機動戦士ガンダムDN   作:藤和木 士

8 / 322
どうも、皆様。バトスピ弾さん復活が嬉しい\(^o^)/藤和木 士です(*´ω`)

ネイ「いきなりその話題ですか……。アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ。他にもここでも登場してるアシスタントのレイ・オーバと、作者君お気に入りのジャンヌ・ドラニエスの新イラストまで公開されたことだし……」

負ける気がしねぇ(^o^)

ネイ「何にですか、何に」

さぁ、EPISODE6投稿です。今回のお話で出会いの部分は終了です。

グリーフィア「にしても、あの状況からどうやったら作品紹介のあらすじのようになるのかしら?気になるわぁ」

あぁ……それに関してはすっごい楽しく書かせてもらいました(^ω^)

ネイ「……なんか不安になりますね、それ。ジャンヌ・ファーフニルが、お嬢様……ジャンヌ・ドラニエスをベースにしているとのことなので、一応報告はさせて……」

(´・ω・`)……黙っててくれないかな?

ネイ「次の投稿で怒られるか、投稿終了後に怒られるか、どっちが楽だと思います?」

(^o^)あっ……今日中でお願いします。

グリーフィア「ジャンヌに怒られる展開確定なのね。まぁ、とりあえず話に入りましょう?」

あっはい。ではどうぞ('ω')ノ


EPISODE6 出会い6

 

 

「……では、最後にこちらの読みを答えてください」

 

「はい。……「モバイルスーツ」……いや、「モビルスーツ」でしょうか」

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

 いくらかのやり取りの後、庭師は「お疲れ様です」とハジメと言った青年に声を掛けてから立ち上がる。やり取りを見ていたガンド達の方に顔を向けると、そこから分かった事を報告してくる。

 

「どうやら、知識分野での記憶は大丈夫なようです。道具の使い方などにも、影響はないので生活面では問題ないでしょう」

 

「そうですか」

 

 ガンドの応答の直後、ジャンヌやレイア達もまたホッと胸を撫で下ろす。生活が出来る、というレベルの知識なら、問題ないだろう。

 しかし、と庭師の言葉が続く。

 

「どうにも記憶におかしな点があることは否めませんね」

 

「おかしな点……?」

 

「……というと?」

 

 自身の雇い主でもあるガンドに訊かれ、庭師はカルテを見てその点を述べる。

 

「結論から言うと、彼は竜人族、そして機人族でもないかもしれません」

 

「え……?」

 

 不思議そうな声が、横で聞いていたクリエの口から洩れる。クリエだけではなく、他の者達も、表情に困惑の色が浮かぶ。

 

「どうしてそう思ったんだ?」

 

「はい。確かに生活面の知識はあるのですが、途中竜種についての質問をしたのですが、答えられませんでした。そこで、機人族についての必須知識……アンドロイドタイプについて訊いてみたのです。……ですが、こちらも同じく答えられずにいました」

 

 庭師の口にした「竜種」、「アンドロイドタイプ」。これはいずれも、竜人族、機人族の種類についての事だ。どちらも種族や地位に関わることであり、道具の使い方にも影響することがある生活知識であるはずだ。

 しかし、それを彼は覚えていない。あまりにも不自然である。都合よく忘れたにしても、生きているうちに何度も耳にする言葉である。忘れたとは考えづらいものなのだ。

 その場にいた青年を除く者全員が、不思議そうにする。続けて庭師は、もう1つそう思った理由を口にした。

 

「そして……彼はどうも、竜人族や機人族の事を知らないようです」

 

「知らないだと!?どういうことだ」

 

 思わずフォーンが声を荒らげる。庭師もその声の大きさと突然のタイミングに竦む。彼でなくても、後方にいたレイアも思わずビクつかせていた。ジャンヌの視線が細まり、彼の背中を睨め付ける。

 だが、庭師も流石に慣れていたのか、それとも予想通りだったのか、息を吐いてから自身の限りなく推測しかない予測を伝える。

 

「詳しくは分かりません。……ただ、彼はこの世界の動物の内、ドラゴンだけは彼にとっては「空想上の生き物」のように言っていたのは間違いありません」

 

『…………』

 

