ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」
グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよ♪」
さて、今回は特に話題もないので、今回はEPISODE27と続く28の連投になります。
ネイ「あれ、今度のバトスピのスターターについてはノーコメントなんですか?」
ふっざくんな、あのレムリア・ゾディアックだっけ?( ゚Д゚)あんなもん出されてまた光導の強化かって思ったわ。どうせならアポロ強化をくれ、それか星竜強化を……
グリーフィア「あーはいはい。作者さんが近頃の光導に不満持っているのは分かったわ。それで、今回の話じゃ絡みが出てくるって話だったけれど?」
あ、はい。そうですね。まぁ予想できるかもしれませんが、今回のタイトル、まだ半分しか伏線回収できていませんからね( ˘ω˘ )
ネイ「伏線って、蒼炎はガンダムの事では?」
まぁ、そこら辺は今回と連投するEP28の方で、ということで。では本編どうぞ!
それは突然だった。リリーから主犯格、レドリックとヴァルト、それに自宅にて優雅に過ごしていたグリューネの義母でネアの母親であるシャリィ・ロードが確保されたことを聞き、喜んでいたジャンヌと元。これでようやく、問題が解決する。ネアの居場所も、ハジメの立ち位置も変わらない。そう思っていた。
だが、その凶報はそれすらも壊すほど、大きな影響力を持っていた。フィールドにいた2人に駆け付けるように現れたヴェールが、その凶報を伝えた。
「大変、2人とも!急いでこの場から離れなくちゃ!!」
「ヴェールさん?どうしました?」
「な、何かあったんですか?」
困惑する2人。すると、そのヴェールの言葉を代弁する形で、スピーカーから実況席の解説役が緊急を伝えた。
『えぇ!?た、大変です皆様!現在隣国マキナスから出撃したと思われるMS部隊が、こちらへ向かってきているとの報告がありました!!』
「え……えぇ!?」
いきなり伝えられたのは、隣国マキナスがこちらに向かって侵攻しているということだった。決闘が終わった直後と言う魔の悪いタイミングに、動揺するジャンヌ。その動揺は、観客席にいた観客もまた同じだ。
続くもう1人の実況者が闘技場の全員にアナウンスする。
『現在ドラグディア政府が停戦要請と、軍の
ざわつきが激しくなる。無理もない。戦場という言葉に嫌悪感を抱かない人間の方が少ないのだから。喧騒の声も響く中、係員の指示に従い、慌てて観客席を離れていく。
ようやく状況を理解したジャンヌ達も、同じくハジメを迎えに来たバァンやガンド、それにグリューネとネア、リリーのナイツ・ヴィーナスの数名と合流する。
「ハジメ、ジャンヌ!2人とも急いで中へ!」
「お父様!」
「当主、俺はまだやれます」
ハジメがガンドにまだ戦えることを伝える。しかし、ガンドは首を横に振ってそれを止める。
「いくらアレクを本気で止められたとはいえ、今の状況で出撃は無茶すぎる。機体だって万全じゃないんだ。それに、君はまだ軍人ではない。ここは、俺達に任せてもらおう。ハジメはジャンヌやネア達を護ってくれ。いいな?」
「う……はい」
まだ納得がいっていなさそうな表情だったが、一応の返答だけはする。その後ガンドはバァン、そしてリリーと迎撃の準備を始める。
「では、私は前線で迎撃に向かいます。バァン少将とリリー准将は?」
「私は避難が完了するまで、この場で空域を防衛しよう。リリー君はガンド少佐と共に、ナイツ・ヴィーナスによる防衛線を敷いてくれるか」
「分かりました。少将。では行きましょう。装依!」
腰に装着したスターターを叩き、ナイツ・ヴィーナス全員が一斉に装依を開始していく。光のゲートを潜ると、彼女達はドラグーナより竜の要素を控えめにした、女性らしいフォルムのMSへと装依していた。
「ドラグーナ・ヴィーナス、全機装依完了しました、隊長」
