機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、引き続きEPISODE97,98の更新となります。こちらはEP98です。

グリーフィア「ヤバいわね~クリムゾン・ファフニールに頼るなんて、何考えているのか……」

ネイ「……合体したら、ジャンヌ・Fさんを殺してしまうかもしれないのに。そんなことを、するしかないんでしょうか」

何を考えて再びあの姿を取ろうとするのか。それでは本編をどうぞ。


EPISODE98 魔竜顕現・希望は暗闇の中に2

 

 

 絶望的とも呼べる状況、そこに現れたのは、また別の絶望を引き起こしかねない存在だった。

 シュバルトゼロの制御を担当するスタートはもちろん、対峙するエンドやハリヴァー、ジョセフ、神治、後方で動向を観察していた東日本連合軍やゼロン本隊の有識者たちは皆呼び出したそれに絶句する。

 それを呼び出した側であるスタートは元に正気なのかと叫ぶ。

 

『何を考えている元!それを、クリムゾン・ファフニールを呼び出すということがどういうことなのか、分かっていないわけじゃあないだろ!?正気か』

 

「分かってるさ、そんなこと。だけど、勝つにはこれしかない」

 

 スタートの言葉を分かっていると返す。もう一度助け出すと誓ってから、何度も状況をシミュレートした。既存のシステムから、開発中の新兵器、シュバルトゼロクローザーに活用できるものを可能な限り黎人に頼んでデータを出してもらい、考えた。

 だがそのどれも決定打になり得なかった。必ず、ヴァイスインフィニットエアレーザーの性能の前では膝をつくことになった。それを使われる前に決着を付けるという結論しか出せなかったのだ。たった一つを除いて。

 その残ったたった一つの策がこれだ。現状のシュバルトゼロクローザーを純粋に越えられる性能を持ち、エンドを越えられるかもしれない存在。過去のスタートと、暴走したシュバルトゼロだけが、この状況を変えられると結論した。

 それをスタート自身に否定されるのは分かり切っていた。そしてもう一人、もう一匹否定した存在がいた。他でもない当人、当竜であるクリムゾン・ファフニールが悲しみのこもった声音で問いかけてくる。

 

『本当に、やると言うのか。お前は』

 

「やるさ。ジャンヌ達を救う。だけど、救えないのなら、せめて利用されないようにする」

 

『それが、お前の答えなのか。それでは誰も救われない』

 

「あぁ。だろうな。だからお前には言った。それでも希望を見つける。その為には、奴と向き合わなきゃいけない」

 

『あのことか。本当に、やる気なのだな』

 

 既に伝えていたことをもう一度象徴クリムゾン・ファフニールに伝える。それを聞いていたスタートとエンドは会話の内容に独自の推測を立てる。

 

『向き合う……?何を言っている。何の話だ』

 

『……考えられるとしたら。だが、そんなものは幻想だ。本気でどうにか出来ると思っているのか、貴様は。……貴様、人質を殺すつもりか』

 

 それらの会話を聞かされる側であったハリヴァー達はくだらない会話と早くシュバルトゼロを撃墜する様にエンドに促す。

 

「何をやっているエンド。彼にも人質にもさっさと引導を渡してやる方がいいだろう、余計なことをされる前に」

 

「とっとと殺してやろうぜ!ゼロンの大義の為によぉ」

 

『黙っていろ。お前達では奴の考えは理解出来ん』

 

「なぁっ!?どういうこった!」

 

「邪険に扱うとは、君らしくないな。それほど意味のある事とは思えんが」

 

 エンドはそれに構うことなく元の動向を注視してくる。エンドでもこの決断の意図を完全には掴めずにいるらしい。

 真意を確かめようと試みてくるエンドは問いかけた。

 

『どういう思惑で、再びその力を手にしようとする。それはお前の愛する者を殺すぞ』

 

 取り込まれたなら最後、真のスタートはジャンヌ諸共、敵視するエンドを殺そうとするだろう。そう簡単には殺せはしないだろうが、それでもジャンヌを負荷で殺すことは想像に難くない。

 敵の立場でありながらそれを危惧してくるエンド。それだけ、その危険性を理解している。それでも、選んだ答えだと返した。

 

「それでも俺はこの手を選ぶ。覚悟が無きゃ、もう戦えない。お前がわざわざ危険だと言ってくるんだ。それだけの価値はある」

 

『フン、ジャンヌ・ファーフニルを殺しはするだろうが、それでも私が死ぬとは限らない。いや、私は死なない。逆に、乗っ取られたまま殺してくれる』

 