 それは、あまりにも自分達にとって荒唐無稽な話だった。特に敵である機人族の子どもですら、ドラゴンを目の敵にしていると、学校から教わってきていたジャンヌを除く学生組は動揺している。ただ1人、ジャンヌは少し違うことを考えていた。

 ドラゴンが空想上の生き物……か。そんな世界で生まれたなら、わたくしはこんな苦労はしなかったんでしょうか。……考えるのもナンセンスですね。

 この家でなくても、救世主という存在に引っ張られ続けるこの世界で生きなければならない。それならそんなものが存在しない、ついでにドラゴンもいない彼のような世界観ならば、自分は幸せに生きられたのだろうか、と考えていた。

 一方で状況を整理できた大人達は、今後の対応について協議し出す。

 

「状況は分かった。となれば、問題はこれからどうするか、だな」

 

「はい。彼の素相が分からない以上、監視できる環境がおすすめですが……そうなると軍病院になるかと……」

 

「そんな!!」

 

 ガンドと庭師の会話に、待ったの声が飛ぶ。声の主は、ジャンヌの愛しき人物、レイアである。

 レイアはジャンヌが止める間もなく、その意見に反論する。

 

「酷すぎだと思います!彼は記憶がなくなって怯えてるのに、そんなことしてたら、余計に記憶が思い出せなくなるんじゃないですか?」

 

 現役軍人であるガンドに、物おじせず意見するレイアの姿は大変勇ましい。しかし、その考えはあまり褒められたものではない。否定しきれないところもあるが、それでも取捨選択しなければならないことを、ガンドの口から語られる。

 

「レイア君。確かに君の意見ももっともだ。けれど、これは少し例が特殊だ。彼は竜人族ではない。少なくとも外からの人間……侵入者だ」

 

「う……けど、それでも!」

 

 外からの侵入者であるという可能性が高い、ということを密に言われるも、それは関係ないと言いたげにするレイア。ジャンヌとしてもレイアの味方に付きたかったが、自身もまた国に深く関わって来た家の者。簡単な理由では動けないし、それが無茶苦茶な願いであることも分かっていた。

 ……なのだが、どうもそれも簡単な話ではないようだった。続けてガンドは息を吐いて、困った様子で続きを話す。

 

「ただ……軍病院も今、ちょっとしたパニック状態でね。これは機密事項でもあるんだが、簡単に言えば今日戦闘があったんだよ。そのせいで空きがないという話だった」

 

「そういえば、ニュースでマキナス軍との戦闘勃発って出ていたわね。見るたびに心配だわ」

 

 夫の知らず知らずの戦闘参加に、ため息を吐くクリエ。しかしいつもの事のように取り乱すことはない。結婚してもう20年も経っていれば、これくらいの事では慌てることはないということなのだろう。

確かに戦闘があり、それで負傷者が出たのなら軍病院にもかなりの軍人が入院するだろう。普通の病院も、先程青年を家に運ぶ際に聞いていたように、首都で起きたマフィアの抗争で病院施設にも空きはない。となれば、普通の病院も警備を付けての入院なども厳しいかもしれない。と同時に、ジャンヌの中に1つ納得のいく事柄があった。それは、昼間の黒いMSの事だ。

あの時軍が出てなかったのは、戦闘があったから……。でも、それなら逆に警戒態勢があるから、モビルスーツが出ていてもおかしくないような気もするけれど……?まさか、軍はあのMSを見つけられなかった?可能性はなくないし、それでしか納得できない。でも……そんな事って、あり得るの?

自身の中で黒いMSに関する様々な考えが再び、だが今回は冷静につなぎ合わされようとする。ところが、その思考はまたも別の人物の発言で遮られる。フォーンがその処遇について問う。

 

「では、いかがいたしますか?一番はそれなりに警戒も出来るここ、でしょうが、あまり推奨は……」

 

「あぁ、そうだな。色々と不都合もあるし……」

 

 そう言ってジャンヌの方にチラリと目を向ける。分かっている、その理由はジャンヌにあることは。実はジャンヌは、軽い男性不信の気がある。もっとも、それは好みによるところが大きく、家の人間に関しては大きくはない。

 しかし、ひとたび家の外の人間となると、学校の方でも詩巫女としての共鳴者……簡単に言えばパートナーともあまり会話しない程だ。学校の先生もあくまで立場に則った程度の会話くらいしかしない。またパートナーの方はどうも外部からの人間らしく、それも相まって会話していく気がしなかった。