「よし……では私のドラグーナ・リリィを中心に飛翔後、迎撃ポイントまで向かう。ガンド少佐、行きましょうか」
ドラグーナ・リリィと呼称されたリリーのMSがガンドの方に確認を取る。自身の父もまた既に専用機ドラグーナ・ガンドヴァルへと装依し、戦闘態勢を整えている。ガンドはその言葉に問題ないことを伝える。
「問題ありません。では、行きましょう」
ガンドからの返答を聞き、彼らは一斉に上空へと飛び上がる。既にフィールドを覆っていた電磁障壁は解除され、闘技場の外へと出ていく戦士達。そしてバァンも遅れて彼のMS「ドラグーナ・ヴォロス」へと装依した。背部に銃と増速器が一体化した装備を背負ったその機体は、こちらを一瞥する。
「ふむ……では行こう。ハジメ君、もし戦うというのなら、まずは私を突破していくことだ」
「っ……」
「ちょ、ちょっと、バァンさん!?」
「ははっ、冗談だよ。もっとも戦うといっても私は余程の無茶でもない限り、止めようとはしないけどね。バァン、行くぞ!」
笑えない冗談をやり取りしてから、バァンは上空へと向かう。それを見届け、残ったのはジャンヌ達非戦闘員と、ハジメとアレクの決闘を戦った2人だった。
まったく……笑えませんよ。お父様にだって、さっき来るなって言われたのに。第一、ハジメは決闘の為にここまで頑張ったんです。戦闘が終わったばかりだっていうのに、また戦闘なんてあまりにも酷すぎます。
ジャンヌは先程のハジメの眼を気にしつつも、戦わないことを望んでいた。機体が万全ではない状態で戦いに行くなど、死地へ自ら向かいに行く自殺行為であることはジャンヌにも分かっていた。例えガンダムでもそんなことは無理なのだと。
ところが、ハジメはそんなジャンヌの思惑とは反対であった。自身の機体の握りこぶしと、ガンド達が向かった上空の方角へと交互に顔を向ける。そんな様子を、アレクが装依を解除して軽い感じでどうしたのか聞く。
「どうした、クロワ・ハジメ。そんなに戦場に行きたいのか?」
「あ、アレク・ケルツァートさん!?何言って……」
「ちょっと黙っててくれないか。俺はクロワ・ハジメに聞いているんだ」
ジャンヌの憤りを、アレクは指に手を当て、黙らせる。ジャンヌはもどかしい思いをしつつ、ハジメがそんなことを思っていないことを祈る。しかし、ハジメの口から語られたのは、ジャンヌの想いとは真逆の発言だった。
「俺は、行きたい。いや、行かなきゃダメなんです」
「ハジメ……」
「ハジメさん……」
ハジメの硬い意志を示すその言葉に、ジャンヌ、更にネアが声を漏らす。2人の心配そうな表情を見るも、ハジメアレクの方に向ける形で顔を背けてその考えを、理由を伝えた。
「スタートが計算したこの戦いの結果は、泥沼と化して更に大きな混乱を呼ぶ。それだけで済めばいいけれど、このままだと確実にここは戦場になる。リリーさんや、ガンド様も……無事では済まない」
「っ!お父様が負けるっていうの!?」
ジャンヌは声を荒らげる。しかし、ハジメはそのままその予測を伝える。
「戦力比は向こうが4倍程度です。でもこれは今の話……増援が来るのは間違いない。元から戦力差は大きい、そんな状況で、いくら実力の高いガンド様でも持久戦は辛いはずです」
「なら、ハジメが行ったところで変わりないじゃない!なんでハジメが行かなくちゃいけないの!?」
ジャンヌらしからぬ発言だった。しかし、その内容は誰もが思うことだ。いくらガンダムとはいえ、たった1機で何ができるというのか。だがハジメはジャンヌに言った。
「それでも、行かないよりはマシです。ガンド様が戻ることが出来たなら、お嬢様は悲しまずに済む……」
自身の身を顧みない発言だった。ガンドさえ無事なら、いや、もっと言うならジャンヌの周りの人間が無事であったなら、自分はどうなってもいいという発言だった。そんな発言を聞いて、ジャンヌは背筋が凍る。
そんな発言を聞いていたアレクは、ため息をつくとハジメへ死へと先急ぐ発言をしていることを指摘した。
