ネイ「迷いのない宗司さん、エターナさんと再び心を通わせて、どこまで渡り合えるのか……」
グリーフィア「ここはもう、大立回り見せるしかないわよね~?最後に見るのは、救いか、それとも……?」
では第4章最終話、ご覧ください。ちなみにLEVEL3は9章構成となっております。
「あああああぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶ声と共にガンダムDNアーバレストがシュバルトゼロとの戦闘を再開させた。
当然シュバルトゼロは迎撃、撃墜を狙ってくる。ところが、その攻撃はアーバレストを捉えるに至らない。空中を演舞の如く舞っていくアーバレストからの反撃が掠めて、スタートは困惑する。
「何だ……この動きは。捉えられない?そんなことが!」
さっきまでとは打って変わっての展開。翻弄される姿を認めないとシュバルトゼロはエラクスの加速を強める。機体性能は元々シュバルトゼロの方が上、しかし宗司もそう簡単に接近を許さない。後方に向けてシールドライフルを向けて速度を落とさず迎撃する。
それらの弾丸を避けて接近するシュバルトゼロだが、その内の弾が途中で拡散弾となって追いかけてくるシュバルトゼロに襲い掛かる。ドライバ・フィールド弾がシュバルトゼロの侵攻を妨げた。
弾のダメージは拡散弾ゆえにそれほど高くはない。それでも一度攻撃を受けたスタートが弾幕をうっとおしいと吐く。
「姑息な手を……賢しいだけのつがいが!」
宗司達をつがいと称したスタート。エンゲージシステムの使い手なら、そのように称するのも無理はないのだろう。しかしそう言われてもあまり嬉しいものではなかった。
俺自身は今までエターナをそのように思った試しはない。元隊長と同じような立場にあっても、二人はそれぞれ別の未来を見ている。
故にパートナーのエターナからはその決めつけに顰蹙を買う結果となる。
『つがい?はっ、パートナーはパートナーでも、人生設計まで預けてない!』
彼女の言葉を代弁する様にビームライフル3機を同時に発砲した。ドライバ・フィールド弾をそれぞれ拡散、跳弾、徹甲弾とばらけさせてシュバルトゼロの動きを抑制する。
攻撃をビームサーベルで切り裂きながらも防いだスタート。しかしその機体を別方向から入嶋と勇人の攻撃が襲う。
「っ!後ろから」
「いっけぇ!フルバースト!」
「若輩者が踏ん張っている。ならば俺が立たずしてどうする」
アルヴ・バレッツフルアーマーのミサイルを含めた一斉射に追従する形で飛行形態となったゲルプゼクストがシュバルトゼロに向かって突撃する。弾幕を迎撃したシュバルトゼロと同タイミングで肩部のビームガンを放ち、ミサイルの弾幕を爆発させる。爆発のカーテンを作り出し、入嶋への狙いを絞らせないようにした。
更に爆発を目くらましとして急速旋回したゲルプゼクストガンダムはエラクスの加速量に任せて奇襲を仕掛ける。ビームライフルとビームバルカンをドライバ・フィールドでまとめて圧縮した高出力弾、それらが放たれ到達寸前で解除、全方位へ向けてのクラスター弾をばら撒き、シュバルトゼロを襲った。
「ぐっ!?この私に!?」
被弾してバランスを崩したところを再び宗司も攻める。肩部のマルチウイングキャノンを放ち、それが残っていた肩部のシールドを吹き飛ばす。
「おのれっ!」
「死角だ!」
注意を向けたところにすかさず勇人警部が攻撃を入れた。人型形態のまま放つツールバスター、コンテナビームキャノンはシュバルトゼロのエラクスが生み出す高機動により当たらなかったが、爆発のカーテンが収まって近づけるようになった入嶋の中距離砲撃に被弾する。
「雑兵如きが!?」
「はぁっ、はぁっ!まだ、私にだってできる!」
エラクスの機動に体力をすり減らしながらも入嶋がそう言って見せる。DNLでなく、また才能も特別ないことを気にしている彼女だが、そうであっても今彼女はシュバルトゼロと、憧れの人物の機体を止めるために全力で戦っている。確かに戦力として数えられる位置にいた。
