機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、皆様。引き続き今年最後の更新をやっていきます。EPISODE81の更新となります。

ネイ「活気を失ったHOW、それを蘇らせてくれるのは、かつての仲間、という感じですか、今回は」

グリーフィア「久しぶりねぇ、華穂ちゃん。結婚したって話だけど、今回は子連れとかで来てるのかしらぁ?」

それに関して、覚えている人はちょっと驚くかもしれないです。というわけで本編をどうぞ。


EPISODE81 選ぶゼロ・エンド・インフィニット2

 

 

 数分前、新四ツ田第1基地の廊下を二人の男性が闊歩していた。

 

「はぁ……うちのチームはどうしたもんかねぇ……なぁ呉川隊長?」

 

 憂鬱な質問を投げかけながら基地内を歩くクルツ。質問を投げかけられた呉川はやや返答を濁す。

 

「さぁな。俺達に出来ることはない、ことだけは言える。あまりこういうことは言ってはいけないのだろうが、隊長も含めてあまりに未熟だと思う」

 

「……そりゃ言い過ぎだろ……特に隊長が無茶してたって話は前からあったんだし。まぁ、しっかりしてくれって言いたいのは分かるけどな」

 

 ストレートに意見を言った呉川にあまり言い過ぎるなと言う。何というか呉川はたまにこういう所がある。物事を妥協せずにありのままに意見を言う性格。そのために上官であろうとも相応しくない行動をした者には容赦なく毒を吐く。

 クルツはチームを組むようになってからそれを知ったのだが、HOW本部ではもとの部隊ではよく知られていたらしく、不評だったらしい。

 それが何の因果か元隊長の指揮するCROZE部隊に引き抜かれた。大方呉川の戦闘技能が評価されたのだろう。それも含めて便宜上副小隊長である自身の立場から言葉を諫めるように言う。

 

「けどよ、呉川だって色んな部隊転々としてようやく元隊長に引き抜かれたんだろ?CROZEに引き抜かれてからは全然転属してないんだから、拾ってくれた元隊長に、恩義とかねぇのかよ?」

 

「ないな。馴れ合いで組織に所属しているわけではない。これまで元隊長は敵を殲滅する為に戦ってきたのは評価する。だが負けて閉じこもるようでは部隊を預かる者としてあまりに弱い。それをダメだと言えなければ人としてダメだろう」

 

「そりゃ、そうだけどなぁ……だからってそんな突き放し方ないだろうよ」

 

 たった一度の失敗、いや、元隊長なら何度か失敗しているのかもしれない。そもそも自身がCROZEに入ったのは呉川よりも遅い。それまでの間に何らかの失敗をして呉川の不評を買っていたのだとしたらこの態度もおかしくはない。

 しかし、これまで元隊長の指揮するCROZE部隊の一部隊を任せられた男が先日の失敗でここまで過剰に反応するとは。それだけ負けが信じられなかった、これまで失敗してこなかった元の事を信頼していた故の失望なのだろうか。今回が初めて見た、とは到底思えない。

 失望と言えばもう一人、今身近に失望してしまっている奴がいた。これからまた尋ねようとしているのだが、同じチームメイトの元のエンゲージパートナー、エターナ・ファーフニル。彼女も姉の目を背けたくなる光景を好き勝手報道する両陣営報道機関に失望し、ふざけるなと怒って部屋に閉じこもっている。

 クルツは未だ立ち直れない本来のパートナーである宗司に代わって彼女の世話を見ているのだが、その状況は芳しくない。

 最後に訪問した時も食事を受け取らず、ドアの向こうで叫んでいた。

 

『どうせ、あんたもあいつらと同じなんでしょ!?』

 

 まったく、DNLとは便利そうで不器用だ。その力で落ち着いて見通せば悪意など持っていないことも分かるだろうに。しかし彼女がそう疑いたくなる気持ちも分からないわけではない。むしろクルツも同じ経験があった。

