機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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ど、どうも皆様、若干更新ペースが乱れているかな?と思った方、正解です。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ。……それで?遅れた理由って?」

貴方達は知っているでしょうに……(´・ω・`)

ネイ「まぁ、そうですね。……家の問題で忙しかったとは……」

グリーフィア「私達の家の問題に引けを取らないわねぇ。しかも元凶が元凶だしねぇ。聞いて、しかもその眼で見てる時期に当たるジャンヌ達の感想からも、最低よね、貴方の母親の実家」

正直言って、ただの我儘言う大人の皮被った子どもだと思ってます。(# ゚Д゚)さて、そんなつまらない話は置いておいて、EPISODE22、公開です。

ネイ「えぇと……確か前回は……元さんが凄まじい特訓の量が課せられたんでしたっけ?」

イグザクトリー。

グリーフィア「それで今回はその後、しばらくしての話なんでしょ?すっぽぬかすわねぇ」

まぁそこはね?さて、決戦直前の問題が明らかに?それでは本編へ!


EPISODE22 決闘宣言3

 

 

 グリューネ・ロードが実父ヴァルト・ロードによって掛けられた、ネア・ラインの無実の罪を払うべく持ちかけた、ナイトバトルの宣言から5日が過ぎた。その情報は瞬く間に国内を席巻した。

 ナイトバトルに対してもだが、それ以上に市長とその娘による争い、そして父親が隠し子に自身の罪を擦り付けたというのも更にニュースに拍車をかけていた。特にグリューネや、ネア、そしてナイトバトルのグリューネ側の輩出者である元の通う聖トゥインクル学園は、校内中がその噂で持ち切りだ。休み時間も、ネア・ラインを除いた関係者の周囲には多くの見物客の如く、生徒達が押し寄せた。その騒動に教師達もお手上げ状態である。

 噂の嵐が巻き起こる学園は、授業が終わった後も収まらなかった。最初の2日も慌ただしく彼らの下へ人が集まり、グランツの指揮下にあった軍の人間がその暴動を鎮圧せざるを得なかったほどだ(呼んだのはローレインである)。

 そんな中から無事脱出した後も彼らの苦労は終わらない。グリューネはグランツの下で計画の状況確認と調整、元とジャンヌは基地まで行って訓練とその見学兼勉強……。元の訓練メニューもまさに地獄のようなスケジュールだ。

 無理もない。何せ二つ名持ちのMS装依者を素人が1週間で相手に出来るようにしなければならない。初日はそのまま基地で泊まっていったほどだ。そして学校でも暇さえあれば戦術理論の教科書による自習とやることは多い。それでも元がメニューに喰らい付いて行ったのはひとえにネアの存在があったからこそだろう。ジャンヌも元の為にと、学校や家ではなるべく自分で問題を解決し、基地での訓練後には差し入れをするなどしていた(もっとも本人はネアへの差し入れのついでと強く言っていたが)。

 そんなこんなで5日目の日曜日を迎えた。これはその休憩の合間を縫って描かれる、決闘の勝敗をも分けるかも知れぬ話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!へぁ!!」

 

「むっ。はっ!」

 

 突き出した元の模造刀を、ゼントが自身の模造刀で受け止める。受け流して打ち下ろす構えを取るゼント。だが、その攻撃を元はそのまま勢いよく前転して回避、地面に足を着けると同時に切り返してその刀を振るう。

 お互い、一歩も退かない戦闘を繰り広げる。もちろんこれは訓練であり、怪我もしない。しかしそれぞれの鋭い閃撃、そして元の出す威勢の良い声が実践を感じさせるほどの雰囲気を出していた。

 まだだ、気を抜くな。今は押してはいるけど、押すだけじゃダメだ。今度こそ……打ち込む!!