 父親であるガンドも、それは十分に理解して家には既知の信頼できる男性以外は家に入れていない。使用人面接などは別だが、その場面でもガンドはジャンヌの事も考え、慎重に人選している。

 

(そこはちゃんとしてる……いえ、それをちゃんとしないと、受け入れてもらえない、と思っているんでしょうね。お父様は)

 

 とはいえ、向けられた視線に何か思う所があるのには違いない。それを娘の詩巫女にさせようとする意志と解釈したジャンヌは、不服そうにしながら顔を背ける。一方父親も、仕方ないと言った様子でそれを指摘はしない。

 とはいえ、このまま何処に……という所で、ジャンヌ自身が思いもよらないところから、受け入れ先が見つかる。いや、見つかってしまうこととなる。

 

 

「じゃあ、私の所とかはどうですか!」

 

「ッ!?」

 

 レイアの発言に、思わず驚く。ジャンヌはすぐに顔をレイアの方へと向けた。思わないところからの発言にガンド達も言葉を失っている。唯一、ネアだけは言葉を失うのと並行して、視線を自身の主の驚く様を見てしまうこととなったが。

 ジャンヌ自身が考えなかった、しかし考えれば最も危険な選択肢だ。なぜなら、男が最愛の人物の元にいるということなのだから。とはいえ、その意見に落ち着いたガンドとフォーンも難色を示す。

 

「うーむ……確かにうちで置くのはとは言ったが……かといって民間人の所にというのは……」

 

「それは同感です。レイア様、先程も申しました通り彼には不明なところが多すぎます。いくら何でも、レイア様の家には……それに、彼を保護できるだけの十分な余裕も……」

 

 そうです、いい感じです!レイアさんの事を乏しめることは苦しいですが、それでもあんな男をレイアさんの元に置くことよりははるかにマシ……!レイアさん、大変胸が痛みますが、これもわたくしの想いです!どうか2人のやわらかーな拒否を受け入れて……。

 心の中で、絶対に当人達の前で口に言えないような事を言い続けるジャンヌ。必死に念を送るようにその様子を見ていたが、しかしジャンヌの愛しの少女であるレイアは、彼女のその予想を上回る考えを出す。

 

「大丈夫です!最近私の実家、改築工事して広くなったうえに「セルム」の試験運用入れているので!」

 

「えっ……」

 

 フンスッ!と擬音が出るかのように鼻息を出し、自慢げに語る。彼女の実家は首都セント・ニーベリュング市の隣、シャインライト市にある。このファーフニル邸はその間に位置し、そのため帰りが一緒になっているのだ。そして彼女の実家は果物屋を経営しており、この度店舗兼自宅を改築したと学年が上がる前に聞かされていたのだ。

 そのため家のスペースには説明がつく。しかし、よりによって軍主導の監視・通報システムの「セルム」を採用しているとは聞いていなかった。CMでは「家を、家族を護る鋼の要塞」という謳い文句と共に、国のスポーツ祭典「ドランピック」の選手兼ドラグディア軍軍人のレスラー3人が映っている。そのモニターとして協力してくれる家を募集中、とは聞いていたが、流石にレイアの家がそれに協力しているとは聞いていない。

 そ、そんな……ということは、今後こっそり盗聴器やらノートやらを持って帰ること出来ないということ!?いえ、それはいいです。でもそれならある意味軍の管轄下と言うことで、父も納得してしまう……!?さ、流石に、そんなことはないですよね……考え過ぎ……。

 しかし、現実は非情だった。

 

「あぁ、セルムか。あれを入れているなら、問題ないかもしれないな。確かそれ関連の運用試験もしよう、という話もあると聞いた覚えがある。」

 

「確かに。あのシステムならば実質軍が監視しているのと大差ないという話ですし」

 

「……えぇ……」

 

 父も、付き人のフォーンも納得してしまう。そこには間違いなく、軍というものが関わっているからこその安心感というものがあるのだろう。しかし、それではダメなのだ。少なくともジャンヌにとっては。

 迂闊でした……以前からレイアさんは、異常なまでの幸運があると聞いていましたが、違います。これは間違いなく悪運……!どうやら彼は、レイアさんを陥れるために現れた悪魔のようです……!ここでレイアさんの幸運とあわよくばレイアさんの隣をわたくしから奪い取ろうというのでしょう!……ですが、そうはさせませんよ!

