レイ「いよいよ今年も終わりが近いね~。突如として回線に割り込んできたエンドとの交渉……そこに光巴ちゃんが割り込んだんだったね」
ジャンヌ「彼女は一体何を感じ取ったんでしょう。元さん達に次ぐDNLの使い手は……」
さて、それでは早速本編へ。
『お前は……HOWの代表の娘か。いいのか?そうやって表に出て』
『今そんなのを気にしている場合じゃない。私は気づいてる。あなたの言葉に、嘘があること、そしてその二つだけじゃ対価に相応しくないってことを』
エンドの敢えての忠告を無視し、光巴はそう言った。
正直言って、光巴の言っていることの意味が分からない。しかしその詳細を聞きたくなる内容であり、それは深絵隊長といった他の面々の反応を見ればすぐにわかった。
『嘘……?』
『対価が足りない……それはどういうことなの、光巴』
『うん。エンド、あなたの言葉、特に元お兄ちゃんを倒したって言ったあの言葉。その発言に私は妙な感覚を覚えたよ』
『……フン。気に入らなかっただけだろう?DNLであろうとも、そんなことは』
エンドはあり得ないとして光巴の言うことを否定した。隠し通したいとも思えるが、それに至る確証はこちらとしては分からない。DNLである自分にもプレッシャーこそあれど感じるものはない。
見間違いならぬ、まさに勘違いをしていると思ってしまう。ところが光巴は勘違いではないとガンダムを倒した敵を相手に食い下がる。
『別に勝利したことにケチを付けるつもりはない。だけど、あなたはそれに不満、ううん、満足していない』
『満足していない、それはシュバルトゼロを捕らえられなかったこととは考えないのか?』
『言い方を変えますね。あなたは元さんを欲していた。だけど拒絶されたから撃墜するしかなかった。いや、撃墜できてしまった』
『その根拠は』
『ならなぜ、今こうして頼み込んできているの?』
本末転倒の質問、そう見える。しかし光巴は続けた。
『あなたはゼロンに今、あのシュバルトゼロとやり合うだけの戦力がないと言った。確かにあのタイプシリーズですら本来のシュバルトゼロを相手取るには不足しつつある。ゼロンじゃ、そして純粋な戦力じゃ私達でもダメでしょうね。だけど、それでも今までのあなた達ならそれで私達にやらせようとしても、人質を使って命令してくるような人だと思ってる』
『……その方がお好みか?』
『光巴ちゃん!』
『光巴、それ以上は』
ヤバい、と思い止めようとする深絵や夢乃。それでも光巴は言い切った。
『そう聞くってことは、考えている事、あるんでしょう?全部を聞くつもりは、私にもない。だけど、それを分かっていて言わないのは元お兄ちゃんにも……エンド、あなたにとってもマイナスになる。そう勘が告げているから』
『……分かったような口を。嫌いだな、お前のような勘のいいDNLは』
怒りを面に出すエンドに、HOWの緊張が走る。ところが、緊張の糸を切るように更なる乱入者がゼロン側から、静かに語り出す。
『―――だが、事実だろう、エンドよ』
『!?誰ッ』
『……貴様、ゼロン代表の零崎か』
ざわつく一同の中で素早く気づいた勇人。
その名前は宗司もよく知っていた。自分達が今戦っているゼロンを統率する教祖・宗主・頭・元帥とでも言うべき存在。ゼロンの代表者、敵の親玉。
いきなりそんな人物が割り込むことにGチームはもちろん、他のチームや隊長クラスでも、うちの艦長すら動揺を隠せない。
「敵の親玉がぁ!?」
「……なぜ、ここで」
「この人が……玖亜やお母さんを……」
「零崎さん……どうして」
『零崎秀夫。あなたまで何の用?』
『穏やかじゃないね。まぁ私達もそうか』
『君達には予想外の対面とさせてしまったようだな。しかし、全てを見抜いている者がいる以上、全ての発端とも言える私が出んわけにはいかん』
すべての発端と自負する零崎はそう言って見せると見抜いたという光巴と話を交わす。
『次元黎人の娘。君には優れたDNL能力があるようだ。私の意図を、エンドを通して見たのかな?』
『あなたとエンドが同じ事を考えているのなら、そうかもしれない。けれど同じ物は感じても、あなたとエンドとではたどり着く先が違うようにも思える』
『人とは、そういう物だ。だがそこまで分かっているのならなおの事、それ以上は触れるべからず。今はそれだけで話を聞いてほしい。君が思うあのガンダムを止める対価、聞かせてもらおうか』
必要以上の話を避けつつ、信じて欲しいとして対価の話について要求を尋ねてくる。須藤司令の指示がなされる。
