魔界成層転生   作:アマゾンズ

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箒が導き手たる剣豪と時間軸を越えて出会う。

怨恨装具(IS)となった魔界衆の残酷さ。


※過激な描写があります。ご了承ください。


剣の道は修羅の道、剣とは即ち修羅の所業

彼女、篠ノ之箒はセシリア・オルコット、凰鈴音の二人に対して嫌な感じがしていた。

 

ただ苦手とか、気に入らないといった感情ではない。強いて言うならば、邪気が強いという言い方が合うだろう。

 

彼女自身、剣術を学ぼうとしていたが実家の道場では基礎以上の事は何も身に付かないと、探しに探し当てた柳生新陰流の道場の門を叩いたのだ。

 

初めは女が柳生の剣術を身に付けるなどといった差別があったが、差別をする門下生を実力で黙らせた。

 

実家の道場で何もしなかった訳ではなく、剣の基礎だけは父から教わり、自主鍛錬を欠かさずに行っていた結果である。

 

柳生という厳しい環境の中で彼女は師範から、己の驕り、嘲りなどを徹底的に叩き伏せられた。

 

剣さえ握れば自分に敵はいないという油断とも取れる驕りが無意識あったのだ。それを見抜かれた時、彼女は師範に襲いかかったが、逆に返り討ちにあってしまい、立つことすら出来なくなっていた。

 

「な・・・ぜ・・・勝て・・・ない?」

 

「まずは己を知れ、そしてから剣を握るといい」

 

師範は先ず、箒に座禅による修行を課題として出した。必ず強くなれると念を押した上でだ。

 

箒はその言葉を信じて座禅の鍛錬をずっと続けた。そして、彼女はとある人物と時を越えた魂の邂逅を果たした。

 

「そなたが俺に呼びかけてきたのか?」

 

「あ、貴方様は・・もしや?柳生十兵衛三厳殿!?」

 

野性味のある風貌、刀の鍔を眼帯とした隻眼、そして全身から溢れ出す剣客としての闘気。

 

「いかにも、どうして身共の名を?」

 

「後の世にて貴方様の名は残っておりますゆえに・・・!」

 

剣を志す者や志さずとも歴史を学んだ事があるのであれば、一度は聞く事がある名前、柳生十兵衛三厳。

 

その御身が箒の目の前に居るのだから彼女は全身の震えが止まらなかった。

 

「そなたは?」

 

「わ、私は・・・篠ノ之箒と申します!」

 

「篠ノ之・・・なる程、お主と俺の世界は違うが・・・同じ志が引き寄せたか」

 

「同じ志?」

 

「魔界衆を斬る事だ。最もお主の世界では怨恨装具と名が変えられているようだが・・・」

 

魔界衆と聞いて箒は思い当たる事があった。クラスメイトであるセシリア・オルコット、同学年である凰鈴音から発せられる陰湿で邪な雰囲気。

 

もし、それが魔界衆、即ち怨恨装具としてのものだとすれば合点がいく。時間軸が違うこの十兵衛も魔界衆と戦ったのだろう。

 

「篠ノ之よ、今のお主では魔界衆は倒せん」

 

「!何故ですか!?」

 

箒は突然の十兵衛の言葉に抗議を上げた。今の自分では魔界衆を倒すことが出来ない、その事に対してであった。

 

「魔界衆を倒すには魔物を斬る刀が必要だ。人の肉を切り、骨を断つ刀では奴等を止める事は出来ても倒すことは出来ぬ」

 

「魔物を斬る刀・・・」

 

「刀匠を探せ。村正の名を持つ刀匠を」

 

「村正!?切れ味のみを追求し、徳川に対して呪いを帯びせ、使い手を狂乱させるあの妖刀を!?」

 

「そうだ。だが、村正の真髄は違う。神に逢うては神を斬り、魔物に逢うては魔物を斬る。其れこそが村正の真髄、私に真刀を打って下さった村正殿からお聞きしたものだ」

 

「・・・・」

 

村正の真実とは、立合った相手と同質の存在となって倒す鏡のようなものであるということであった。それでも妖刀である事に変わりはない。

 

「どうやら、刻もさほど無いようだな」

 

徐々に風景が霞んでいく。それは元の世界へと戻される修正力によるものだ。箒は最後に聞きたい事を必死で声に出した。

 

「教えて下さい!剣とは!?それと村正を探すにはどうすれば!?」

 

「剣の所業は修羅の道・・・己の道は己にしか分からぬ。だが、戦い続ける道であると心得よ。村正を探すのならば己の中の真刀に聞くがよい」

 

 

 

 

自室で目覚めた箒は、あれが夢ではなかったと自覚する。自分が覚えている十兵衛との会話、それがはっきりと耳に残っている。

 

「己の中の真刀・・・村正、か」

 