それでも今戦っている三人が誰か一人でも欠ければこの捕獲作戦は失敗する。三人の機体でようやくシュバルトゼロを抑え込めていることを忘れてはいけない。かつて元隊長が言っていた。チームワークを欠かさない、子供でも出来ることで出来なかったら恥じだと。前提を忘れずにシュバルトゼロを追い込む。
こちらの攻撃に自らのペースを乱されていくスタート。攻撃を回避しながら反撃を伺っていくが、やがて積み重なった苛立ちを爆発させた。
「雑兵風情が!この私に敵うと思うな!解き放つ!」
一声と共に背部に合体した象徴のDNのウイングが伸びる。前にも見た広範囲への針状のDNの発射態勢。構えた時には既にそれが発射されていた。
前回とは違い、先程のゲルプゼクストが行った攻撃のような全方位放出型の攻撃が展開していた三機に襲い掛かる。勇人警部はゲルプゼクストのドライバ・フィールドで防御しつつ回避、フィールドが貫通されながらも本体へのダメージをゼロにする。
一方で入嶋の方は避けきれないと判断してガトリングランチャーとヴァルスビーの火砲を正面に集中、弾幕での防御を図った。しかしその弾幕はシュバルトゼロを相手にするには弱く、増加装甲の恩恵を受けて致命的なダメージを避けるのがやっとだった。
「分かっているのなら、避けられないわけではない」
「お願い……っ!ダメか!ひぐっ!」
そして当の宗司自身はこれまた驚く方法で対応する。発射と同時に機体を加速、全方位一斉射の光羽の弾撃を回避していく。勇人が回避しきれなかったそれを、初撃でビームライフルを喪った以外にはドライバ・フィールドに被弾することなく抜けていく。
オーバードライバフォームの本来のスペックでは不可能な回避。それに驚いていたのは他でもない宗司自身だった。
(見える……聞こえる。敵の動きが、攻撃の来る方向が、敵意の音が分かる。シュバルトゼロでも!)
一種の覚醒状態とでも言うべきほどに研ぎ澄まされた感覚。これまでの戦闘以上に動ける。これが本当に自分のやっている事なのかと疑わしく思える。
誰かが力を貸している……誰かは知らないが、それでも今は。そう思いながらシュバルトゼロへと続くルートへ攻撃を掻い潜って接近していく。その事実にスタートは驚愕する。
「避ける?馬鹿な、このような!」
「いっけぇ!!」
距離を詰め切ったところで一瞬の隙を突いてシールドビームライフルを速射する。放った弾丸が弾幕の間隙を縫ってシュバルトゼロに直撃弾を与えた。
「この私が……直撃だと!?このっ」
不利と判断してか本気の一斉掃射の後、ビームランチャーを明後日の方向へと飛ばす。狙いは分かっており、一斉射を避けたところに狙ってきた一射をギリギリのタイミングで回避する。
(行ける)
もはやこちらにシュバルトゼロの、スタートの攻撃は通用しない。回避した瞬間そう思いかけたところでスタートが勝負に出た。徒手空拳のままエラクスの急加速で距離を詰めてくる。それもビームランチャーを避けたタイミングで、満足な武器を失った左側の死角から攻撃態勢に入っていた。完全に避けることを予測しての攻撃に勇人が回避を指示する。
「ダメだ、回避を!」
「もはや遅い!もらった!」
『ソージ!』
「クッ―――――」
ビームライフルで迎撃しきれない、避けるしかないと思いかけた時、唐突に思い出す。
二度目に装依したときの人質救出、種命島でオースアビスの攻撃から進達を守った時、アンネイムド・フェネクス捕獲作戦、そして勇人警部が教えてくれた、見せてくれた可能性。
それらが走馬灯の如く瞬間的に思い出される。そして見つけ出す。この場を切り抜ける画期的かつ逆転可能な秘策を。
その行動を土壇場で繰り出した。
「まだ手は、あるんだよ!」
迫る光刃。それがアーバレストに直撃する、直前で静止した。まるで何かに受け止められたかのように攻撃が止まる。だが何も見えない。