『……光巴君、今はその方向で頼む。後々は私が』
『分かりました。あなた達が犯したこの事態を引き起こした原因は三つ。だから対価も三つ』
原因と対価。罪と罰とも言えるそれらを光巴が順に語っていく。
『原因の一つ目、ガンダムを撃墜したこと。撃墜しなければそもそもこんなことは起きなかった』
『当然、だが詭弁だな。私達の言い分としては』
『それでも原因の一つだよ』
『して、二つ目は?』
静かに、二人が語っていく。
『二つ目は暴走の原因となる象徴の合体を、阻止できなかった事』
『……言い訳出来ないな。エンドもそれをしたと言うが、阻止出来ずに合体したようだ』
『三つ目』
『それだ。お前は何を以って、三つ目の罪が私達によって引き起こされたという?』
零崎も知りたがる三つ目の原因。思い当たる者はほぼいないと言える三つ目の罪。何を以って対価とするのか。
いよいよそれが光巴の口から語られる。その内容は一周回って呆気にとられるものだった。
『あなた達は、その象徴の怒りを買った』
『……フフフ、アーッハッハッハ!!』
聞いた途端、零崎が笑い声を上げた。あまりに馬鹿らしいからだろうか。しかしそれにしてはやけに楽しそうな声音、いや、嬉しいと言えばいいのだろうか。
零崎は言った。
『続けよ』
『エンドはさっき、あのガンダムが合神形態と言った。それだけじゃなく、あの象徴は次元世界マキナ・ドランディアの一種族「竜人族」の神と呼べる創世記時代からの存在。もっともあれは、元さん達の時代で象徴から新たに生み出された次代の象徴らしいけど』
『……そうか。だから違っていたのか……』
エンドがそのように呟く。まるで自分の見ていたものとは違っていたというような反応。
一方光巴の発言にこちらのエターナが補足を入れる。
『……光巴の言う通りよ。エンドがこの世界に逃げた後に起こったマキナスとドラグディアの最後の戦争、機竜大戦でクリムゾン・ドラゴニアスが散り際に残した希望。お姉様にとっては全ての呪いから解放された証でもあった。それをあんたは』
『あの戦争が、終わった?はっ。終わるわけがない。次なる戦争は始まるだけだ。違うか?』
『……っ』
言い返せずに黙るエターナ。光巴がそれを触れることなく、本題へと話題を戻していく。
『合神と呼ぶからには、あれは神と言って差し支えないはず。それどころか象徴とは国の神話時代から代々受け継がれてきた系譜、シリーズ。私達の国では国造りの神の作り出した子供達と同義。ならば、それを怒らせたとしたらどうなるか』
『……いくらガンダムを持っていようと、それを抑えることは出来ぬ、だな?』
『出来ると思うならやればいい。けれどこれは新たな戦争になりうる。いいえ、むしろ急に象徴が消えたことで既にジャンヌさんやエターナちゃんの世界の人達は、向かってきているかもしれない。神を怒らせるという意味、流石にあなた達ならよく分かっているでしょうね』
その言い方はまるで神に仕えるものが神に不敬な者を叱るようないい分。逆の立場で言うのはどこかおかしさもある。しかし言い換えればそれは次元の世界の神を信じると謳っているゼロンにはその重大さを知っているはずと語りかけていた。
それを逆手に取って三つ目の対価としたことにHOWの者は絶句していた。隊長達もまさか光巴がここまで言えるとはとにわかに信じがたい様子で静観していた。
そしてそれはゼロンの代表零崎も食わされる形となる。
『神を怒らせる。確かにその意味はよく理解している。しかし次元の神とは彼らの信奉するそれとは違う、本質を見たものだと自負できる』
『なら私の指摘は的外れ?』
『いいや?それも苦しい言い訳と今は言わざるを得ない。向かって来るやも知れぬ彼らに対しては。故に、君の警告をゼロンの総意として受け止める。三つ目の罪、確かに認めよう』
確かに零崎はその口で認めると言った。これで対価を三つ、先程の条件に加えてあと一つ指定することが出来るようになった。
交渉の成功に他の面々の緊張がややほぐれる。
「やった!これなら!」
「ジャンヌさんも取り戻せるかもしれない。ううん出来る」
「あぁ。正気に戻したら一発言ってやんないとな!」
『元君の為でも、ジャンヌちゃんの為でもある。これで……』
三つ目の対価はほぼ確実にジャンヌ・ファーフニルの返還で決まりそうな流れとなっていた。全員がそれを望んでいる。ゼロンに対してもせっかく取った人質を取られるという大ダメージを与えられる。