「ハジメ、それでジャンヌが喜ぶのか?先程の君は、彼女の声があったからこそ、戦えたんじゃないのか?」
アレクの言葉に若干の沈黙の後、ハジメは肯定する。
「……そうですね」
「だったら」
「だからこそです」
肯定したハジメをアレクは諭そうとしたものの、ハジメがそれを遮って意見を言う。
「お嬢様を戦火に巻き込むわけにはいかない。ネアや、グリューネさんもだ。ようやく手にした2人の居場所を、マキナスなんかに滅茶苦茶にさせたくないんです。だから俺は戦う。例え、禁忌の力を使ってでも……」
「禁忌の力って……」
単語を復唱してハッとする。これまでの間で、その言葉が指すものの正体に気づいた。かつてアレクと対決した時に起動した、蒼き輝きを放った機能。暴走した蒼き輝きはこれまで押されていた状況をたった数十秒で押し返した。あの力ならば、この現状を打破できるかもしれない。
だが、それを話したスタートの言葉が蘇る。『残念だが、もう次のエラクスシステム使用時に今までのリム・クリスタルは使えない』。それはつまり、今使えばハジメは間違いなく……。
言葉の意味に気づいたジャンヌは、それを必死に制止する。
「やめてよ!なんでそんな簡単に命を捨てようとするの!?あの力を使ったら、もうここに戻れないかもしれないのよ!?」
ジャンヌ自身、最初の頃はハジメの事をレイアに気に入られているお邪魔虫程度に思っていた。その頃のままなら喜んで送り出していたかもしれない。だが、今は違う。
自分に毛嫌いされようとも、ジャンヌの為に働くと言ってくれた。初めて自分と真剣に向き合ってくれたような気がしたのだ。短い間とはいえ、2人の間には確かな信頼関係が出来ていた。学園での噂話も、本当は気恥ずかしさから避けていたというのだから。
同時に彼女は嫉妬もしていた。いくら頼まれたとはいえ、ネアの居場所を護るために訓練を必死になって受けていたハジメを見て、ハジメの時間を束縛していたネアの事を知らずの内に羨ましがっていたのだ。訓練に同行すると言ったのも、その状況がなぜか嫌だったからだ。
決闘に勝った今、ハジメがネア達の為に戦う必要はない。ジャンヌもそのことを口にする。
「ネアの居場所を巡る戦いだって終わった。終わったばかりだっていうのに、どうしてまだネアの為に戦うっていうの!?」
「お嬢様っ……」
「………………」
思わず声が出てしまうネア。グリューネは表情を硬くし、2人のやり取りをじっと見届ける。2人の意見は完全に相違していた。戦うのと戦うなという、相反した意見がジャンヌの眼差しを鋭くさせる。
絶対に戦場に出したくないジャンヌの怒りが高まる。この緊急事態に何をやっているのか、と誰かが言いそうな雰囲気である。しかし、周囲の人間は誰も2人の言い争いを止めようとはしなかった。そして、しばし作られた沈黙の時間を、ハジメが破る。
「確かに、2人の居場所を作るための戦いは、既に終わりました」
「でしょう?だったら……」
「でも、それだけで終わりじゃない」
「えっ……」
一度は認めようとしていた旨の発言に肯定しようとしたジャンヌの言葉を、ハジメは遮る。思わずジャンヌは素っ頓狂な声と共に口を開く。
終わりじゃない?だって、今戦いは終わったのよ?ハジメが勝って、2人が一緒に居られるようになった。前だったらまだ裁判がある状況でも、あれだけの不祥事を大勢の前で見せたんだから、それだって簡単にまとまるじゃない。そもそも、それだってハジメの仕事じゃないんだから。何が終わっていないっていうのよ。
ジャンヌの中でその言葉の状況を探ろうと記憶を巡らせる。自分が思い付く範囲で、ハジメが戦う理由はないはずだった。しかし、ハジメは言った。
「お嬢様は、2人でいられるようになった後は、何もしないのですか。また危機に遭った時に、護ることも」
「っ!?そ、それは……」
ハジメの言葉でようやく気付く。ハジメが言っていたのは、状況が終了した後のアフターフォローの事を指していたのだ。更にハジメは自身の言葉に付け足していく。
