レイ「元君も何とか復活!ゼロンとの再対決に向けて動き出すッ!」
ジャンヌ「反撃の為にも、準備は十分しなくてはですね」
HOWで動き出しているなら、当然ゼロンも動いている。今回はそんなゼロン側の、あの人物の視点からの一話です。どうぞ。
HOW側との通信を終えたゼロンでは零崎に対し幹部らの意見が飛び交っていた。
「あのような不遜な態度、今すぐあの人質をつるし上げるべきだと思いますが」
「そうでしょう。舐められてもらっては困る」
幹部の中でも信仰心に溢れた者達を中心とした意見は報復で一致しつつあった。それを少数存在する穏健派とでも言うべき冷静な人物達がもう少し考えるようにと諭す。
「勝手なことをすれば、HOWも何か動きを行うでしょう。それでもし向こうの世界の戦力を連れて来られれば……」
「そんなもの、英雄であるガンダムの前には無力のはずだ!如何に異世界の戦力全てでも、ヴァイスインフィニット程度でも抑えられる、シュバルトゼロを倒したのだからな!」
粛清派は神治の出した戦果を盾に異世界の戦力と張り合えると豪語する。確かに今回の戦いで零崎たちの狙いの一つは神治の力を誇示するというのもあった。
新型となったシュバルトゼロを相手に敗戦し続けるのはそれだけで前線の者達の士気を削ぐ。それにいつまでも神治を弄ばせておくのも戦力としても神治のメンタルとしても良くないとしていた。
戦って、勝つ。その経験をさせるためにも今回の作戦は考案された。もし神治が撤退するような状況になっても他の戦線は抑えられるようにしていたため、負けて帰ってきても神治にはよく戦ったと褒めてやることも出来た。結果は予想以上の戦果を挙げてくれたわけなのだが。
しかしそれが今回の場合駄目だった。神治の辛勝を味方はそれが当たり前の戦果、それどころか神治に任せてしまえばいいと過大評価してしまっていた。
その考えは穏健派と称した者達の一部も同感のようであり、反論がやや減る。もちろん、いくらガンダムでもその戦力差を押し返すのは現実的ではないという声も上がっている。
その言い争いは幹部の中でも名の通っている者達の間でも分かれていた。粛清派寄りのハリヴァーが自らの意見を述べる。
「私も彼の言動に対して慎ませるという意見には賛成です。不遜な態度を崩さない者にはそれなりの未来を与えてやればいい。取り返したとしても取り返しのつかないような、ね」
「私も同意見だな。残念だが、いくら面倒事をやってくれたとはいえ、その本人があのような言い振る舞い……身に余る」
ハリヴァーと同意見であると述べたのはデスティニーズを指揮するギルボード。彼には今回HOWのエースガンダム部隊とされるGチームに対する対抗策、Gイーターの組織に尽力してもらった。
彼らはこの数か月シュバルトゼロに辛酸をなめさせられた者達。シュバルトゼロに対する恨みも多少入っているためにこういった意見に傾いているのかもしれない。
一方で同じような立場でありながら穏健派として声を上げたのは蒼穹島部隊の真藤史丈。彼が二人の仲裁に入る。
「確かに二人の言うように不遜な態度ではあろう。だが、彼の立場からしてみれば、あれは必然だろう。日本政府の指針は我らテロリストに交渉をさせないというのを立てているのだから」
「だが上に逆らえんとは、それでも魔王と言えるのかね」
「皮肉を言ってしまえば、それだけ彼と日本政府は繋がっている。我らよりも強いつながりを。逆を言えば、どちらかを崩せば東側の攻略にも繋がるとは言えなくもない」
ギルボードの返しとしてそのように答える史丈。彼の言っていることは的を射ている。彼の攻略こそゼロンが日本を制圧する重要なポイントとなりうる。
もっとも史丈司令本人としてはまた別の考えがあるのだろう。それに零崎自身気づいていたが、ここでは追求しない。むしろ、こちら側の味方として認識する。
そこにもう一人報復を現段階で行うべきではないと主張する者がいた。
「―――――私も、彼を必要以上に煽る真似は止めた方がいいと思います」