 強く心の中で宣言すると同時に、元が動いた。連続した剣戟のパターンから一気に相手の模造刀に押し込みをかける。ゼントはそれを避けるように模造刀でそれを受け止めつつ後退していく。その状態で元は一気に模造刀を横に薙ぐ。それに流される様にゼントの刀も横に弾かれる様に退く。しかしゼントはそのまま空いた左腕を伸ばした。

 

「甘い!」

 

 一声を掛け、タックルの要領で元に拳を向ける。今まで何度も喰らっていたその拳。元は訓練の間幾度もこの拳にやられていた。最初は走り込みの訓練メニューからこの実戦形式の練習で、模造刀を用いた訓練ということで刀に意識を向けていたら、いきなりこの拳を喰らったものだ。いきなり走り込みをしてからの一撃は、とても聞いたのを今も覚えている。何度この拳にKOされたことか。

 しかし、元もそれらを通して考えた。様々なパターンで放たれた拳に対して、その対抗策を何度もシミュレーションをした。そして、元の体が動く。模造刀を逆手に構えなおして、地面に対して垂直に体の左側に立てる。そしてそれを軸にして体を急旋回、拳を回避する。

 何とか拳を回避した元。だがゼントの右手に持った模造刀がラリアットのように向かってくる。それを飛び退いて回避して、また突撃する。

 

「うぉぉぁぁぁ!!」

 

 雄たけびを上げる。その状態で振り下ろした模造刀が、ゼントの右手の上から刀を叩く。勢いよく叩いた手から刀がこぼれ落ちる。それは大きな隙だ。

 

「ぬぅ」

 

「今っ!!」

 

 元はそう声を発して懐に飛び込む。そして刀を振り上げた。しかしそれを見越す形でその右手の上から、ゼントの左拳が直撃し、刀を落とした。痛みが走る。

 そしてゼントは退いた形となった右拳を構える。溜めから放たれた拳は、ハジメが左腕前腕で受け流した。しかしゼントはそのまま押し倒そうと左手を元の肩に置き、体重をかける。そのまま元の体が押し倒される―――それでも元は諦めず、足に力を込める。

 

「っぁあ!!」

 

「ぐお!?」

 

 力を込めた右足が、ゼントの左わき腹を直撃する。それでもゼントは倒れない。だが左手の力がわずかに緩んだ隙に、拘束を跳ね除け逆に彼の左肩を掴む。流石に元が押し倒すのは難しい。正直言って模造刀のない状況で元がゼントを倒す可能性は低い。ところが元は、悪あがきの如く右手に力を入れる。拘束するのではなく、足掛かりとして既に蹴り込んでいた右足を上げ、跳び上がる。

 垂直方向への跳躍。右手を支えに、その状態からガンドの右側頭部に力を振り絞った蹴りを入れる。

 

「ぁあ!!」

 

「うぅ……」

 

 蹴りの勢いが強く、反動で投げ出されてしまう元。訓練場の床に強く打ちつけられる。何とか近くにあった模造刀を杖代わりに立ち上がる。まだ戦闘は終わっていない。立たなければすぐに追撃が来るからだ。

 

「はっ……はっ」

 

 息も絶え絶えとなって見据える元。しかし、ゼントは側頭部を抑えて数秒してから、制止の声を掛けた。

 

「よし、ここまで。生身でこれだけ出来れば上出来だ」

 

「え……つまり……?」

 

 呆然となる元に、ゼントが証とも呼べる声を掛ける。

 

「これならMS戦でも、ガンダムの性能を含めて互角に渡り合えるかもしれん」

 

「っ!本当ですか!!」

 

 それは待ち望んでいた言葉だ。アレク・ケルツァートに対等に張り合える。その喜びで地面に膝を着いてガッツポーズを取る。

 とは言ったものの、まだまだであることをゼントは告げる。

 

「だが、まだ目安となる点に着いただけだ。後は合間に刷り込んだMSでの戦闘技術と、今までの感覚とを合わせて精度を可能な限り磨いていく。今は体を休めろ」

 

「は、はいっ!ありがとうございます」

 

 模造刀を杖にしてちゃんと立ち直し、礼をする。ゼントがその場を後にすると、入れ違いにジャンヌが駆け寄ってくる。倒れそうになる元の体を支えて、その顔をタオルで拭いてくる。

