ネイ「雪の季節ですね。雪は好きです。にしても本編の方はまた嫌な予感がざわざわと……光巴さんの危惧は何でしょうか」
グリーフィア「危惧って言うより恐怖を感じ取ってるって感じよね~。それだけヤバい存在がシュバルトゼロに眠ってる……これはマジでヤバいかも?一体誰の事なのやら?」
というわけで本編へどうぞ。
海上のゼロン艦艇の残骸の上で暴れ狂うシュバルトゼロに向けて捕獲部隊として緊急で組織された宗司達が飛行を続けていた。
部隊は三つに分かれており、Gチームも役割に合わせて分割されている。呉川小隊長とクルーシアと入嶋は近・中距離支援、クルツは遠距離支援、そして宗司とエターナ、それに進が主力捕獲・戦闘部隊へと加わっていた。
飛行を続けながらなぜ自分が主力に選ばれたのかとひとり呟く。
「……何で、俺が主力に」
不満はある、というより今は不満しかない。現状の実力で言うならここに当てられるべきは呉川小隊長だと思ったからだ。
独り言の疑問は、同じ主力チームの部隊長を急遽務める勇人さんが答える。
「俺達はドライバ・フィールドの使い手。お前も使ったなら分かるだろう。ドライバ・フィールドは極めて捕縛性能の強い兵装。調節すれば敵装備の解体は容易だ」
「それは分かりますけど……でも今の俺にそれだけの事は」
現時点で宗司に足りないもの、エンゲージパートナーの支援。エターナの助力が無ければガンダムDNはその全性能を発揮できない。
今もエターナとはエンゲージシステムで繋がったまま。しかしそのシンクロ率は恐ろしいまでに低下していた。平均30パーセント。機体の挙動・エネルギー関連には不安を残したまま、オーバードライバフォームは発動できるが維持はギリギリとコンピューターで予測されている。
それらを踏まえたうえで作戦の成功率について勇人さんがこちらに語った。
「確かに今のお前達ではオーバードライバフォームの長時間の維持は困難だ。しかしここで重要なのはドライバ・フィールド。お前自身の力があれば奴を止められる、かもしれない」
「かもしれないってそんな……」
無責任な、と言おうとするそれを勇人は言葉で押さえる。
「実際、俺自身のドライバ・フィールドであれを止め切れるかどうか怪しい。お前が本来の力を発揮できていたとしてもだ。だから、二人分を掛け合わせる。捕獲行動までは隙が出来るまでは機体制御を、捕獲段階でドライバ・フィールドに全力を注ぐやり方で対処してもらうしかない。ドライバ・フィールドを、意図的に制御できるのは俺達だけなんだからな」
ドライバ・フィールドの意図的な制御、本作戦においては入嶋のガンダムDNアルヴと呉川小隊長のソル・タクティクスが新たにドライバ・フィールドを発生可能なシールドウエポンを装備している。だがそれらはこれまでの技術の蓄積で、機械的に発生可能としたドライバ・フィールドで、アーバレストやゲルプゼクスト程自由が利かない。端的に言えば捕縛フィールドの発生が出来なかった。
今回の作戦ではその捕縛フィールドの発生が必要不可欠だ。よってこの布陣となっている。だから宗司もこの状態でも戦力となりうると判断されたのだ。
不満はまだある。しかしやるしかない。自身の目的、栞奈を助ける為には、今ここであの人がいなくなることは避けたい。
「やるしかない、か」
「まぁ、俺も支援してやるよ。近づけさせはしないって」
「エターナちゃんもいることだし、私も近接攻撃で注意を逸らす。だから宗司君はドライバ・フィールドの維持と回避行動を優先して」
相手は任せろと進と夢乃隊長が言う。他の隊員もいる。相手は彼らに任せる他ないだろう。その方がこちらとしても今はありがたい。
そうしているうちに距離が近くなったことを勇人さんから回線で告げられる。
「そろそろだな。戦闘体勢」
『了解した。中距離での指揮は任せてもらおう、勇人警部』
中距離支援部隊の新堂大佐がそう返答する。友直さんや智夜さんもそのまま追従している。
その友直さんからこちらに単独で回線が繋げられた。
『あの……宗司先輩』
「……何だ、友直さん」
その声は遠慮しているようにも聞こえる。あの時の回線は聞こえていた。なんとなくその予想はつく。そして彼女の口からも先程の件について言われる。
『宗司先輩は、昔の幼馴染を救うために、HOWに入ったんですか?』