 こちらの煽りを意に介さず、逆に更なる自信を持った言葉でひねりつぶすと宣告した。それくらいの気持ちで対抗してくれなければ、元自身の思う「答え」にたどり着く前に戦いが終わってしまう。その意味ではその答えはありがたかった。

 一方でスタートも問いかけながらその危険性を変わらず訴える。

 

『よせ、元!その力は!その力に頼ったら最後、お前に残る物は屍だけだ!ジャンヌ・ファーフニルを、いや、救うと願っていたレイア・スターライトも殺す気か!』

 

 スタートも元がどれだけこの二人の為に戦ってきたか分かってきていた。それがこんな自暴自棄の策を取ることを咎めている。

 その言葉の矛先は、元だけでなくそれを認めていたクリムゾン・ファフニールにまで向けられる。

 

『お前もそうだ、クリムゾン・ファフニール。お前はお前の母が心を通わせた、いや、お前自身も共に過ごしたジャンヌ・ファーフニルを、お前自身が殺す引き金となってもいいのか!?』

 

 その問いかけを受けたクリムゾン・ファフニールは沈黙する。数秒の沈黙の後、返事をする。

 

『その覚悟も、こいつの、黒騎士の言葉を聞いて、決めた』

 

『何っ?』

 

『荒唐無稽な考えだ。成功するかも分からない。だがそれは、お前の事を信じてそのうえでこの黒騎士がやって見せると決めたことだ、スタート』

 

『まるで分からない……どういうことだ、元!何を考えている?』

 

 英雄としての知識を以てしても自身の機体の装依者の思考を読めないスタート。それだけ、あの状態を危険視し、忌み嫌っているのだと推察できる。

 しかし、スタートも決してすべてが反対ではなかった。スタートの意見が語られる。

 

『確かに、あの状態ならまだヴァイスインフィニットと戦えるかもしれない。英雄としての記憶をすべて持っているあの状態なら、エンドを倒せるかもしれない。だが奴は本当に殺すつもりだ!お前がどう救おうとしても、奴は台無しにする!それを』

 

「……誰も、あいつなら勝てるとか、思ってないさ」

 

 そんなスタートに本心を打ち明ける。元自身、勝てるかもしれないと思っていても、それが完璧な勝利とは思っていない。そうならないための最後の一手がこれには必要だ。

 スタートにこれまでの出会いからの思い出を語っていく。

 

「お前と出会った時、スターターを付けられた時、出会わなければ俺は次元移動の反動でとっくに死んでいた。それだけじゃない。戦う術を教えてくれなければ、何度もドラグディアで死んでいた」

 

『そんなことを、今さら何を言って』

 

「お前には感謝してる。頼れる奴だ。偉そうにしてくるけど、ちゃんと親身になってくれる。サポートしてくれてた。俺が思ってるのは、あいつだから勝てるんじゃない。あいつが、スタートだから勝てる。お前を信じてる。そう思っているだけだ。それに、さっきお前は言ったじゃないか。諦めるなと。なら、諦めないさ。この手を使ってでも」

 

 本音でスタートに告げる。スタートがいたからこそ、今の自分がある。ドラグディアでもそうだし、地球に戻って来てからも勝手など分からないだろうに、ジャンヌや他の者がいないところで、話を聞いてくれて、作戦にも寄与してくれた。

 深絵達や、エターナは自身とジャンヌがいるからこそのシュバルトゼロと言っている。だがそれだけじゃない。スタートもいて、シュバルトゼロガンダムという機体は成り立っている。

 ジャンヌに制御を任せる場面が多いのも、それは彼女の成長あってのもの。だが決してスタートが関わっていないわけではない。常にサポートしてくれるスタートにはそれだけ信頼を寄せている。

 だからこそ、真なるスタートに対して、思うことがあった。あれもまたスタート。例え残虐な思想を持っていたとしても、それもまた自分達を支えて来てくれた存在と同じ。ならば、それを力として使うこともまた自然の摂理ではないか。

 勝てる望みはある。諦めない限り、まだ道は続いている。それをさっき、スタート自身からも教えられたのだ。制御できない力を信じて使う。それが元の考えである。スタートに主張する。

 

「あれもお前だって言うなら、まだ共に戦える可能性もある。力を使える可能性が」

 

『そんなことは不可能だ!お前も分かったはずだ。奴の支配力。完全にパイロットは隔離される。入れ替われたとしても、それをずっと妨害しなければ……』

 