「……ヒイラギ・ノリエラ。君か」
ハリヴァーがその名を呼ぶ。彼女はチームソレスタルリーディングと呼ばれる部隊で、普段は宇宙で活動している。今回訳あって地上に降りてきていた。
地上で活動する者達は宇宙で活動する彼女に口を挟むなと口撃する。
「黙っていろ!宇宙人擬きが。地上は我らの領分。とっとと宇宙の支配権を確実な物としろ!」
「それを言ってはそこのハリヴァーさんも似たようなものではなくて?随分前に宇宙から地上に転属されたみたいだけど。それに今は零崎代表の右腕たるシャア様も所属は宇宙外縁部隊司令のはずだけど」
反論に対しそう答えるヒイラギ。それを聞いていたハリヴァーは口撃した幹部を咎める。
「口を慎みたまえ。ヒイラギ君、続けて構わん」
「なっ……!」
「ありがとうハリヴァーさん。これまでの戦いからしてシュバルトゼロ、黒和元は非常に実力のあるパイロット。それに彼の怒りで謎の現象を引き起こした例もある」
話の場を設けてくれたハリヴァーに一礼すると彼女はかつて次元覇院と呼ばれていた頃の「我が軍」の映像を見せる。撃墜された味方機のパーツを装着し、変貌を遂げるシュバルトゼロ。その姿は異形。言いたくはないが、奇跡と言ってしまっていい。
その例を挙げて彼女はこう告げた。
「下手にこちらが挑発して、こんな現象を起こして負ける、なんて過ちを二度犯す真似は避けたいところね。まだ彼は死んでいないらしいから。……あんな状況で生きている、というのもにわかに信じがたいのだけれど」
「ノリエラ君の言う通りだな。粛清するにも、選ぶ必要はある、か」
ノリエラの言葉で落ち着きを取り戻した様子のハリヴァーがそう話す。どうやら矛の切っ先は収めてくれるようだ。
作戦に直接関与しておらずとも意見を提出してくれる。流石は戦術予報士と呼ばれるだけはある。更にノリエラは零崎自身が思っていたこと、もっとも気にするべき点についても言及する。
「それに……先程から皆さんは神治君なら、ヴァイスインフィニットならやってくれると言っていますが、彼への負担を考慮していますか?」
「そ、そんな甘ったれたこと!今まで活躍していなかった奴を活躍させるのは当然」
「彼は今までもゼロンの為に戦っています。それに彼は若いわ。私達大人よりも心は脆い。その言葉がどれだけ彼に不安を与えているか」
ノリエラの言っていることは正しく、先程から会議に参加していた神治は彼らの言葉を聞いていて難しい顔をしていた。
今まで馬鹿にされていた分、急に頼りにされることにそもそも慣れていない。しかもそのされ方が強引であり、本来なら嫌だと言える場面で何を言えばいいのか決めあぐねていた様子だ。
ノリエラの言葉を受けて神治はそんなことはないと無理に奮い立たせて反論する。
「…………っ、そんなことはない。俺は、ゼロンの為に戦う。頼りにされているのなら、ただ戦うだけだ!」
「その頼りのされ方にも、問題がないわけじゃないわ。もしそのままの思考で行くのなら、あなたはあなた自身が倒した者と同じ末路を辿る。黒和元はそのせいで負けたとも言えるのだから」
「違う!俺は真正面から奴を打ち破った!だからこれからは俺がゼロンを引っ張っていくんだ!」
ノリエラの的確な指摘を必死に否定する神治。神治のそれはまるでこれからをすべて犠牲にしてもゼロンの為に全てを賭けると言ったようにも取れる。
その覚悟に零崎は思う所を感じる。二人の言い争いに割り込んだ。
「そこまでだ、お前達」
「!零崎様……」
「代表……」
二人は言い争いをやめて零崎の方に注目する。こちらを向かせてから彼らの意見について言及する。
「二人の考えについてはよく分かった。ノリエラ君、君の危惧はもっともだろう。神治は少々焦っておる。期待になれておらんのが問題のようだ」
「そうですね。期待を背負うにはまだ若すぎる」
