今回からちょっとした理由からクロスオーバータグ付けます。
「(早く着き過ぎちゃった)」
今日は久しぶりにゼロとデート。 つやのある栗毛の少女レプリロイド『アイリス』は逸る気持ちに身悶えしながら、時計台の目立つ市民プール前の広場で愛しの彼と待ち合わせ。 周りには同じ目的で待ち合わせる男女や既に逢い引き中のカップルが行き交っており、彼女もまた醸し出される甘い雰囲気の一部を担っていた。
忙しい仕事にようやく一段落をつけ、やっとこさこぎ着けた交際の約束にいつになく高揚し、早起きの勢いで出発しては約束の時間に1時間も前に来てしまった。 当然ながら赤いシルエットは見当たらない。
「(ああ、早くゼロに逢いたいなあ……あっ!)」
時計台の盤面や行き交うカップルやファミリーをせわしなく見ながらゼロを待っていると、雑踏の中からお目当ての彼が姿を現した。
「ゼローーーー!!」
満面の笑みを浮かべ大手を振って呼びかけるアイリス。 ゼロもまた恋人の呼び声にお世指を立てて気さくな挨拶――――
「あんなの挨拶じゃねぇ!!」
「見つかるぞアクセル!」
思わずヤジを飛ばしそうになったアクセルに覆い被さり、茂みに隠れて強く口を塞ぐはエックスだった。
隠れながらも様子を窺うその先は、得意げに臭い挨拶を言い放つゼロと当然のように甘い雰囲気をぶち壊され、一瞬理解が追いつかない様子で放心し口を開けたままのアイリスの姿。
結局二人はゼロの顎の応急手当を行う事ができなかった。 朝一にゼロの顎を洗浄しグリスを注し直す予定だったのだが、あろうことか珍しく早起きを決めた後にさっさとエネルギーの補給を済ませ、さっさとハンターベースを出てしまったのだ。
ねぼすけなゼロだから大丈夫だろうと高をくくっていたエックスにアクセルは大慌て、ゼロの後を追うものの結局彼を見つけたのは今になってからの事であり、そして既に手遅れだった。
「っぷはぁ! あぁやってらんない!! いくら業務の内で処理してくれるからって! こんなアホな事なんでやらされなきゃなんないの!? むしろ有休消化でこれやらされてたら暴れるよ!?」
「そう怒るな、気持ちは分かるから!」
それはエックスも同じ気持ちであった。 アクセルの言う通り、今回の件がやりたくない用事の部類であるのは間違いない。
一応、今回ゼロを追跡して隙を見ては顎の処置を行う段取りは、エイリアに事情を話して一身上の都合ではなくしょっぱいが業務上の案件にしてもらった。 彼女としてもゼロに馬鹿な真似をされ、イレギュラーハンターの風評被害につながりかねないという考えがあったのだろう。
「しかし災難と言えばアイリスが一番辛そうな目に遭いそうだ。 ゼロがあんな風になってしまって」
とはいえ最悪なのは見るからに困惑を禁じ得ないだろう表情がにじみ出るアイリスであり、エックスは遠目ながら彼女の心情を察して余りある気持ちだった。
元に戻した所でいつも通りだろうが、流石に
「……お、二人が動き出したぞ。 追跡しよう」
ゼロって疲れてるのかな? アイリスは出だしからぶちかましてきた恋人に酷く困惑していた。 彼は変な所が……と言うか大体変だしエッチな発言が多いものの、それでいてどこか憎めない人柄である。
しかし久々に会ったゼロは――――
「いい天気だな本当。 うんこ日和だぜ今日は」
「(何を言ってるのかしら彼……?)」
うんこおしっこで笑う頭の悪い小学生男子みたいな低俗なギャグを所々に織り交ぜる。 あまりに程度の低い会話にアイリスは早くも辟易していた。
どうしてこんな事に……そう言ってふと思い出してみれば、昨日の夜にかけてみた通話の時点で既に妙だった気もしなくない。
「辛気くさい顔してどうしたアイリス。 こんなにいい日なんだ、スカット爽やかに行こうぜ!」
「え、ええ……」
誰のせいだと思ってるの!? そう喉を通りかかった所で言葉を飲み込んだアイリスの口元は引きつっていた。 いつもの流れなら遠慮無くツッコミを入れてやれる心情だったが、長らく逢う切っ掛けがなかった上でやっとこさこぎ着けたデートだ。
その上でゼロは早く着きすぎたこちらとほぼ変わらない時刻に到着した。 それは彼もまた今回の件を楽しみにしてくれていたのだろうと考えられる。
ひょっとしたらゼロは彼なりに疲れているこちらを気遣って、ジョークのボキャブラリーを増やそうと慣れない言葉をあえて使っているのかも知れない。 そうに決まってる。
「ゼ、ゼロ! 今日のデートは何する予定なのかしら!?」
「うーん、こうもん考えてみたらやりたい事色々あってな……一先ずは映画でも見に行くかとか思ってるんだが」
「!」
珍しくまともなプランにアイリスは感心した。 いつもの彼なら何かと格好をつけて
