レイ「前回は助け出すはずが……G-Arcに阻まれて、もう……」
ジャンヌ「その続きの話なんですが……サブタイトル、前にもありましたよね。魔竜顕現って」
それの続きとも呼べる話ですからね。ということは、奴でしょう。ということで本編をどうぞ。
黒和元が黒和神治と戦う様子を見ていた後方待機のHOW部隊。元が攻撃に転じ、遂に取り戻せると思っていた千恵里達は、起こった事象に困惑していた。
ゼロンの取った行動に憤りを隠せない。どうしてそんなことが出来るのか。その気持ちを千恵里は吐露する。
「そんな……決闘って、こんなの!」
「……戦争だけど、こんなの、卑怯だと思う……」
クルスも千恵里と同じ気持ちを抱く。3対1なんて卑怯すぎる。それを他の面々も苦い感想を抱いて見ていた。
「こんなので、勝てるのか」
『勝てるかじゃない!こんなの、もう姉様は……うっ』
「何が決闘だよ!こんなだまし討ち!」
「お前らの気持ちも痛いほどわかる。けど、システムなんて言われちゃ、指摘は難しい……」
相模とエターナは諦めに傾き、進は反則とも言える手に怒りを露わにする。クルツもこの状況に歯噛みしながら、仕方のないことと納得せざるを得ないと語る。
自分達にはどうすることも出来ない。それが結論だと言わんばかりに重い沈黙がチームGを支配する。
その中にただ一人例外がいた。呉川小隊長は冷酷に状況を分析し、告げる。
「3対1であろうとそれは承知のはずだ。ならば勝てばいいだけだろう」
「勝てばいいって……それが難しいって分からないんですか!?」
「難しいという問題など考慮する必要はない。それを示そうとしたのがあの黒和元だろう。あの人が考えていない馬鹿だとでも?それならそれで滑稽だが」
「そんな言い方!」
呉川小隊長の言葉に怒る。まるで後はどうなろうと知らないというような意見に、食って掛かろうとする。
元隊長だって考えていたかもしれない。不利になっても勝てばいいだけというのは正しいかもしれない。けれどそれは凄く難しいし、その前に終わらせようとしていたに違いない。だから、そんな言葉一言で解決できるような問題じゃないと思う。
それを訴えようとする千恵里だったが、呉川小隊長はただ静かにライフルを向けてくる。その行為に身構える。
「呉川小隊長!?」
「ちょっと、何しているんですかっ!」
「黙っていろ。子どもには分からんだろうからな」
クルスの問いかけにすらまともに取り合わず、呉川小隊長は銃口を向ける。冷たい銃口を向けられたまま尋ねる。
「……私達の思っていることは、理解されないっていうんですか」
「そうならないために教えてやっている。理解できないのなら、これも当然」
「お前、正気かよ!?それはダメだろ!」
「呉川小隊長……あなたは」
「呉川やめろ!それ以上は!」
制止を呼びかけるGチームメンバー。それに耳を貸さずに銃を向け続けた呉川。ところがそのライフルを一筋のビームが撃ち落とす。
鋭く放たれた一撃。直後呉川のソルジアスを無数のビットが取り囲む。一つは良く知るあの人の機体のビット、もう一つは刀剣を模したあまり見たことのないビットだ。
舌打ちをしてビットを見渡す呉川小隊長が邪魔者に対し言葉を吐き捨てる。
「越権行為ですよ、蒼梨深絵。それにこのビットは……誰だ」
「私だよ、呉川鈴児君」
そうして名乗り出たのは見たことのない装備を纏ったソルジスタ。しかしその装備にとある人物の名残を見出す。正体が分かっていた相模がその名を呼ぶ。
「新堂さん。新型ですか?」
「まぁ新装備だね。これを出さねば勝てないと分かったからね」
新堂沙織隊長の新たなソルジスタは余裕を兼ね合わせて呉川小隊長と向き合う。そこに同じく新装備を装着していた深絵隊長が厳しい言葉を呉川小隊長に投げつける。
「呉川鈴児。あなたは規律を乱している。味方への攻撃行為、既にあなたの行動は司令部にも伝わっている」
呉川小隊長の声に劣らない程に冷たく違反を告げる深絵隊長。静かな怒りを示している。それに対し呉川小隊長は退かずに逆に咎めようとする。
「それはあなたの方が重罪だ。こちらは向けただけ、あなたは撃った」
「正当防衛だよ。撃とうとする人を撃っただけ。止めたんだから」
「私は懲罰を課そうとしたしただけ。あなたのその行為とは度合いが違う。それもわからない程、あなた達は狂っているのか?」
上司の立場であるにも関わらず、平然と相手を罵っていく呉川小隊長。それを受けても深絵隊長は態度を下手に崩さず、落ち着いて返していく。