 自分の家族と恩師達があのテロに巻き込まれた後、医療施設に運び込まれた重傷の恩師の妹はテロの凄惨な生存者として取材が殺到した時、しつこすぎたので止めたのだ。しかしそれがテレビ局の顰蹙を買い、恩師の妹はテロリストの関係者であると悪質なデマをばら撒かれた。

 そのせいで一時は人間不信にも陥った。それを払ってくれたのが元隊長達だった。元々はデマが真実か調査しに来たのであったが、それがデマであることを見抜き、それらへの対処、更には危篤状態であった恩師の妹の治療費まで支援してもらった。

 恩師の妹は今も病院生活だが、もしあの時元隊長がいなかったら、その時点で彼女は死に、自分も復讐で悪しき道へと踏み入れていたのは頑なに想像できる。故に自身は元隊長の事も強く責めたくはなかった。

 それが彼女も分かれば、少しは信用してくれるのだろうが、今のあの状態では話にならないだろう。かつては自分もああだったのではと過去に反省する。

 一方先程のクルツの言葉を聞いた呉川は相変わらずそんな事はお構いなしとの返答をする。

 

「元隊長はそんな子どもじゃないだろう。これまで通り責任を持った大人としてただ使命を果たせばいい。それが出来ないのなら」

 

「だからさぁ……どんな人間でも、我慢し続けたらいつか壊れるって……ん、あれは!」

 

 年上に対して咎めようとした時視線の先に見知った顔が映る。見知ったなどとは恐れ多い。なぜならそれは自分達組織の長、本来なら東響の本部にいるはずの黎人司令だったのだから。

 その姿を認めると二人は同時に姿勢を揃え反射的に挨拶する。

 

「黎人司令お疲れ様です!いつこちらに?」

 

「ん?あぁ、Gチームの。お疲れ様。今来たところだ。大変なことになったな、君達も」

 

「いえ。パイロットの未熟さゆえの問題でしょうから」

 

「パイロットの未熟さ、か。そんなものでは、推し量ることは出来ないだろうな、今回は」

 

 黎人司令は二人へ返答していく。司令の隣には民間人と思われる女性と子供、一見して母親と娘の親子と思われる二人組が連れ添われている。

 黎人司令は子持ちだが、それは光巴がいる。まさか愛人とかではないだろうと思いつつもその二人組に目を向ける。子どもの方が視線を感じて慌てて母親の影に隠れる。

 

「っ!!」

 

「あっ、すまない……」

 

「あらら、大丈夫よ。この子恥ずかしがり屋なの。まぁ、気になるでしょうね、私もあなたの顔は見たことないし」

 

 女性は娘を安心させながらそのように言って見せる。その言い振る舞いから何やらHOWと以前から関係があるようだ。

 尋ねるべきかと迷っている間に黎人司令が断りを入れる。

 

「すまないが、彼女についてはまた後程聞いてくれ。一刻も早く、彼女と会わせたい者達がいる」

 

「あ、それは失礼。お時間取らせてしまい、申し訳ないです」

 

「そうね。言わなきゃいけない人達が結構いるから。それじゃあ挨拶はまたの機会に」

 

 言って彼らを見送った。その横で何やら考え込む呉川の姿。その横顔に向けて何を考えているのか尋ねた。

 

「何考えてんだよ。あの人知り合いか?」

 

 悩むからには心当たりでもあるのだろうかという発想。それは図らずも的中することとなる。

 

「あぁ。話には聞いたことがある。既に引退した身と聞いていたが……なるほどな。彼女ならあるいはか」

 

「何納得してんだよ。結局彼女は何者なんだ?子供連れなんて珍しい」

 

 知っているような素振り。それだけではやはり分からないので聞き返す。その当たり前の疑問に呉川は回りくどい言い方でおそらくその正体を推測した。

 

 

 

 

「黒和元を擁護するなら、彼女も知っていると思ったのだがな。知らないか、かつてHOWに所属していた、黒和元の血縁者、最後に残された妹の話を」

 

「妹……妹ぉ!?」

 

 思わず声を大にして聞き返した。

 

 

 

 

 進退窮まる深絵達の話し合い、そこに唐突に彼女の声が聞こえる。

 