 

「もう、無茶して……大丈夫なんですか?」

 

「えぇ。ただもう1発来られたら、本当にまたKOするところでした……。短期間で並行してとはいえ、体力付けておいて正解です」

 

 差し出されたドリンクボトルに口を付けて、元は言葉を返す。来訪直後に伝えられた走り込みとこの地下訓練場までの駆け下り。あれは体力を付けるためのメニューだったのだ。とはいえ、いきなりそれだけのメニューは本当にきつく、初日は疲れて基地で眠ってしまうほどだった。最初の2,3日はそうだった。

 しかし4日目、つまり昨日からそれらをこなしつつ、すぐに実践演習でも耐えられるほど、体が追いついてきた。当初より走り込み数の調整や、次の行動への間隔を開けたりもしていたが、それでも初日よりも断然体力が付いてきた。そしてこの休日2日間をほぼ訓練につぎ込んだことで、今回の第1目標点に到達した。

 ゼント大佐……最初はあまりのハードなメニューに殺す気かと思ったけど、色々と挑発されて、結局ここまで来れた。まだ先があるとはいえ、感謝しきれないな。訓練もちゃんと目的に合わせて調整してくれていたみたいだし、全部終わったら改めてお礼を言わないと……。

 そのようなことを考えると、自然と口元が緩む。と、そこに自動ドアを通ってやって来たのはガンダムの整備を担当していたヴェール。彼女は訓練の終わったこちらに声を掛けて来た。

 

「ごめん、2人とも。ちょっと来てもらっていい?無理なら少し時間を置いてからでもいいんだけど……」

 

「ヴェールさん?俺は構いませんが、何か?」

 

 元は頷き、ジャンヌとも顔を合わせて2人でヴェールの後を付いて行く。ヴェールは現在、ガンダムの修復もとい改修作業を行ってくれている。その彼女が呼び出すので、何かガンダムの方で問題があったのかもしれない。

 致命的な問題だけは無いことを祈りつつ、元はジャンヌと共にヴェールに付いて、基地の更に地下、地下10階へと向かった。

 

 

 

 

「それで、何かあったんですか?」

 

「用件がまだだったね。ちょっと機体のシステム系統をチェックしていたんだけど、ちょっとエラーが出ちゃって……ハジメ君は何か知っていないかなぁ、って」

 

 行く途中で話を切り出したハジメとヴェール。ジャンヌはその2人の姿を後ろから見つつ、話しに耳を傾けていた。

 流石にわたくしでも軍事技術とかの話はよく分からないわ。けど、少しくらい聞いておいた方がいいってこともありそうですからね。聞いてもいいかなって。

 そんな気持ちで2人の話を聞くジャンヌ。内容からして厄介なことになっていることは分かる。ハジメは頭を掻いてヴェールの言うエラーについて心当たりを探っていた。

 

「うーん……一言にエラーと言っても……。どういうエラーなんですか?」

 

 とはいえ、流石にハジメも分からず、逆に聞き返す。エラーの内容をヴェールが分かっている範囲で詳しく伝える。

 

「えぇと……ジェネレーター後方の、バックパックで封鎖される部分からアクセスできる部分に入れる、SEED-UNIT00ってパーツの交換でエラーが出てるの。あ、2人は「龍の愛」って知ってる?」

 

「龍の……愛?」

 

「……それって、あれ、ですよね。あの……その……」

 

 ヴェールから語られた龍の愛という単語。ハジメは全く知らない様子だが、ジャンヌには聞いたことがあった。

 それは創世記の時代から伝わる、竜人族が生み出す結晶体のことだ。生成方法は現在伝わる物にはとある方法で生み出す原初型と、工業技術で再現量産型が存在する。しかし原初型はジャンヌもその方法を口にするのが難しい、というより恥ずかしいものだ。

 そんな彼女の羞恥をヴェールも代弁する。

 