「……エッチな映画とかじゃないよね?」
「フッ、安心しろ。 俺とて毎回ワンパターンじゃない、一生懸命アイデアをブリッとひりだしたんだ。 見てみろ」
差し出された映画のチケット、そこにはいつになくまじめな表情のゼロと憂いたアイリス本人、そしてさる東方シリーズの女の子達とトランフォーマーなロボット達とのまさかの競演を果たした赤バンブル監督の作品『ゼロの幻想入り』の指定席券であった。
まさかの自分達を題材にした笑いあり涙あり感動ありの人気アクション映画シリーズであり、会話の中に一部気になる表現はあったものの言う通りまともなチョイスだった。
「む、アニメ映画とはいえ自分達が出る作品はテレ臭かったか――――」
「いいえ! 行きましょうゼロ!」
アイリスは心躍り色めきだった様子でゼロに顔を寄せる。 若干圧倒された様子のゼロだったが、やがてはにかむと二人してお互いの手を繋ぎお目当ての映画館へと向かった――――
「今のところは何もないね……」
「そうだな。 だが油断はできない、俺達も中に入ろう」
エックスとアクセルもチケットを買ってゼロ達の後に続く。
「フン、揃いも揃って暢気な連中だ」
そんな彼ら4人の様子を、離れた所から監視していた一体のレプリロイドがいた。
威圧感を湛えた重厚な紫のアーマーで全身を包み、T字に切れ込んだヘルメットの隙間から赤い眼光を覗かせる。
「だがこのVAVAはそうはいかない。 平和などという欺瞞に浸るような手合いとは違う……何故なら俺は『鬼』であり『悪の華』だからな……VAVAVAVAVA!!」
ついでに無理にキャラ作りしてるようなうっとーしい笑い声を上げる彼の名は『VAVA』。 元特A級のイレギュラーハンターであり、そして今はエックス達と対立する恐るべきイレギュラー。
「しかし思わぬ収穫だったな。 奴らへの挑発ついでに古巣へ戻ったら今回の件だ」
VAVAは昨日の晩の出来事を思い出す。 あのロックマンXにその愉快な仲間達と
本来ならばちょっとした冷やかしの一つでもしてエックス達を纏めて炙り出す算段だったが、これは思ったよりも楽に事を運べそうだとほくそ笑んだ。
VAVAは背後を振り返る。 彼の後ろには中身の詰まったビニル袋が何重にも置かれている。 結び目の隙間からは押しつぶされたカラフルな缶のような物が見え隠れする。
「クックック……まあ、本当に仕掛けてやっても良かったんだがな」
かき集めた成果物にVAVAは笑みを抑えきれない。 そう、ような物とは言ったがこれの中身は正真正銘の空き缶であり、これは他ならぬVAVAが自分の手でかき集めたごみの山だった。 これはすぐ隣にいる清掃員らしき爺からふんだくった袋に自身が詰め込んでやったものだ。
周辺の地面に落ちている感やごみをかき集めてチリ一つない清潔さを保ち、清掃屋の仕事を奪って働けなくしてしまい、雇用の機会を奪われた人々やレプリロイドは秩序を失っていくだろう。
そうすれば出動を強いられるイレギュラーハンターは疲弊し、エックス達も自らを倒すべく動かざるを得なくなるだろうと言うのがVAVAの目論見だった。
現に周辺は一つのごみもなく清掃員の出る幕はない状態で、何ならこれと同じ事を挑戦状ついでにイレギュラーハンター本部に仕掛け、彼らの貴重な仕事を奪ってやろうやろうとさえした。
ああ自分の邪悪さが怖いぐらいに恐ろしい、周りにいる人間共も恐怖のあまりに笑っているではないか。 中にはトチ狂って感謝の弁を述べる輩もいる。
「ああいつも済まないねえ兄ちゃんや、これホンの気持ちだから受け取ってくんな」
あくどさに酔いしれていると、用務員らしき爺が頼みもしないで自らみかじめ料を差し出してきた。 よほど自分の行いが恐ろしかったと知れる、それを丁重にふんだくるとVAVAは近くの自販機にぶち込んで缶入りのコーラを買う。
一気に飲み干すとさっさと空き缶をつぶし、アルミはアルミばかりで分別したごみ袋に突っ込み直す。 分別した方が
ハハハッ!! 我ながらなんと邪悪なのだろうか!!
「首を洗って待っていろエックス!! VAVAVAVAVA!!」
「しかしあんちゃん。 助けてもらっておいて言うのもなんだが笑い声うっとーしーな」
その一言にVAVAは激高した!
はい、と言う訳でVAVA登場&赤バンブル氏の「ゼロの幻想入り」(https://syosetu.org/novel/132473/)について少し名前をお借りしました!
無論本人公認です……が、どうして今回あえて二次創作同士でその名を使ったのか、それは次回映画を見終わったアイリスの感想を通して語られることとなります。
そしてその件について赤バンブルさん、現状から察するに余りありますが、