機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

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どうも、皆様。前話から引き続きの方は改めまして。誕生日を2日前に迎えた藤和木 士です。

ネイ「おめでとうございます。アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。それで作者さん、誕生日いいことあった?」

(´・ω・`)まぁ、想像にお任せするよ。さて続いてEPISODE43の公開です。

グリーフィア「なんていうか……元君も大分こじらせてるわよねぇ」

ネイ「過去がああなってしまったとはいえ……どうしてそこまで……」

あ、これまだ関係してないから言ってないけどね。他にもその原因少しあるんですよ(^ω^)

ネイ「え、原因それだけじゃないんですか?」

グリーフィア「なんで、と言いたくなるけれど、別のところで取り上げたい感じかしら?」

そうだね。どっちかっていうとこれは第2部で言いたい。さて元の暴走、止めるのは誰だ!?それでは本編!


EPISODE43 別離、復讐、回想5

 

 ハジメの話を聞いて、ようやくその一端に触れることの出来たグランツ達。これまでの一生懸命に技術を手に入れようとしていたそれも、目の前の物事に対し全力で取り組んでいたことも、全て害する者を排除し、その手の届く範囲の物を護るためだったのだ。

 グランツはかつて元がハジメ・ナッシュであった頃の様子をガンドから聞いたことがあった。その時「まもる」事についてガンドに聞いたという。その話にはグランツも興味深いと感じていた。その話を聞いていたからこそ、元へと戻った後の決闘の時も記憶を取り戻す前の彼の行動原理として、残っているのだと思っていた。だがそれは少しだけ違ったのだ。

 元々彼にとって救えないことは、自身の存在意義に直結する。過去のトラウマがあるとはいえ、歪んだ価値観がハジメを救世主らしくさせていたのである。その歪みをハジメは気づいていない。今も彼は言う。

 

「そしてこの世界に来て、俺はガンダムという力を手に入れた。この世界で絶対的な力。俺はこの力に誓って、絶対にもう負けないと決めた!お嬢様にも、ガンダムが破壊されてでも戦争を終わらせると言った!……だけど、俺は負けた。あの白いガンダムに!絶対にもう、あいつに負けるわけには行かない。だから、俺は!」

 

「だから、無茶をしてでも強くなると……?ふざけるな!お前はその強大な力に溺れている!それだけでどうにかなる問題じゃないだろ!?」

 

「だからどうした!俺は力に溺れてでも、勝利を求めなくちゃならない。この体がどうなろうと、当主を殺したあのMSを、ディーナ・リントヴルンを!!」

 

 目の前に現れた強大な存在。ジャンヌとの話もあって、それを越えなければ戦争など終わらないという強迫観念が、間違いなくハジメの歪んだ価値観に作用していた。戦争が人の心を歪めると言うが、視線の先にいるハジメもまた、この戦争の被害者となっていたのだ。救世主と祭り上げられたガンダムの存在と、ファーフニル家の現実。戦争が生み出した現実に翻弄される様は、奇しくも若かりし頃のグランツに酷似していた。自分もかつての自分の幼馴染であり、クリエの母親でジャンヌの祖母に当たるエルダ・ファーフニルを巡っての事件。結果的にエルダは当時の護衛人であったフリード家に仕えていた軍人、亡くなったジャンヌの祖父と結ばれたが、グランツは自分こそが彼女を支えるにふさわしいと信じて疑わなかった。

 だが、グランツの父親はその時言った。お前には別の仕事があると。フリード家を継ぎ、そのうえでエルダに続くファーフニル家の者を護るという使命を受け、グランツは納得した。しかし、自分はそれをどこかで悔しく思っていた。だからこそ彼女が自殺を図った時、彼女の夫に詰め寄ってしまった。無意味だと分かっていても、助けられなかった彼女の無念を晴らしたかった。だが過ぎてしまったことだと後悔した。

 今のハジメはあの時のグランツと同じだ。かつての出来事に足を取られ、戦争が作り出した物に翻弄されてしまっている。止めなければ、彼は後悔することになってしまう。今彼は、大切なものをなくしてしまうことに気づいていない。救うべき者がいる。そんなハジメの言葉を最初に否定したのは彼の学友だった。

 

「ふざけんなよ!そんなんで誰が喜ぶっていうんだ!?」

 

「レヴ!?」

 

 たまたま倒れたハジメを助けるに至った友人は、ハジメの前に一歩出て立ち塞がる。妹が心配そうに声を上げるが、兄はハジメを見据えたままだ。

 

「ふん、お前に分かるかよ。救えなかった奴の苦しみが!」

 