起きている状況にスタートが困惑する。
「何だ!?私の知らない新兵器……戦術だとでも?」
混乱は当然味方陣営でも起こる。
「相模君?何が……」
「なるほど、ドライバ・フィールドをそう使うか」
『ドライバ・フィールド?それがどうやってあんなピンポイントで……』
『そうか、宗司君ドライバ・フィールドを「腕にした」んだ!』
光巴が正体を看破する。そう、破損した左腕の断面からドライバ・フィールドによる力場を「腕」に加工して形成、文字通り「手はあった」のである。
騒ぎで状況を理解したスタートは絶句する。
「馬鹿な……ユグドラルヒットを狙ったのだぞ。単なる力場で、今の私は止まらないというのに!」
「領域で止まらないのなら、掴んでしまえばいい。そして……動きを、捉えたぞ!」
ドライバ・フィールドでビームサーベルを掴んだままこちら側へと引き込む。そしてそのまま残っていた右腕部で顔面を殴りつけた。
左顔面を強く打つ一撃。ドライバ・フィールドで威力強化も行った打撃で大きくスパークを散らせながら吹き飛ばす。スタートが驚愕の叫び声を上げながら飛ばされていく。
「うぉぉぉぉぉぉ!?」
まともに入った一撃に味方からの歓声が沸く。それでも英雄と名乗るだけあって立て直しは早かった。だがその声には余裕のなさが見え隠れする。
「……ぐっ、私が……圧される?この戦闘能力、奴らだけのものではないな……誰だ、誰が手を貸している!」
スタートの言う通り、先程から確かに何か自分達だけではない力が感じ取れる。これは、オーバードライバフォームを介してだろうか。一体それが誰なのか。一瞬だけそちらに気を集中させる。
するとビジョンが脳裏に浮かぶ。浮かび上がるのはシュバルトゼロガンダムの姿。しかしその姿はクローザーではなく、どちらかと言えば今のシュバルトゼロに似ている。その機体の姿が掻き消え、姿を現したのは、銀髪から白髪へと変わった元隊長に似た人物。
その人物が誰なのか。分からないまま現実へと引き戻される。だが同じように感じ取ったスタートの口から、その人物の正体が明かされた。
「!貴様の企みか、スタート!」
自分の名を叫ぶスタート。だがそれだけで理解しうる。スタートの表側が抵抗し、システムを通じて支援してくれている。
スタートの支援を受けて立ち塞がるこちらに、目の前にいる裏側のスタートは歯噛みをして苛立つ。遂には奥の手を繰り出す。
「この不愉快さ……同じ存在であっても許しがたい。貴様の時代は終わったのだぞ。ならば取り除いてくれる!刻よ聞くがいい!世界の産声を!」
『DNF Activation.「ハイパーメガビームサーベル ジオ・メガセイバー」』
普段のシステム音声とは違うそれが名称を読み上げると、掲げたビームランチャーの砲口から超巨大な黄色のビームサーベルが顕現した。その長大さは軽くMSの高さを越え、対岸まで届きそうなほどの大きさだ。
砲撃と見紛うそれを生み出す出力がどこにあるのかという疑問よりも、振り下ろされる危機に身構える。操るスタートがその様子を見てほくそ笑む。
「くっ……でかすぎるだろ」
『こんなのをぶつけるっていうの!?』
「貴様らの頑張り過ぎだったな。希望諸共、世界の都合を、流れを洞察出来ずに戦いを長引かせた罪を受け止めろ!」
光の翼を大きくはためかせ、攻撃態勢に入る。このままなら東日本連合軍の艦隊諸共壊滅させられる。どうやっても止められそうにない。無理でも避けるしかないと思われた。
ところが続くスタートの挙動で事態は一変する。振り下ろそうとする直前、機体の向きが反転した。
「何だ?」
『背中を向けた!?』
『違う、あいつが狙ってるのはゼロンだよ!』
光巴の指摘で気が付く。その先には確かに撤退したゼロンの艦隊が、攻撃目標だった前線基地が見える。
スタートもその狙いが正しいと語る。