「……いいや、元々はガンダムDNに選ばれたから。あの時の行いが正しかったのかどうか、探すために」
嘘は言っていない。むしろ真実だ。あの時はそう思った。けれども今はそうじゃない理由が生まれた。それだけの事。
彼女が生きていたなら、今は後悔が正しかったのかというよりもやるべきことがあると気づく。彼女と話をする。あの時、それを放棄したから。
それを、質問をした友直さんにも言った。
「けど、今彼女は生きていた。なら俺は彼女とまた話さなきゃいけない。いや、今度こそ離さなきゃいけない。助け出す、それが出来ないのなら……俺の手で、今度こそ……」
殺す。その一言に友直さんは口を閉ざす。やはり物騒と思うのだろうか。けれども彼女は自分達とは違って軍人だ。そう言ったものは慣れていると思った。
そんなので大丈夫なのか、と思いつつもそのまま作戦の方に再び目を向けようとした時、友直さんは言った。
『事情は分かりました。変わるのは良いです。でも、それってエターナ先輩の、元隊長さんに対しての心配を遮ってまですることでしたか?』
言葉が突き刺さってくる。本当にそれが正しいのかと疑いを持ってくる友直に知らずの内に表情が険しくなっていた。
なんでそんな事を聞いて来るのか。パートナーの事実を言ったに過ぎない。嫌いと言っておきながら心配するなんて、そんなのあべこべだ。
友直にそれを指摘する。
「お前も知ってるだろ。エターナが元隊長の事を嫌っているのは」
『もちろんです。でも今思えばあれは、元隊長さんへの憤りだったんだと思います』
友直さんはそう言う。そんなのは承知している。承知した上で自身は言っている。どっちにしても元隊長は必要だというのに、なぜ得体のしれないと言われなければいけないのか。それが事実だろうに。
友直に構ってもいられない。もうすぐだと言って話を切る。
「憤り、ね。それはこっちの台詞でもある。それより、そろそろだ。切るよ」
『……そうですね。それじゃあ最後に』
最後に、と友直は宗司へと告げる。本音を語る。
『宗司先輩の探していたものは、なんですか』
「……えっ」
瞬間、アラートが鳴り響く。敵、暴走状態のシュバルトゼロが放ったビームが主力チームに迫る。
勇人が叫ぶ。
「全機回避!」
「ぐっ!?」
「攻撃範囲かよ!?」
幸い全機回避に成功する。だが攻撃は休まらず、二度目、三度目の砲撃が味方のソルジアス、ソルジスタを撃墜していく。
友直に言い返したい気持ちはあったが、今はもう無理だ。状況が動いていく。
『ゼロン部隊撤退開始!こちらへの作戦が移譲されました!』
『頼むぞ、勇人警部、新堂大佐』
「奴は連れて帰る」
『あぁ。行くぞ』
ゼロンの撤退に合わせ、こちらが攻撃で注意を向けながら戦闘フィールドへ突入する。先発する主力チームを後方の近・中距離支援部隊が射撃で接近の支援を行う。
頭部の、喰われた顔の部分からビームを吐くように放ってくる。更に竜の爪が覆いかぶさった手からも、スマッシャーのビームを更に強化した拡散放射ビームが雨あられのように放たれる。それらをDNウォールやドライバ・フィールドで各員が耐え忍ぶ。
弾幕が切れた直後、一気に加速して破壊された艦艇の甲板へと着地し遂に件のシュバルトゼロの前まで到達する。シュバルトゼロを四方から囲うように展開して着地する宗司、進、夢乃、勇人。中距離支援部隊、遠距離包囲部隊もそれぞれの配置でシュバルトゼロを逃がさない様にする姿勢だ。
四方を見渡し、咆哮するシュバルトゼロ。
「グォォォォォォォン!!」
『……もはや制御とは程遠いな。しかし、今のアイツそのものだな』
暴走するシュバルトゼロを指して形容する勇人さん。暴れ狂う姿を最近の元隊長のそれと掛け合わせて見た発言。言われてみて納得がいく。
元隊長も助け出そうとした人がいたからこそあそこまでなった。自分もそう言った意味では似ている。だが自分は違う。もし救えないのなら、殺す覚悟がある。救うことだけを考えず、そうじゃない選択肢を取れると自負する。だから元隊長ほど愚かじゃない。
そんな考えを心の中で考える宗司。彼にとってはそれが正しいと思っていた。自分はそのようにはならないと。それが結局は同じ道の繰り返しだと気づかずに。
シュバルトゼロは唸り声を上げながら腰を落とした姿勢で捕獲部隊を見ている。誰から襲い掛かるのか見定めるようにその眼光を見せつける。
「グゥゥゥゥ……グガッ!?」