「まだ2人の危機は去っていない。2人が姉妹としての時間を過ごせるようになって初めて、俺達の仕事は終わるんです。それに、2人の喜び合う姿を、レイア様に見せなくてもよろしいので?」
「うっ!……れ、レイアさんに見せなきゃ、意味はないけど……」
レイアの名前を投げかけられ、言葉に詰まる。更にジャンヌの中でレイアとのやり取りが再生される。
『私にはこれしか出来ないから……。ハジメ君、ジャンヌちゃん。後は頼んだよ!』
『はい!レイアさんの気持ちに賭けて、ネアの無実を証明します!』
……そうです。わたくしは、レイアさんの思いも背負って、ここまで来ました。レイアさんがいない中で、勝手に決めるのはよろしくない。レイアさんの想いを無下になんかできません!……でも。
ジャンヌは戸惑う。それでハジメが犠牲になってしまっていいのか。誰かを救うために誰かの犠牲を払っているのでは、納得いく結末となるのだろうか。沈黙するジャンヌに、ハジメは語りかける。
「お嬢様。俺は例え自分の身が犠牲になったとしても、もう悔いは……」
しかし、ハジメが決意の言葉を口にしようとした、その時である。
「……どうして?」
「えっ」
ジャンヌの疑問を示す単語が、彼女の口から零れ落ちた。その言葉にハジメは戸惑う素振りを見せた。ハジメだけではない。ネアも、そしてグリューネやアレクも共に不思議そうにジャンヌの方へ視線を向けた。
投げかけられた疑問の意図が分からず、ハジメは聞き返そうとする。そこで、ジャンヌの想いが、真意が明らかとなっていく。
「お嬢様、それは一体何の……」
「どうして、貴方が犠牲になれば解決するの?貴方を失って悲しむ人がいないはず無いじゃない。友人や使用人仲間、いいえ、それらよりもあなたを心配する人達が、今ここにいいるじゃない!」
「…………お嬢様」
ジャンヌ自身、自分が何を言っているのか分からなかった。分かるのは今言っているのはジャンヌ自身が今一番思っている事であるということだけだ。何のために、何を思って言っているのか、ジャンヌ自身は考えてなどいない。とにかく思い付いた言葉を、ハジメに浴びせる。ネアも心配そうに見つめるが、止めようとしない。ジャンヌの言葉の意味が分かったからだ。
そのままジャンヌは言葉を続けた。
「わたくしは、貴方の主なのよ……?従者だったら、わたくしの命令にも従ってよ!それが、主従関係っていうものでしょう……?お願い、勝手に……いかないでよぉ……」
その眼に涙を浮かべるハジメの主。それは彼女が初めて人の為に泣いた場面だったのかもしれない。ハジメの存在は、この短い間でもそれほど重要な存在となっていた。今までが今までだったことからも、余計にそうなったのだろう。
ジャンヌの我儘とも呼べる、純粋な願いは当の本人であるハジメにも分かった。しばらく黙っていたハジメは困ったように後頭部を掻くと突如として装依を解く。ジャンヌは最初、それが自分の言葉が届いたのだと思った。ネアやグリューネも、そしてアレクもまた反応は異なるが同じことを考えたのだろう。だからこそ、ハジメが直後にとった行動に驚かされることとなる。
装依を解いたハジメは、ジャンヌの傍まで近づく。そして、姿勢を落としその場に跪いた。跪いたジャンヌの一番の従者は、そのままの姿勢で彼女の手を優しく取る。あまりにもかしこまった、従者じみた対応にジャンヌが戸惑う。自身が考えていた予想より、さらに上の扱いでそこまでしなくてもという気持ちがこみ上げてくる。
そして、ハジメは動いた。―――手に取ったジャンヌの右手の甲に、唇を付けたのだ。その行動が、どれほど重大なものだったのか。その瞬間の誰も知ることはなかった。
◆
(ごめんなさい、お嬢様)
手の甲へと唇を当てる際、元は心の中でそう思った。男が唇で肌に触れるなど、男を嫌うジャンヌにとっては嫌悪感以外の何物でもないだろう。しかし元は嫌われてもそうやらなければ彼女の我儘を破れないと思ったのだ。