「あぁ……竜人族のこの頃の女の子としては言いづらいよね……。ハジメ君にも分かりやすく言うなら、性的行為をして出来るものなの」

 

「……え、いや、何で?」

 

 ハジメは聞き返す。それはまるで、まったく想像しなかったモノが現れ、何故出て来たのかと問うようだ。ハジメは竜人族ではないから知らないのも無理はないが。

 もっとも、ハジメの反応は予想通りと思っていたようで、ヴェールは彼が理解しやすいように、簡単な説明を目的地のドアの前で行う。

 

「んー……なんていうか、お互いの好きって気持ちで竜人族が持つ固有魔力っていうのに作用して、それらが結びついて出来るっていうものなの。なんていうか、私達にはそれが常識?って感じなんだけどね。分かる?」

 

「……とりあえず、生理現象ということなんですね?大体は……」

 

 未だ怪訝そうな目をするも、事情は分かったとハジメは返す。この数日でハジメの理解力の高さはジャンヌも理解していたが、それでも今までMS(本人によればそれに近いものは見たとのこと)や魔力について全く初心者の彼ではその理解にすべて付いて行くのも無理がある。

 だが物事は実物を見てからの方が速い。ヴェールはドアのロックを解除して中へと招き入れる。

 

「……うん、それでガンダムのDNジェネレーターには、それのパーツを組み込むためのスペースがあるの。それで前にあったのが壊れていたから、量産品の物と交換したんだけど……そしたらシステムを含めて、こうなっちゃったの。見てくれる?」

 

 2人への当時の状況を語り、機体前まで案内するヴェール。機体の整備を行っていた整備士から、機体に直結したメンテナンス用端末を受け取ったヴェールは2人にそれを手渡す。見ると、見慣れない単語と共に、エラーの文字が強調して表示されていた。

 端末に大きく表示された文字は英語で「ELACS」と表示されていた。その単語にハジメが反応を示す。

 

「これは……」

 

「エラクス……?っていうの、これ?ハジメ、知っているの?」

 

 ジャンヌはそれに気づき、質問する。ハジメは頷き、それを知った経緯を2人にも語る。

 

「あの時……アレクと戦った時に発動したシステムが、これなんです」

 

「え……もしかして……」

 

「……あの蒼い光……」

 

 ジャンヌの脳裏に、あの時の光景が蘇る。機体のカメラアイと胸部のクリスタルパーツのうちの1点を除いて蒼く染まったガンダム。その状態のガンダムが、アレクの機体を蹂躙したことは今でもジャンヌの記憶に残っている。あの時のハジメは、とてもハジメが操縦しているとは思えなかった。実際本人にのちに確認した時も、機体に引っ張られて暴走しているようだったと聞いている。

 そのシステムの名称だと思うと、少し鳥肌が立つ。あんな挙動を起こすシステムが、今表示されているとは思いたくない。すると、端末から声が発せられる。

 

『そうだ、ジャンヌ・ファーフニル。あれこそがこのガンダムの切り札、エラクスシステムだ』

 

「きゃ、きゃあ!?」

 

 端末画面に顔が表示され、ジャンヌは端末を放り出してしまう。宙に浮いた端末を、何とかハジメがキャッチする。キャッチされた端末の画面で、ハジメに似た顔の人物はむすっとする。

 

『ひゃあ、おっかねぇ。もう少しで画面パリーンだぞ』

 

「い、いきなり出てきて何なの!?そっちが驚かせたんでしょう!?」

 

 反射的に画面の人物にいちゃもんを付けるジャンヌ。対して、落ち着いた様子で、その画面の人物はジャンヌとヴェールに自己紹介をする。

 

『まぁそうだな。俺はスタート。この機体、シュバルトゼロガンダムのOSにして、元英雄の一部だ』

 

「元、英雄?」

 

「英雄って……ひょっとして、ガンダムの装依者!?」

 