『何?シュバルトゼロが……元君!?』
突然シュバルトゼロがかみ砕かれた頭部を抑えて苦しみだす。苦しみの声を上げているのは乗っ取ったのであろう象徴側だったが、それを聞いて異変に不安の声を上げる深絵隊長が近づこうとする。
『待て深絵君。様子がおかしいとはいえ不用意に近づくな』
『新堂さん!でもあんな……』
『様子を見る。合図と共に押さえつけに入る』
それを新堂大佐が制止する。各員に指示を出して、抑え込みの為の構えに入る。
隙のあるタイミング。静止するタイミングを待つ。やがてうめき声が止む。
『新堂さん!』
「新堂、今なら」
『あぁ。先発隊全機包囲確保!』
捕獲の指示が飛ぶ。勇人警部を最初に捕獲のための部隊が一斉に接近する。もちろん宗司もアーバレストで向かう。
しかし、それらに向けてシュバルトゼロは瞬時に爪を振るう。延長線上にビームエッジが飛び、こちらは攻撃を防御、一部の機体が腕などを斬り飛ばされる。
不意打ちに舌打ちする勇人。
「くっ、やはり攻撃で弱らせるしかないか」
「……フ。ハハハハハ」
射撃戦に切り替えようとして、唐突に声が発せられる。声の聞こえる先は……暴走状態にあるはずのシュバルトゼロからだった。
思わぬ反応に元隊長を慕う者達が反応する。
『元隊長!?』
『元君!意識が戻って……』
『……いや、何かおかしい』
その動きに疑惑を向けて、心配で近づこうとする深絵隊長達を新堂大佐が制止した。その判断は正しく、その異変がまだ安堵するべきものではなかったと知る。
シュバルトゼロからの声、元隊長の声が語る。
「ふむ……この場所は……理解した。奴も一足先に目覚めていたか……。そして君達はその奴を止める事すら敵わないと」
『何を……言ってるの。元君?あなたはヴァイスインフィニットを止めようとして、撃墜されて……』
明らかにこれまでの元隊長の話し方ではない。意味の分からない発言を繰り返す元隊長に深絵隊長が問いただす。と元隊長の声は否定を述べる。
「否」
『えっ』
「私は、私がいなければ時代も、世界も変わらないと感じているに過ぎない。そう、私は魔王などではない、英雄なのだから」
唐突に出てくる英雄と言う単語。確かに黒和元という人物は英雄と称するにふさわしい戦果を挙げている人物だ。魔王という名乗りも、英雄の二つ名と思えば不思議ではない。
これまでそう名乗ってこなかったのが不思議なくらい。そう、名乗ってこなかったのだ。むしろそんな英雄などと呼ばれるのを嫌い、わざわざ嫌われ者として「魔王」を名乗っているとしていた黒和元が自ら英雄と名乗るのはおかしかった。そもそも魔王と呼ばれるのを今は嫌い、自分がいなければ変わらないという考えも、元隊長のそれとは異なる。
明らかに違う人物、人格の考え方だ。流石に入嶋達や深絵隊長も気付く。
『違う……元隊長じゃない!』
『元君は、苦悩の末に英雄じゃなく魔王を名乗った。そこにいるのは誰!?』
周囲を囲うMS部隊も緊張を高めて対応する。宗司も補充されていたビームライフルを構えて警戒する。それらを見てシュバルトゼロを動かす元隊長の声が返答する。
「言っただろう、私は英雄。この体の主を借りた身。奴は負けた。そして合体した新たな象徴の電気信号が、私のいた封印領域に刺激を与え、この合体時だけ私を目覚めさせることとなった」
『合体……目覚めさせる?』
夢乃が疑問を口ずさむ。言葉の意味が分からない。象徴が合体したことがきっかけとなったようだが、それでも今ここでシュバルトゼロを動かす者が何者なのか、そして目的すらも分かっていない。
何者なのか、目的は。それを勇人さんに指摘され奴は自ら答える。
『お前は何者だ。元じゃないのか』
「君達に分かるように言うなら、我が名は「スタート」」
『っ!?スタートって……シュバルトゼロのOSの!?』
『嘘……』
小声でエターナの驚愕が聞こえてくる。そのままスタートは語っていく。
「この世界は実に醜い。次元の神などと言うありもしない幻想に踊らされ、信望者もそれを止める抑止力も十分に働かない。見るに堪えない。次元世界に魂を引かれた愚かな人間達は解放しなければならない。どうやって?ならば、私が解放する」
『解放だと?』
「そうだ。英雄として、傍観者などではない。私自身がこの戦いを終わらせる。次元の神などと言う輩も私以外の救世主も、それを止められぬ抑止力も私が粛清する。私が復活したのは、そう言う意味なのだからな」