「ご名答。エンゲージパートナーを消せば、表の私の抵抗も消える。世界を蝕む邪な者も消せるのだからな!」
「そうだとしても、そんなの!」
そんなことは止めなくてはならない。提示した条件を、そしてなによりジャンヌ副隊長が死んでしまえば、本当に取り返しがつかなくなる。敵の殲滅よりも味方の生存を望むこちら側に動揺が走り、止めようと反射的に機体を動かされていた。
だが明らかに行動が遅すぎた。後ろからでは展開した光翼で近づけそうにない。横からでもまだ危険すぎる。止めるためには正面しかない。しかし光翼のせいで大回りしなければならない。それでは振り下ろす動作に間に合わない。
ややゆっくりと、しかし確実にゼロン領域へと超巨大ビームサーベルが迫っていく。もはや止める術などない、割り込んで止めることも敵わないと思われた。止まるようにと叫ぶ。
「やめろ……やめろぉぉぉ!!」
「もう遅い!これで世界は――――」
変革の一撃。しかしその挙動が鈍くなる。明らかに振り下ろす速度が遅くなった。なぜそんなことが起こったのかは分からない。把握するには時間が足りないと分かる。
そう思ったなら取るべき判断は一つ。無心に機体を全速力で、ビームサーベルが振り下ろされる先へと割り込ませる。既にない左腕から発生させたドライバ・フィールドの腕を介してDB発動を宣言する。
「行ける!DNF!」
『最高の護りを、ここに!』
エターナも叫ぶ。その声に機体が応える。
『Authorize!DNF「ロード・ドライバ『アイギス』」
ドライバ・フィールドで作り上げられた不可視の巨腕。大地すらも掴み上げるほどの巨腕が振り下ろされる光の柱を掴み、押しとどめる。
接触と同時に左腕に尋常ではないほどの熱と重みが加わる。負荷に苦痛の声を上げる。
「ぐあああぁぁぁっ!」
『ドライバ・フィールドで……MSの装依システムを介してんのに、これは……くぅぅぅ!』
受け止めることは出来たが、このままでは時間の問題だった。先にこちらの意識が尽きかねない。
未だシュバルトゼロは光翼を大きくはためかせながらこちらを押しつぶそうとしている。力もしっかりと入っている。が、回線からは動揺が聞こえてくる。
「く……動け、シュバルトゼロ。何故だ、何故邪魔できる?黒和元ェ!!」
それはもしかすると元隊長の抵抗なのかもしれない。まだ全力を出し切れていない。ならここを何としてでも死守する。
「ぐ……くぅ」
「私の勝利は揺るがない、もう揺るぎはしないのだ!墜ちろ、馬竜!」
競り合う両者。それでもシュバルトゼロが優勢を保っていた。均衡が徐々に崩れていく。抑えきれなくなる、その寸前でシュバルトゼロに妨害が入った。
「落とさせはしない!」
『全機、一斉攻撃。落とす気で当てろ。光の翼を……消し飛ばせ!』
入嶋に続いた新堂隊長の指示で支援のタイミングを見計らっていた捕獲部隊が一斉にシュバルトゼロを攻撃する。
本来なら避けられる攻撃も、今はビームランチャーの出力の為にまともに動けない。火力全振りの攻撃が光の翼を喰らい尽くし、本体へと直撃弾を生み出していく。
それでもまだ宗司達は気を緩められなかった。未だに現出するハイパーメガビームサーベル。その根元で、シュバルトゼロがいくつかの兵装を中破させながら未だに攻撃の姿勢を崩さない。
スパークを散らせながらスタートは闘志を絶やしていない様子を露わにする。
「シュバルトゼロも限界が近いか……だが、この一刀は!」
「くっ!」
再び力が込められる、瞬間を蒼き流星の如く肉薄する影がシュバルトゼロに突貫した。
「―――――よくやったぞ、相模、入嶋!後は、任せろ」
「何っ!?ぐぁっ!?」
「!勇人さん!」
巡航形態へと変形したゲルプゼクストがシュバルトゼロに特攻する。特攻を喰らったシュバルトゼロが衝撃でビームランチャーから手を離す。直後ビームランチャーが出力を失いビームサーベルを停止、落下していく。