「狂ってる、かもしれないね。あなたから見れば。自分の事を正しいと思っているあなたには」
「何が言いたい?」
「それはあなただけの感情ってこと。あなたが狂ってない証拠でもなんでもない。そもそも私達は後方で見守るはずなのに、君は何でそれを乱すことを平然としたのかな。先に調和を乱したのは、君だよ」
事実を突きつける。そのタイミングで通信が深絵隊長に入る。それに耳を傾けていた深絵隊長と新堂隊長は呉川隊長に宣告する。
「ゼロンからも言われた。こっちは君が暴走して戦闘を混乱させようとしたって伝えてる。悪いけど君は作戦終了まで拘束させてもらう。終了後ももうHOWにはいられないよ」
「無理矢理ですね。ここまで腐敗が進んでいたか」
「腐敗とは違うな。浄化作用がちゃんと働いている。自衛軍から見ても、第3者として深絵君は不穏分子、違反者を取り締まっている」
「こんなやり方が、HOWか!」
深絵のチームの部隊が呉川小隊長を連れて行こうとする。それに対し呉川小隊長は抵抗を見せる。が、それを深絵隊長の圧が、ビットの攻撃態勢が塞いだ。
「ぐっ!」
「君にはもう撃墜許可が下りてる。撃たないだけ有情だと思って欲しいけど、どうする?」
その言葉でようやく大人しくなった呉川が連行されていく。その様子を見送りながら千恵里は深絵へと礼を述べる。
「すみません、助けて頂いて……呉川小隊長、どうして……」
「千恵里ちゃん、大丈夫?」
「気にしないでいいよ。彼も本性を現したってことなんだと思う。全く、何で元君もあんなのを小隊長に置いたんだか……」
クルスに安否を確かめられながら深絵隊長と話す。理解できないにしても、あんなことを平然とするなんて、正直ショックだった。けれども私はかつて深絵隊長から掛けられた言葉を思い出し、呟く。
「……昨日までの味方を撃たなきゃいけない時もある……」
「ん?その言葉……」
「ずっと昔、深絵隊長から言われた言葉、覚えてますか?」
「ふふ、そりゃもちろん。小学生なのにHOWに入りたいって言ってた君に私が言った言葉だね」
深絵は笑って返す。あの時言われた言葉を、今実際に体験している。自分が今撃つべきだった呉川を撃てなかった。そもそも、撃ってよかったのかも分からない。
突然訪れたその瞬間に対し、何も出来なかった自分を責める。するとそれを察した深絵は伝えてくる。
「それを思い出しただけでも、今はいい」
「深絵隊長……」
「いきなりそんな場面に直面して、撃てる人は少ない。千恵里ちゃんも、宗司君も今回が初めて……あーオースでは味方部隊とやり合うことになったんだっけ。それでも、身近にいた人に銃を向けられたらそうなっても仕方ない。けど今、体験した。次はちゃんと構えられればいい。今回は私が間に合っただけ。間違ってるって頭で考えて理解できるなら、自分で対峙できるようになって、みんな」
「はい。分かりました」
深絵隊長の言葉に力強く頷く。心配していたクルスも同じく頷く。そんな話を交えてから、深絵隊長は現状のシュバルトゼロクローザーの状況について苦心する。
「それで、元君の方だけど……」
「あぁ、よろしくないな。タイミングを逃して、いつ自暴自棄になっても不思議じゃない」
「元隊長でも、やっぱり、諦めてしまうことはあると……」
相模が呟いた。諦める。元隊長にそんなことがあるとは思えなかった。けれどもあの人も、華穂さんも言っていた。元隊長も自分達と変わらない人間であると。どれだけ凄い戦果を挙げていようとも、核となるのは人間そのもの。弱い心を持っている。
望遠カメラで見えるシュバルトゼロクローザーは未だに膝を付いている。立ち上がれない程に負荷に襲われているのか、はたまた絶望しているのか。
見ているだけで胸が痛む。今すぐ助けに行きたい。でもそれは、ルール違反だ。責められる口実を作るだけ。歯噛みする思いで見る事しか出来ない。
その苦悩を口にする。
「元隊長……ごめんなさい」
「千恵里ちゃん……」
クルスが回線を繋いで様子を見てくる。今の自分は耐えられないという顔をしているに違いない。
そんな中でも、深絵隊長は大丈夫だとGチームを鼓舞する。
「大丈夫だよ。元君なら」
「何で、そんなこと言えるんですか」
『そうよ。いくらあいつでも、こんなの……』
「あいつが、魔王だからってことなのか?」
相模とエターナ、進の問いかけに首を振ってから笑って答える深絵隊長。
「そんなの関係ないよ。味方なら信じる。勝ってジャンヌちゃんを取り戻す。凄いプレッシャーをまた掛けてるけど、それが一番きれいな収まり方だから」
