機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。EP87と88の更新です。こちらは88となります。

ネイ「ゼロンの内部事情も分かったところで、また舞台はHOW側と」

グリーフィア「もう一度やる気を出した元君が、迷惑をかけたってみんなに謝る感じね~。さて、赦したりとか、してもらえるのか~?」

それではどうぞ。


EPISODE88 戦う理由2

 

 

 突如として会議室に集められたGチーム一同。そこにはしばらくそっとしてやろうとしていた呉川やクルツ、そして同じGチームでずっとふさぎ込んでいたはずのエターナも同席している。

 二日ぶりの再会となったエターナに、声を掛ける。

 

「エターナ、出てきたんだな」

 

「……当たり前でしょ。あいつの、言い訳聞かなくちゃ……」

 

 その声にやや覇気がない。泣き疲れたと言った様子でそれでも元の口から聞こうとする姿勢は崩さないそこに、彼女の執念のようなものを見る。

 とはいえそれ以上に出て来てくれたことにこちらは安堵を覚えており、入嶋とクルーシア、クルツがエターナと話す。

 

「エターナちゃん、出て来てくれたんだ」

 

「よかった……」

 

「せっかく人が毎日顔見てやろうとして見せてくれなかったのに、やっぱり元隊長じゃなきゃダメなんだな。あの人には敵わねぇな~」

 

「アンタは、しつこい。一人に、なりたかったから。一人になってるときも姉様の悪いニュースばっかり、流れてきて……だから、あいつが今どう思ってるのか、聞きに来た」

 

 世話を掛けてくれたクルツを邪険に扱いつつもこれまでの様子を伝える。きっとこの中で最も元隊長の言葉を聞きたい者の一人だろう。

 そのもう一人も元隊長の到着を今か今かと待ちわびている。

 

「あいつはまだかよ……人を呼びつけておいて……」

 

「でも、お兄ちゃん声が聞こえた時真っ先に立ち上がったよね~」

 

 兄の進に対し、ちょっかいを掛けるように事実を指摘する真由。妹からの指摘を進は必死に否定する。

 

「違っ!俺は、ただ……あいつが何を思ってまた戦うのか……知りたい、明かしてほしいだけだ」

 

「うん。分かってる。みんなそうだもん」

 

 真由の言葉は正しい。ここに集まった者は皆、どういう思惑であれ元隊長が戦うと決めたその理由について聞きたがっている。それを聞いてようやく、自分が前に進めると信じている。

 傍から見ればなんて無責任なのだろう。他人に自分の再起を押し付けるなんて。だがそれと同じくらい、彼の言葉を聞き届けたいという想いがあった。

 宗司は、少なくとも聞き届けて、見届けたいと思っていた。パートナーのエターナがまた再び戦ってくれることを信じて、その再起を。

 そしてその時は訪れる。部屋のドアが開いた。元隊長が入室してくる。

 

「!元隊長!」

 

「元、隊長……」

 

 入嶋の声につられて呼ぶ。二日ぶりに見せたその顔は決して明るくはない、いつもよりけだるげで、しかし硬い表情を顔に張り付けている。

 無理に平静を保とうとさえしているその表情でこちらに返答する元隊長。

 

「待たせたな。心配を掛けてすまなかった」

 

 最初の一声はそんな内容だった。心配を掛けたのは間違いない。だがそれよりも不安が勝っていたのはある。そして一部の人間は元隊長の行動に憤りと悲しみを持ち合わせていた。

 それを代表する二人がそれぞれ詰め寄り、止める間もなく想いを吐き出していった。

 

「何が心配をかけた、だ!どうするんだよ、この落とし前!月子を、返しやがれ!」

 

「今まで何してたのよ……ずっと姉様はテレビで晒し者にされて!今だって、ゼロンでどんな仕打ちをされてるか……!早く助けてよ!」

 

「進、やめろよ。そんな、こと言うのは……」

 

「エターナちゃん落ち着いて!ちゃんと隊長も考えてくれている、はず……」

 

 入嶋と共に気持ちを荒ぶらせる二人を宥める。二人の言葉は正反対の事を求めている。どちらかが落ち着かなければ話も出来ない。ところが元隊長はその気遣いをいいとした。

 

「宗司、千恵里、構わない」

 

「えっ」

 

「でも、元さん!」

 