「私はそうは思わん。だがこれもまた神治の期待の応え方なのだろう。その答え方が魔王と同じなのは因果だろうな。神治。期待を込めるものも居れば無責任に押し付ける者もいる。同時に、ノリエラ君のように気に掛けてくれる者もいる。それを、忘れるなよ」
「……はい」
代表の、恩人の言葉を聞いて神治は反省を示すように気落ちする。期待に応えようとしてくれる姿勢までは否定しない。それで無茶をするような真似はしてほしくない。それが零崎秀夫のポリシーであった。
もっともすべてがすべてそうではないが。二人の争いを収めたのち、そもそもの発端である黒和元への報復について言及する。
「代表として、君達の気持ちは分かる。だが、必要以上にそれをやってこれ以上の厄介事を増やすことを、私は望まん」
「代表……」
「よって、今までの決定通り、プランγのみを実行に移す。それこそ、魔王、黒和元にとってもっとも残酷な選択となるだろう」
それを告げると騒がしかった幹部達の声が鳴りを潜める。ギルボードやハリヴァーからも反対意見が出ない。説得は聞き入れられたらしい。
確認するとシャアが会議を締める。
「では各員持ち場へ戻ってほしい。ヴァイスインフィニット担当チームはプランγの受け入れ準備を」
『仰せのままに!』
言って会議は終了を見る。移動をする前にシャアとノリエラ、史丈に声を掛ける。
「シャア、ノリエラ君、史丈君。頼みがある」
「何でしょう」
「?」
「はぁ……」
三人を集めたところでそれぞれに関わる一つの事柄について、この後の零崎の行動について告げる。
「この後、史丈君の隊員が面倒を見ている捕虜の様子を見に行きたい。ヴァイスインフィニットチームにはプランγを少しだけ遅らせてほしい」
「なるほど。分かりました」
「ノリエラ君は私の付き添い、史丈君には隊員の方に連絡を頼む」
「私が、ですか」
「分かりました。すぐに連絡を取ります」
ノリエラを除く二人が言ってそれぞれ準備する。呼ばれる理由について意図を掴み損ねているノリエラに呼ぶ理由を簡単に話す。
「我らが組織の中でも数少ない女性幹部なのだ。話を聞いてやってほしい」
「なるほど。分かりました」
それだけ伝えるとノリエラも納得した様子で頷く。これ以上を話してもいいのだが、物わかりのいい人物で本当に助かる。
そして最後に未だ悩む様子の神治に声を掛ける。
「神治よ。お前はちゃんと自分の使命を全うした。次なる戦いでも期待しておる。焦らず、自分の答えを見つけるのだ」
「自分の、答え……」
小さく頷く神治。まだ完全には理解できていないだろうが、きっと彼なら答えを出せるだろう。それを見届けると早速ノリエラを連れて議場を後にする。
ゆっくりとした足取りで次なる目的地へと向かう。同年代と比べて若々しいとされる零崎でもやはり歳には勝てないところもある。ノリエラから心配される。
「やはり移動には車いすなど持ってきましょうか?恐縮なのですが」
「いや、その気遣いだけで十分だ。君には迷惑を掛けるが、そうでもしなければ周りにいらぬ心配を掛ける」
「はぁ……分かりました」
そうするうちに目的地にはすぐに到着する。基地の監獄エリア。管理人にお願いしてその扉を開けてもらい、中へと入る。並んだ牢屋の数は想定した反逆者の数をうかがわせる。
そのうちの一つの前に女性が立っていた。蒼穹島部隊の制服を着る彼女がこちらに気づく。
「お待ちしてました、零崎代表」
「あぁ、待たせた。それで、彼女は」
「起きてますよ、もっとも相変わらずの調子ですけど」
彼女が見やった牢屋の中、そこには先の対決で捕虜とした女性、ジャンヌ・ファーフニルが鎮座する形で腕を縛りあげられていた。
概ねニュースで流れている光景と同じ姿でいる。その目は虚ろで、しかし嫌悪感はまだ残っている。銀髪の髪はやや汚れでくすんでしまってはいるが美しさは健在のようだ。
その彼女が訪れた此方に気づいた様子を示す。自分の今の姿に恥じ、見せないようぬ体を縮込ませる。
「っ……」
「まだ、戦意は喪失してはいなかったようだな」
「……また、辱めるつもり、ですか……」