◆
絶望的な状況へと追いやられることとなった元。目の前には3機のMSが立ち並ぶ。1機は先程まで戦っていたヴァイスインフィニットエアレーザー。その両脇にはリ・ホリンの甲板内に潜んでいたハル・ハリヴァーのシナンジュ・ゼロン・ハルと、ゼロンのタイプシリーズ、ジョセフ・ゼロン・ガドナーのタイプ[リズン]。
この三機となぜ戦う羽目になるのか。普通は戸惑う。決闘なのだから1対1ではないのかと。しかし元はその理由を当然分かっていた。先程も言ったエンドの言葉をしっかりと聞いている。
「私」の軍隊。ヴァイスインフィニットに搭載された軍団指揮統括システム「G-Arc」は元来ビットMSを一流の軍隊の如く動かせる機能を持っている。それはスタートの証言と戦後発見された機竜創世記時代の遺跡から発見されたヴァイスインフィニットのデータから読み取れたことだ。
それは現在稼働するMSに対しても有効。友軍なら回線を用いてその操作をジャックできる。
増援としての援軍は決闘の違反だ。しかし奴は増援ではなく「武器」として持ち込んでいた。そんな子供じみたような頓智のような言い分でMSを操り、戦力にした。ルールに抵触しないルール破り。それが奴の取った策だ。
もっとも決闘のルールと言ってもそんな大それたものは存在しない。精々一対一で戦う位しか存在していない。そのルールさえも穴を突いて来たわけだ。
膝をついたまま、彼らを見渡す元に、ハリヴァーが降参を促す。
「もう諦めた方がいい。君では、彼には勝てんよ」
「勝てない、か。数で圧倒されるからか」
「数と言っても、手数だ。我らは彼の武器。彼に動かされる。それでもエンドはそれを十全に扱える。英雄のAIとエンゲージパートナーを除いても、君の英雄では彼の足元にも及ばん」
『よくもまぁそんなことを。決闘の穴を突いた、反則スレスレの手を使いやがって』
『言ってろ。これが私の、救世主たるものの力。お前では勝てない。今の私は、更に進化しているのだから』
エンドの構えと同時にゼロンのMSが構える。対してこちらはダメージに倒れる一歩手前だった。苦戦しながら立ち上がる。スタートが意見する。
『元、もう無理だ。今のシュバルトゼロクローザーでは、三機同時には相手できない。こうなる前に決着を付けるべきだった。もうジャッジメントクローズは使えんだろう?』
スタートの言う通り、この状態でのジャッジメントクローズモードは流石にもう無理だ。これ以上の使用は先に命が尽きる。命が尽きてでもジャンヌを救いたい気持ちはあったが、それすらも叶わないのならまだ自制出来るだけの判断はあった。
しかし、それでももう一つの方には頷けない。スタートの言葉に反対する。
「確かに、ジャッジメントクローズはもう使えない。エレメントブーストの連続切り替えも、難しいかもな」
『もう俺達に出来ることは、ない。勝ち目も……』
「けどな。まだ、出来ることはある」
『何を……言っている。もうシュバルトゼロクローザーは、奴を上回ることなど』
諦めるスタートにまだ手はあると言って見せる。そんな様子を見て、呆れるエンドは元の中にあるであろう希望がまやかしだと告げた。
『スタートがないと言っているのに、お前は何も分かっていないようだな。お前以上にシュバルトゼロを分かっているのは、そのスタートだ。そいつがないと言うのならないのが当然だ』
「フフッ、お前も、どうやら分かってない馬鹿野郎らしいな」
『何だと?』
そんな事を言うエンドを笑ってやる。これは冗談でも幻覚でもない。確かに希望はある。もっともそれは、絶望と隣り合わせの、限りなく望みの薄い希望なのだが。
全てを失う可能性すら秘めた賭け。わずかな希望に賭けた一発逆転なんて、ゼロンのようなカルト集団と同じ思考だ。確実な勝利の一手を取るべき。しかしそれでも縋るしかない。ここで勝つには、二人を救うのも、全てを終わらせるのもこれしかない。
そんな訳の分からないことを口にした元をジョセフもまた嗤った。
「どうやらおかしくなったらしいな。魔王は。けど死にたいなら殺してやるよ!」
「待てよジョセフ。殺すのは俺だ!救世主になるのはこの黒和神治だ!」
「うっせぇなぁ!操りゃいいだけだろ!」
「何を……!」
どちらが殺すかという話でもめる神治とジョセフ。そのやり取りに奇妙なものを覚えるが、それよりもエンドが何かに気づいたように舌打ちをする。
『……なるほど。そんなものを、希望と称するのか、お前は!』
