだ。では本題へ戻そう。シュバルトゼロの撃破、それが今回の作戦のプライマルターゲット。しかし多数対一で襲い掛かったところで、狙いに気づかれて撤退される。加えて他の戦線が押されるだろう。そこで」

 

 事実を認めたシャアは本来の議題である作戦におけるシュバルトゼロの対処について、決まっていることを通達する。

 

「シュバルトゼロと直接対峙するのは、ヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスだ。他の者はその舞台を整える」

 

 通達にどよめく一同。だが零崎は冷静だった。いや、正確には自身が「そうさせるようにと提案したから」だ。

 言った時にはシャア本人からも正気を疑われた。だが確かな理由を以ってそれが確かな命令だとした。シャアもその理由を明かす。

 

「これは、零崎代表の言葉である。魔王と対となる我らが救世主。ならば、潰すのもまたそれしかない。因縁ならば因縁で決着を付けるべし。同時に、彼自身の成長を促すためでもある。一対一の対決の為に、ガンダムが指揮している新型ガンダム達のチームを抑えるチームも構成した」

 

 彼とは他でもない、神治の事だ。ヴァイスインフィニットを起動できるようになったとはいえ、まだ戦士としては未熟。もっと場数を踏む必要がある。それにしては重すぎる気がしないでもない。が、その本人がそれを望んでいる。

 実際に話を聞いていた神治は目を輝かせていた。願ってもいない機会に目がくらんでいる。

 だがそれだけで挑ませるほど零崎は愚かではなかった。続けてシャアが自身の言葉を更に代弁する。

 

「先程も言ったが、我々は彼の為に戦場を整える。シュバルトゼロを彼の下へ誘導し、また撃墜されないよう支援する。だが言ったように決着は彼自身の手で取らせる。決して撃墜の支援などはせぬように」

 

「つまりはお膳立て、ということか。面倒な」

 

 シャアの言葉に真っ先に愚痴をこぼすジョセフ。他の神官達も口々に手間がかかると漏らしていく。シャアはその事実を認めつつ、彼らを諭す。

 

「手の掛かるのは事実だ。英雄象はこうして作られる。しかし、それに貢献したという事実は何にも代えがたい、なおかつ直接相手にするよりリスクは少ないだろう。もっとも死ぬリスクはそのままだが」

 

「フン、物は言いようだな。もっとも俺は死ぬわけがないが」

 

 ジョセフはシャアの言葉を鼻であしらう。しかし他の神官達はなるほどとその捉え方を好意的に見る。

 人は地位に固執しがちな生き物だが、その道は決して一つではない。英雄の片腕という腰ぎんちゃくのようなものでも、人によってはいい場合もある。

 神治は気に入らないかもしれない、と思ったが別にそんなことはなかったようだ。それよりもようやく自分の手で因縁の相手を殺せることに打ち震えていると言った具合。心配も兼ねて指示の確認を代表自らが取る。

 

「よいな神治。お前の為に皆動いてもらう。迷惑を掛けることは出来んぞ」

 

「代表、必ずや報いて見せます。奴を討ち、ゼロンの理想を果たすために!」

 

 これではまるで殉教者だ。ゼロンの他の者達も大抵がそれを望んでいる。死んだとしても使い道があると。そして彼自身も自らの体が貫かれようと奴を貫ければそれでいいとさえ思っている節がある。

 だからこそ、シャアには気を配ってもらいたい。無論彼にも止めてもらいたい相手がいるのだが、それでも最低限彼が必ず守られるように、彼が無事に帰ってくることを命じる、信者達を信じるのが後方指揮官である自分に出来ることだ。

 小さく、シャアがこちらに耳打ちをする。

 

(これでは道化ですね)

 

(神治にはそれを押し退けて欲しいものだ、この戦いで学んでくれれば)

 

(そこはガンダムにも期待する他ないでしょう。護衛と誘導にはハリヴァーと一真を付ける予定ですので)

 

(あぁ)

 

 密談を終え、前を向き直る。席を立って幹部や神官へと呼びかける。

 

「諸君、不満は多いだろう。いくらガンダムとはいえ、まだ生意気な子どもをと、思う者も少なくないはずだ。実際、まだ若さが故の生意気さが残っていると親代わりの私も強く思う」

 