地球にいた頃、ドラマやアニメの中で、男性の執事が女性の主にこうしているシーンを見たことがあった。詳しい意味は分かっていなかったが、おそらく尊敬する人物への気持ちの伝え方の1つなのだろうと、元は思っていた。今元は死地になるかもしれない戦場へと向かう気でいる。止めるジャンヌの気持ちも今分かった。それでも向かいたいという気持ちを伝えるために、元は彼女の手の甲へとその行為を行ったのである。
「これは、俺の気持ちです。貴女を深く尊敬している。貴女の命令に従いたい。それでも俺は、これからのネア達の未来を……」
しかしその後に続く言葉は、唐突に響いたジャンヌの声にならない絶叫で中断させられる。
「っ~~~~~~~~!?!?」
「お、お嬢様!?」
いきなり暴れ出したジャンヌの振り払いで、元はその手を放してしまう。だが、ジャンヌは尋常ではない様子で、赤面してこちらに顔を隠す。
「ば、バカッ!?な、何でこんな時にそんな事するのッ!?今じゃなくていいじゃない!!」
「い、いや、まぁ、でも俺はその……お嬢様への誠意を」
「バカッ!誠意とかを今見せる場面じゃないでしょぉ!?分かってくれたのかと思ったら、なんでぇ!」
何とか元は自分の考えを伝えようとするが、ジャンヌはそれを拒み続ける。話がかみ合っていない二人を見かね、グリューネが元にその事情を伺う。
「んー、ハジメさん?その行為の意味って、分かってる?」
「え……えーと、映画とか見ただけで曖昧なんですけど、忠誠を誓う、とか、敬意を表すとか、そんな感じですよね?」
元は自身の考えを偽りなくそのまま伝える。するとグリューネが頭を抱えて苦言を漏らす。
「あー……まぁ、間違っちゃいないわね。間違っちゃ。……けど、今の流れ的には違うでしょ?」
「え?」
「そうですよね、グリューネさん。ハジメさん、今はお嬢様の名誉のためにも、謝った方が良いですよ?」
「え、いや、謝るのは謝りますけど、なんで?」
2人の反応に、事態の見えない元。流石の元も、いくらジャンヌが怒っている理由は分からずとも、謝らなければならないことは分かる。だからこそ、その理由を聞きたかったのだが、2人はその情報を与えてくれなかった。
とはいえ、このままにするのもいけないと、元はその言葉に従う。
「あ、あの……とりあえず、申し訳ありません?でした」
「うぅ……もうレイアさんと合わす顔がありません……ん?」
純情を穢されたかの如く涙声で、そのようなことを口走るジャンヌ。しかしそこで異変に気づく。ジャンヌが気づいた時には、元達も既に気づき、困惑した様子でその異変を目にしていた。
なんだ……お嬢様の手が、光っている?いや、手と言うより、正確には手の中が光って……。
元の感想の通り、ジャンヌの握った手の中から光が発せられる。最初は小さな光で、気づくのは少数だったが、今では既に輝きがその手からあふれ出し、通信に掛かりっきりだったヴェールも何事かと整備員と共にその現象を観察していた。
ジャンヌが恐る恐る自分の手を開く、そして、それが何なのかが判明していく。
「これは…………結晶?でも、これって……」
光が収まり、見えてきたのはひし形の手のひらに簡単に収まる程度の結晶体であった。あのまま力を入れていれば、ジャンヌの力でも砕けてしまいそうなそれを見て、ほとんどの者達が首をひねる。しかし、その中で1人、ヴェールだけはその結晶に食い入るように見る。
「ちょ、ちょっと!それってまさか……」
「ヴェールさん?一体どうしました?」
元もヴェールの尋常ではない興味に事情を聞く。だが、ヴェールがパソコンを取り出すまでに食い入る理由を答えたのは、元のスターターから響くスタートの声だった。
『あぁ、間違いない。それはリム・クリスタルだ』
「な、何だって?」
リム・クリスタル。それは元のガンダムの持つ必殺の機能、エラクスシステム制御に必要な最重要パーツ。思わぬ場面での現出に、元も驚く。
その一方、詳しい事情や、まったく知らない人物もいる。事情を聞いていたであろうグリューネが、元に確認を取る。
「リム・クリスタルって……ハジメさんのガンダムに足りなかったっていう?」