「―――そんなのでだらしないんじゃないですか?深絵さん、ゆめのん」

 

「えっ……華穂ちゃん!」

 

 開かれたドアの方を見てその人物の名を呼ぶ。黒和、今は本堂華穂と名前を変えたかつての仲間が一人娘を連れてそこにいた。

同じくその姿を見た夢乃がその姿を見て驚きと共に駆け寄る。

 

「かほちー!礼華(らいか)ちゃんまで……どうしてここに」

 

「それは、私を呼んだこっちの人の話も聞いてね」

 

 返答した華穂が娘の礼華を横に引き寄せてもう一人を部屋に入れる。見慣れた顔の男性が姿を現す。

 

「やぁ、ご苦労だった深絵君、夢乃君」

 

「黎人君。そっか、黎人君が呼んだんだ」

 

 HOW司令の黎人は頷く。この緊急事態ということで既に黎人がこちらに来るということは聞いていた。ゼロン側との交渉、それに隊員達への労いという意味でわざわざ東響からやってきたのだ。

 だがその彼が華穂まで連れてくるというのは聞いていない。彼女がいる理由もいくつか挙げられるが、これと決まったものはない。そもそも彼女は既にHOWを退職した身。なぜ彼女を呼んだのかと疑問が夢乃の口からも零れる。

 

「でも、どうしてかほちーを……彼女はもうHOWの人間じゃ」

 

「確かに、私はもうHOWに所属してない。夫がHOWのチームRIOTに所属しているくらい。だけどね、今まで気遣ってくれていた肉親や、後輩達が苦しんでいると聞いちゃあ、見捨てられるほど図太くないわ」

 

 その理由を華穂自身が語る。理由を聞いてやはり、と思う。考えていた予想の中でももっともハードであろう役割だ。彼女は元々HOWのCROZE部隊所属、そして他でもない元の唯一の妹なのだ。その彼女ならではの役割と言えるだろう。

 理由は分かった。とはいえそれを引退した彼女にやらせるのは気が引けた。その意見を述べる。

 

「それは、ありがたいけど……でもこれは、私達今のHOWのメンバーがやるべきことじゃ……」

 

「確かに、それは間違いないでしょうね。けれどそれのきっかけ位は作る理由はある。踏み込めないようじゃ外から押してやるしかないんじゃないです?」

 

 しかしこちらの意見を華穂はそのように返す。深絵にはそのたとえがいまいちよく分からなかった。

 踏み込めない……確かに元君を刺激しすぎない様にしている面はあるけれども、それをせずに遠慮なく意見を言っていくべき、ということなのかな……。

 と深絵が思う間に話を聞いていた勇人が華穂の言葉に同意する。

 

「黒和妹の言う通りだな。刺激するのは良くないとはこいつらには言ったが、自分から物を言うということをこいつらはしないからな。特に深絵は」

 

「えっ、私!?」

 

 思わず自身に向けられた罵倒とも取れる言葉に反射的な反応を見せる。ちゃんと自分は意見を言っていると思っていたばかりにそう言われるのは心外だった。

 自身への言葉に対する反論をしようとするも、それを遮るように華穂が勇人に頷く。

 

「そうなんですよねぇ~。ゆめのんもそうなんだけど、特に深絵さんは鈍いというか。あと、私今は本堂誠の妻ですので、勇人さん?」

 

「か、かほちー、私も鈍いの……?」

 

「一々名前を覚え直すのは面倒なんだよ。まぁ不都合は出るか、分かった、華穂」

 

 鈍いと言われショックを受ける夢乃。もちろん深絵自身も同じ気持ちである。自慢ではないが、これまで自分は光姫の後任として、様々な任務に真剣に取り組んできた。それを見ているはずの華穂に鈍いと言われたのはあまりに不条理であった。

 もっともそれこそが彼女が鈍いという本質であることに気づいていなかった証拠なのだが。それらのやり取りを見ていた黎人が咳ばらいをすると、本質へと戻すために話の舵を切る。

 