きっと光巴もそれを指定するに違いない。彼女も他ならぬ元隊長とジャンヌ副隊長の安否を思う人物の一人。指定を三つにまで増やしたのもきっとジャンヌ副隊長まで助けられるようにするためだ。
間違いないと思いながら、光巴が対価の指定をする時がやってくる。光巴が三つ目の対価として求めるものを告げる。
『それらの罪を基に、東日本連合軍のシュバルトゼロを止めるための対価の指定を提案します。一つ目と二つ目はそのまま、三つ目は「ヴァイスインフィニットとシュバルトゼロの再戦」』
『……えっ?』
『ほう?』
予想外の回答がなされる。なぜ、という声が上がり出す。
『何で……何でそんなことに!?』
『どういう、こと?説明しなさい、光巴』
光巴の判断に異を唱える深絵隊長に夢乃さん、それに釣られる様に入嶋も疑問をぶつける。
「再戦って……ジャンヌさんを取り戻すのじゃダメなの?」
『……光巴さん、それを取る理由は』
同じヴァルプルギスにいる紫音艦長も説明を要請する。光巴は自身の判断の根拠について簡潔に述べる。
『これがベストだと私は考えます。ゼロン側にとっても、そして、HOW、ひいては元お兄ちゃんにも』
『元君の……』
その意図を図りかねる一同。ところが須藤司令と少し間を置いて紫音艦長は判断を尊重すると言った。
『なるほど。承認しよう艦長』
『……そうですね。ゼロン側もそれでいいかしら?』
問題ないかと聞き返すとゼロン側からも頷きが返される。
『構わんよ。むしろ、最初の時よりも良いと言える。』
『私も異論はない。だがこれだけは伝えろ。例え次があったとしても、勝つのは私と神治なのだとな』
『交渉は成立だ。君達がシュバルトゼロのいる地点へと到達後、我らは基地へと撤退する。その後は任せる。これは全部隊へと徹底させる。ではまた』
了解を得て彼等との通信が切れる。交渉は確かに成立した。しかしそれでも憤りは残る者には残る。
ゼロン側の回線がなくなったタイミングで、深絵隊長と夢乃さんが回線越しに詰め寄った。
『どうして……どうして!』
『あなたは今回ヴァルプルギスクルーとしての参戦。それがこんな……』
『それは……ごめんなさい。でも、みんなじゃゼロン相手に十分な交渉を、出来ないと思ったから』
『あなたねぇ……!』
叔母として怒ろうとした夢乃を紫音が止めた。
『夢乃さん、今は怒らないであげてください。これは私の責任です』
『っ!紫音さん』
同じ艦にいる、どころか艦長としての立場でそれを止められなかったとした上で、紫音は謝罪すると同時に同じく光巴に言った。
『光巴さん。止めなかった私にも非はあるけれど、それを決めていくのは本来目上の人物よ。私か、須藤司令に』
『でも』
『今はうんと言っておいて。後々の処理が面倒になるから』
反論をそのように言って言わせない。建前とはいえ面倒なのは本当でも言うような声音。おそらく事実なのだろうが同時に光巴に必要以上に責任を被せないようにしたいと思っている。
処遇を置いておくとして紫音艦長が須藤司令とすぐさま次の行動への通達準備を始める。
『とりあえずはそれでいいだろう。問題は元君のシュバルトゼロを止めることだ』
『そうですね。今はゼロンが相手を引き受けてくれている。けどいつまでも任せていられるわけじゃない。交渉を無駄にしない為にも、戦力を整えて、シュバルトゼロの暴走を止める』
暴走を止める。その為にすべきこと。艦長たちが東日本連合軍の全回線に向けて指示を飛ばす。
『東日本連合軍全部隊へ通達。本作戦は失敗と判断。ただし、現在暴走するシュバルトゼロガンダムを停止させるため、そのまま作戦を継続。残存戦力の整備・補給後、行動へ移る』
『MS隊補給が必要なら帰投、そのまま行ける場合、直ちに現場へ向かわれたし!』
作戦目標は変わる。ゼロンから、暴れ狂う自軍のエース機体を止めるために。
◆
戦力再編成からわずか5分。それだけの時間で東日本連合軍の戦力把握は終わった。そもそも通達時点で大抵の部隊が戦線離脱の目途が立っており、またシュバルトゼロを止められるであろうと目していた主力もほぼ確保できたためである。
前進するヴァルプルギスから見える景色。海面では未だにシュバルトゼロが多方向にビームを放ち、多数の撃墜光を灯していた。
これがシュバルトゼロの、とは思いたくはない。しかし納得する部分もある。かねてから言われていたシュバルトゼロを敵に回した際の推定被害。現行のカラーガンダムですら止めるのは至難の業とされていた。
しかしそれはあくまで撃墜に限った話だ。停止させるのはより難しいかもしれないが勝算はある。光巴が教えてくれた。