辱める、というのはこれまでに彼女に対し行ってきたことだろう。捕虜として彼女に行った身体検査。それは体の不調がないかを調べると共に、今後の研究のための前段階でもあった。詩巫女レイアのデータは取れてはいたが、それと比較するデータが欲しい。それに今後行おうとしているあることの為に、彼女の遺伝子データが必要だったのだ。
無論零崎の管轄で行っているため、他の幹部がやるような非道な実験までは行わない。ギルボードや、今はもういないグレイブ・モセスのようなあれは零崎の望むゼロンではない。しかし力がいるために黙認しているところがあった。だが自身の管轄ではそう言った事は決してさせない。そう言った強い決意があった。
だが彼女に対して行ったそれは、辱めと取られても仕方がない。身体の隅々まで調べ上げられて、データを取られるというのは不快以外の何物でもないだろう。
今後に快く協力してもらうためにも丁重に扱う。もっとも次の戦いでは彼女には耐えてもらわねばならない。それがプランγだ。
彼女の警戒に対して見張りを行っていた蒼穹島の人物、
「それは、今からやることではない。だが、今後によっては、こちらに協力してもらうことも考えられる」
「……もう、どうだっていい……殺して……。元がいない世界になんて、意味ない。生きていても、私は、選ばれない……っ」
彼女は生への執着を捨てる発言をして泣く。その様子を話を聞いていた真理矢が小声で伝えてくる。
(まだ、黒和元が生きていることについては伝えていません。それと彼女は大分黒和元に遠ざけられていたようです。原因は、私達のようです)
「そうか……狂わせて、しまったか」
後悔を口にするような発言。実際零崎自身はこれまで後悔をし続けてきた。後悔しても、立ち止まれない。かつての悲劇を繰り返さない。その為に日本政府と敵対すると決めたのだ。
だがその過程で傷ついた人間を見るのは辛い。それが使命ということもあって割り切ってはいる。傷心状態に付け込んでこちら側に引き入れたこともある。それでも、今回のケースは非常にやりづらかった。
救いたい。しかしゼロンの救い方となれば、ここでやることはただ一つ。その為にあらかじめ指示を出していたノリエラに合図する。
「頼む、ノリエラ君」
「はい」
言って牢屋に手を掛ける。鍵を開けようとしていた。その行動にジャンヌが体を震わせ、鎖の音が鳴る。
「っ!」
「心配しなくていい。ただ話すのにはこれが一番というだけだ」
何度目かの金属音で鍵が外れる。中に入っていったノリエラにジャンヌが怯える。その動きには怯えが確かにあった。少女として、これから行われるかもしれない行為に例え同性でも怖がっている。
彼女の手を縛るチェーンにも手が掛けられる。鍵を外そうとするノリエラを懸命に拒むジャンヌ。その想像は実現しない。鍵が外れるとそのままノリエラは彼女に声を掛ける。
「ほら、もう大丈夫よ」
「……へ」
その体に手が掛けられることはない。安心させてからノリエラは牢を出て、再び鍵を閉める。分からずにいるジャンヌに零崎は処置について話す。
「そのままでは、話に対してまともに反応出来ないだろからな。明日の夕刻まではこの処置だ」
「……どう、して」
捕虜の口から困惑の声が漏れる。当然のことだ。まだ彼女は先程の決定を何も知らない。それどころかパートナーの安否すらも知らない。
それらについての情報をすべて、零崎自身の口から語っていく。
「まずは話そう。黒和元は生きている。そして先程その本人から正式に再戦の取り決めが行われた。それが明日の夕刻だ。君にはこちら側の人質として―――」
「―――あっ、あぁ……」
ジャンヌはそれを聞き表情を崩す。緊張を伴ったものからたちまち涙を浮かべて自由となった両手で涙をぬぐう。
何度も涙をぬぐうが、それでもその両目から流れるそれは止まらない。やがて拭うことを諦め、感極まるように呟き出す。
「もう……戦わなくていい……私の為に戦う必要なんて。……あぁ、そっか。違う。彼はただ、みんなの為に戦うんだ」