 この流れに明らかにあり得ない考えに至ったジャンヌは、とある手段に出る。それは、自身にも多大なダメージを負う、いわば諸刃の剣であった。しかし、今のジャンヌにとっては、最愛の少女(レイア)を護れるのならば―――答えはただ一つであった。

 

「それじゃ、ハジメ君だったか。彼の事は……」

 

 

「―――その必要はないと思いますよ、お父様」

 

 

 父の声を遮る形で、ジャンヌは声を発する。唐突に制止させられるような形だったため、ガンドも困惑した様子で次女を見つめる。

 

「どうしちゃったの、ジャンヌ?」

 

「お嬢様……?」

 

 母や自身の従者も、その視線をジャンヌ本人に集中させていく。こういう場面では、普通心理的圧迫を受け、緊張しやすいものだ。竜人族も機人族もそこは基本関係ないだろう。しかしながら、もうジャンヌの中ではレイアとハジメの同棲生活以上に心身的に辛い状況……プレッシャーを感じることはない。

 そうして注目が集まったところで、ジャンヌは同棲を阻止するための切り札を切った。息を吸って、それを宣言する。

 

「お父様、彼をここで預かりましょう。このファーフニル邸で」

 

 

 それは、自身の家で、素小不明の青年を預かるという、ジャンヌの今までの家での振る舞いを、志向を大きく外れる提案であったのだ。

 もはやこの手しかない、とジャンヌは思った。ここでレイアから青年を離す為には、誰か別の人物の家に入れるしかないのだ。しかし、使用人の家に送るというのは、軍志向の父やフォーンに反対されてしまう可能性がある。かといってノーヴェの方に頼むのも、母とノーヴェの関係や家同士の力関係も考えるとあまり得策ではない。そもそも母にはあまり迷惑を掛けたくはない。

 途中父の知り合いの人の家に送る、というのも考えたが、父が納得するとは思えないし、そもそもレイアが少なからず青年に好奇心を持っており、あまり近づけないようなところに預けると、かえって不況を買ってしまう可能性があった。

 そうなると、一番リスクが少なく、かつ最善の手はこれだった。一番損するのは他ならぬジャンヌ自身であるが、それでもレイアが守られるのなら、ジャンヌ自身はそれでもかまわない。覚悟を決めたのだ。そもそも、屋敷の中でもあまり話さなければ実害はないはず……。

 

(既にわたくしは悪魔に魅入られたようなもの……なら、せめてレイアさんだけでも護りますっ!)

 

 心の中で、そのようなことを宣言するジャンヌ。一方、あまりにも突飛な路線変更に、娘の好き嫌いなどはある程度熟知するガンドも状況が飲み込めないまま聞き返す。

 

「え……ジャンヌ、本当にそれでいいのか?」

 

「貴方、本音がダダ漏れですよ。……けれど、意外ねぇ。どうしちゃったの」

 

 クリエも笑顔で夫のミスを指摘しつつも、分からないと言った様子で首を傾げている。しかし、その理由を詳しくは言えない。むしろ、そんな理由を真っ向から話しては否定されるだけなのは分かっている。だから、ここでは本心は隠す。実際隠しているモノ自体はそんな危険視されるものではないとジャンヌは思っていた。

 両親からの心配の声に対し、ジャンヌはその建前を語り出す。

 

「最初に彼を見つけたのはわたくしです。それなりに何かしなくては、とは少し思っていました。お父様は先程、軍の情報漏えいを恐れての発言をしていましたが、それくらいは自分の問題なんですから、お父様自身が気を付けていれば何の問題もないのでは?」

 

「あ、いや……確かにそうなんだが……」

 

 ガンドは困惑した、それよりか呆然とした様子で娘の言葉に返答する。もちろん、この困惑は指摘されてのではなく、今までとの対応の違いへの困惑である。

 しかし、もちろんジャンヌもそれを指摘されてはこの隠蔽工作もといレイアとの関係維持が半分無駄となるため、その父の言葉の先を塞ぐように少し威圧感を持って、表情はにこやかに発言を続けた。