「救えなかった!?今も救えるはずの人の手を、自ら手放そうとしている奴の苦しみなんか分かるか!」

 

「レヴ・リヴァイ……!」

 

 アレクが咄嗟に2人の間に入ろうとするが、レヴは手で遮って拒否する。そして言った。

 

「今もそれが分からないっていうなら、俺が分からせてやる!友人として、お前の目を覚まさせてやるよ!!」

 

「っ!このっ!」

 

 啖呵を切ったレヴはハジメへ向かって駆けだす。更に伸ばした拳がハジメの顔面に向けられる。それをハジメは左腕で逸らして受け止める。その状態から乱闘が始まる。

 急遽始まった殴り合いに、リッドやネアは慌てふためく。

 

「ちょ、レヴ!?」

 

「ふ、二人とも!?と、止めなくちゃ……」

 

 しかし他の者達は動かなかった。理由はグランツ自身が言った。

 

「いや、ここは彼に任せよう。アレク少佐、リリー准将。もし危険になったら全力で止めてやってくれ」

 

「りょ、了解」

 

「そうでしょうね。ハジメ軍曹の過去は重い。ですが、ここでそれを乗り越えなければ彼は戦士として成長できないでしょうから」

 

 グランツの言葉にアレクは躊躇いがあったが、リリーは状況を理解してくれていた。軍人と民間人、本来なら圧倒的優位は軍人であるハジメに分がある。しかし今のハジメは倒れるほどに体力を消耗している。加えてレヴの怒りには、納得できるものがあったのだ。だからこそグランツは多少騒ぎがあれども、レヴの行動に賭けた。こうなることを予想して屋上から人は払ってある。後はレヴの言葉が届くかどうか。

 救世主を操る青年と、その友人。果たして制するのはどちらか。グランツはその戦い、いや、喧嘩を見守る。

 

 

 

 

 ハジメの拳が二度頭を揺らす。体勢を崩しながらもレヴは続く三度目のフックを躱す。今まで一度も拳を交えたことのなかった2人。しかしレヴは簡単には負けない。これでも昔はジュニアハイまでは殴り慣れている環境にいた。流石に軍人とは殴り合ったことはなかったが、それでもハジメの拳は耐えられると確信していた。

 拳を交わしながらレヴはハジメに言う。

 

「俺にはお前の絶望なんて分からない!分かるわけない!でも、これだけは分かる。今は勝ちに囚われている暇じゃないってことが!」

 

「何をっ!今は勝たなきゃ意味がないんだっ!邪魔するっていうなら潰す!」

 

 強烈な拳がアッパー気味にハジメから繰り出される。間一髪腕を構えて防御するレヴ。しかし続けざまにハジメはその腕を掴んで、そこに膝蹴りを連続して打ち込む。

 両腕が痺れだす。更に膝蹴りから続けて拳が二発その頬に刺さる。力もなかなかだ。拳の差し込み方もなかなか痛い。しかし、レヴには通じなかった。その拳には重さが足りていない。重みのない拳に、倒れる気は毛頭なかった。

 反対に、レヴはハジメの胸倉を掴み、その頬を叩く。更に顎に思い切りアッパーを入れて彼の頭を揺らした。ハジメが掛けていた眼鏡が弾かれ、地面へと音を立てて落ちる。意識は保つハジメだったが、その足取りはやや崩れていた。限界を見せるハジメをレヴは挑発する。

 

「へへっ、もうおしまいかよ……」

 

「おしまい、だぁ?……まだだっ!!」

 

 その挑発を受けてハジメは本気を出す。大きくレヴに向かってジャンプすると、そのまま蹴りつける。それを防ぐと今度はその防いだ腕を足場に、更に上へと飛びかかと落としを繰り出した。あり得ないほどの運動神経だ。

 流石にレヴもそれを回避する。その時アレク達が2人の間に入ろうと動くが、それをレヴは止めた。

 

「待ってください!まだいける!」

 

「レヴ・リヴァイ!しかし……」

 

「アイツの眼ぇ覚まさせないと、ジャンヌ・ファーフニルに申し訳ないんでね!」

 

 闘志を滾らせると、再度ハジメとの殴り合いに挑む。そう。これはジャンヌ・ファーフニル、ひいてはハジメ本人への礼だ。ハジメと出会っていなければ、諦めていたMSパイロットを志すこともなかった。表にこそ出していないがハジメが軍に入隊すると聞いた時、レヴは対抗心が生まれていた。自分だってMSのパイロットを目指していた。もちろん以前言っていた災害などの地域に支援する被災地活動のMSパイロットだ。けれどもリッドの体の事もあって、両親からの要望でリッドに付き添う形で聖トゥインクル学園高等部に通うようになった。ジュニアハイでもそうだ。そんなリッドに付き添わなければならない事情から、進路を自分で決められないレヴはジュニアハイ時代、荒れた。