弱音が聞こえてくる。報告では彼女は魔王、黒和元の恋人であると聞いている。それがこうなっているのも、自軍が捕らえているレイア・スターライト、他ならぬ自分達ゼロンとエンドが発端であることも知っていた。
ゼロンの代表として、本来これは好都合と言える状況。人質を懐柔するには丁度いい心理に当たる。こちら側に協力する様に言って、心を折って裏切らせる。他のゼロン幹部なら間違いなくそうしただろう。
だが零崎秀夫は違った。彼女にこう問う。
「お前は、あのような男でも愛せるのか?」
「……当たり前です。彼が狂ったのはあなた達のようなカルトと、私のせい、なんですから……」
問いに対し捕虜のジャンヌはそう答える。捕まった側としても当然の発言の内容。そう返ってくるのは予想できる。だがその内容に零崎は黒和元と同じ物を感じ取る。
その言葉を受け、ありのままに返答を返す。
「すまないな。そう思うのも、当然だろう」
「え……」
ジャンヌが予想外と言ったような声を漏らす。きっと彼女は肯定するとは思わなかったのだろう。零崎を見る真理矢とノリエラは注視してそれを静観する。
狼狽える様子のジャンヌに対し、自身の言葉の意図について語る。
「私のやっていることは、ただの復讐だ。だがこれをやらねば、この先も同じ犠牲者が生まれる。だからこそ、私は戦っているのだ。これ以上の痛みを生まないために」
「そうやって、戦いの輪を広げていく……。戦いを求めているんじゃなくて?」
「あぁ、そうだ。戦いを求めている。だが、戦いは私にとっては手段の一つでしかない」
「手段……?」
その表現にジャンヌは首を傾げる。おそらく、シャア以外には誰も理解できていないだろう考え。真理矢やノリエラも顔を見合わせ、知っているかどうかを確かめ合っている。
残念ながらそれを明かすことは出来ない。シャアにすらすべては明かしていない。その大きな考えを漠然とした言葉で伝え、動かしているのだ。味方にも決して明かさない真意。今もまた大仰に話し出す。
「私の望みは争いのない世界。それを実現できるのはゼロンの人間のみだ。それでも、その為に人を傷つける事は極力望まん。敵であってもな」
「零崎代表……」
「……」
敵であっても傷つけたくはないという言葉。ノリエラは驚いたように口に手を当てる。一方で真理矢はただじっと零崎を横目に見る。
これが今言える精一杯の表現だ。知られたくなくとも、教えたい真実。残酷でも与える慈悲の為の計画。それを目の前のDNLは疑惑の視線を変わらず向け続ける。
「……詭弁です。そんな考えは」
「だが、私は黒和元も同じ考えだと思っている。争いのない世界の為に、自分が戦う。私も、戦場ではない場で戦っている。戦うしかない。」
黒和元と話して得た結論。彼もまた戦いでしかこの問題は解決できないと思っている。同じ結論に至ったものとして、例え違う立場であってもこの考えは共有できる。
黒和元はその考えが出来る人間なのだ。それこそ零崎秀夫が望んだ人物。この暗闇に光差す革命の光。それを目の前の捕虜、彼を最も近くで見ている彼女がどう思っているのか。それを今知りたい。
そんな期待がジャンヌ・ファーフニルへと向けられる。じっくりとその答えを待つ。やがてジャンヌ・ファーフニルの答え、それが返される。
「……違う。元は、元は!……ただ、人と戦うのが嫌いな人間なんです……。怒りに呑まれたあなたと、本当に、ただ戦うしかなかった彼を一緒にしないで……っ」
精一杯、口から出した反論だったのだろう。例え今この場で殺されることになっても否定したいと思い、出た彼女の言葉。紛れもなく本心からの言葉。
それを聞いて零崎は短く、口角を上げて頷く。
「そうか。君がそう言うのなら残念ながらそうなのだろう」
「っ……私は、どうなっても……」
「どうもしないさ。明日まで、好きに過ごすと良い。ありがとう、教えてくれて」