 スタートの言うことはもっともだ。きっとあの意識に呑みこまれる。死にかけだったとはいえ、目覚めるのを押さえつけられたような感覚。あの状態では絶対に無理だった。消耗している今も同じかもしれない。

 しかし、解決を諦めるスタートに対して、元は諦めていなかった。その自信の基を明かす。

 

「言っただろう。お前を信じてる」

 

『それが、何になる』

 

「俺だけじゃ、全部は無理かもしれない。というか無理だ。ジャンヌだっていない。でもお前はいる。奴が表に出ても、お前がいなくなるわけじゃない。お前がいてくれなきゃこんな無茶はしない。人に英雄の役目を押し付けたくせに、協力しないなんてそれでも英雄かよ」

 

 初めて黒白の海岸で会った時、スタートは自分が英雄であると自負し、元を英雄にすると言って記憶を失っている間の訓練を行った。

 最初は嫌だったそれは、表のハジメ・ナッシュの様子を見るうちに変わった。彼に代わって目覚めた時の為にやらなければと思い、スタートの指導を受けた。スタートの望む英雄を演じるために。結局は英雄からは逃げる選択を取っているのだが。その時のやり取りをスタートに言って思い出させる。

 スタートもその時の事を覚えており、苦い表情で元の問いかけに答える。

 

『確かに、お前には俺に代わってシュバルトゼロのパイロットを、英雄であることを求めた。お前には、押し付けたとも思っている。だが、それでも奴の、もう一人の俺の力を使うのはよせ!何をしようとしているのかくらいは相談を……』

 

「……悪いが、もう、そんな時間はない」

 

 苦悶の表情を作る。これまでの負荷が体力をすり減らし、まともな意識が落ちかけている。ずっとエンドに強襲されないようにも気を配っていたのもその原因だ。

 それにジャンヌとレイアへの負荷が気になる。ずっとこんな状態を続けていても、鈍い疲労は彼女達に負担を掛けているだろう。

 だからこそ時間はないと言った。そんな元の意図を全て読み取ったかは分からないが、スタートは歯ぎしりをするようにして言葉を絞り出す。

 

『そう、言うのなら、もう止められはしない。これ以上、不利な状況に追い込むことは、俺の本意じゃない。今のお前を、俺も英雄のはしくれだと思っているからな』

 

「そんなこと、今言うかよ」

 

『だが、これだけは言っておく。失ったとしても、それでも突き進むのが英雄の道。決して易しいものではないぞ』

 

「……分かったよ。壊すなら、殺すなら、俺自身の手で、だ。……なら、行くか」

 

 言って膝をついていた姿勢から立ち上がる。エンドを、神治を、ヴァイスインフィニットを見つめ返す。その視線をキープしたまま、クリムゾン・ファフニールに呼びかける。

 

「やるぞ、クリムゾン・ファフニール!」

 

『未来を見せてみろ、黒和元。もう一度、奇跡を起こせ。ドッキングフェイズ』

 

 クリムゾン・ファフニールがシュバルトゼロクローザーとの合体準備態勢に入る。

 周囲へと鳴り響く危険を知らせる警報。機体のシステム音声が危険域を知らせる。

 

『Warning! Warning! This is not a safety limiter!』

 

 周囲へと吹き荒れる高純度DNの守護領域。クリムゾン・ファフニールのDNによるウイングから多量に放出される高純度DNが敵の接近を妨害する。

 エンド達はこの合体をただ見るだけしか出来ない。いや、少なくともエンドは合体を邪魔するつもりはないらしい。動かず、逆に猛るタイプ[リズン]を制する。

 

「面倒になる前にとっと殺ろうぜ!」

 

『いや。合体してからだ』

 

「何だよ、また邪魔するのか!」

 

『合体するというのなら、私も、奴の言葉を、意志を確かめる気はある』

 

 合体した後、現れる真のスタートとの対話を望むエンド。それに見守られる形で、合体最終体勢に入る。

 

『Standby OK?』

 

 鎌首を擡げるように噛み付く態勢に入るクリムゾン・ファフニール。「覚悟はいいか?」と問いかけるシステムに、俺は応えてやる。

 

「覚悟するさ」

 

 その言葉と同時に合体が承認、頭部へと噛みつかれる。同時に負荷が高まっていく。意識が飛ばされる。

 

「ぐっ―――――」

 

 ここからが勝負だ。閉じ行く意識の中で必死にそれを探索し始める。

 

 

 

 