箒はベッドから起きると同時に時間を確認する。朝の5時半、軽い素振り程度なら出来る時間だろう。

 

寮から出て軽装で改造された木刀を振るう。この改造された木刀は新陰流の師範代が手入れしてくれた物で、鍛錬のみに使っている。

 

中には特殊な鉛が仕込んであり、振るうだけでかなりの負荷が腕にかかる。振り下ろす瞬間の加速が腕に負荷をかけるのだ。

 

それを耐え抜き、この木刀に重量が感じなくなった時にこそ第一歩が完成するという。だが、今の箒ではこの木刀での素振りは30回が限界であった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・汗を流さねばな」

 

素振りを終えた後、もう一度自分の自室に戻りシャワーを浴びる。流れ出る温水の晒された彼女の身体はまるで絵画のように美しかった。

 

水滴が滴る肌、濡れた長い黒髪、並みの男ならばそれを目にしただけでも肌を交わしたいと思えるほどの女体なのだから。

 

シャワーを止め、身体に付いた水滴を拭き取り、髪も拭く。ドライヤーで髪を乾かした後、その黒髪を細めのリボンでポニーテールに結い上げる。

 

「今の私では魔界衆・・・怨恨装具を倒す事はできない。十兵衛殿は己の中の真刀に聞けと仰っていた・・・時間が出来たら実家へ戻ろう」

 

 

 

 

 

 

 

その夜、とある街の裏路地をセシリアは歩いていた。この近辺は最も治安が悪く、女性が歩いていれば真っ先に世捨て人となった男の餌食になるのが関の山だ。

 

「あれ~お嬢ちゃん~迷子かなぁ?オジサン達が道案内してあげよう~」

 

セシリア程の女性ともなれば此処に居る男達にとって、極上の果実に映っているに違いない。だが、その果実が地獄へ導く漆黒の果実とも知らずに。

 

「臭う・・・臭いますわ。ああなんて酷い・・!これが生者の、命の匂い!こんなもの不快に過ぎますわ」

 

「んだと、このガキ!」

 

「男・・ああ・・・種を宿す本能しかない獣達・・死ね、殺殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺す殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺す殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺す殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺すコロス殺す死ね殺す!・・・アアアアアアアアッ!!」

 

怨恨装具を纏ったセシリアはその目を真っ赤な真紅へと染め上げ、インターセプターを用いて最初に声をかけてきた男の首を落とした。

 

「へ?あれ・・・?俺の身体?だよ・・・な?」

 

「ふ・・ふふ・・射撃武装が使えないのが残念で仕方ありませんわ・・・ああ、でも・・接近戦の肥やしにはなりますわね?一切鏖殺・・・ここにいる総てを肥やしとしましょう。全て全て全て総て総て総て全て全て全て総て総て総て全て全て全て総て総て総て全て全て全て総て総て総て全て全て全て総て総て総て全て全て全て総て総て総て全て全て全て総て総て総て全て全て全て総て総て総てェーーー!!」

 

「な、なんだこの女!?うわああああああ!」

 

男達は逃げ出そうと走り出したが、既に遅かった。悲鳴が上がる前に切り殺し、次々と屍を作り上げていく。

 

「な・・なにあれ?」

 

通りがかった一人の女性すらもセシリアは容赦なく殺した。痛みや声を上げる前にインターセプターによって上顎から全てを切り離した。女性は自分に何が起こったのかさえ理解できずに絶命した。

 

ブルー・ティアーズ・エーリヴァーガルとなっている今のセシリアに人間の常識などはない。それもその筈、今の彼女は魔界衆の一人となっているのだから。

 

「はぁ・・・ようやく匂いが取れましたわ。ふふ・・・接近戦の練習相手、ありがとうございました」

 

そう呟くとセシリアは闇夜に消えていった。屍の山と血の海と化した路地裏には生臭さと無残に切り刻まれた男や女であった物体だけが転がっていた。

 

 

 

 

 

その夜、織斑一夏は自転車でコンビニへ行った帰り道を走っていた。カゴには飲み物や簡単な軽食、お菓子などが入っている。

 

無論、世界初の男性操縦者であるために影から見張りはついており、一夏はそれを知らない。

 

「さて、今日も帰って復習しないと千冬姉に怒られ・・うわっ!?」

 

近道をしようとして裏路地に入り、走ってしばらくした後に自転車の前輪が何かの液体に触れ、摩擦が無くなり転倒してしまう。怪我はなかったが、その場で転倒してしまった為に軽い痛みは流石にあった。

 

「痛ってえ・・・なんだよこれ?オイルか?」

 

暗くてよく分からないが何かの物体がありそうだ。一夏はスマートフォンを取り出して、その物体を照らそうとライトアプリを起動した。

 

だが、それが彼にとって恐ろしい光景を見ることになるのだった。照らしたのは女性の脚のようだ、こんなところで寝ているのかと声をかける。

 