『ふざけたことを!』
言ってバスターを構える勇人。宗司や他の隊員達も攻撃態勢を取っていく。銃口を向けられてなおスタートは余裕を保って返事をする。
「ふざけている?フッ、この英雄の足を引っ張ることしか出来ない雑兵にはそうと思えんだろうな」
「雑兵って……そんなことを思って」
『違う、これは元君じゃない。そのガンダムに備わった、かつてのシュバルトゼロのパイロットの意志。だけど、こんなことって……!』
雑兵などと言われていくら本人ではないとはいえ聞いていて気持ちの良いものではなかった。悪態を吐くがそれを咎めるように深絵隊長が今のシュバルトゼロを否定する。深絵隊長の発言を裏付けるような形でヴァルプルギスから観測する光巴の見立てが告げられる。
『深絵お姉ちゃんの言う通りだよ。間に合わなかった。シュバルトゼロの奥底に潜んでいた亡霊。かつての英雄が蘇った』
『蘇ったって……でもスタートはもとから』
『あれは英雄の善の側の存在。今対峙しているのは英雄の悪、負の側の存在』
彼女は言い切る。話を聞いていたスタートは通信で彼女にその認識が正解であることと、評価を告げる。
「君のDNL能力、良い力だ。才能がある。だが雑兵のために使っていては宝の持ち腐れだな」
『私は、元お兄ちゃんや、みんなの為にこの力を使う。DNLは使い方次第で善にも悪にもなる。それを教えてくれたのがお兄ちゃんやお姉ちゃんなんだから』
「フン。魔王を名乗っておきながら、所詮は凡人の枠を出ない人間の言うことなど我ら英雄には足手まといだ。君も感じるだろう?持たざる者の行いを鬱陶しいと」
『……っ』
指摘したそれは、きっと先程のゼロンとのやり取りに対してのこちら陣営の対立の事だろう。DNLで状況を読み取った、としても出来ることが自分達と違い過ぎる。
圧倒的な力の差はDNLだからこそ感じられる。対峙しているだけなのにプレッシャー音がずっと響き続けている。とてもではないが自衛でどうにか出来る代物ではない。対処で徐々に精神力が削られていく。
そのプレッシャーを与えられたままスタートがシュバルトゼロを臨戦態勢へと移行させる。
「ならば見せてやろう。君達や、邪なる俗人連中に身を置いた英雄を自称するあの気障な白機人共も、マキナ・ドランディアを真に救った者として、これから救う者として、貴様らを粛正する!」
瞬間振り抜いた腕部から超次元現象の刃が飛ばされる。竜のかぎ爪状の衝撃波が周囲に展開していた捕獲部隊を襲う。宗司もシールドを向けて咄嗟にDNウォールで防御する。
「ぐっ!?」
『っ……来るか。奴を抑え込む』
攻撃を避けた勇人が警戒と捕獲作戦開始を告げる。敵意を全開にしたスタートはこちらに狙いを定めて加速して距離を詰める。
「まずは、手負いから狩らせてもらう!」
「っ!こんな時にっ!」
光刃とエネルギークローが火花を散らした。
NEXT EPISODE
EP75はここまでです。
ネイ「……スタート」
グリーフィア「うわぁ……記憶蘇ったってこと?しかも負の側面が」
そう言うことです。今まで接してきたスタートもあまり語られていませんでしたが記憶喪失の一人でした。そこら辺はL1の時のお話を読んでいただければ分かるかと。
ネイ「確かに……言っていたような覚えが」
グリーフィア「だからって、これは変わり過ぎよ~。完全に傲慢そのものっていうか」
だからこそ、光巴は嫌な奴と言っていたわけです。
ネイ「間違いないですね。こんなスタート、いえ、元さんの声でああまで言うのは冒涜と言いますか」
グリーフィア「ちなみに、元君の声ってことはあの竜の唸り声とかも元君?」
あ、そっちはクリムゾン・ファフニールの声です。保護が外れてスタートが話すために利用したという感じです。
グリーフィア「なるほどね。糸繰人形って前回の更新した話で言ってたけど、まさしくその通りっていうか」
ネイ「これを、果たして今の宗司さん、みなさんは止められるんでしょうか……」
色々と上手くいっていない宗司とエターナ、それにまだ千恵里と進も親しかった人物や意外な人物達との戦闘で動揺していますからね。これがどうなるのかは第4章を最後までご覧ください。というわけで今回はここまでです。
ネイ「次回もまた覚醒したスタートとの戦闘のようです。お楽しみに」