『おそらく、あの形態は合体した象徴によって暴走を引き起こされている。感じるの、象徴のパーツと、シュバルトゼロの中にある何かが反応し始めている。だから、全てが手遅れになる前に象徴をシュバルトゼロから外す』
彼女の予測をアテにするのなら無理矢理外すしかない。そしてそれが出来るのはやはりHOWではあの二機は必須に違いない。止めることに特化した、なおかつ強靭なパワーを持つ機体。DNL専用機、超次元MSに対抗できるように調整されたゲルプゼクストとガンダムDNアーバレストならば。
非常に高いDNL能力を持つ彼女の予測ならば、それで止まるという。紫音もそれを推したい。が、同時に不安も抱いていた。
止められないかもしれない、というわけではない。むしろ止められないかもしれないのはもとから半分分かり切っているようなものだ。問題は本題のそれではなく、彼女の言い方。
『シュバルトゼロの中にある何かが反応し始めている。だから、全てが手遅れになる前に』
彼女の言い方は何か妙だった。内側にまだ自分達が知らないモノがあるような言い方。それを先程問い詰めてもみたのだが、彼女も「分からない。けれど、そういう表現が自然と頭に浮かんだ」としか言えないらしい。
確かめようにも光巴以上にあの状況を理解できるものがいるとは思えない。分かるとしたら敵サイドのエンドか、あるいは敵に奪われているジャンヌ・ファーフニルか……。
とはいえ、今は取り押さえに向かった救出チーム、Gチームや深絵隊長、夢乃隊長、勇人達に任せるほかないだろう。その為に報告は厳にするよう言っている。
光巴から捕獲チームが間もなく接触すると告げられる。
「捕獲チーム、間もなくゼロンと暴走シュバルトゼロクローザーとの交戦地帯に入ります」
「了解。ゼロン側にオープン回線。後はこちらの領分と伝えて、撤退を促して」
「了か……っ!!」
やり取りの途中で突然肩を寄せるように二の腕を掴む光巴。凍えている、あるいは「恐怖で身がすくむ」かのような様子。近くのブリッジクルーも指摘する。
「どうした、光巴ちゃん!?」
「光巴!?」
それらに対し、光巴は震える声音で言った。
「来る……何か、嫌な奴が……いや、来るんじゃない、シュバルトゼロの中から、「蘇る」っ!!」
NEXT EPISODE
EP74はここまでです。
レイ「いやぁ、まさかゼロン代表も話に関わってくるとはねぇ」
ジャンヌ「一応前話の時点で何やら介入するような事を言っていましたから。でもそれに対してよく光巴さんも言い返しました」
まぁゼロンも最高峰のMSを持ち、日本の西半分を占領しているとはいえ、所詮はただの組織。流石に異世界一つの戦力を敵に回す真似はしたくなかったということでしょう。
レイ「普通勝てないよね。ゼロンにはヴァイスインフィニットもタイプシリーズ、シナンジュとサザビーもいるけども」
ジャンヌ「何でしょう……そこまで言われると逆に勝てる可能性が浮かんじゃいます……」
いやいや流石に無理無理。元君の機体解析とかもあってドラグディアもMS開発は進んでる。流石に進んでる時間が違うから性能はこっちよりも低いかもしれないとはいえそもそもがMS科学が多く発展した異世界ですから、ある意味ようやく互角のラインかもしれませんよ。
レイ「あー言われてみると」
ジャンヌ「けどそう思ってくれたおかげでゼロンも光巴さんの話を聞いてくれたわけですから。後は元さんを取り戻して、再戦でジャンヌ・Fさんを取り戻すだけですね」
まぁそこまでの道が遠足ですよ。それにジャンヌだけじゃなく、レイアも助ける。それが元君の目的ですから。
レイ「けど今回のお話最後光巴ちゃん気になることを言ったね。蘇る……?」
ジャンヌ「蘇る、と聞くと、まさか元さんが、とも思いますけど……でも嫌な奴とはなりませんよね」
当然、光巴からしてみれば元は嫌な奴ではないでしょうしね。彼女は一体何に身がすくほどの恐怖を覚えたのか。それは次話にてすぐ明らかとなります。
レイ「うーんやっぱり二話更新だとすぐに分かるね~。早く次も見なくちゃ!」
ジャンヌ「その分期待も少し減る可能性もあるわけですが……作者としては?」
二話更新だと正直ペースが……現在1日2000字を目途に書いてますから大体2話分書き上げるのにおよそ6日掛かります。その後投稿始めるので。まぁ基本それくらいの時間がかかると思っていてください。次のお話はすぐに読めますが。
レイ「というわけで、同日更新の次話に続くよ~」