「二人の怒りは当然だ。俺に任せてくれ」

 

 諦めているかのような声音で諭され、その庇いを止める。一歩下がると、部屋の隅でそれを見やる呉川小隊長の姿が見える。

 その姿はまるで見定めるといった様子だ。今後も使えるのかどうかというような。それほどではないが、宗司達もその様子を見守る。

 元隊長はそれぞれに一つ一つ言葉を返していく。

 

「俺は、ずっと後悔していた。暴走状態とはいえ、味方を撃った。殺した。そんな俺には、もうジャンヌを救う資格もないんだろうとさえ思った」

 

「だったら、なんで今ここにいる!」

 

「姉様を救えるのはあんただけなのよ……!悔しいけど、その力がある!資格とか言ってる場合じゃ!」

 

 進はなぜまたここにいるのか問い、エターナは救う資格がないとかいう問題じゃないと訴える。

 死んでしまった仲間の為、今を生きて助けが必要な家族の為にそれぞれが求めるのは元の死と生。相反する望みを叶えるのは不可能だ。

 二人の言葉に満足する答えが返せるのか、少なくとも宗司にはそれは出来ないと思っていた。二人の願いを叶えるには、どちらかの願いを壊さなければならない。

 どちらを叶えるのか。どちらを選ぶのか明白なような気がしたが、その過程がどうなるのか注視せざるを得ない。その時元隊長の口が動いた。

 

「俺は、償うためにここにいる」

 

「何?」

 

「今までもそうだ。殺してきた命の為、命を救った代償を俺は払ってきた。前線で戦い、敵の憎しみを受け止める。その結果がこれだ。味方も殺して、かけがえのないパートナーは奪われて……」

 

「……そう思うなら、早く助けてよ……大切だって思うんなら!」

 

「それで、月子の命の代償が払えるのかよ!芽衣の悲しみを救えるのかよ!?」

 

 元隊長の言葉にそれぞれの反論が突き刺さっていく。それでも元隊長は正しいと思った反論をぶつけていった。

 

「助けるさ。だけど、もうその想いは受け止められない」

 

「どういう、こと」

 

「殺した代償さ。鷹宮月子や、残された鷹宮芽衣に償えるのは、それくらいしかない」

 

 その言葉にエターナの表情が更に曇る。助けると言っているのに、想いを受け止められないというのは、きっとそういうことだ。元隊長はジャンヌ副隊長の気持ちを分かった上でそれを拒んでいる。この状況であっても、それは変わらないのだと伝えている。

 挙句の果てにそれを償いであるとしていた。それもまた進の望む答えだと思っている。まるで自分だけが不幸であればいい、そう言っているかのようだ。

 けれどもそれは矛盾しているようで今の二人の願いに重なるところがある。助け、また罪を償う。いいとこどりと言うよりは、「どちらにも踏み込まない中途半端」と称するのが一番だろうか。

 確かにどちらの願いも叶える案ではあった。だが、それは決して二人の求めるものではない。それでは認められないと最初に声を上げたのは進であった。

 

「ふざけんなよ!!何が代償だよ。そんな、後ろ向きなことで、あいつらの悲しみが救えるってのかよ!」

 

「ちょっと、お兄ちゃん!」

 

「!…………」

 

 その襟元に掴みかかって壁へと叩き付ける進。真由と共に止めようとしたが、それよりも先に元隊長の身体が壁へと叩き付けられる。

 それを一切抵抗することなくされるがままの元隊長。やや身じろぎをするも、沈黙を守る。そこに進の叫びがぶつけられた。

 

「月子と芽衣はとっても仲のいい姉妹だったんだ。喧嘩することもあったけど、かけがえのない半身だって、月子はいつも言っていた。曲がりなりにも、パートナーなんていうものを組んでいたあんたなら、どうするべきかは分かってるだろ!」

 

 姉妹とパートナー。その結びつきは近いものがある。特に進は半身という言葉を使って、それを訴えていた。

 ここでようやく気付く。進は、決して死んで償えだとか、そういうことを言いたかったのではない。その苛立ちはエターナと同じ憤りから来るものであったのだ。もちろん、殺された恨みもあったのだろうが、それが決して黒和元本人から向けられた物ではないと既に割り切れていたのだ。