 もちろんリッドが心配でないわけではない。しかし、そんな都合で諦め続けていいのか。別の次元から来た友人が軍に入れて、自分はこのまま諦めてしまうのか。聖トゥインクル学園高等部に通う今でも、バイトで作業用MSの操縦できる仕事を選ぶほどに未練のあるレヴは、ハジメに触発されて今からでもMSパイロットを目指せるあらゆる手段を探した。必死になって探した。それこそ軍用のMSを操縦できるものを含めて探した。しかしなかなか見つからず、諦めかけていたレヴの前にジャンヌ・ファーフニルが現れた。たまたまハジメの用事が済むのを待って図書室を訪れていたジャンヌに、レヴは自分の事情を話した。当てはない。しかし、それでも藁にも縋る思いで聞いた。

 するとジャンヌは学校の古い校則を紹介してくれた。かつてマネージメント科に対し行われていたMS教習。昔こそ必修であったそれは今も志願制ではあるものの、MSの操縦などを教われるその学校の校則はレヴにとっては渡りに船。レヴはジャンヌにお礼を言うと早速職員室の教師にMS教習の志願を申し入れた。教師の案内で校長室を訪れ、校長の下でその話を申し込むも校長はやや嫌煙気味だった。しかしレヴは諦めずにMSによる被災地支援に出たいという思いを伝えると、偶然にもその話を聞き校長の下へ案内してくれた先生がそれを応援し、校長にMS教習を推薦してくれたのだ。何でもその教師は昔MSの被災地支援チームに所属していて、近々また軍の教官に復職しようとしていたのだという。校長への請願もしてくれて無事レヴはMS教習の追加授業を受けられるようになった。もしハジメに触発され、更にあのタイミングでジャンヌに会って聞いていなかったら、こうならなかっただろう。

 だからこそレヴは退けなかった。2人へのお礼のためにも、今度は自分がハジメとジャンヌを助けなければならない。レヴは叫ぶ。

 

「お前ら2人がいなかったら、俺はMS教習の追加授業を受けることが出来なかった。2人がいてくれたから俺はまた夢を目指すことが出来た!」

 

「っ。それが何になる……」

 

「そんな2人が、すれ違ったままでいいわけねぇだろ!!」

 

「っっ!?」

 

 不意を突かれたような様子を見せる。それが大きな隙を作り逃さず拳を振るう。強力な右ストレートがハジメの頬にめり込む。

 ハジメが体勢を立て直そうと後ろに下がる。無論レヴはそうさせまいと距離を維持する。逃げるハジメは防御に精一杯で攻撃に転じられない。レヴは拳をハジメの腕にぶつけながら言葉を吐く。

 

「今のお前らは、交わっていない!ジャンヌ・ファーフニルはいつまでも部屋に閉じこもって、お前は過去のトラウマを引きずってジャンヌから逃げて!お前らはそんなままでいいのかよ!?いいわけねぇだろ!!」

 

「何を……何をぉぉぉ!!」

 

 事実を追及されて激情するハジメ。反撃と言わんばかりの拳を振るうが、速さもない苦し紛れの拳を避けるのは造作もないことだ。

 この時には既に観客サイドの者達は心配よりも見守る気持ちの方が強くなっていた。先程のレヴの制止からの流れで、ハジメの勢いが弱まったことに安心感が生まれたのだ。観客にも気付くほどにハジメの拳は弱まっていた。

 そのタイミングでレヴは一気に畳みかける。拳の空ぶったハジメの服の胸倉を掴む。胸倉を掴まれたハジメはここぞと言わんばかりにその拳をレヴの顔に向ける。掴んでいる以上距離は必然的に縮まっている。逃げられる可能性は小さくなったのだから。

しかしレヴも黙って殴られはしない。飛んでくる拳を一度空いている手で掴むと、胸倉を掴んだ腕に力を入れる。自身の方に引き寄せる形でハジメの体は引き寄せられる。同時にレヴも体を少し引いてから前へと倒す。2人の体が力の法則にしたがって引き寄せられる。このままなら互いの頭が正面から衝突するだろう。しかし、それはまさにレヴの望んだ状況だ。このまま殴っていてもらちが明かない。弱いとはいえ思った以上に体力を消費した。こっちもいつ倒れてもおかしくない。ならこの一撃に掛けるしかない。目を覚まさせる痛恨の一撃を繰り出す。