粘り続けて遂に得た瞬間だった。ここから捕獲・奪還作戦は最終段階となる。
◆
待ちに待った瞬間。それを作ってくれた若輩達に言葉を掛けたのち、ゲルプゼクストのドライバ・フィールドの安定化を図る。
既にエラクスモードは解除している。流石にエラクスの制御とドライバ・フィールドの同時運用は負担を掛けていた。ドライバ・フィールドをクローアームのようにイメージして捕らえるシュバルトゼロからスタートが離せと猛り狂う。
「くうっ……このような領域程度で、このシュバルトゼロがっ!」
「しつこい」
ドライバ・フィールド越しに引きはがそうと拳を叩きつけたりクローを差そうとするシュバルトゼロ。いつまでもそうされると消耗が激しいので素早く対処行動を行う。
変形した肩部に設置されたユグドラルエッジウイングを分離させ、素早く脳波コントロールとドライバ・フィールドの掛け合いでシュバルトゼロの腕部、脚部へと差し貫き、フィールドに磔とする。無論攻撃兵装となりうるテールユニットとウイングにも伸ばしたフィールドの斬撃で固定し、動きを止める。
「がぁっ!?う、動け、シュバルトゼロ……なぜ動かん!?」
余程シュバルトゼロのパワーに自信があるようだが現実は無情なものだ。あの攻撃でエネルギーを使いきった可能性も否定できない。それでも今がこちらにとって最大の好機である。新堂達に機体へ取りつくよう指示する。
「今だ、新堂!」
「あぁ」
素早く新堂達が捕らえているこちらの周囲に集まってくる。その中にはGチームの残りメンバーもいた。配置につくと、一斉に行動を開始する。
素早く腕部、脚部、背部ユニット、テールユニット、そして頭部へと取りついた新堂や鈴川達。しっかりと掴んだのを確認して合図する。
「いくぞ、せーのっ!」
引きはがそうと力を入れる彼女達。ところがそのタイミングでシュバルトゼロが足掻いた。
「英雄に対する無礼、許さん!英雄の前に跪け!!」
「っ!?新堂、一気に外せ。やられる!」
「なにっ」
その時には既にシュバルトゼロからオーラというべきものが噴出し、周囲へと広がりを見せた。
オーラに触れた機体達が次々と落ちていく。その中にはパーツを外すことに成功した機体もいる。勇人自身もドライバ・フィールドの操作で自機にも領域を張って防いでいた。しかしシュバルトゼロはまだ動いていた。
スタートがこちらを指して告げる。
「ユグドラルと同じ物を使う者には効かなかったか。だが、まともに動けないはずだ」
「くっ、飛行制御が狂いだしている……この力、ユグドラルフィールド、いや、DNL由来の力か」
感じ取った物から直感で推察する。理屈は分かる。しかしそんな技術こちらは発想にも至っていない兵器のはずだ。ましてや機体の制御を狂わせ、動作をエラーにさせるなどと。オーラのエフェクトが無ければ攻撃されたとも思わなかっただろう。効果は覿面だった。
別世界の、神話時代の兵器は現代の技術すらも上回るというのか。それでも若輩者達に言った手前、これだけは持たせなければならない。しかし、この追加装甲を外せるパイロットが、MSが果たしているのか。その答えは敵であるスタートの発言が現実だ。
「もはや貴様の役割も、無意味となったな。こうなれば!」
「ぐっ、こいつ」
未だ不自由なままの腕でドライバ・フィールドの拘束を無理矢理外そうとしてくる。こちらのドライバ・フィールドが機体制御と未だ侵食してくるオーラ、プレッシャーとでも言うべきものからシステムへの侵入の妨害に回しているせいで出力を十分に維持できていない。
徐々にひび割れていくドライバ・フィールド。もう持たないと直感する。頭が割れるように痛み、普段は全く吐かない弱音と言うべき要請を回線にぶつける。
「ぐっ……誰か……もう、持たない」
「このまま引きちぎってくれる!」
力を入れて押し破ろうとした、そのシュバルトゼロへ突如として機体が二つ飛来する。カメラでは分からない。しかしDNLの感覚がその特徴的な音波を告げてきた。その人物達の名を呼んだ。