「ともあれ、彼女の方も兄の元の事を心配して今回要請に応じてくれた。私も、唯一の肉親の言葉なら何か突破口になると思っている。希望的観測でしかないがな」

 

「それを言うなら兄の面倒を見てくれていたHOWの皆さんがフォローしてあげていれば良かったんですけど。毎年礼華の方に顔を合わせてくれる度に、元にぃってば難しい顔しているんですから。ゆめのんと深絵さんには伝えていたと思うんですけど?」

 

「そ、それは……」

 

「……事実だね。何も、出来なかった、わけだし」

 

 華穂は前々から兄の様子がおかしかったことを知り、こちらに知らせてくれていた。にも関わらず今回までに何も解決できなかった。理由は分かっていても対応が実を結ばなかった。そう言ってしまえば努力が実らなかったと言えるが、実際には何も出来ていなかったのと同じだ。

 こうして手をこまねいているのもその延長線上なのかもしれない。そうなれば異変に気づいていた本人がこうしてくるのは当然だ。恐縮するこちらにため息を吐く華穂が自らフォローする。

 

「別に気にしなくていいよ。二人はパイロットとして元にぃに負担掛けさせない様にしてくれてた。そんな最悪の状態にそもそもならない様にする選択をしてたんだから。今回は私に任せさせて。ついでに、私の後輩達に元気つけさせてあげたいし」

 

「華穂ちゃん……」

 

 いつまでも迷惑を掛けてはいられない。けれども今はその力を借りるしかない。夢乃と顔を見合わせて、二人でそれを受け入れた。

 

「分かった。なら、彼らのケアについては任せる」

 

「やったね。久しぶりに会話方面でだけどかつてのエースの実力見せますか」

 

「夢乃君、悪いがGチームのメンバー、相模君と入嶋君、大和君達を会議室に集めておいてくれるかな?エターナ君に関しては……」

 

「はい、分かっています。無理にはさせません」

 

 そうして華穂とCROZE部隊Gチームとの顔合わせの準備が行われていく。

 

 

 

 

 CROZE部隊Gチームへの面会の準備を深絵達に任せている間、華穂は久しぶりとなる司令との会話に意識を向けていた。

 

「こんな形で、また関わり合うことになってしまうなんて、ですね」

 

「すまない。私としても君に不安を掻き立てない様に注意を向けてきたつもりだったが……どこか油断、いや、傲慢さがあったのだろうな」

 

 話を聞く黎人司令の顔には申し訳なさが見て取れる。それをただ横目に覗き見る。彼が悪いわけではない。彼はただ、組織の為に兄の力を頼りにせざるを得なかっただけだ。

 それにこれはHOWの面々の問題というよりも、兄の問題である点が大きいと華穂は思っていた。ずっと他人からの干渉を拒んできて、縋れるものも押し退けてきた。問題を遠回しにして来た兄の自業自得。

 しかし、全てを自業自得で片付けるには虫がよすぎる話だ。原因は彼や、それどころか自分自身にある。黎人司令の言葉に自らも懺悔する。

 

「いえ、もし傲慢さがあるとするなら、それは私にもあります。11年前、私は兄にすべての責任を押し付けてしまった」

 

「11年前……スパランドの事件か」

 

 11年前、華穂は元、ジャンヌと共に彼女達の両親を救出する為に未だ次元覇院の影響の残っていた三枝へ潜入した。しかし結果は失敗に終わり、雨の中を逃げ回っていた華穂達に父親の元時は自身と妻の殺害を依頼した。

 その翌日、兄はその言葉通り永島スパランドの施設にて狙撃を敢行。彼らを殺害して騒ぎになる前に自分達を連れて離脱した。

 狙撃を実行する際、兄の手は震えていた。兄もまた撃ちたくないと思っていたのだ。その悲しみを自分は分け合わなかった。兄が分け合ってもらおうとしなかった。それからというもの、兄は魔王として敵に対して冷酷に作戦を遂行していった。

 もちろん、自身もそのサポートなどは請け負った。けれども兄はやっかむように結婚の話題を振ってくる。もう次元覇院はいない、華穂が戦う理由はないと必死に戦いから遠ざけようとしていた。