「あの、こんなところで寝ていると身体に毒ですよ?」

 

返事はない。不審に思って立ち上がって頭を見ようとした。だが、それがいけなかった。女性の上あごから先は刃物で斬られたかのように無くなっていたのだから。

 

「ひっ!うわああああああああああ!!!?」

 

一夏は驚きのあまり飛び退いてしまう。無理もない、人間の上あごから先がない死体を見れば当然の反応だろう。

 

「な、なんで・・こんな!っ!?」

 

偶然にも路地裏を照らしてしまった一夏は更におぞましい物を見てしまう。無残な肉の塊に変えられた人間の死体と、辺り一面を濡らした血しぶきの後、そしてそれによって体現された血の海を。

 

「うっ!うううううう!!うげえ!げえええ!」

 

一夏はその現場から走って離れると、下水道付近で嘔吐した。無残な死体と血を見れば当たり前の反応だ。

 

嘔吐して冷静になった一夏は自分のスマートフォンで警察を呼んだ。その間、警察に全てを話し、目撃した事、自転車で近道をしようとした事、現場には一切入らなかった事を正直に話し、帰宅する事が出来た。

 

その日は死体を見たショックで寝付く事はできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

とある廃墟となった寺とも教会ともつかぬ建物に彼はいた。セシリアと鈴は何かを言い合っている。

 

「セシリア、ズルいじゃない!一人で命を刈り取るなんて!」

 

「仕方ない事ですわ。偶然・・・ええ、偶然歩いていたら命の匂いがキツくて」

 

「二人共、そこまでにしろ・・・次の候補者は目処がついた」

 

深遠伴親は次の魔界衆、即ち怨恨装具を身に付けるに相応しい候補者を見つけていた。

 

「後、5人必要だ。それまではIS学園にしっかりと根付いていろ。候補者があれば連絡してくれ」

 

「わかったわ。はぁ・・・また生者だらけの所に行くのかぁ。私も命を刈り取りたい」

 

「でしたら思想に飲まれている人間を狩れば良いではないですか、もちろん証拠は残さずに」

 

「それもそうね」

 

「では、伴親さん。わたくし達は戻りますわ」

 

「じゃあね」

 

二人は一瞬で姿を消し、IS学園へと戻っていった。二人が居なくなった後に伴親は赤黒く染まったISのコアを手にしていた。

 

「まだ足りん、この世を滅ぼすまではまだ足りん!」

 

彼は恨み、欲望、慟哭、あらゆる負の感情を溜め込んだISの意思達を探すために再び旅立った。

 

 

 

 

 

とある日本家屋、そこでは一人の男が鍛冶工房で刃を鍛えていた。そこへ目が閉じられた一人の少女とウサ耳のような機械をつけ、不思議の国のアリスをモチーフにしたような服を着た女性が縁側で座っていた。

 

カン!カン!と鉄を鍛える音が止む、鍛え上げられた鉄は火の中にあった為に鮮やかなオレンジ色をしているが、それを水の入った石桶の中へと突っ込み、冷やす。

 

砥石で丁寧に刃を磨き上げ、口からの吐息が掛からないよう注意して刃に着いた汚れと水を拭き取る。

 

「おい、束!寝てんだろ!巻藁もってこい!」

 

「!はーい!」

 

珍しい光景で束は巻藁を作って持ってきた。それを庭に立てると男は鍛え終わった刃を手にして立ち上がる。

 

「!」

 

横薙ぎの一閃、巻藁は簡単に斬れたが、刃は砕けてしまった。男はやれやれと言いたそうに頭を掻いた。

 

「コイツも打ち損じか・・・やはり夢で見た通りにはいかねえなぁ」

 

「打ち損じなのに、やっぱり刀ってすごい・・・」

 

「それより束、あの一本には触っちゃいねえだろうな?」

 

一本だけ地面に突き刺さっている刀があった。刀身のみではなく、刀としての形を完成させられている。無いのは本当に刃を収める鞘だけだ。

 

「束さん認められてないみたいだから、近づく事はできないよ!近づくだけでもおっかないのに」

 

「そうかい、ならいい」

 

「あの刀、それ程までに恐ろしくあるとは思えませんが?まるで何かを待っているよう」

 

クロエは視覚が効かない。それゆえに他の器官が発達しているのだろう。そのせいか、刀の意思を読み取ったようだ。

 

「こんな魔境の域に入っちまった奴なんざ、恐ろしくてしょうがねえ。打ったのは俺自身だがよ」

 

刺さったままの刀を三人は見ていた。刀は何も言わず、ただただその運命が来るのをじっと待ち続けるのだった。




次回は地獄変歌(ヒロイン魔界転生化)です。

もういっそのこと箒以外のヒロインを、魔界転生させちゃおうかなって思ってます。

ちなみに柳生十兵衛は千葉真一さんの方のイメージです。
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