「この感じ、蒼梨か。それにオースの!」
勇人と同じカラーガンダムの青を担当するハイ・スナイパー、深絵がシュバルトゼロの頭部を掴んで引きはがそうとしていた。オースインパルスのパイロットの進も機体の腕部でシュバルトゼロの動きを抑え込みに入る。
「くっ、くぅぅぅぅ!!」
「ちぃ、狙撃型が前に。く、この推力は……!」
「こんの……意地でも止めてやるっ!」
彼女の機体は狙撃型。よって基本的な戦場は後方支援となる。彼女の例外的な狙撃センスと独特な機体武装により遊撃戦すらも可能とするが、近接戦はほぼと言っていいほど向いていないはずだった。
しかし、とある一点を除いて、現状を打破できる可能性を秘めていた。バックパックユニットは以前のシュバルトゼロガンダムを直線加速だけは凌駕するシロモノ。推力は非常に大きく、かつてのホリン・ダウン作戦にて近接格闘戦を経験した深絵用に一撃離脱戦闘を行えるほどのものとなっていた。
今、その馬鹿げた推力がシュバルトゼロの頭部からドラゴンの頭部ユニットを引きはがそうと加速を行う。そして進のインパルスが加速で後ろへと向かってしまう二つの機体全体をその場に留めさせる。固定されたうえで後ろへと無理矢理引っ張られて剥がされようとする光景にスタートが危機感を覚えて制止する。
「ま、待て!これを引き剥がせばこの戦いの勝利は、君達の勝利はなくなるのだぞ!隊長という地位にあるのなら、その地位に上り詰めた実力と洞察力で世界を、戦況を見てみろ!君もそうだ。犠牲の上での勝利がどれだけ価値があるか!」
「例えそうだとしても、目的を果たせないのだとしても、救わなきゃいけないものがある!」
「ふざけんな!仲間の犠牲のある勝利よりも、仲間達が全力を出して止めようとするのを助ける方がいい!」
「私なら世界を救える!君達を、未来ある財産を生かせる!」
「そうかよ!」
「あぁ、そう。……でもね」
拮抗し合う中での会話。スタートが懐柔しようともくろむ。しかし進は聞かず、一泊置いて、深絵は冷静さと共に成すべきことを語った。
「今私達が救わなきゃいけないのは、生死を彷徨う魔王の仮面を被ったエース!―――――そして、ジャンヌちゃんを取り戻せるのは……あなただけでしょ!元君!!」
その宣誓と共にブラウジーベンガンダム・ライブラが一気に加速した。こちらもオースインパルスと共に全ての力、領域を使って自機とシュバルトゼロを固定する。
引き裂かれるような金属音。スタートが抵抗を込めた絶叫を響かせる。
「動け……、動けシュバルトゼローーー!動けェェェェェェェェェェェーーーーーー―――――」
そして、シュバルトゼロの頭部から、ドラゴンの頭部が外れた。
直後シュバルトゼロに張り付いていたドラゴンのユニットが自動的にパージされていく。パージされたパーツは海上へと落下していた別のパーツと集まって、もとの機竜の姿へと構成されていく。
合体を終えた姿を見て深絵が警戒をする。が、不要であることをその機竜が告げた。
『大丈夫だ、異世界のガンダム達よ』
「えっ」
『もう私は、意識を取り戻した。すまなかった。シュバルトゼロを、黒和元を生かすには、あれしかなかった』
あれしかない、とした機竜の言う通り、合体の解除されたシュバルトゼロは損傷個所が修復されたままで、接触回線越しの生体反応は微弱だが確かに検知されていた。
生存の知らせを周囲へ、後方待機の自軍艦艇へと通達する。
「シュバルトゼロ、黒和元の生存を確認。暴走装置も解除された」
『そうか……よくやってくれた』
『ありがとうございます、勇人警部さん。それに、みなさんも』
次元黎人の娘、次元光巴もHOWの紫音艦長と共に礼を告げる。シュバルトゼロをドライバ・フィールドで抱えたまま変形解除し、その腕でシュバルトゼロを抱き支える。
暴走状態から脱したとはいえその体に意識は戻っていない。死の淵から生還したのなら相応にダメージが大きいのだろう。