 初めの内は拒絶していた華穂だった。しかし旧式化していく機体で、無茶をしていく兄がそれでも自分の事を心配する姿を見て、もうダメだと思った。強情にしていたら兄はもっと苦しんでいく。結婚しても余計に気負わせてしまうのは分かっていたが、それでもこれ以上自分の事で憔悴していく兄を見るのは耐えられなかった。

 事件から3年後、ずっと交流のあった夫に悩みを話し、彼からの返事を受けて恋人となった。その二人で兄の下へと行き、兄からも頭を下げられて二人で夫婦となった。今ではこうして子どもも生まれている。

 礼華の頭を撫でながら、華穂は今の生活について語る。

 

「私は、今幸せだと思います。もしあの事件の事を私まで背負っていたら、きっと私も罪の意識でゆめのんのように結婚を諦めていたと思います」

 

「……夢乃君をああしたのは私の責任だ。光姫がああなってしまったから」

 

「それをきっと、ゆめのんも望んでいない。私も今の黎人司令のように、この幸せを享受したいと同時に、謝りたいと思っています。押し付けてしまった辛さを、勝手に背負ってしまった兄にもういいんだよと言いたい」

 

 紛れもなく華穂自身の本音。その瞳に涙が零れる。だけどもそれは決して礼華の上にはこぼさない。隠すようにして拭うと同時にこれから行う説得について心の内を明かす。

 

「だけど、これから私が兄と話すのは、きっと最悪のお願いをするためなんだと思います。また勝手に押し付けて、やれと言ってしまうようなこと。恨んでくれた方がマシです」

 

 その手がかすかに震える。礼華は気づいていないだろうか心配になる。黎人司令はすぐにそれに返答する。

 

「それを君が全て背負う必要はない。これは私の要請でもある。責任は私が取るさ」

 

「黎人司令……私だって、最低なことをした自覚はあるんです。ですから、私にも背負わせてください。これはあの時、我儘を言えなかった私の責任なんですから」

 

もしあの時強情になって結婚を拒んでいたなら。兄は変われたかもしれないが、今この手に収まる愛娘はいない。だからこそ今に目を向ける。今自分に出来る事をやる。たとえそれが最低な行為だったとしても。

 そんな願いを口にしてしばしの沈黙、その後3人のいる廊下に男性が訪れる。

 

「お待たせしました。待ったかい、華穂」

 

「大丈夫。ちょっと話していたから。あなた」

 

 その男性は華穂の夫、RIOT部隊の小隊長を務める本堂 誠(ほんどう まこと)だ。将来を共にすると誓った男性にハグをして会えた喜びを表現する。

 

「あなたも、こんな大変な作戦で生きていてくれてよかった」

 

「そうだね。お義兄さんも何とか無事だったよ。これから行くんだろ?」

 

「えぇ」

 

 夫は兄の状態を既に知っている。HOWの戦力の中核なのだから、知っていて当然だろう。そして華穂自身がここに来た理由も分かっている。

 抱き付いたまま夫に語りかける。

 

「本当ならあなたを労うために行こうと思っていたのに、こんなことになるなんて」

 

「君にとっては辛いと思う。僕も、お義兄さんの力になれなかったこと、すごく申し訳なく思うよ」

 

「あなたが責任を感じる必要はない。これは、大丈夫だと心のどこかで勝手に決めつけていた私の責任だから。……だから、これだけは受け止めてほしいな」

 

 一泊置いてから華穂は誠の胸に顔を押し付けて小さくむせび泣く。

 

「私、最低だ……元にぃをまた、苦しませる道に歩ませようとしてる……。でも、これしかない……これしか、思いつかないっ」

 

 再び兄に戦わせようとする自分と、もう戦わせたくない自分、相反する感情に押しつぶされそうになる。その叫びが漏れていた。

 感情の波に押しつぶされそうになる華穂に対し、夫である誠は抱きしめ返して答える。

 