 クリムゾン・ファフニールに噛みつかれたシュバルトゼロクローザー。次々と合体機構を起動させていき、各部にパーツを装着する。

 スレイブコントロールの為にナハト=ヴァールをパージ、腕部、脚部にそれぞれクリムゾン・ファフニールの腕部と脚部が増加装甲として合体、一回り大型化したようになる。背部にはクローザーフェニックスのパーツを一部改変して合体、エリミネイターソードを首だったパーツが取り上げ、自らのパーツとして運用していく。

 完全にパーツを合体したシュバルトゼロクローザー。合体完了と共に機械音声とクリムゾン・ファフニールの雄たけびが上がる。

 

『Uncontrol unit!Over-dragon!DESTROYER…』

 

『ガアアアアアァァァァァン!!』

 

 これがクリムゾン・ファフニールと合体した第1形態、クリムゾンフェイズ。本来ならこの形態は元でも操れるはずのものだった。

 しかしそれは今、クリムゾン・ファフニールの意識が優先された。そしてそれもまた、別の意識に呑まれることとなる。咆哮の後、苦しみだすクリムゾン・ファフニールの声。

 

『ガグッ!グゥン……』

 

 力の抜けたように手をだらんとさせ、頭部を下げる。それは敵にとっては絶好の機会。しかしエンドは動かなかった。この後に来るものが分かっていたからだ。

 そして遂に奴が来る。

 

『…………フ、ハハハッ。やはり私がいなければ、時代も世界も変わらんよ』

 

 元の声で、まったく違う喋り方をする人物。人が変わったと言わざるを得ない豹変だろう。だがそれを見てエンドは動じない。横にいるハリヴァー達や同じMSにいる神治は多少なりとも身構えているのに。

 ヴァイスインフィニットの中からその様子を見ているであろうジャンヌ・ファーフニルが、悲観したような声を力なく紡ぐ。

 

『あ……あぁ……』

 

 敵も、味方からさえも絶望の声が上がる存在。ますます黒和元が信じると言った発言が眉唾に聞こえることだろう。

 しかし、そんな事は目覚めた真の英雄には意にも介さない細事であった。そのまま真の英雄は、前方に見える白のガンダムの実質的なパイロット、自らと同じ存在へと挨拶する。

 

 

 

 

『久しいな、エンド、と言えばいいかな?』

 

『貴様がそう呼びたければ、そう呼べばいい。変わり果てたな、スタート』

 

 

 

 

 1400年前の英雄が、当時の記憶を持って相対する。両者が発する空気は、場の空気を重くしていく。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP98はここまでです。

ネイ「遂に、なってしまいましたね……」

グリーフィア「なるしかなかった。けど、元君は最後までスタートを信じていた。いや、今も信じて、何か足掻いているみたいね」

よくもまぁそんなことに気づきますね……(;´・ω・)

グリーフィア「だって意識消えてフェードアウトする前に探索って言葉があるからね。まだ策があるのは確定でしょっ?」

ネイ「それにしても、間に合わなきゃ意味はない。……間に合うかな」

グリーフィア「間に合わせるしかない。その為にまた元君はやるってんだから。それよりも次気になるのは裏スタートの動向ね……」

ネイ「確かに。エンドとどう接するのか……」

エンドは裏スタートが自分に同意してくれると思っているようですが、果たして真意はどうなのか?全く分かりませんからね。

グリーフィア「ここでうっかりOKしてもダメ、NOと言ってジャンヌ達を殺してもダメ。本当に元君に全てかかってるってこと!」

ネイ「クリムゾン・ファフニールさんが全てを知っている、みたいだよね。それを受けて承認した。……クリムゾン・ファフニールさんは成功するって思ったってことかな」

そうなるわけですね。無策に認めると言ったようなことはクリムゾン・ファフニールにはなさそうですし。はてさてどうなることやら。と、それでは今回はここまでとしましょうか。

グリーフィア「そういや次は初めてEPISODE100っていう大台ね。まぁ全体合わせると軽く300話越えているんだけども」

ネイ「でも今までの部よりも一番長いから、そういうのは感じるね」

本当にね、こんなことならLEVELで作品分けておくんだったなぁって思うわけですよ(;・∀・)まぁそうするとすぐに見れないっていうのが欠点なんですが。

グリーフィア「けど言うて今でも見づらい件。話が多すぎて」

これでも短くなってると思うんですよね……。

ネイ「まぁそこは何も言いませんけども。でもこれだけ書いているんですから、そろそろ完結とかさせてくださいね?」

まだ今章含めて5章くらいあるんだよなぁ……(;・∀・)頑張ります。

グリーフィア「それじゃあ、また次回~」
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