 だからこそ、黒和元の口からその本心を聞きたい。宗司にはそう読み取ることが出来た。だが元隊長の口から語られたのは、彼が望むとは思えない、失望を誘わせるような返答だった。

 

「だったら、俺が彼女の支えになれとでも」

 

「お前ェ!!」

 

 ダン!と再び叩き付け音が響き渡る。痛々しいが、無理もない。その言葉はまるで長髪のようであり、進が怒るのも無理はないと思った。

 しかし元隊長を心配する入嶋からはやりすぎだと宥める声が飛んだ。

 

「進さん!そんなことしないでっ」

 

「うるさい!なんで、何でそんなことが言えるんだよ!パートナーがいるってのに、こんな!」

 

「それは……分かんない、私、元隊長が分かんないですっ……!」

 

 反論しようとした入嶋も元隊長の意図が理解できず、反論できないことに涙をこぼす。泣きじゃくる入嶋をクルーシアがフォローに入る。

 クルーシアが抱き留めている間、主張をぶつけあっている両者で沈黙が生まれる。先に口を開いたのは進の方だ。

 

「違うだろっ……償うっていうのは、生きて、戦うってことだろっ!死を覚悟するなんてこととは違う!」

 

 進は必死にこの場での償うということがどういうことかを訴える。とても進の口から語られる言葉とは思えない程にしっかりとして、かつ意外な言葉だった。ところが元隊長の口から、その言葉が受け売りであることが語られる。

 

「その言葉……大守明日那の言葉か」

 

「っ!?知ってるのか……そうだよ。あの一々イラつくあいつの言葉だ!だけど、合ってるだろ!?」

 

 進は恥ずかしさを隠すかのように早口で語る。大守明日那の言葉。それが進の口から出てくるのはあの時から考えれば意外であったし、その関係性の変化まで読み取れる。

 そんな彼女の言葉を引用した進が詰め寄る。だが元はその彼に対し不自然なまでの乾いた笑いを見せた。

 

「フッ、ハハッ。そんな理想を、どこまでも」

 

「っ、何だよ……お前もあのスタートとかいうやつと同じことを思っているのかよ!」

 

 あの時の会話が蘇る。覚醒したスタートは進やオースの面々を指して子どもだの英雄に相応しくないなどと言い放った。理想かもしれないが、それでもやると決めた道を否定したのだ。

 それがあっても進は元隊長を助ける側を選択した。どれだけ怒りがこもっていたのかあの時の進の様子を見れば分かる。それでも感情を裏切ってその選択をした進に、元隊長が言うのならどんなことになるのか。

 それを承知しているかのように、元隊長は言葉を続ける。

 

「あいつらの、オースの考え方は甘い。それでは自分の都合で人を振り回すだけだ。そしてその言葉も一定の人間には響かない。今の俺には、な」

 

「っ、どうして、響かないんだよ」

 

「お前達は、俺とジャンヌに結ばれてほしいと思っている。だけど、俺は違う。少なくとも、今の俺はもうあいつに相応しくない。そう気づいている」

 

「そんなの、助け出せればいいでしょ?それだけで、もう……」

 

 エターナがそう語り告げる。エターナはジャンヌ副隊長の、姉の気持ちを推し量り、今までの口からは語ってこなかった言葉を伝えている。

 二人の仲に対する諦め、とも言えるエターナの言葉は、確かに二人に幸せを望んでいた。ところがその言葉を、想いを元隊長は押し退ける。

 

「駄目なんだ、俺には。親も、仲間も殺した俺と結ばれて、彼女が祝福されると思うか?」

 

「っ!……」

 

「そ、れ、は……」

 

 告げられた言葉。諦めと言える言葉。しかしそれだけで宗司達Gチームには彼の言いたいことが分かる。この一週間宗司達が嫌でも経験した、世間からの声。それを元隊長は気にしていたのだ。

 ずるいと思った。決して無視できないその想いをぶつけられては、反論は出来ない。宗司達では言い返す言葉が思い浮かばない。

 返答に戸惑う間に元隊長は掴み続ける進に語り聞かせる。

 

「俺には、もうそれしか残ってないんだよ。こんな生き方しか出来ない。こういう対応しか出来ない。それが俺の償いなんだよ」

 

 言われて気付く。元隊長の言う償いは、これら含めてのことなのだ。先程から進が失礼にも壁へと叩き付けても何も抵抗しない。受け入れるかのような姿勢。

 一見すれば人としてはおかしな反応だ。しかしそこで華穂さんから言われたことを思い出す。

 