 

 

 

 

「いい加減……気づけ!!ッグ!?」

 

「グァッ!?…………」

 

 

 

 

 正面から衝突したレヴとハジメの頭部。凄まじく鈍い衝突音が響き、見ていた者達が慌てて駆け出す。ぶつかった本人達は2,3歩後ずさったのち倒れ込む。間一髪2人をそれぞれアレクとフォーンが支える。

 衝撃が思った以上に強く、平衡感覚がおかしい。どちらが上なのか下なのか。それだけでなく今の今まで何のために争っていたのかも曖昧になりかけていた。しかしそれでも何とかアレクとリッドの声で気をしっかりと保つ。

 

「おい、2人とも大丈夫か!?」

 

「兄ぃ!?生きてる!?」

 

「生きて……る、っての……!いっつつ……あー、ハジメ、は……」

 

「何とかこっちも目は開いてるようだ。しかし、本当に危険なことをしてくれるな」

 

 フォーンから状況を聞き、レヴは仕上げとしてハジメに対してしっかりと言い聞かせる。

 

「へへっ、まぁ、ね。それより……ジャンヌ・ファーフニルは、お前の主なんだろ……?なのにお前は、この3日、いや、4日か?気に掛けたこと、心配したことあったのかよ?」

 

「心配、だと?してたさ。でも、俺に何が出来る……?今まで誰も解けなかった呪いを解くことなんて!」

 

「違うだろ!」

 

「っ……!?」

 

 ハジメが話そうとしていたことを、レヴは全力で否定する。それは状況であって、質問への回答ではない。そんなことは関係がないのだ。だからレヴは否定した。

 レヴが言いたいこと。それはクリエやフォーンが言いたかったことだ。しかし彼らでは言えなかったこと。ハジメと違う位置では言えなかったそれを、荒れて下の段差でうずくまっていたハジメと同じ位置にいるレヴは言う。

 

「俺は……ジャンヌ・ファーフニルを気に掛けたのか、……って、言ったん、だ……。それなのに……何ジャンヌの陥っている状況ばかり言って、会おうとしなかったんだ」

 

「それは…………」

 

「正直言って、俺にはユズハってやつを失った時の、お前の気持ちを全部は分からねぇ。……辛かったていうのは、分かる。だけど……それに引っ張られて、ジャンヌから目を遠ざけてたら……またお前は失っちまうんじゃないか?」

 

「………………」

 

 ハジメは口を閉ざす。顔を右手で覆っていたが、おそらく後悔に満ちているのだろう。

 本当なら、グランツやガンドの最後の言葉で気づくべきだった。彼らもそうならないように願ってハジメに言っていたはずだった。ところがその時のハジメは目先の出来事に意識を駆られていて、言葉の意味も満足に理解しきれていなかった。過去に犯した過ちに怯えていたせいで、つかみ損ねてしまった手。

 しかしハジメは気づいた。自分が掴まれなかった手に、そして今掴まなければならない者の手が誰なのか。既に失われた者ではない、今そこにある手を。最後にレヴは言った。

 

 

「だからさ、護ってやれよ……。ジャンヌ・ファーフニルを。彼女を心配させた分、もう絶対に離さない位に、抱きしめてやれ……」

 

 

レヴも朦朧とする意識の中で自然と出た、ハジメへの言葉。それを聞いたハジメの口が、消えそうなほど小さい笑いを産み、感謝の言葉を紡いだ。

 

 

 

 

「……そうだな……そうだった。ありがとう、レヴ。もう、絶対に……ジャンヌを、離しはしない―――――」

 

 

NEXT EPISODE

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます。止めたのは、友人でした(綾○感)

ネイ「まさか、レヴさんが体を張って止めるとは……でもそれだけの理由があったんですね」

グリーフィア「そうねぇ。まさか第3章の本当の始まりと言っていたあそこでの会話が、ここに繋がってくるとは思わなかったわぁ」

まぁ途中から組み込んだんですけどね、その話。プロットではどうレヴに止めさせるかと悩んでいたんですけど、自然とその話が使えるんじゃね?と思い、話構成していったら割と上手く行ったという(´・ω・`)

グリーフィア「ザ・偶然の功名」

其れしか言えん(´ω`*)

ネイ「ちょっと言語おかしいです。でも……最後あんな事言っちゃうんですね……!」

グリーフィア「そうねぇ。しかも元君も返事しちゃってたし♪」

そこは次でも指摘される予定ですよ(゚∀゚)では本日はここまで。

グリーフィア「次回もよろしく~ね!」
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