「エンド?何を言って……」
『貴様は、滅ぼすというのか、全てを。思い通りにならないからと』
「エンドよ、何を分かったという。彼に逆転の目があるとでも」
神治やハリヴァーすらも困惑を見せる。エンドにはこちらの言っていたことに気づいたらしい。
滅ぼすのかと言ったエンドの問いかけに俺は力のない笑いを呟く。
「そうかもしれないな。もうどうしようもならないから、自棄になったのかもな。あんなのを繰り返すなんて」
『……待て元。繰り返す……まさかっ!』
スタートがようやく気付いた様子を見せる。それに構わずエンドとの会話を続ける。
「俺はヒーローなんかじゃねぇ。みんな救える手なんて、もう残っちゃいない。それでも勝たなきゃいけない。護るべきは、この国に住む人たちなんだから」
『そのために、愛する者も、救うと誓った者も捨てるか!』
「俺に誰かを愛することなんて出来ない!それでも、それくらいの覚悟が無きゃ、救えないって分かってる。二人を救うなら、失う覚悟もしてるさ!だから!!」
その手を天に向かって伸ばす。掴みとるために、あるいは助けを求めるように。その力を呼んだ。
「―――来いっ、クリムゾン・ファフニールッ!!」
直上の空間上にマルチ・スペースシステムの亀裂が生まれる。それは先の戦闘で、「それ」が呼び出された時のような亀裂。まるで再現のようだ。
その亀裂は段々と大きくなっていく。内側から打ち破るような割れ方。そしてとうとう完全に破壊され、姿を現す。
先の戦闘で、戦闘不能状態になったシュバルトゼロクローザーに突如として合体したドラグディアの象徴。それを呼び出したのがどういうことなのか、見る者見たならそれは理解する。もちろん、元も分かり切っていた。
呼び出した元は周りの者に対し、言い放つ。
「これが俺の、最後の切札だ」
絶望と隣り合わせの、元が賭けた最後の希望だった。
NEXT EPISODE
EP97はここまでです。
レイ「いやいや!ツッコミどころが多いよ今回!」
ジャンヌ「呉川小隊長の行動も突然すぎて訳が分からないんですが……それよりも元さんは、どうしてこんな……」
呉川小隊長の行動に関しては不信感と言ったものしか今のところは分かりませんね。いったい彼は何を考えて味方に銃を向けることをしたのか。気になるところでしょう。
そして元君の行動に関してはもうこれしかないということです。
レイ「それが意味分からないって!クリムゾン・ファフニールと共闘は無理だろうから、やるとしたらもう、合体しかないんだよ!?」
ジャンヌ「合体するということはつまり、裏スタートが出てくる」
十中八九、そうでしょうね(´-ω-`)
レイ「本当に、元君はもう自棄になったって言うの?ジャンヌ・Fちゃんや、レイアちゃんまで見殺しにして……」
ジャンヌ「……護らなければいけないのは、国民だなんて。それが、正しいのだとしても……だからってこれは納得しがたいもののような気が……いいえ、違うと、思います」
ではなぜ元君はその策を取ったのか。自棄ではないのなら、なんの狙いがあるのか。それは同日公開の次話以降とさせていただくことになるでしょう。
レイ「うむむ……気になる」
ジャンヌ「元さんの真意、気になります」
というわけで今回はここまで。なんですがちょっと近況報告がてら世間話でも。
いやぁもうここで言うのも憚るんですが、ここのところ世界は騒がしい……こういう作品書いてる身としては戦うべき時には戦う、その為の力はいるけど戦争はない方がいいよねって思うわけですよ。
レイ「え、作者もそういう風に思うんだ……」
ジャンヌ「戦争中毒でないのは素直に安心ですね。人の道は外れてなかったと」
君達私を何だと思ってるの(;´・ω・)
レイ「だってストーリーから悪趣味さが出てるもん」
ジャンヌ「ちょっと人道外れてるんじゃないかって思うシナリオありますからね……主にジャンヌ・Fさんの被害シーンとか」
それは……性癖だ(?)
レイ「うわー……」
ジャンヌ「ちょっと引きます。引いたのでもう終わりにしましょう」
そんな……私はただジャンヌさんのパラレルを初動で迷わず確保する程度の狂人よ?
レイ「そういえばそうだったね。バトスピディーバパックも発売して作者もカード揃えてまぁ」
ジャンヌ「買ってくれるのはいいんですけど、ちなみにあれに関しての感想は」
しゅき。好きなポイント10個くらいは言える。
ジャンヌ「なんだか……疲れる。まぁ悪い気はしませんけど。では続きます」