『例えそれが自分の心の限界だったとしても、おにぃは抱え込んでしまう』

 

 きっと、言いたいこともあるのだろう。だけどそれを押し殺して、黒和元という人間を演じている。今の宗司には少なくともそう思えた。

 もう進の表情からは明確な怒りは消えていた。代わりに複雑な憤りを感じさせる。それを見た元隊長はふと、こんなことを口にする。

 

英雄(ヒーロー)なんてものは、この世界には存在しない。所詮は架空の存在。憧れ、そうであれたらいいと思うだけ。俺は、そうでありたいと思ってしまったんだ」

 

「…………っ!」

 

 エターナが拳を握りしめる。その言葉の持つ意味について何か知っているかのような反応。反論をしようとする様子にも見えた。

 そのまま元隊長はオースの考えについて、そして俺達自身の考え方について言及する。

 

「オースも、その幻想と同じ事を求めている。永遠の平和なんてない。武装放棄なんて実現は出来ない。無駄なあがきだ」

 

「お前!結局そんなことを!」

 

「だが、お前達の状況は違う。お前達がこの戦いで抱いたそれは、決して無駄なあがきじゃない」

 

 その言葉の意味が何を示しているのか、嫌でも分かる。既に元隊長は宗司達が敵対した彼らの事について知っている。その事について話をしていた。

 決して出会うはずのないと思っていた存在。それに対して、自分達、少なくとも宗司は倒す以外の方法があるはずと思っていた。けれどもその考えは連日のニュースで消えそうになっていた。

 何を以てそれが無駄ではないと言うのか。元隊長の言葉に注目が集まる。

 

「俺達は大人だ。無茶なことは出来ない。だがお前達は若い。無茶が出来るかもしれない。けど忘れるな。お前達の一番の使命は生き残ること。それを忘れての行動は認められない。それだけは肝に銘じて臨め」

 

 これまでにも散々聞いてきた「生き残れ」という命令。それを護ってなら多少の無茶はしてもいいと元隊長は言った。

 心が楽になる。その行動を取ってもいいという許しは宗司達にわずかな希望を見出させる。自分達の抱いた気持ちは間違いではないのだと。

 しかしそれは同時に無責任な発言でもあるとの側面も持ち合わせる。無茶な言い分とも取れるそれはGチームの先輩にあたる呉川小隊長、クルツからは反論、呆れが飛んでくる。

 

「元隊長、あなたの考えは破たんしている。彼らに死にに行けと言っているようなものだ。敵を説得するなどと」

 

「それを止めるのが、俺達大人の仕事だ。止めると言ってもやらせないわけじゃない。死なせない様に立ち回る」

 

「まったく、隊長の言い方、滅茶苦茶だぜ。俺達は死んでいいのかよ?」

 

「無論お前達が無茶をすることは許さん。第一優先は自分の命だと言っている。それじゃあダメか?」

 

 二人の言い分に対し言い返す元隊長。フォローに回ってほしいとの言葉を掛ける。それに対し、二人の意見は割れる。

 

「ダメかって……はぁ、まぁ俺も異論こそあれど、後輩たちの望みは叶えてやりたいもんだ。俺はやってやろうじゃないの」

 

「俺は賛成できません。この事は上に報告させてもらいます」

 

「言えばいいさ。それをどう判断するかは上だ、呉川。クルツはすまないな」

 

 呉川隊長に対しては、まるで上がどう判断するか分かっているかのように返す。そしてクルツには謝罪の言葉を伝える。二人はそれぞれそっぽを向けるか、あるいはやれやれと言った具合に頭に手を当てる。

 しかし、ここまで来てまだ本題には入っていない。今後どうするのかはまだ最後の段階は踏んでいない。言い訳を聞いただけに過ぎない。

 ところがそれを元隊長も分かっていたようで、こちらへと視線を向け直し、呼吸をする。まるで何か重いことを告げるかのように。

 その重たい口が開く、そして言った。

 

「俺は、もう一度あいつと戦う。戦って、取り戻す。二人の大切な女性を。彼女達を救い出すことが、俺に出来る、死んでいった者達への償いだ」

 

「またかよ……そんなんで、救えるのかよ!」

 