 ヴェールの驚きが格納庫に反響する。英雄と言えば、自分達で思い付くのは間違いなくガンダムだ。その過去の装依者だというのだろうか。

 それをスタートと名乗ったOSは、答え半分で回答する。

 

『大体そんなところだ。何でこうなのかって質問は答えないぜ。それより、エラクスシステムについて訊きたいって感じだったが?』

 

「そうだ。あの時突然起動したが、あれは一体何だったんだ?」

 

 ハジメが慣れた様子で、スタートにエラクスシステムについての情報を要求する。ハジメはどうやらスタートの存在を以前から知っていたようだ。ハジメからの質問に気だるげながらもスタートは答える。

 

『まぁ、簡単に言えば出力リミッター解除機構だ。正確に言うなら、DNジェネレーターの内部、DNを取り出すための次元空間接触用ゲート生成器の回転数を引き上げだな』

 

「次元空間接触用ゲートの回転数上昇……!?ま、まさか、あれだっていうの!?」

 

 スタートの言葉に狼狽を見せるヴェール。ジャンヌはその狼狽の理由を聞いてみる。

 

「どうしたんですか?何か知っているんですか?」

 

「あ、うん……MS工学史の歴史で見たことがあるの。……ジェネレーターの回転数を限界まで引き上げて、敵もろとも自爆するって機能……」

 

「じ、自爆……」

 

 嫌な単語を聞き、2歩近く下がってしまうジャンヌ。自身を犠牲にして多大な損害を与える意味の単語が、ジャンヌの記憶の片隅に仕舞っていたポルン達の最期を思い出させる。が、すぐにスタートがそれに対し補足を含めて解説する。

 

『まぁ、俺の知っている限りじゃそれは間違った使い方だ。そういった研究がされていたのは否定しないけどな。それで話を戻すが、本来の使い方はあの時のように機体性能を上げて敵を圧倒する使い方。そしてエラクスシステムで暴走状態となったジェネレーターに冷却剤の如く投入するのが、お前たちが龍の愛って呼んでいるSEED-UNIT00、別名リム・クリスタルだ』

 

「リム・クリスタル……」

 

 その単語を復唱する。ジャンヌも授業中一度は聞いたことのある単語だ。龍の愛の別名であることも知っている。

 システムの概要を更に語るスタート。

 

『リム・クリスタルの投入で、ジェネレーターの急上昇を抑え込む。それでシステムを暴走状態から復帰させるまでがこのシステムだ。……だが前回の使用時、ハジメの意志に呼応するように勝手に起動した。封印状態を解除して、リム・クリスタルが壊れた状態で、な』

 

「え?」

 

「ちょっと、それってどういうこと!?」

 

 スタートの思わぬ発言にツッコミを入れる。封印状態という点も気になるが、それ以上にその封印をハジメが解き、しかもそれが壊れた状態で起動するなど自殺行為に等しい。当の本人であるハジメはその覚えがないようだが、一体どうしてそのようなことになったのだろうか。ジャンヌの不安が更に大きくなっていく。

 そんなジャンヌの疑問に、スタートは呆れた様子でシステムログを含めた予測を語る。

 

『落ち着きな。俺もいきなり起動したときは驚いたが、どうやら機体のコントロール系統が元の反骨心に反応してシステムの封印を解いちまったみたいだ。……まったく、この野郎は力を与えた側も考えもしないことをやってくれる』

 

 スタートの予測を、ジャンヌは全て理解したわけではない。だが、分かるのはあの時ハジメがそのシステムを機体に使わせるほど、あの戦いに負けたくなかったのだろうということだ。

 もし、自分の救出の時にそれを使わせるほど切迫していたら、どうなっていたのだろう。ハジメの意思次第でガンダムが更に力を引き出す。自身と従者の危機の違いで生まれたその差に、ジャンヌは知らずに劣等感を感じていた。

 一方話を理解した様子のヴェールは手を打って納得を示す。

 

「そっか。てことはフレームのあの輝きは、それと関係しているのね。機体のフレームもどっかで構造見たことあったんだけど……ひょっとして過去に制作されたっていう、感応波共鳴フレームかしら?」