シュバルトゼロを注視しつつ、救援にやってきてくれた二人に言葉を向ける。
「助かった、深絵。お前のおかげだ」
「そんなことない。動きを止めてくれた勇人君、それに宗司君や千恵里ちゃんが頑張ってくれたから。それより、進君はどうして……」
深絵がやや伺うような形で進に尋ねる。確かにあのタイミングで動けたのだとしてもあれほど怒り狂っていた進がシュバルトゼロの動きを止めに入ったのが不思議ではあった。
すると進の口から短く言葉が紡がれた。
「別に、あいつらに感化されたのかもな」
視線の先に映ったガンダムDNの姿。それを見て察する。
ともあれ、シュバルトゼロは止まった。これ以上の滞在は無用だった。すぐさま撤退の準備へと入る。
こうしてゼロンからの防衛戦と救出戦は終了した。東日本連合軍の敗北と、次なる戦いの布石を残して。
英雄は眠らない。再び目覚め、決着がつくその時まで、真の英雄の誕生まであとわずか。
第4章 END
NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE
EP79はここまでです。
グリーフィア「いやぁ、宗司君大活躍じゃないの!」
ネイ「無くなった腕を、ドライバ・フィールドで形成する。元さん達とは違ったアプローチで、窮地を脱した宗司さん。もうエースの一員ですね」
黒和元の駆るシュバルトゼロを暴走状態でありながら押し留めた。それが例え元やスタートからの支援があったとしてもおそらく自衛軍や日本政府にも多少の影響があることでしょう。暴走した英雄を止めうる力があるとして喧伝されるかもです。もっともそれだけの実力が元々あったからこそ、引き出せたわけでもあるのですが。
グリーフィア「けど、そう言っているように、やっぱり元君と本来のスタートの抵抗も流石ってところよね~。その二人がいなかったら、やられていたかもなんて」
ネイ「元さんも、やっぱりジャンヌさんを殺させたくないって気持ちがあるんですね……当然と言えば当然ですが、その……」
思いが強い、ってことね。
ネイ「そうです。でも最後に止めたのはその想いを誰よりも知る深絵さんと、想いを爆発させがちな彼とは……」
グリーフィア「そうよね~。深絵さんもそうだけど、進君って前々話くらいにはふざけるなって言って殺してしまえって言ってたはずなのに。言っているように、宗司君の行動が変えたってことでいいのよね?」
それで間違いないですね。友直を助けた時、そしてそこから決死の攻防を繰り広げた宗司君がいたからこそ、この結果を掴みとれたというわけです。もちろん、それに必死に食らいついていった千恵里ちゃんも大事な要因ですよ。
ネイ「ちゃんとチームで勝ち取った、というわけなんですね。いいですね」
グリーフィア「まぁ呉川さんとクルツさんはなすすべなく動き止められたみたいだけども」
それは言ってはダメなのです(´-ω-`)とまぁ、第4章は無事終了。しかし、この戦いは続く第5章で決着です。
ネイ「当然ですね。次はジャンヌ・Fさんとレイアさんを助けないと」
グリーフィア「今度は元君が、何とでもなるはずだって言わなきゃね!」
まぁその主人公また曇るんですがね、ネタバレですが。
ネイ「えぇ……」
グリーフィア「それはヤバい。まさか助けないなんてこと……」
それは次章をチェック、ということで。それでは今回はここまでです。
ネイ「また次回、黒の館DNでお会いしましょう」
あ、ちなみに次回黒の館DNはネイさん達お休みです。
ネイ「えぇっ!?」
グリーフィア「どゆこと?」
今回1回分しかないんですね~。
ネイ「あぁ、お嬢様達しか出る必要がないんですね」
グリーフィア「なるほどね。じゃあお休みってわけだ~!」
あ、でもTwitterの告知はやってもらうかも。
グリーフィア「え~だる」
ネイ「あはは……では、失礼いたします」