 進が問いかける。再度の問いかけ。進の追求に対し、元隊長は確かな口調で応える。

 

「救わなきゃいけない。俺は、そう言う人間だから」

 

「……くそっ、勝手にしろっ」

 

 進は匙を投げるかのようにそっぽを向く。だが、もう理不尽に暴力を向けるような事はしない様に見えた。

 その彼にも向ける形で、宗司達にへと向けて言葉が告げられる。

 

「だからこそ、お前達にお願いしたい。次の作戦に、参加してほしい。俺の支援の為に」

 

 その時の表情が目に焼き付く。少しだけ表情を緩め、目つきが優しさを伴う。参加してほしいという気持ちがひしひしと伝わるかのような雰囲気だ。

 きっと先程の言葉も関係しているのだろう。諦めかけていた自分達の願いを果たしてほしいという願い。それはまるでその行いが赦されているかのようだった。

 そんな目を向けられてはもう答えは決まっていた。ふと横を見ると、入嶋も覚悟を決めたような目つきを取り戻している。彼女は言った。

 

「参加、させてください」

 

「千恵里ちゃん……」

 

「私、何が出来るか分からない。まだ、あの子と向き合えるかどうかすらも。でも、元さんの力にはなりたいです。ジャンヌさんを今どう思っていたとしても、きっと決着はつくはずだと思いますから」

 

 入嶋はまだ元隊長とジャンヌ副隊長の仲を諦めていなかった。きっと最後には結ばれると、口にする。

 それに続いたのは意外にも進の言葉だった。

 

「俺も、戦う。あんたのそれが償いって言うんなら、俺はそれを見届ける必要がある。あんたのそれが正しいっていうんなら、俺に示して見せろっ!」

 

「お兄ちゃん……フフッ」

 

 真由が兄の成長に微笑みを漏らす。このまま怒って抜けるかと思われたそこも、繋ぎ止められたらしい。

 それは小隊長クラスも同じで、呉川小隊長とクルツがそれぞれの意見を述べる。

 

「無駄死にも、勝手な命令違反も許さん。だが、それが命令というのなら……っ」

 

「相変わらずお堅いねぇ呉川は。ま、俺も相当ヤバいと思うんだけども。けど隊長からお願いされちゃあ断れねぇ。ここで動けなけりゃ俺は自分を軽蔑しちまうからな」

 

 二人とも覚悟を決めたように返答する。残るは宗司とエターナのみだ。

 どう答えるか考え込む。単にやる、と言えばいいかもしれないが、エターナが心配だ。もしそんな隊長には付いていけないと言ったら……。

 彼女のための言葉も一緒に考えようとする。だが、それはたちまち杞憂となった。先にエターナの口が開いたのだ。

 

「……黒和元、一つだけ聞いていい?」

 

「エターナ……?」

 

 質問の許可を願うエターナの声に首を傾げる。元隊長はそれをすぐに認めた。

 

「あぁ、いいぞ」

 

 その返答を受けて、すぐにエターナが尋ねた。その質問は宗司達が予想外と思うしかない内容だった。

 

「アンタは、もうヒーローを信じないの?」

 

 エターナの口からは到底出てきそうにない単語。と、同時に先程の疑問も解決する。エターナはずっと元隊長の言ったヒーロー像について思う所があったのだ。

 エターナの発言は、まるで元隊長が過去にヒーローを信じていたかのような言及だった。過去に一緒に過ごしていたこともあるであろうエターナからの言葉の信憑性は高い。

 元隊長はしばし思案を巡らせるように手を顎に当て、瞬間的な熟考の後、答える。

 

「今も信じているさ。ただそれが、現実にはいないと思っただけだ」

 

「……そう。分かった。それだけでいい。私も、こいつの力になる。相模宗司の力に、それだけ」

 

 自分の力になると言って要請への返答としたエターナ。その形にやや思う所を感じる。だがこれで残すは宗司の返答を待つのみとなった。

 こうなったならもう悩む必要なんてない。宗司はすぐに要請へと答える。

 

「俺も、戦います。戦う理由は、変わってしまったかもしれない。だけど、それも叶えたいって思うから。俺はようやく、戦う理由を見つけられたと思うから」

 

「そうか……分かった。ありがとう、みんな」

 