 

『さてね。俺の生きていた時代では、別の名前だったから、それで合っているかどうかは分かんねぇな。で、そこのお嬢様は理解できたか?』

 

「ま、まぁ、一応は。それで?交換できないってことだけれど、それはどういうことなの?」

 

 ジャンヌは理解できたという返答と共に、問題となっているリム・クリスタルの交換状況について訊く。するとスタートが悩まし気になる。

 

『あー……それなんだが、実は機体と装依者の相性があるように、クリスタルとの相性があるんだよ』

 

「あ、相性?」

 

 思わず首を傾げてしまう。相性という言葉の意味はもちろん分かる。ところがクリスタルの相性が一体どう関係あるのだろうか。冷却材の相性という意味が分からなかった。

 するとジャンヌと同じく首を傾げていたハジメの様子に見かねて、スタートが簡単にその説明を行う。

 

『冷却と言っても、物を冷却するのに適切な温度とかあるだろう?リム・クリスタルの場合、急上昇したジェネレーターに適切に作用できる停止信号の周波を持ったリム・クリスタルが必要になるんだ。これまでの量産品はいずれもそれを満たせていない。それがエラーの原因なんだよ』

 

「あぁ……そういうことか」

 

「ふぅん……相性ってそういうことなのね。それで、どうするの?」

 

 説明を聞いて、もっともな意見をスタートにぶつける。エラーになったからといって、そのままではダメだ。再び封印措置を取るのか、それとも条件を満たした物を用意するのか。

 だがスタートから語られたのは、やや解釈の違う結論だった。

 

『解決する手がないわけじゃない。ただ、するんだったら君にも協力してもらう必要があるぜ、ジャンヌ・ファーフニル』

 

「え、それってどういう……?」

 

 ガンダムのOSから、なぜか協力を申し込まれてしまう。ジャンヌはもちろんのことハジメ、そして整備士のヴェールや、近くで待機していた整備士2人も話に興味を持ったのか、同じく首を傾げる。

 その言葉が意味する物、それがジャンヌを大きく動揺させる。

 

 

『ジャンヌ、君の龍の愛でどうにかなる』

 

「ブッ!?ケホッケホッ!!ど、どうしてそうなるの!?」

 

 

 龍の愛は、竜人族の男女の性的交わりで作られるもの。そしてそれを要求するということは、それをやれと言うこと。あまりに直球すぎる変態発言ととれてしまうことには違いない。

 焦るジャンヌに代わりヴェールがその是非を問う。

 

「んー、いくら何でもその要求は直球すぎると思うね。年頃の女の子に。それに相手はどうするの?ハジメ君だとしても、彼は人間で……」

 

『あ?龍の愛は片方竜人族で良かっただろう?それに、たかがキス程度で何を言っている?』

 

「……え?」

 

 だがスタートの発言に面食らうヴェール。ジャンヌ達も同じだ。両者の間ですれ違う、認識の差。彼の話にその場にいた者達は顔を見合わせる。

 

(え、片方が竜人族でも?それどころか、キス程度?いいえ、キスでもわたくしにとっては命取り……レイアさんの為の唇を、ハジメなんかに……なん、かに……ってそうじゃなくって!)

 

「たかがキスって……キスは乙女の純情ですよ!!」

 

「違うジャンヌちゃん、合ってはいるけど、今はそこじゃない」

 

 気が動転したジャンヌの発言に、ヴェールが的確にツッコミを入れる。だがジャンヌにはそちらの方が重要なのだ。

 ジャンヌに代わって、再びヴェールがスタートに本来の疑問をぶつける。

 

「それって本当?私達の間だと竜人族同士の男女が、その、性的行為をしないと出来ないっていうやつなんだけど……」

 

『はぁ!?セッ○スしねぇと無理だぁ?』

 

「スタート、流石に場を考えろ!」

 