「そうです。これがあれば、エラクスシステムを完全に使いこなすことが出来る……」
「え、エラクスシステム?それって一体……」
ネアの質問に思い出したようにアレクがあの時の事を答える。
「あぁ、それはもしや、僕が君と最初に戦った時に発動した、あの蒼い輝きかな」
「そうです。あの時は制御が利かずに殺しかけましたが、これがあればその力を制限時間内だけ使いこなせる……」
元の当時の記憶が蘇る。あの時の元は機体に振り回されていたが、あの強大な力を自分の物に出来るとなると、体の震えが止まらない。なぜ出来たのかはともかく、これは嬉しい誤算だ。
だが、それを使いこなせるかどうか、そしてそれがガンダムに合うかどうかはこれから確かめなければならない。そしてそのためには生み出したジャンヌの合意が少なくとも必要だろう。先の件も踏まえジャンヌへとゆっくりと歩み寄り、使用する許可を申し出る。
「お嬢様。大変おこがましいかもしれませんが……」
「………………」
元は機嫌を取るように慎重に話しかける。が、ジャンヌは顔を背けた状態で無言のままクリスタルを差し出す。
「………………止めても、行くんでしょう?だったら、ハイ」
諦めにも似た言葉は、ジャンヌの投げやり感が半端ではなかった。間違いなく、先程のやり取りが関係していた。とはいえ、快諾ではないにしろ渡してくれるそれには感謝しつつ、元は結晶を受け取る。
しかし、受け取る直前、元はジャンヌから言われる。
「けど、約束して。必ず帰ってくるって。わたくしにさっきの非礼を怒られるために!」
思わず笑いが出るような約束だ。しかし、そこに込められた元の無事を祈る気持ちを、元は確かに感じ取った。元はジャンヌの照れ隠しの約束に確かに答える。
「はい、仰せのままに。必ず生きて帰ってきます」
そう言ってジャンヌからリム・クリスタル……龍の愛を受け取る。そしてそれをヴェールに渡す。
「じゃあ、準備お願いできますか?」
「もちろん!整備のみんな、突貫作業でやるよ!」
『イエッサー!!』
ヴェールの号令と共に、整備員たちが元の装依し直したガンダムに取り付いていく。整備兵達は武装を予備として持ってきたものも含め可能な限り再装備させ、万全の状態へと近づけていく。一方のヴェールも、ガンダムの後方からクリスタルを装填し、適合作業を進める。
そしてガンダムのコンソールにも、それらが正常に行われたことを告げる表示がなされる。
『リム・クリスタル交換完了。Matching test All complete』
『適合率、99.4%。これ以上ないほどベストな状況だ!』
「よし……ヴェールさん!」
すべてが完了したところで、元はヴェールに状況を訊く。その言葉にヴェールは応え、退避を整備員たちに確認を取る。
「よし、みんな準備良い?」
「機体武装チェック完了。いつでも行けます!」
「うん、じゃあ全員退避っ!ガンダムが出るよ!!」
彼女の号令に一斉に離れる整備兵達。そして元は空を見据えて機械の翼を広げると叫ぶ。
「黒和元、シュバルトゼロガンダム、行くッ!!」
その声と共に、元は飛び立った。飛び立った先で、上空で待機していたバァンと目が合う。しかし、彼はコクリと頷くとそのまま前を見据える。意味を理解した元は、改めて侵攻するマキナス軍がいる国境付近へと急行する。
NEXT EPISODE
今回もお読みいただきありがとうございます。続くEP28も是非ご覧になってください。
ネイ「絡みってそういうことだったんですね……なんていうか今そういうことする場面ですかって言いたくなりました」
グリーフィア「バカップルねぇ……戦場にそういうの持ち込んだら負けだと思うんだけど?」
それは主人公以外のお決まりだから問題ない(゚∀゚)
グリーフィア「顔が笑ってるじゃないの。……けど、てことは続く話はいよいよ蒼炎の力の発揮どころかしら?」
そうですね。というわけで続きもどうぞ!
ネイ「果たして逆転できるのでしょうか……」