「大丈夫だよ。君のやろうとしていることは、間違っちゃいない。例え最低だったとしても、ちゃんと思いやっているはずだ。もし僕が同じ立場だったとしてもきっとそうしている。それだけ、あの人には立ち上がってもらいたいと思うよ」

 

「うん……うん!」

 

 涙声で夫の胸の中で泣く。普段は決して見せない母の弱気な姿に礼華は戸惑う。

 

「ママ……ママ?」

 

 呼ばれて華穂は何とか平静を装うと礼華に心配いらないと声を掛ける。

 

「大丈夫よ、礼華。お母さんお兄ちゃんとそのお仲間さんを励ましてくるから」

 

「ママ……なかないで?」

 

「うん、もう大丈夫だから」

 

 言って礼華を抱きしめる。彼女がいるからこそ、今私は話しに行く。彼女や光巴、それにこの先生まれてくる子供達の未来の為に、大人である私達が今の問題を解決する。

 たとえそれが他の誰か、兄を一時的に不幸にするとしても今はそれを貫く。それが今の兄に、世界に必要なことだと思うから。落とし前は後で必ずつける。だから。

 予定通り礼華を誠に任せて、黎人司令と共に彼らの待つ会議室へと向かった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「うーん……驚くって言ってましたけど、どこがです?」

分からなかったらいいよ。でもグリーフィアさん気づいてますよね多分(;´Д`)

グリーフィア「気づくわ(笑)あのさ、第二部では戌原華穂って名前のはずなんだけどどゆこと?」

ネイ「苗字違うんですか……どういうことです?」

身構えている時に死神は来ないものだ……簡単に言うとチェック漏れです。戌村友直と関係のある名前にしたのによぉ(T_T)

ネイ「うわぁ……っていうか、そこ関係あるんですね」

グリーフィア「それちょっと思ってたわね。で、どういうことになってるの?」

お家の事情で苗字変わってます。今の彼らの苗字は現戌原家妻の旧姓ですね。

グリーフィア「強引すぎて草。ってかそれっていいの?」

そういうこともあるさ。というかそこ関連はややこしい事情絡んでて後々やるよお話。そこで明らかになる。

ネイ「ネタバレですねぇ。話は戻しますが、その華穂さん、覚悟を以って戻ってきたんですね」

かつての事件を引き摺っているのは、彼女も同じ。だが、兄が背負ってくれたからこそ、今の彼女がある。そういう意味でも彼女は今立ち止まろうとする兄をどうにかしたいと思っているってわけだ。

グリーフィア「軽口叩き合ってた兄妹が、こんなに泣かせる展開にしちゃって。でも華穂ちゃんも夫の誠さんと娘の礼華ちゃんとで幸せに暮らしてて何よりね~。でも誠さんがまだHOWの仕事してるっていうのは、ちょっと心配ね。この作品だと死にかねない」

止めんかその予想(゚Д゚;)どうなるか分からんけども。

ネイ「流石にない……と、信じたいです」

グリーフィア「ド畜生じゃないことを祈ってるわぁ」

それよりっ、次に何か感想とかないのっ。

グリーフィア「そりゃあ華穂ちゃんやってくれるでしょ!」

ネイ「華穂さんも深絵さんや夢乃さんにも言ってくれてますから、不思議と心配ない気もします。元さん相手には、どうか分かりませんけど」

おお、期待がこもってたのか。なら彼女に任せるしかないでしょう。ということで今年はこれにて終了です。

レイ「あ、終わった~?」

ネイ「終わったよ、レイ」

ジャンヌ「今年も書きましたね」

グリーフィア「とはいえ、更新止まっていた時期今年は多かったけどね~大体5か月分くらい更新なかったんだっけ?」

そうだね……(;´・ω・)今後もペース維持できなくなりそうかな。それでも続けたい。と、それでは今年も書き収めと言うことで。

レイ「今年もこの作品を読んでくれてありがとう!」

ネイ「ここまで読んでくださってる方も少ないようですが」

グリーフィア「来年も続けていく所存のようですので」

ジャンヌ「来年もよろしくお願いいたします」

全員「よいお年を!」
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