 

「なら、いいですよね?」

 

「あ、あぁ……分かった」

 

 娘の気迫に、並々ならぬ物を感じた職業軍人の父親は沈黙する。それを確認すると、一泊置いて、今度はレイアに対する建前を語る。

 

「それに、こちらで預かった方が色々と小回りが利きやすいと思います。買い物や検査なども首都に近い方がよろしいと思いますし、まだ軍の方でも調べるということが残っているかもしれませんから」

 

「うー……でもぉ……」

 

 少し不満そうにレイアは頬を膨らませた。かわいらしさのある怒り顔に、若干見惚れていたいという本音がのぞきそうになる。しかし、今はその場面ではない。それを護るために、継続するための行動……彼女への致し方のない犠牲(コラテラル・ダメージ)なのだ。

 

「それに、わたくしも当事者の1人です。これくらいはさせてください」

 

 優しい表情で、レイアの気持ちを汲み取るような発言をするジャンヌ。とはいえ、その心の中は、半分「早くレイアさんから離れさせないと」という、自身の思惑がほとんどを占めていた。しかし、それを隠しきれていたのか、それともレイアの性格故か、それに気にすることなく、レイアはその藍色の髪を揺らす勢いで頷く。

 

「……うん!分かった!ありがとう、ジャンヌちゃん!!」

 

 ……はぁあぁっ!!レイアさんの純粋な笑顔っ!!もうこれを見ているだけで、わたくしはこの最悪な状況でも平静でいられるんです!!出来ることなら、写真に撮って収めたいくらい……。

 心の奥では全く平静を保てていないジャンヌは、無意識にレイアの手を取っていた。微笑ましい状況で、両親は娘と友人との仲に安心した様子で見守るが、その傍らで彼女の付き人を務めるネアは全てを察し、目を閉じていた。

 夢のような時の中で、ジャンヌはこのままずっと続いてほしいと思っていた。だが、そのわずかな隙が、とんでもない事態を引き起こしてしまう。それはクリエの発言から始まった。

 

「けど、タダで置くっていうのも、なんというか引けるんじゃないかしら?」

 

「と、言うと?」

 

 夫の発言に、クリエはそれを指摘した。

 

「いや、家で過ごすにしても、仕事はしてもらいたいわぁ。けど監視は少し必要だって言っていたし、それにここばっかりだと変わり映えが無いじゃない?彼自身記憶が戻っても戻らなくても生活できるようにならなくちゃいけないでしょう?」

 

「確かにな。竜人族の知識もないんだったな?」

 

「はい、そうですね」

 

 ガンドからの質問に、庭師は先程のカルテを見せた。質問の部分は、竜人族の固有生活知識以外はほぼ大丈夫なものの、記憶が戻った際、生活が出来るかどうかは不明だ。この星にいる以上、どちらかの種族であってほしいが、そうでなかった場合はとても辛いのは間違いない。ならば、今の内から覚えさせるのは悪くない判断だ、ということになってくる。

 そうなると、どうすればいいか。すると、そこでレイアがジャンヌの手を繋いだまま、その問題にとある提案を出した。

 

「そうだ!それなら、彼を学校に入れるっていうのはどうですか?学校は元々知識を学ぶための場所なんですし」

 

 突飛な発想に、一瞬大人達が硬直する。当然だ。何せ、不審人物と仮定している人物を、そんな子どもが多数いる場所に入れるのだから。

 しかし、同時にそれも良いかも、という考えが次第に伝播していった。

 

「学校……危険だが、確かにそれはよさそうだな。事情を話せば……特に、ファーフニルの家名なら、少しは融通が利くはずだ」

 

 ガンドはレイアの意見に頷きながら、それに賛成する。続くフォーンも、本来の護衛対象に対して意見を述べる。

 

「私も多少の危険性は感じます。しかしそれ以上に状況に適している、といえばその通りだとも言えます。学校施設の監視カメラや警備員なども使えば、彼の動向をチェックもしやすいでしょう。私は構いません」

 

「私もね。それに、ジャンヌの為にもなりそうだわぁ」

 