 受けてくれたことに礼を述べる元隊長。ここまで来ればもう引けない。いや、引くつもりなんてない。取り戻すのだ、全てを。明日を。

 エターナも、進も戦う意志をちゃんと取り戻した。やっぱり元隊長がいなければ、このチームは成立しないと思った。けれども同時に頼り過ぎない様にしないととも思った。華穂さんの言うように、期待を背負わせすぎないように。

 その事を解散の別れ際に元隊長に告げた。

 

「あの、俺も、なるべく自分一人で……いや、他の人に頼れるようにします」

 

「……そうか。それはいい傾向だ」

 

「えっ」

 

 いい傾向と言われて若干戸惑う。まさか褒められるとは思っていなかったからだ。その時入嶋から若干恨みのある視線は向けられたのも戸惑いの一つだが。

 しかし元隊長のそれは、単純なものではなかった。隊長の言葉が続く。

 

「他の人間に頼る、俺には出来ない。いつもそういう時俺は押し付けると思っているからな。頼るという言い方の出来るお前は充分に良い。―――お前達は、俺のようにはなるなよ」

 

 その表情からはいたたまれない様子を察することが出来た。足早にその場を後にされたのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP88はここまでです。

ネイ「何か、凄い複雑」

グリーフィア「元君はもう色々諦めてる感じよね~。しかもそのトラウマを今回増やしてるみたいだし」

前も言ったけど元君は戦いに向いている人間ではないんです。憎しみも抱いたりしますが、仲間の事を考え過ぎてる。その上敵だとしても対話を求める傾向にある。

ネイ「あーL1とか強敵と戦闘開始する前に話す場面確かに多いですよね。生身の時含めて」

グリーフィア「そうねぇ。割と武人思考だったりしてる。ちゃんと話してって場面多いのよ元君。もっともL2以降結構減ってるんだけど。なんか元君も深く語らないようにしてるって感じ?」

あれですね、元君の意識が変わっているんですよ。普段は聞きたいって思考を、これは任務だって自己暗示かけて止めてる。それも元君が敵に余計な情けをかけないようにってやってるんです。これマキナ・ドランディアでの生活の時、L1のエピローグ期間からちょっとずつやってる設定です。

ネイ「え、あの期間から……?」

グリーフィア「言われてみると、確かに辻褄合ってるのよね~。やっぱり時間が経っているとどうしても違いが出てくるっていうのはあったし。まぁでも戦闘停止状態だとL3第2章とか第3章みたいに話してる、説教場面があるんだけども。L2は少なくとも両軍静止して話してる印象はほとんどないわね。これもやっぱりカルトの侵食具合もあってかしら」

次元覇院はゼロンよりも話聞いてないイメージですからね。現在の神治君と同じで考えてます。っていうか神治君の性格はその頃のゼロン全体のイメージです。

ネイ「とすると、やっぱり前話で話していたように、零崎秀夫が何らかの思惑を持って行動しているとの説を補強しますよね。無策に動かしていないって点で」

グリーフィア「なんというか、零崎をゼロン、神治を次元覇院って当てはめると、零崎は修正してるイメージよね。合ってる?」

全然合ってる。てか話脱線(;´Д`)

グリーフィア「それもそうか。じゃあまとめっていうか、気になるのとしてはあと進君の望んでた答えね。元君が戦って償うも十分答えだと思ったんだけど」

ネイ「作者さん、正解は?」

謝罪だよシンプルに。ただ進は殺してしまった月子に対しての、残された芽衣への、そして仲間を目の前で殺されてしまった自分への謝罪。同時にそれでも前向きに事態を解決していく姿勢が欲しかった。だから後ろ向きな元君に怒ってた。

ネイ「あー」

グリーフィア「なるほどね。謝罪は確かに必要だわ。後悔してるって言ってるけど直接的な謝罪ないし」

まぁそれでも進君は戦場なら、パイロットならやむなしって思うべきところもあるんですけどね。もちろん悲しむ心も必要です。覚悟がまだ足りてない。

グリーフィア「非情ね~」

ネイ「原作のシンさんもストレスたまりっぱなしだったっていうのに」

さて、まぁ今回は長くなったのでここまでです。次はもう少し早めに出したいですね。

ネイ「今回も5日投稿目指してたみたいですしね」

グリーフィア「ま、無理のない程度に頑張って~。それじゃあまた次回~」
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