 バッサリと言い切った発言に頷く聞き手。言われてしまっている神治は物申したい表情をしていたが、親代わりの自身に強く言えない様子で聞くだけだ。

 その性格を何とかしてほしいという想いも込めて、今一度幹部達に告げる。

 

「だが人間誰しも最初は小さく愚かだ。彼を導くこともまた君達にとってかけがえのないものになるはずだ。一人の大人として、我らが教団の子を救ってほしい。もちろん敵を全力で迎え撃つ布陣をしている。各戦場の者達も全力で当たってもらう」

 

 届いたかは分からない。だが反対意見は出ることなく、会議はそのまま順調に進んでいく。

 

「先にも申したようにガンダムチームに対抗するためのチーム、アンチガンダム部隊にも新人パイロットが数名入る。彼らの総括は、ギルボード神官、任せたぞ」

 

 シャアが返答を問うと、頷くギルボード。ガンダムチームのパイロットについては既に情報が集まっている。何という幸運か、かのチームはいずれも我らゼロンに、彼らを揺さぶるであろう人物が集まっていた。

 彼らを立たせれば、強力な壁として機能するだろう。卑怯、と取られるかもしれないがこれもまた運命だ。

 そのために新型も用意した。彼らの働き、期待は充分だ。

 果たしてあの自衛軍はどう向かって来るのか。それを後方でゆっくりと見せてもらおう。

 

 

 

 

 会議が終わり、神治はゼロン前線基地「四河港ポート基地」の廊下を歩いていた。歩きながら先程の会話を思い返していた。

 

(実際、まだ若さが故の生意気さが残っていると親代わりの私も強く思う)

 

 零崎代表から、あんなふうに言われるなんて思っていなかった。自分の中ではもっと優しく「奴を存分に殺せ」と激励されるとばかり思っていた。

 それはかねてから神治が願っていたことだった。以前も「その強い意志、忘れるなよ」とほめてくれたというのに。

 これが戦場に出る事、だったとしても彼の言葉は納得できない。もう戦場に出れるのだ。子どもなんかじゃない。人を殺せる一人前の兵士だ。

 それを示すためには、やるべきことはただ一つ。だが、すぐに取った行動はすれ違ったゼロン信者への咆哮だった。

 

「なぁに笑ってんだよ!救世主の前でッ!!」

 

「きゃぁあ!?」

 

「何よ、この短気~!!」

 

 すぐさま信者達はこちらから逃げ出していく。その様子にご満悦になっていると、懐から声がする。

 

『……そうやって、また半人前の要素を盛り込んでいくのか、神治』

 

「っ!……またお前か、お前のせいじゃないのか、エンド」

 

 聞こえてきた声の主、取り出したセットバックル……ではない、インフィニットスターターに向けて苛立ちを吐く。そこに誰の顔も映っていない。しかしそこには確かにガンダムのOSたる存在、元英雄の一部のエンドがいる。

 こいつと出会ったのはずっと前、ゼロンが結成された直後だろうか。その時から俺の事を「こいつに相応しい」と言っていた。そう言った割には一々自分の行動に難癖をつけてきていた。

 英雄だか知らないが所詮は機械の中に残った古い知的生命体の残滓、聞く気もないとしていたがそれでもこいつはしつこく言って来る。今日もそうだ。

 

『おいおい、そういう自分の過失を他人に押し付ける性格が、味方にも敵を作っているんだぞ?』

 

「何が味方だ。ほとんどが自分の支配欲を丸出しじゃないか。そんな輩、零崎代表に近づけるのだっておこがましい」

 

 実際神治の見立てではギルボードやハリヴァー、蒼穹島の勢力は怪しい。ジョセフは比較的性格を表に出す機会があるためか、気を張らずに敵として見れるが、先に挙げた者達は中で何を考えているか分かったものじゃない。

 DNLという力を使っても漠然としたものしか見えなかったり、ジャマーに邪魔されたり。ほぼ唯一心を許しているであろう一人のシャアに力の使い方は教えてもらっているが、それでも奴らの思考は読めなかった。

 シャアも「彼らの考えは読むモノではない。君自身が確かめるモノだ」と言われ放っておかれた。怪しいのに組織を追い出さないこの現状に神治は苛立ちを隠せずにいた。

 けれども、それもきっと杞憂だろう。この戦いで自身の力を証明すれば、きっと同意を得られる、嫌でも力を認めざるを得ないはず。完璧な考えだ。

 神治の完璧と自称する考えを見透かしたのか、エンドはため息と共に毒を吐く。

 