痛めつけられると思った彼女の覚悟を決めた言葉に、心配ないとの発言を言ってその場を後にするように立ち上がる。彼女に言ったように、何かをするようにはせずに。ただ、離れる前に真理矢に耳打ちする。
「真理矢よ。明日の夕刻までの間、プランγの最中も彼女の見張りを頼む。よからぬ考えを他の信者には許すな」
「はっ。ですが、いいのですか?あのように言われて、あなたは」
真理矢からそう尋ねられる。その言葉に笑みを浮かべながら余裕を以って応える。
「当然だ。人質は、死んでしまっては意味がない。それに、君達も彼女には苦しんでほしくないと、思っているだろう」
「!それは……いえ、分かりました。全力で、当たります」
核心を突いた言葉を何とか平静を保って返答した真理矢に微笑みながら頷く。やはり彼女を捕虜の見張りに充てて正解だったと確信する。
共に様子を見ていたノリエラに声を掛ける。
「行こうか、ノリエラ君」
「はい、代表」
これでいい。明日が楽しみになった。零崎秀夫は安堵と呼べる表情を浮かべながら、監獄エリアを後にするのであった。
NEXT EPISODE
EP87はここまでです。
レイ「ゼロン代表、零崎秀夫……平和の為って言ってるけど、やってることと違い過ぎるよ?」
ジャンヌ「いままでからしてもそうですね。そもそも、次元の神とは一体何なのか。どうしてそんなものを信奉するようになったのか。誰がそんなこと言ったんでしょうかね」
多分そこらへんが黒幕なのでしょう。果たしてモブの何気ない一言なのか、はたまた悪意を持った者の犯行か。そこよりも今回は零崎の思想について触れてほしいかな。
レイ「んー神治を使い捨てにする気はなさそうだよね。ちゃんと子供として、後継者として扱おうとしてるっていうか」
ジャンヌ「一応、ダメなところはダメと言っていますから、人格者ではありそうです。それにしては性格が捻くれてて……裏で何かやってそうな気もするんですけど」
まぁそこら辺は色々関係者いますし。零崎だけが彼を教えるというわけにはいかない。ゼロンの教師が普通に教えている感じですから、知識が偏ってしまうわけですよ。
レイ「うーんやっぱり環境かぁ。でもそんな神治をそれもありって言ってるのはカルトって感じするなぁ」
ジャンヌ「それは思いますね。けど、そう思うと今回のジャンヌ・Fさんの扱いが妙なんですよね。優しくしている、取り込むつもりもないみたいに描写が」
レイ「それ!なんか考えてるみたいに言ってるし」
彼の目的も、何か一つ以上は抱えているものがあるようですしね。彼の最終目標に神治が必要というのはあり得そうですよね、このままだと。
ジャンヌ「いずれにせよ、零崎秀夫というキャラクターはまだ謎が多そうです。周りの人の関連も見えませんし」
レイ「今回登場したヒイラギさんとかね。驚くのも無理ないけど、なんか考え方とか珍しく常識人で、なのにゼロン中核にいるのも違和感ある」
それも今後明らかとなっていくでしょう。
ジャンヌ「あ、あともう一つ。ジャンヌ・Fさんの最後の方の言葉なんですけど、元さんが戦うのが嫌いってなんか違和感を感じます」
レイ「そうだね!失礼だけど元君次元覇院とかに対しては凄い敵意むき出しのような気がする。華穂ちゃんとの一見もそうだし、それなのに戦いたくないってさ」
あぁ。それについてですが、分かりやすく言うと元君は優しすぎるんですよ。
ジャンヌ「優しすぎる……?」
レイ「どういうこと?優しいとは思うけど……でも敵相手には」
じゃあクルスを助けたり、L1でアルスを助けたりしたのは?戦場で味方に付いてもらったりしたのは?
レイ「あー……割とそういうのは、すんなりと受け入れてるよね、元君」
ジャンヌ「同じ例ではL3第3章でフェネクスが戦闘参加した時も捕獲よりも優先してましたよね。それ以前には元さん処遇を時には意見して変えてもらってるみたいなことを言われていましたし」
元君も根はそういう甘さを抱えながら、戦いを無理矢理受け入れているところがあるんですよ。さてそこらへんも含めて、同日公開の次話に続きます。
レイ「次へ続くよ~!」