 危険もあるが、同時に利点もある。それはまさに彼らにとっての諸刃の剣であろう。彼ら自身も、本来ならとある理由で、そんなことは許可できないという立場であった。しかしここにきてその問題が解消されてしまっていた。そう、(ジャンヌ)の態度の一変だ。

 今まで自分に近寄る部外者の男との接近に、恐ろしいまでの難色(というより拒絶)をしていた娘が、いきなり自分達の意見を押し退けて青年を受け入れたこと。それは、十数年彼女を育ててきた親からしてみればとんでもないことだ。この転機に、彼らはこう思っていた。『これは、何かの前触れなのか?』と。

 これがもし、娘を変えるチャンスなら、今ここで娘の為に行動するのが親なのでは?という考えが両親、そして立場は違えど長年間接的に警護してきた者も感じ取っていたのだ。

 この少し前、レイアが提案をした時点で、ネアは何かやばいと思い止めようとしていた。しかし、あまりにも可能性のない話で、誰かが止めるだろうという浅はかな考えと、ここで意見出来るような立場ではないと引っ込んでしまった結果がこれであった。現在、彼女の中では主への『ごめんなさい』の一言が脳内で反復し続けていた。

 未だに夢から回帰しないジャンヌ。……しかし、ネアの取った行動(現実逃避)。それが最大の失点となってしまう。抑え役が機能しない状況で、ジャンヌへのいじりを喜々として行う幼馴染の少女。リントヴルン家の長女・ノーヴェが、決定的な一言を発してしまった。

 

 

 

「あ、じゃあ彼、ジャンヌの正規従者にしません?前にそれしてた人、ジャンヌからクビにされたって話を聞いてましたから、その穴埋めに、って感じで……」

 

 

 

 ノーヴェ・リントヴルン。彼女もまた、ジャンヌと同じお嬢様だ。もちろん自身が発した言葉の意味を一応は理解している。ジャンヌの正規従者……正確にはジャンヌ・ファーフニルに対し、直接世話をする従者の事をここでは指している。一応ネアがそれに当たるのだが、ファーフニル家の場合、それを男女1名ずつ付けることになっていた。

 現在はフォーンがやっているが、それはあくまで兼任で、彼は正確にはファーフニル家の当主・ガンドの秘書兼執事であるのだ。そんな彼が現在そうなっているのは無論、先程も話に出た、従者のクビが原因である。

その日、機嫌の悪かったジャンヌの前で、彼女の従者はミスを犯した。家に仕えた歴もそれなりだが、出自的にそれなりに忌避されていた竜人族の男性に、彼女が腹いせにクビにしたのだという。その従者はすぐに抗議したものの、それが騒動とされ即座に家を追い出され、以来ここ数日、代わりの者を雇うまでの間フォーンがそれを兼任していた、というものだった。

 ノーヴェも、それが通るはずがないと分かっていた。それは即ち、素性の分からない男を、自分達の娘の傍に置くことである。即座に反対の意見が飛ぶのは当然である。

 

「いや、流石にそれは……」

 

「そうだな。そこまでは……行き過ぎだと、思うな」

 

 フォーン、そしてガンドも我に返って反対する。クリエもノーヴェの考えを理解し、優しく乏しめる。

 

「そうね。ちょっとやり過ぎよっ?」

 

「あはは、すみませ……」

 

 互いに舌を出して、笑い話で終わる。はずだった。が真に受けたレイアは咄嗟にジャンヌを問いただす。

 

「どうなのっ!ジャンヌちゃん!!」

 

「ふぇあっ!?……え、何が……」

 

 口の端に自分の液体を垂らすジャンヌ。寝起きの如く、状況を理解しきれていない彼女に、レイアは二択を迫った。

 

「イエスか、ノーか!!」

 

 そこでふと、我に返ったジャンヌは、状況を冷静になった頭で分析する。

 ……イエスか、ノー。先程、わたくしはレイアさんと手を繋いでいた。そして、今この二択を迫られている。はい、か、いいえ。これで何かが決まるということですね。けど、それが何のことなのか飲み込めませんね。ここはどういう話なのか聞くべきなのでしょう。けど、ここで聞いていない、というのはご法度……今日は既に学校で1回聞いていないことで怒られている。それはつまり、レイアさんの中で、わたくしはそんなうつつにぬかしがちな女性に見られるということに……!