 思い切り放送禁止用語を口にしたスタートを、ハジメが咎める。だが実際に耳にしたジャンヌは、更に顔を赤くして抗議する。

 

「い、一体何をさせようって言うのよ!第一、何でわたくしの龍の愛をハジメに渡して解決できるんですかッ!!?」

 

 ジャンヌの口から、もっともとも言える発言が飛ぶ。すると、スタートが先程とは打って変わって真剣な表情で、驚くべき事実を口にし始める。

 

『―――簡単だ。あの止まるはずのない暴走状態を止めたのは、君の「声」だ。詩巫女としての、「声」がな』

 

「……え?」

 

意味が分からない。詩巫女って、確かにわたくしは詩巫女になるべくあの学園に通わされている。でも、成績は中の下くらい。いくら家の血があっても、あの時のわたくしは、ただハジメを止めたかっただけで……。

 スタートの言葉に、心の中で動揺するジャンヌ。だがスタートはあの時機体に起こったことを事細かに伝える。

 

『あの時、あの状態ではハジメは間違いなく暴走したガンダムによって機体ごとこの世から消えていただろう。だが、あの時の君の制止の声で、機体に搭載されていた破損状態のリム・クリスタルを修復させたのは間違いない。ハジメを助けたのは君だ』

 

「だ、だからぁ……!?」

 

 思わずその先の言葉を拒もうと顔の前で両手を交差させる。顔が赤面していく。体感温度もどんどん上がっていく。これ以上言われればジャンヌ自身はおそらく……。

 そしてスタートは、ジャンヌの拒むその先の言葉を言った。

 

 

『残念だが、もう次のエラクスシステム使用時に今までのリム・クリスタルは使えない。またああならないように、そして決闘にも勝つためにも……ハジメとキスしろ、ジャンヌ・ファーフニル。そしてリム・クリスタルをガンダムに……』

 

 

 スタートは強く申し出る。スタートもまた、エラクスシステムの復旧を願う者。そのためにはなんだってするのだ。勝利の為なら、ジャンヌ自身の想い人への気持ちすらも一刀両断する勢いだ。

 無論ジャンヌにハジメへのその類の気持ちが無いわけではなかった。だがしかし、ジャンヌはそれを認めておらず、複雑な気持ちの中、そのような追い込みは適しているとは言えなかった。ジャンヌの口から、声が漏れ出す。

 

「……くにゅぅぅ~……」

 

「お、お嬢様!?」

 

 ハジメを助けられたのは自分だったからこそという事実と、決闘に何としても勝たなければならないという現実。そこに想い人のレイアか、従者のハジメかを選ぶ迷走がぶつかり合い、ジャンヌの思考が完全にショートする。奇声を上げて倒れ込むジャンヌの体を、従者であるハジメが支える。だがジャンヌはすっかり目を回している状況だ。

 結局この日、ジャンヌは訓練終了で家に帰るまでの間医務室送りとなった。そして休憩を終えたゼントも交えた決闘へ向けた話し合いで、ハジメ達は「エラクスシステム抜きでの決闘」を前提とした調整を行っていくこととなったのである。

 決闘の日はそこまで迫っている。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。次回はこれまでの登場人物紹介とMS紹介になります。

ネイ「……元さんの所々の疑問が本当に私達もはぁ?ってなりましたね」

グリューネ「ねぇ、これ用語解説も含めた方が良いんじゃないの?」

あ、それ本当にどうしようかなって思ってた。(´・ω・`)けどそうなると黒の館が3回構成になるから、なるべく本編で説明しきれるようにしてるつもりです。

グリューネ「そ、なら別にいいんじゃない?けど、貴方前作から結構R系列の言葉・表現でかなり攻めてない?」

あぁ、なんか吹っ切れてるよ?(*´ω`)

ネイ「まぁ、前より攻めるのは殻を破る意味でもいいですけど……気を付けてくださいね?うっかりR-18にならないように」

あ、はい。それは本当に怖いです(;・∀・)
さて、今回はここまで。

ネイ「次回もよろしくお願いします」
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