『単純だな、お前』

 

「なんとでも言え。勝てば官軍、だろう?」

 

 そうこうしている内に施設のとある一角へと到着する。ここは第0実験室。普段は稼働していない区画である。

 外部からの研究材料が届いた際に運用される一室。かつては修復途中だったヴァイスインフィニットもここで研究されたという。

 そんな一室を訪れたのは単に懐かしさをエンドに教えてやる、などと言った気遣いなどではもちろんない。今この部屋はとある理由で使っているのだ。

 部屋のロックをカードキーで解除する。部屋に入ると薄暗い闇の中に照らし出される水槽が一つあった。中に浮かび上がるのは一人の少女の姿。

 彼女はヴァイスインフィニットと共に齎された存在。次元覇院やゼロンに次元粒子を操る存在がいることを教えるためのサンプル、そしてシュバルトゼロにとって一番効く人質兼ヴァイスインフィニットガンダムの機能を生かす人柱の少女だ。

 かつてはスターターの機能の一つ、セレクトカードに閉じ込めていたのだがそれでは人質の体が持たないとされ、今ではこのように専用の水槽へと定期的に転送・保存されている。

 当初は面倒なパーツと思っていた。酷使してやらなければまともに戦闘も出来やしない不良品。あまつさえ抵抗の意志を示すのだから、懲罰し、余計に消耗を速める結果だ。だが先月の戦いを通して分かった。このパーツは使えると。

 先月の戦いを思い起こしてほくそ笑む。

 

「そうだ、こいつがあればあの憎き魔王を追い詰められる。奴を討った時が、お前の最後だ……!」

 

 水槽の中にいる、レイア・スターライトに届かないであろう言葉を投げかける。人質として、ヴァイスインフィニットを勝たせるための部品には、まだ持ってもらわなければ困る。

 果たして魔王はどんな助けを乞うだろうか。もし戦いの中であいつが負荷でこの女を殺したなら、どれだけ無力さに打ちひしがれるか。かつて自分が味わった、目の前で親しい人を殺された時の気持ちを、あいつに味合わせてやる時を思い、笑いがこみ上げてくる。

 

「ははは……お前も味わえよ、敗北の屈辱を!俺の11年間の苦しみを!!」

 

 誰も答えない水槽の前で、その時を待ち遠しく叫んでいた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP62はここまでです。

レイ「ゼロンの親玉、教祖の零崎秀夫の登場かぁ。もう名前は出てたんだけどね~」

ジャンヌ「狂った教団の教祖、だからこそのあの冷静さなのでしょうか。けれどそれにしては神治への態度がそっけないようになったと見受けられますね」

まぁ言ってしまえば期待しているからこそ律させているという見方にも十分見えるかと思います。神治を救世主と言う象徴に立たせようとしているのですから救世主らしい人物、それこそ今のまま進んでいって復讐一辺倒、最近の作品で言うところの増長した勇者にならない様に矯正していくわけですよ。自分の考える理想の為に判断を下す。そう言う意味では零崎秀夫は冷酷非情とも言えるかもです。

レイ「そう、なのかな。けどやっぱり象徴にするって考えは昔のドラグディア、マキナスとかと同じ発想だし、道が分かる気もするなぁ」

ジャンヌ「それ、逆にシュバルトゼロや元さんも当てはまるってことですよね?」

救世主と魔王はどっちも象徴よ(´-ω-`)いがみ合ってても本質は同じなのよ。それを今章、そして次章でも描いていくんだから。

レイ「それ絶対今言うことじゃなかったって~」

ジャンヌ「ちゃんとあとがきまで読んでくださるといいですね……」

レイ「ってそこで終わりそうになっちゃったけど、私!私モデルのキャラのレイアちゃんが言葉にしたらサービスシーンみたいな酷いことになってるんだけど!」

まぁ、人質ですし。ああいう扱いもあるでしょう。

ジャンヌ「私としては全てが終わってからじっくり問い詰めたいところですね……覚悟はよろしいです?」

駄目です。そこは元君達の戦いに期待してあげてください(;・∀・)というわけでここまでです。

レイ「次回の黒の館DNもお楽しみに~」

ジャンヌ「フフフフフ?」
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