 いいえ、そんなことではいけません!そんな「だらしない女」のような印象をレイアさんに植え付けさせるわけには行きません!それにお父様やお母様が見ている前でそんな醜態を見せれば、また昨日のように説教が待っているに違いないです。流石に、2日もあんなものを聞きたくはありません!それにレイアさんの問いへの答えなど、ただ一択!

 瞬間とも言える時間の中で、普通の人間ならば熟考に値する計算を終えたジャンヌは、自身が見出した勝利の方程式(最適解)を口にする。

 

「―――そんなの決まっています。……イエスです!」

 

 

 

 満面の笑みで、自ら敗北の宣言(最大のミス)を口にしたジャンヌ。もちろん、そんなこと彼女自身は知らない。が、動き出した状況が、次第に彼女に気づかせていく。

 

「……よし、分かった!フォーン、すぐに学校と、家の者にそれぞれの支度を!庭師も手伝ってくれ!」

 

「分かりました」

 

「た、ただちに!!」

 

 父の命令を受けた2人がすぐさま部屋を出ていく。その様子を見て、やれやれと呆れた様子で見るジャンヌに、レイアが礼を述べた。

 

「ありがとう、ジャンヌちゃん!ハジメ君を預かってくれて!おまけに学校にも入れてくれるなんて!」

 

「いえいえ、レイアさんの為ですから…………え?」

 

 礼を述べるほどではないと返そうとしたところで、ようやくその違和感に気づく。だが、レイアに確かめる前に更なる事実をノーヴェから告げられる。

 

「いやぁ……冗談だったのに、まさか本当に付き人にするなんてさ……」

 

「は?何言って……」

 

 冷や汗を垂らすノーヴェに、小馬鹿にするような態度で言葉をぶつける。

 何?状況が理解できない。どういうこと?ネアは……って、なんか小言で独り言呟いていますし……。

 そして、状況の理解できない彼女の前で、レイアが現状を述べた。

 

 

「いやぁ……ハジメ君が学園に通えるだけじゃなくって、ジャンヌちゃんの付き人になるなんて……!よかったね、ハジメ君!!」

 

 その言葉で、ようやく理解した。あの青年が同じ学校に通うこと、そして、自分の付き人になってしまったことを。

 停止しかける思考と、どうにかしなければという思い。だが、目の前の最愛の少女の笑顔を見て、それは出来ないことを悟る。

 ……そうだ。これは呪いなんだ。レイアさんの想いを踏みにじった呪い……。けど、レイアさんは凄く嬉しそう。なら、これでいいのかな?うん、いいんでしょうね。レイアさんが笑顔なら。レイアサンガ、エガオナラ……。ウン……?

 目元を伏せ、息を吸ったジャンヌ。そして、両親がハジメのすぐ傍まで行き、手をバンザイさせたところで、

 

 

 

 

「ひぃやああああぁぁぁぁーーーー!?!?!?」

 

 

 

 

 彼女の、本音の絶叫が屋敷に響き渡ったのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。次回は少し時間が経った頃の時間軸になります。

ネイ「……なんでしょうね。確かに作者さんの妄想が詰まってそうな気がするんですが、ジャンヌお嬢様ならありえそうという感が否めない決め方だったんですが……」

グリーフィア「そうねぇ。というか、私達の知るジャンヌもこれくらいじゃない?カタコトは流石に笑ったけど」

ネイ「あ、そうだね、姉さん」

あ、じゃあジャンヌさんへのチクリはなしで……(*´Д`)

ネイ「報告はしますよ?」

(´・ω・`)そんなー

グリーフィア「言っておくだけなら問題ないんじゃない?それに怒るかはモデル本人次第!」

(´・ω・`)それが問題なんですが……。

グリーフィア「けど……ファーフニル家もなかなか大変そうねぇ……呪いとかあるみたいだし。あと、レイアの幸運がすごい気がするんだけど……」

ネイ「私は、ファーフニル家の皆様の気苦労が気になります……あと、監視のCMの内容が……」

(;´・ω・)まぁ、それも含めて以前と同じように黒の館とか作る予定ではあるよ。ただ、前と違って結構解説寄りだけどね。CMは察してくれ。

グリーフィア「まぁ、分かったわ。じゃあ、次回もお楽しみに~」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。